マンションは管理を買えと言いますが・・・

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

昔から「マンションは管理を買え」というフレーズが使われます。しかしながら、その重要性を理解している人は一体どのくらいいるのでしょうか?

買主(入居者)の認識に関しては兎も角も、売主の中に売り放しの姿勢を疑わざるを得ない事例が散見され、失望することがあります。

管理費が異常に安い新築物件に遭遇するときです。この1年ほどに限ると、標準単価の半分もない事例を数件見かけました。

標準単価とは、首都圏の場合、専有面積1㎡当たり200円ほどですが、100円にも届かない安値なのです。某マンションは、70㎡クラスの住戸で6000円弱でした。

●管理費が安いマンションの特徴

調べていくと、管理費があまりかからない設計になっていることが分かりました。具体的には、戸数が100戸以上あること、共用部分の面積がコンパクトであること、エレベーターの台数が少ないこと、植栽スペースが殆んどないこと、駐車場が機械式でない(平置きでわずかに確保されているだけ)といった点が共通していました。

その上、管理人の勤務時間が短いこと、定期清掃回数が少ないことなどで管理会社に支払う管理委託費が低く抑えられているといった点が指摘できました。

このような管理費の安いマンションをどう考えたらよいのでしょうか?

また、これとは別に、管理費は平均的な額でも、管理内容に踏み込んでみると、非常に懸念を感じる物件も少なくありません。こちらの共通点は、50戸未満の小型マンションで、高くなりがちな管理費を抑えるために管理の質を落としていると言わざるを得ないものです。

●管理の良し悪しは実感しにくい

ところで、管理が良いとか良くないとかは、どこでどのように見分けるのでしょうか?この質問にズバリ簡潔に答えられる人は多くないはずです。

中古マンションの購入を検討している人に「管理状態はいかがでしたか?」と聞いてみると、「清掃が行き届いていて、管理状態は良さそうでした」との答えが返って来ます。

マンション管理とは、一言でいえば「きれいに保つこと」なので、清掃も大事な要素には違いありません。しかし、何年も何十年もきれいに保つことの難しさは、一言では表せないものです。しかも、それを実感することは難しく、経験知となるまでには20年以上30年くらいの時間が必要になるのかもしれません。

まして、未完成マンションを契約する人には管理の良し悪しを確かめることはできません。

結局、「管理会社が大手だから大丈夫だろう」くらいの認識で通り過ぎてしまうのです。

分譲マンションを購入する際は、購入者にとって高額な買い物となるため、どうしても物件そのものの立地やスペック、価格といったものに主眼がおかれてしまいがちですが、管理には重要な問題が潜んでいるのです。

90年代後半から管理会社と管理組合におけるトラブルや大規模修繕工事時の問題などが顕在化したことによって、購入後の「管理」のあり方や管理会社のサービスの質の重要性も注目されるようになってきたという経緯があります。

また、2001年には「マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)」が施行され、「マンション管理士」制度やマンション管理業者の登録制度の創設等、さまざまな新しい試みがスタートしています。

これら一連の動向が示唆するのは、購入後の資産価値を左右するのは、まさに「管理のあり方」であり、購入時にこそ、その「管理」に注目し、管理サービスや管理の質が高いと思われるマンションを購入すべきであるという点です。

●マンションの管理業務を整理してみよう

ところで、マンションの管理とは多岐に渡り、手間暇のかかる業務です。ここで簡単に管理委託業務を整理しておきます。

大きく分けて、①事務管理業務、②管理員業務、③清掃業務、④建物設備管理業務の4つがあります。

①事務管理業務には、管理組合の会計の収入および支出の管理・出納、マンションの維持または修繕に関する企画または実施、その他の事務管理業務(理事会支援業務、総会支援業務、その他)があります。

②管理員業務は、受け付け等の業務、点検業務、立会業務、報告連絡業務の4つが主な業務です。

③清掃業務には日常清掃と特別清掃(定期清掃)がありますが、日常清掃は管理員や管理会社の清掃員が基本的に毎日おこなう掃除のことで、月に一度か数ヶ月に一度清掃専門業者が来て、共用廊下や階段、エレベーターホールなどを機械洗浄したりワックス掛けしたりするのが特別清掃です。

④建物設備管理業務は、建物、エレベーター、給水設備、浄化槽、消防用設備、機械式駐車場などを定期的に点検しメンテナンスをおこなうというものです。

●「管理は管理会社にお任せ」ではいけない

管理とは本来、自分の資産であるマンションの価値を保つために、居住者自らが行なわなければならないものです。一戸建の所有者が自ら庭の草をむしり、家の前の掃き掃除や、時にリフォームや修繕を行なうことと比較すれば分かりやすいのではないでしょうか?

