第636回 「買うものがない」理想と現実のはざまで!
- 2018.08.15
- マンションの資産価値
このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。
さんざん探して、ななか見つからないためか、挙句の果て「何故これを?」と最終候補に選んだ物件に唖然とする場合があります。
ご相談者本人は、選択の正しさの根拠を懸命に探そうとしたらしく、長所・利点を並べながら、筆者に意見を求めて来るのです。
〇〇地区は再開発地域に近いので将来性に期待が持てる、無名業者だが内装は大手の物件以上だと思う、選んだ住戸の価格はお買い得と感じる、2LDKなら10年は住めるし、ここなら売却も難しくないと思う・・・・・
上記赤字部分は5つくらいの実例から最大公約数的に書いたものです。気持ちは痛いほど分かりますが、過大評価し過ぎの場合が多いのです。痘痕も笑窪ということわざがありますが、冷静に見ることができなくなっていることに度々気付かされます。
筆者にご相談下さるのは、「貴方の考えは正しい。是非お買いなさい」と背中を押してもらいたかったからでしょうか。ところが、期待に反して「やめた方がいい」と言われるとは心外。そんな表情を見せます。
筆者は歯に衣を着せない物言いをするほうではないと自分では思っているのですが、どうもそうでもないらしいのです。
「失礼ながら・はばかりながら」と前置きしながらも、ズバリと語るのが習慣になっているからかもしれません。
ご相談者は、いわばお客様です。「もう少し控えめに言えよ」とか「別の言い方はないのか」と反省することもありますが、インパクトある表現も必要と思うのです。レポートを送ったあとに届く感想コメントに「説得的で分かりやすい」と言って下さる人が多いからです。筆者なりの葛藤が今も続いています。
「あなたが選んだ物件なのだから尊重します」と言いたい反面、「このようなマンションの場合、リセールバリューは期待できないのです」と弱点・欠点を指摘せざるを得ないのです。そのために、惚れた異性の相手を貶められたような不愉快感を味わうのでしょう。
筆者も、ご相談者の気分を害しても何の得もありませんが、相談者におもねる発言をしたのではこれまた何の値打ちもない。そう思うのです。
信念に従って、筆者は筆者なりの道を行けばいい。葛藤ののち、いつもここに落ち着くのです。
マンション探しを続けている人たちも、これと同じで理想と現実のはざまで葛藤するのでしょう。迷い、悩みながら、やがて結論に達します。問題は、結論の導き方ということになるのです。
今日は、理想と現実との折り合いについてお話ししようと思います。
●理想を追うと買えるものが見つからないもの
■通勤に30分以内 ■駅から5分以内 ■どこへ行くのも便利な鉄道の駅 ■通学に問題ないこと ■学校区が良い ■買い物に不便がないこと ■飲食店が多いこと ■賑わいがある街 ■環境良し(公園が近い・子供が安全に遊べる・犬の散歩がしやすい) ■保育園を変えたくない
■有名ブランドがいい■大規模が良い ■付加価値が豊富 ■内廊下式である■上質である・高級感がある・豪壮・風格がある・洗練されている
■眺望が良い ■設備が充実している ■内装のグレードが高い ■間取りが良い(ワイドスパンである・収納が充実している・可変性が高い・プラバシー性が高いなど)
■通風・採光が良いもの ■眺望がいいこと ■いつでもゴミ出しができる ■耐震性が高いこと(免震構造がいい) ■二段式でない自転車置き場 ■敷地内に子供広場があること
理想を並べると、実にたくさん出て来ます。個人差があるので、もっとあるのかもしれません。
これらを全て満たすマンションを探している人はいないと思います。重要な条件、優先すべき条件は何かと考え、少数の条件を挙げるのが普通です。妥協しなければ買えないと分かってもいます。
ところが、いざ具体の物件を見ると「あれがいやだ、ここが気にいらない」などと言い出します。
前に建つビルが邪魔して眺望が悪い。距離は30mくらいあるので日当たりは問題ないが価値はあるのか、バルコニーの前にある家や施設が建て替えられて高い建物が建ったら?
道路拡張で交通量が増えたらどうなる、駅までの道が暗い、歩道が狭く危ない気がする、スーパーが1軒あるだけで商店が少ない、各駅停車だけの駅ってどうなの?急行停車駅なので朝の混雑は半端ではない。
駅から徒歩12分のマンション、少し遠いがリセールにどのくらい影響があるか?駅前のマンション。便利だが騒々しい、どうしたものか?乗り換えに時間がかかる駅なのが気になる。
バルコニーから墓地が見える。高い建物が建つ心配はないけど、景観としてはいやだなあ。高い所は苦手だけど、3階からだとアパートの屋根ばかりが目に飛び込んで来るのが嫌だ。
天井の低い箇所がある、西向きなので夏は暑いのではないか?角部屋だが窓が大きいので家具が置けない。スラブ厚が20㎝しかない大丈夫か、リセールにどのくらい影響するだろうか?間取りがもうひとつだが、リセール価値は?
修繕積立金の上がり方にびっくり、払って行けるか?修繕積立金の高い中古は売りにくいのではないか?
