マンション販売好調のときに注意したいこと

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

マンションの売れ行きが絶好調のようです。契約率が高いことはもちろん、発売戸数が大幅に伸びているのです。不動産経済研究所の調査によれば、首都圏の2013年3月の発売戸数は、前年同月比で48.4%も伸びたとのことです。
売れ行きが悪ければ、マンション業者は新規の発売を思いとどまるものです。そうしなかったのは、1月からの販売が好調だった証しなのです。

●販売好調の背景にアベノミクス
マンション販売の好調と軌を同じくするのが、百貨店売り上げの伸びです。3か月連続で前年同月比プラスになったと百貨店協会が発表しました。高級宝飾品・貴金属などが伸びているのだそうです。

新聞やエコノミストの分析では、資産効果の表われだとのこと。つまり、安倍政権誕生以来の顕著な株価上昇が富裕層の懐を豊かにし、そして財布のひもを緩ませているというわけです。

マンション販売が好調な理由は、都心の高級マンションでは資産効果の表われと分析されています。その他のマンションでは、超金融緩和がもたらした一段の金利低下と消費税上げ前の駆け込み需要などが背景にあると考えられています。

●販売好調の次に来るのは価格の高騰
歴史を振り返ると、販売が好調に推移し始めると、次に来る現象は「価格の高騰」です。

新築マンションの場合は、まず用地争奪戦が激しくなり、土地代が高騰します。用地費が上がれば、建築費がそのままでも分譲価格は上がらずを得ません。

ただ、先に上がるのは中古マンションです。新築マンションの場合は、用地を首尾よく取得できても、そこから建築許可を得て着工するまでに1年前後、小型マンションでも半年くらいの時間を要するからです。

新築が飛ぶように売れ出すと、品薄感から中古へ目を向ける人を増やします。中古市場は活況を呈し、優良な中古物件は早い者勝ちの様相を呈して行きます。やがて、価格は高騰し始め、新築価格に徐々に近づいて行きます。

遅れて新築マンションが、それまでの相場を崩す新価格で販売を始めます。そのとき、中古も新築も品薄状態になって、市場は過熱します。新築マンションの市場では、即日完売物件が続出し、ブーム状態になるのです。

このようなマンションブームが本当にやって来るとしたら、日本経済が活況を呈し、景気回復が多くの国民に実感されるときかもしれません。または、大手企業を中心に所得の増加傾向が顕著になり、先行き明るいムードが国内に蔓延して来たときでしょう。

そうなるのは、いつ頃でしょうか? 4月現在、気分はもう好景気に沸き始めています。国と日銀は金融緩和を実行しただけです。三本の矢(金融緩和・財政出動・成長戦略)でデフレを脱し、名目賃金を上げるという公約が独り歩きしているだけなのに、円安や株高を招来しています。そして、早くも一部の企業業績を劇的に伸ばしているのは事実です。

首相みずから経済界に賃上げ要請した成果なのかどうか、ご承知のように既に賃上げやボーナスの増額を表明する企業も登場し始めました。来年の春闘では、あまねく賃上げが実施されるかもしれません。

中古マンションの価格高騰は近いかもしれません。

反対に、賃上げもなく景気回復も微々たるものということであったり、物価だけが高騰して金利が上昇するような事態になったりすれば、マンション販売は腰折れとなるでしょう。

そうなれば、一旦上がった価格は再び下がることとなるかもしれません。2006年から2008年に起きた価格高騰は、リーマンショックを機に世界同時不況によって高止まり、その後は値引き販売が横行しました。その結果、統計に出て来ない価格の下落を招き今に至っていますが、それと同じ状況が再現されるかもしれません。

●陥りやすい罠
マンション購入を検討中のとき、売れ行きの良さが実感できる場面があります。

モデルルーム(販売事務所)が見学者でごった返しているとか、壁に大きく張り出された価格表には申込済みを表わすバラの花で一杯であるといった場面です。

このようなときは、営業マンも強気になり、ぐずぐずする客は客でないかのような不遜な態度、あるいは慇懃無礼な態度をとったりします。

ともあれ、販売現場が熱気であふれる状況に遭遇すると、ふだんは冷静な人でも雰囲気に呑まれてしまいがちです。じっくり検討する時間を与えられないまま、一気に購入申し込みへと誘われてしまうのです。

これは人間の心理です。欲しいものがなくなりそうだと知ると、ますます欲しくなるものです。
また、同好の士をそばで多数見ることで安心感が生まれるのかもしれません。

少し冷静な人でも、「この状況は、この先の価格高騰を示唆している。やはり買うなら今だ」――そんなふうに分析して自分の行為を正当化するのです。

●駆け込むか、それともじっくり選ぶか?
もし、このような情勢になったとき、貴方はどのような行動を取りますか? 雰囲気に負けない自信がありますか? 

冷静さを失い、衝動的に購入を決断したとしても、結果論としては間違いでないかもしれません。優柔不断な性格の人にとっては、決断の後押しをしてくれることになって逆に良いのかもしれませんね。

仮に、冷静な態度を崩さず慎重な検討をした結果、欲しかった物件が売約済みになってしまったとしても、それが損であるとも、不幸せなことであるとも言えません。まして、「逃がした魚は大きい」などということもありません。

ともあれ、他力本願であろうと、主体的に決めた行動であろうと、大事なことは納得感があるかどうかです。考え方ひとつと言っても良いかもしれません。

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