しかし、マンションの場合、1つの建物を複数の所有者で共有しているという形態上、物理的に共有の財産とならざるを得ない箇所(エレベータや廊下、エントランスなど)もあり、また実務的な面からも独自で行える事(清掃や修繕など)は限られてしまうため、管理会社に委託するという形をとっているのです。

言い換えましょう。
自分の資産を守るためにやらなければならない作業のうち共用部分(共用部分も自分の資産です)に当たる部分のみ分離し、共同で外注しているということです。
従って、委託した部分がきちんと実施され、目的を果たしているかは発注者側が見守る必要があります。

きちんとできていないならば、発注先に是正を求め、場合によっては契約を更新しないといった策も必要なのです。

しかし、先に見た4つの管理業務が的確に行われていれば問題ないのではと考えてしまいます。大手の管理会社なら、任せておけば大丈夫。手抜きも不正もしないだろうというわけです。

ところが、マンション管理の本来の目的とは、資産価値が長く維持されることにあります。分かりやすく言えば、古くなっても古さを感じさせない、劣化でなくむしろ優化するマンションを目指すべきものです。

古くなって価値あるものになる。それはどのようなものでしょうか? 生まれ、成長し、大人になるという人の成長の歴史と同じことをマンションも体験できるのでしょうか?

ここでは簡単に結論だけを述べておきましょう。最も象徴的な例を挙げると、マンションの敷地内に植えられた樹木が生長して緑の面積が増えること、花壇では季節ごとに華やかな花が咲き乱れること、屋上緑化によって夏の高温を防止するなどです。

住人同士のコミュニティ形成も価値を上げるために不可欠な要素です。なぜなら、資産価値を高めるための活動は一人ではできないからです。管理会社に何かを依頼するにしても、入居者がばらばらでは何も実現しません。

人付き合いを嫌う入居者もあるでしょうが、一定の距離を保ちながらの交流は欠かせないのです。

むろん、これらは理想論かもしれません。しかし、現に何十年か経て分譲時より優化した部分の魅力が周辺のマンションに差をつけて高い売値をつける、という事例は数多くあるのです。

●管理の悪いマンションの末路

反対に、スラム化一歩手前にあるような無残なマンションもあります。マンションが日本に誕生して数十年、老朽化したマンションが日々増えています。
同時に、大きな社会問題に発展しそうだと危機感を持つ識者、マンション住人も増えています。何とかしなくてはと、解決策を模索中の管理組合も増えています。

解決策のひとつに「建て替え」があります。しかし、これを実行に移すのは並大抵の努力では足りません。合意形成だけで10年も20年もかかる大事業なのです。ここでは述べませんが、実現するのは恵まれた条件を有する場合のみで、普通は入り口で頓挫してしまうことが多いのも事実です。

結局、手をこまねいて劣化を眺めているほかにないマンションもあるのです。長い時間かけて劣化させてしまった建物は、手の施しようがなくなり、やがて住む人がいなくなってしまい廃墟と化す運命というわけです。

これは他人事ではなく、中古マンションを買った人にとっては、そう遠くない日に我が事になる可能性すらあるのです。

そこまで行かないうちに売り抜ける気でいる人は関係ないと思うかもしれませんが、その手前で着実に資産価値の低下を受け、安値で手放さざるを得ないのです。

つまり、ある日突然、急落するのではなく、徐々に値下がりのカーブを描いて行くのですから、その過程で売却することになれば、大きな損失を被ることは間違いないのです。

●管理が良いマンションほど高く売れる?

