あちら立てればこちらが立たず

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

「人間とは欲張りなもの」とは語る必要もないことですが、マンション購入に当っては、高額な買い物だけに、あれもこれもと求めたくなるのが普通の心理です。

親に子供を預かってもらう都合上、場所は限定。夫婦とも仕事を持ち、忙しいので駅から遠くても5分以内。自然環境は期待しないが見通しの利く開けた部屋が絶対条件だね。うちは荷物が多いから、広さは最低でも80㎡以上欲しいな。バルコニーに面して2室とリビングのあるワイドスパンの間取り、玄関には靴のままで入るクロークまたは大型の玄関収納、トイレは標準より広く、専用の手洗い器付き、ミストサウナかTV付きの風呂、キッチンではディスポーザー付き、床暖房も欲しいねetc.

このような希望条件の人が、「ところで予算は?」と自問すると、困難な条件だと自覚したりします。結局のところ、最後は妥協が必須と認識することになるのですが、そこへ至るまで時間のかかること。でも、誰もが辿る道なのです。

予備知識ができるまでは、仕方ないことでもあるのですね。今日は、求める条件の現実についてお伝えしようと思います。

両立しない条件の数々

住まいの条件は、多くの場合、「あちら立てればこちらが立たず」なものです。その代表例を整理してみましょう。

①「駅に近くて自然環境も良い」は両立しにくい
駅のそばは、店舗・ビルが立ち並び、賑やかであるとともに概して雑然としているものです。商店街を抜けると住宅街になるので、そこには小公園が点在したりしていますが、東京の場合、住宅と言えばマンションですが、どのマンションの敷地にも豊富な植栽があれば、全体として緑の多い住宅街と言えるかもしれないのですが、現実は駐車場にスペースを奪われ、花壇が申し訳程度にしつらえてあるだけという例が多いので、緑多い環境とはなっていません。

商店街を抜けると住宅街になると言いましたが、商店街の規模にも注文があるものです。つまり、駅周辺で何でも揃うということを期待するのです。何でもというのは、買い物、飲食、娯楽が楽しめるということです。
和・洋・中の美味しいレストランがたくさんあり、買い物は大型スーパーや百貨店で、他にはお洒落なインテリアショップ、雑貨店、ブティック、レンタルショップ、喫茶店などなど。安い店から、ちょっと高級な店まで。

こう書くと、新宿・渋谷・池袋・横浜・大宮といったターミナル駅の風景を想像してしまうことでしょう。そこまで行かなくとも、そのイメージに近づけば近づくほど、環境の良い住宅街は遠ざかるはずです。

反対に、「5分も歩けば閑静で緑多い住宅街」などという駅もありますが、そのような駅の商業地は実に狭いもの。従って、美味しい店も楽しい店も数はしれているということになります。

駅に近いことは、通勤の便が良いことのほかに、駅周辺に集まる商業施設を利用する楽しみを得ることができるということです。そのような利便を求める、すなわち駅に近いマンションを求めるならば、自然環境の良さはほぼ期待できないと思うべきなのです。

②「価格は安く、眺望の良い物件」は矛盾する
新築マンションの価格表を見ると、上階ほど高く設定されていることに気付くはずです。上階ほど見晴らしが良いからです。同じマンションの中での選択なら、この希望は相矛盾することになります。しかし、複数のマンションの中で選択するときは、上階でありながら一番安い物件が実際にあり得るのです。だから、「上階で安いもの」を望んでも矛盾はしません。
しかし、安い物件は、立地条件か建物品質のどこかが魅力に欠けるはずです。

③「窓先が開けている住まいが希望だが、タワーは嫌だ」は高望みだ
大型マンションは好きになれない、タワーも嫌だといった理由で中小規模の物件を志向する人がいます。その人が、窓先の開放感も希望したとして、両立するでしょうか?