中古は仲介手数料もかかるし、住宅ローン控除の金額も少ないうえに修繕積立金も大きいから、新築を買った方が得なのではないか?新築より高い中古、気に入ったがどうしたものか?
ディスポーザーがない小型マンション。リセールにどの程度影響するか?直張りマンションだがリセールの影響はどのくらいか?
間取りを少し変更したい箇所があるが、引き渡し後にご自身でリフォームしてくれと断られた。どうしたものか?布団の収納ができない、そこが問題。
実に多種多様。細かな部分まで含めると、現実はかなり問題があることが分かります。
●譲ってはならないのが立地条件
本物件は駅から徒歩5分と近いことが長所ですが、ややインパクト不足です。公園に面するわけでも、高台にあるわけでもなく、駅前というほど近いわけでもないからです。
このようにお答えするケースは数多くあります。この主のご質問に、筆者は、以下のような回答をしてきました。
「これ以上を望むのは欲張り過ぎとも言えるもので、線路沿いでないことからも立地としては悪くないと思います」
「この地域は駅5分以内が普通です。駅1分の物件も珍しくありません。したがって、駅5分だから価値があると思い込むのは危険です。駅5分以内のマンション同士の比較をすることになるので、それ以外の要素が大事なのです。前が公園とかリバービューとか。それも同じなら、あとは建物比較です。建物が大きくて立派。風格があるならいいでしょう。。規模は普通でも外観デザインやエントランス周りの見た目が豪華とか、上質であるとか、洗練されているといった印象が格別ならいいのですがねえ」
いずれにしても、マンション選びで妥協しない方がいいには立地条件です。特に駅からの距離が大事です。徒歩5分以内が条件と思いましょう。
●どんな駅か。それが問題
駅から近いことはリセールバリューに大きな影響を与えますが、どんな駅でもいいわけではないのです。ある物件のご相談で筆者はこう答えました。
「その駅はお隣の〇〇駅ほど人気がないので、地価も安いのです。しかし、建築費は同じなので、新築マンションの価格には大きな差が生まれません。つまり、人気の差ほどの価格さにならないのです。それが証拠に、高い方のお隣が良く売れて、安い方のこちらの売れ行きはぱっとしません。ご検討マンションも竣工後1年経て売れ残っているのが何よりの証です」と。さらにこう続けました。
「中古市場を見ると分かります。こちらの駅の徒歩3分に築9年の大手ブランドマンションがありますが、10階の部屋が最近200万円/坪で売れました。一方、お隣の駅では、半年前に築10年の〇〇マンションの成約価格が240万円/坪でした。つまり、20%くらいの開きがあるのです(中略)。しかし、新築価格の方は、20%もの差がありません」
この駅を具体的に書くことは憚りますが、人気がないのは「各駅停車であること」、「駅力が乏しいこと」です。ご相談者はそのことをよく知っています。隣の駅がいいのは分かっているが、高くて買えないので、駅を妥協した。そう語りました。それでも駅5分以内なら心配はないと考えたようです。
最後に筆者は進言しました。
「予算を曲げて買うことはできないのですから、妥協のうえの選択ということになりますね。しかし、リセールバリューの面で不利になるのは間違いありません。隣の駅のマンションを100で買うとリセールで120になる。こちらを90で買うと100にしかならないという差になるわけです。タイミング次第では、隣のマンションは100が90になり、こちらは90が70になったりもします。そこで、重要なことはここからです。もし70にしかならないのであれば、買うときに70以下であればいいのですから、値引き交渉を頑張りましょう。竣工後だいぶ時間が経っていますから、きっと値引きに応じるはずです。20%引きは不可能かもしれませんが、10%引きなら射程距離です」
●前面が第一種低層住居専用地域の永久眺望は価値がある?