管理が適切に行われ、かつ樹木が育つなどして優化している中古マンションであれば、まさに管理組合と管理会社との協業の成果と言えるそのマンションの管理実態を直接確認することができるでしょう。

しかし、新築の場合、管理はこれから始まるものであり、パンフレットで記載されているような管理会社の管理サービス一覧を見るだけで、本当の管理が見えるものではありません。
なぜなら、繰り返しになりますが、管理とは管理組合と管理会社との関係性の中で作られるものだからです。

本記事の主題ですが、管理の良し悪しは本当にその後の資産価値に影響を与えるのでしょうか?
例えば、資産価値の定義を「売却時の物件査定額」と定義づけるとすれば、分譲マンションの不動産査定の実務では、査定額は取引事例比較法によります。

査定の比較項目を見ると、主要なものは、立地であり、築年数であり、階数なのです。管理に関する項目もないことはないのですが、「共用部分の保守・補修・清掃等の程度」の1項目があるのみです。

そうであれば、管理が適正に行なわれていようがいまいが、その価値に変化はない、もしくはあったとしても価格に反映するインパクトは微々たるものではないかという管理への反論が生じて来ます。

しかし、そう簡単には片付けられないのです。売却時の購入予定者(見学者)の印象の問題があるからです。
査定価格とは、あくまで売却を検討した売主が市場で提示する価格の根拠に過ぎません。
大事なのは、見学者の印象です。

買い手の多くは複数の物件を内覧し比較しますから、内覧する際に確実の見られる共用部、つまりエントランスやエレベーター、廊下等の美観が保たれていないようなマンションの場合、見学者の印象はどう変化するでしょうか?管理の良し悪しの影響はここで出るのです。

この購入者における検討時の印象は、非常に重要であり、中古マンション成約のスピードに大きな影響を与えます。

●巡回管理のメリット・デメリット

小型のマンション(ここでの小型のイメージは30戸足らずです)では、管理人を平日5日間の8時間勤務にしたら、管理費が跳ね上がるので、普通は巡回管理方式にするものです。
管理人さんの年収は、大手の場合で360万円、月平均30万円くらいで計算されるので、30戸のマンションなら、1軒あたり、毎月1万円を管理人さんの給料として負担することになります。
100戸のマンションなら、月額3,000円ですみます。その差は、7,000円。東京圏の分譲マンション(70㎡)の管理費は平均で14,000円くらいですから、単純計算で30戸未満の巡回管理のマンションを週5日の日勤管理に変えると毎月21,000円の負担になってしまいます。

そうしてしまうと販売がしにくくなるというわけで、現場の営業から突き上げられて、やむなく節減の方向に向かいます。そうして、小型マンションは巡回管理が常識になってしまったのです。

しかし、巡回管理方式には、いくつかの問題点があります。
巡回管理のデメリットは、何か突発で起きたとき、例えば急な大雨でエントランスが水浸しになったときなどは、居住者が掃除をしなければなりません。不審者がオートロックドアをすり抜けて侵入しても注意する人がいません。

巡回でも問題ないのなら、どこのマンションも巡回になるでしょう。そのような動きがあるという話は聞いたことがありません。
管理人が常勤していなければ、管理は乱れるものです。規約があっても、守らない人がいるからです。
常に目を光らせ、ゴミを拾い、自転車置き場を整頓し、軽微な修繕箇所に気付いたら手直しの手配をする、不届きな入居者がいれば規約や共同生活のマナーを遵守するよう注意を促す。マンションの管理員とは、管理組合から委託された番人とも言えるのです。

こうした行動を通じて長く綺麗なマンションとして保つようにするのが仕事です。突発事故や天災のときは別として、管理人がいなくても、普段は生活に支障はないかもしれません。しかし、長い目でみると、資産価値の劣化が早い。それが、巡回管理マンションの一般的な傾向なのです。

いつも居るのと、たまに回ってくるだけでは、同じ年数でも明らかに「綺麗さ」が異なります。マンション管理は、清掃人が決められた周期でやってきて綺麗にすればいいというものではないこと、想像して頂けると思いますが、巡回では限界があるはずです。

巡回管理でも綺麗なマンションがあるとしたら、入居者のモラルが大変高く、入居者間のコミュニケーションも良いのでしょう。

互いに気をつけて生活し、他人の子供に注意・指導しても問題が起きないような良好な近隣関係が出来上がっているはずです。
小規模マンションの管理組合では、居住者間のチームワークの良し悪しが「住み心地や資産価値」の維持向上に大きく影響します。

こうした小型マンションでは住人の意識を高め、管理の行き届かないところを自分たちで補っていくことが資産価値を維持するために欠かせないのです。
それができなければ、管理費を増額してでも管理人を常勤させる覚悟がいるのです。

「マンションは管理を買え」とは、管理の良いマンションを買えという意味なのでしょう。その観点を重視すると、巡回管理のマンションは避けなければならない場合が多いという結論になるのです。

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