中低層マンションでリビングの前が開けている、そのようなマンションは実在します。マンションの建設地が「中高層住居専用地域」や「近隣商業地域」などに指定されていても、すぐ前は第1種住宅専用地域になっているといった関係になっている例です。

前面の一帯は一戸建て住宅街なので、低層階を購入したとしても見通しがきくことになります。しかし、残念ながら、そのような物件は多くありません。

④「駅から徒歩圏にあって広い専有面積」は予算次第
「広い方が良い、できたら70㎡以上の3LDKが希望です」と言い、場所も駅近。このような希望を持つ人はとても多いのですが、それが可能かどうかは予算次第です。

広さを優先すれば駅近という条件は諦めることが必要になるでしょうし、駅近を優先するなら広さは妥協しなければならないことが多いものです。どちらも譲れないなら、都心から遠い方向へ候補地を移動させなければならないでしょう。
「都心にあって広い面積」も、同様に予算次第となる。言うまでもないことです。

⑤「5階建て以下の低層マンションで徒歩圏」は皆無に近い
狭い敷地を有効に使う。いわゆる土地の高度利用というテーマから誕生したのが、集合住宅です。地価の高い東京圏のマンションは、いかに高く積み重ねるかに知恵を絞って来た歴史を持つとも言えるのです。

しかし、高いマンションを嫌う人がいます。落ち着いた暮らしを低層マンションに求める人です。これは、自身では意識していないらしいのですが、落ち着いた街並みとダブって描くイメージから発しています。
としたら、第1種低層住宅専用地域に指定された住宅街のマンションを求めることになります。言い換えれば「お屋敷街」のマンションというわけです。

こうした住宅街は、もちろん存在しますが、駅から遠いものであると認識しなければなりません。駅によっては、徒歩10分圏内に閑静で高級な低層住宅が並ぶという例もないことはないのですが、そこにマンションが建つ確率はとても低いものです。

採算が合わないからです。単純に言って、同じ面積の土地があって、片方は12階建てが可能なのに対し、他方は3階しか建てられないとしたら、後者の土地取得費用は前者の4分の1以下でなければ同じ販売価格にはなりません。

3階しか建たないエリアでマンション開発をしようとすれば、地下も利用して面積を増やすしかありません。しかし、それでも4階ですから、12階には遠く及びません。

このようなエリアでは、安く用地を買うしかないわけです。このため、低層マンションは駅からバスを利用するような場所になってしまうというわけです。

東京都内では網の目のように鉄道が走っていますが、エアポケットのような不便なエリアが何箇所か見られます。ときおり販売される低層マンションは、目黒区や世田谷区などにあって、大体どれも不便な場所が多いのです。

⑥「開放的」と「閑静」は両立しない
マンション広告に注目していると、「幹線道路から一歩奥に入った閑静なたたずまい」などのキャッチコピーに気が付くときがあります。

このような「閑静な」エリアにあるマンションの多くは、交通量が少ない代わりに接する道の幅が狭いため、周囲の建物に囲まれる形になっているものです。
前面の建物が視界に入るだけでなく、日照障害もあるといった欠陥があるのです。無論、プライバシーの確保に気遣う必要のある物件が普通です。

角住戸でも、隣接建物との距離が1メートルもなく、窓を開けることもできないもの。採光も期待できない代物なのです。

かろうじて道路に面する住戸は道路向かいの建物との距離が幾分なりともあるので、日当たりもプライバシーも緩和されます。
道路に面していなくても上階は日当たり、見通しが良いかもしれません。しかし、その住戸は極めて限定的です。

何を優先すべきか

以上に述べて来た例でお分かりの通り、マンションは一長一短があり、二律背反的です。

ゆえに、あちらを立てればこちら立たずと苦悩する経過を誰もが辿るのです。

メリットがあればデメリットがあるのが世の常です。森羅万象、何事も裏があり表がある、条件が揃った素晴らしいマンションは、高くて手が出ないものです。
安いと交通便が悪い。環境が良ければ駅からバス。広くて安いを目指すと郊外の、しかも支線の駅。通勤に便利で人気のある街で探すと、条件の悪い住戸しか予算に合う部屋はない。

このように、何かしら欠陥がつきまとうために苦労するのが住宅・マンション探しというものです。ご相談者に中には、5年も探し続けているが未だに決められないという人もありました。

そこで大事なことは、「妥協」ですし、「優先順位の決め方」なのです。

私は、このブログで言い続けていることがあります。それは「資産性」です。永住の住まいとして選択するような人は例外ですが、買い替えの可能性が少しでもある人は、将来の売却価値に重きを置くように薦めたいのです。

そうなると、優先順位は「立地」になります。建物はどんなに素晴らしく、ブランド力のあるマンションであっても、そして自然環境が良いとしても、バス利用となると、ほかの全ての良さが吹き飛んでしまうのです。

これは、大都市なら例外はないと思って間違いありません。それだけに、立地、特に利便性は優先されるべき条件なのです。

立地条件が良いマンションは、価格が高いものです。従って、広さは我慢する必要があることでしょう。広さを犠牲にしても場所を採る。この覚悟が大事なのです。

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