隅田川や井の頭公園にへばりつきのロケーション、これらを「永久眺望」と呼ぶようです。これは誠に貴重で価値あるマンションと言ってよいでしょう。前面が第一種低層住居専用地域である場合も遠くまで見通せることに加えて高い建物が建つ心配がないので「永久眺望」と喜ぶ人がいます。売主もそこを強調しています。
井の頭公園隣接のマンションは確か3件しかなく、老朽化が進んでいるものの、立地が良いので手放す人も少なく、たまに売り出されると高値でたちまち売れてしまうと聞きます。
一方、隅田川に面するマンションは数が多く、それだけで価値が高いとは言えないのです。永久眺望は確かにリセールバリューに影響しますが、その他の弱点が足を引っ張り、結局はあまり高値が付かない物件も多いからです。一戸建ての住宅街を前にする中高層マンションでも同じです。
●タワーが絶対ではない
今のところ、タワーマンションのリセールバリューは高く、中低層よりは高く売れています。タワーマンションを買えば間違いない。そう思う人も多いようです。
しかし、タワーマンションには短所もあるのです。地震の揺れ、管理費・修繕積立金の高さなどが一般的です。また、隣地に高い建物があるために、その壁を超える高さにして商品価値を上げようとしたペンシルビルのようなタワーマンションもあります。戸数は高々100戸と小さく、屋上にビューテラスと、1階にラウンジが設けられているだけの付加価値に乏しいタワーマンションのリセールバリューには疑問が残ります。
●小型低層マンションはここが肝
マンション用地の仕入れは簡単でなく、業者の希望する適地は容易に見つからないのが現実です。これは各社共通の課題になっています。しかし、土地がなければ開発のノウハウも設計のアイディアも宝の持ち腐れです。
また、マンションは土地を取得してから建築許可を得るまでに長い時間がかかります。建築許可を得る過程、若しくはそのあとでも近隣住民との調整が必要になります。つまり建設反対の運動が起こるからです。筆者の経験でも、様々な反対運動に困らせられたものです。
着工に漕ぎ着けるのは、小さな物件でも半年以上、普通は1年ほどの時間がかかるのです。売り上げが立つのは竣工して買い手に引き渡しをしたときなので、工期3年のタワーマンションは用地を取得してから5年も6年も先にならないと決算数字に貢献できないということになります。
低層マンションは工期が短く、着工してから1年以内には竣工して引き渡しが可能になりますから、用地取得から2年ほどで売り上げに立つ可能性があります。14階建ての高層マンションなら、工期は2年以内なので、開発期間を入れて3年ほどとなります。
これだけの時間がかかるので、デベロッパーは3年先の商品準備、すなわち用地取得に日夜奮闘します。用地情報は沢山もたらされますが、メガネにかなうものが少なく、手を上げても競争が激しいので中々ものにできません。
仕方なく、小さな土地でも積極的に検討することになります。ひとつの土地から10億円の売り上げしか上がらないより、50億円、100億円と大きな売り上げになる規模の大きい土地がいいのですが、大きな土地ほど争奪戦は激しく現実のものになりません。
小さな土地でも、商業地なら容積率の高さから沢山の戸数が作ることができます。住宅地では容積率と高さの制限から大きなマンションは建てられません。
このような事情から誕生した小型マンションは、大型マンションと違って存在感や共用部分の貧弱さなどで低評価になる物件が多いものです。特に商業地の小型マンションは細身のプロポーションになるので、外形的にもお勧めできないものが多いのですが、住宅地の低層マンションは評価できるものも少なくありません。
住宅地には広い土地が年々減ってなくなっており、滅多に売地が出て来ません。それだけに得難い商品になることもあります。どのような物なら価値があるのでしょうか?
1)駅から近いこと。これは住宅地でも同じです。徒歩5分以内がベストです。妥協しても7分か8分です。
2)規模は3階建てか4階建て、戸数は30~50戸と小さいですが、それでも周囲の住宅が一戸建てばかりという場合は、結構な存在感を発揮するでしょうし、デザインに工夫をすることでマンション全体がひとつの豪壮なお屋敷になります。何戸以下はダメという基準があるわけではないので、周囲の街並みを見て判断するしかありません。
3)下手すると賃貸マンションの延長のような形状になりかねないのが低層マンションの難しいところで、デザイン力が決め手になると考えます。
そのほか、小型マンションには共用施設が何もないといくらいに採用が難しいので、建物価値を上げるには、外壁からエントランスの床・壁・天井の仕上げ材、エレベーターのグレード、室内のスペックまで、ありとあらゆる点で差別化が必要です。
●差別化という言葉が大事
結局のところ、リセールに際して内見者をいかに感動させるか(感動してくれるか)という視点で購入しようとしているマンションを見ることなのです。感動要因が数多く、つまり「すごい・素敵」を連発させられるかがカギになるというわけです。
たくさんの感動を与えることができるマンションなら、売り出した価格から殆ど値下げすることなく(希望価格で)、しかも短時間で売却が実現できるのです。
大型マンションにせよ、小型マンションにせよ、また超高層マンション、低層マンション、いずれにしても周辺の物件に比べていかに差別化を図られているかが重要な視点になります。
タワーマンション林立に中に何の変哲もないタワーでは勝てないと思うべきです。それでも勝てるのは駅直結のように立地条件で勝る物件だけです。
マンションデベロッパーは、新築分譲のとき競合物件に負けまいとして差別化策を検討するのが普通です。しかし、コストの壁か設計者の技量か、開発・企画者のアイディアか、何かが足りずに「物足りない」と感じる物件が多いのも確かです。
希少価値という表現でもよいのかもしれません。「隅田川テラス沿い」、「吉祥寺公園の最前列」、「皇居が一望」、「眼下にレインボーブリッジ」といった景観、「傘が要らない駅直結の立地」、「ターミナル駅へ徒歩2分」などといった交通利便性など立地条件の希少性がどれだけ高い物件かというチェックが先ずは大事ですが、次には以下のような視点も必要です。
似たり寄ったりの外観が並ぶ中に、ひときわ光る個性的な外観デザインのマンション、14階以下のマンションが立ち並ぶエリアに50階建てのタワーマンション。前面道路から20メートルも距離がある位置にエントランスがあって居住者以外は近寄りがたい雰囲気のマンションなど、建物の形状や規模などで周囲のマンションに圧倒的な差異を創り出している物件なのかどうかをチェックすることです。
・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com)
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