400戸も売り出す物件と5戸しか売り出さない物件

新宿区で建設中の55階建てタワーマンション「富久クロス」は1230戸もある大規模物件ですが、2013年1月1日~2013年8月31日までに新規発売された新築分譲マンションの中で、1回次での販売戸数482戸は全国で最多なのだそうです。

本日現在、2次販売を終了し、662戸が登録ベースで完売したと、公式ホームページで誇らしげに伝えています。

これに対し、1回次の販売戸数が4戸とか5戸しかない物件があります。この例は多数あるので具体の物件名は控えますが、ちびちびと売り出すイメージです。

この差は、どのように理解すべきなのでしょうか?今日はこの話をしようと思います。

●マンション会社が恐れる売れ行きの悪さ

分譲マンションの売主や販売を任される販社は、プレセールスの段階での顧客反応に神経質になります。モデルルームへの来訪者数や見学後の感想、説明への反応などを厳しく観察するのです。
過去の経験則から、このくらいの来訪者があれば大丈夫そうであるとか、来訪者の何%が仮申し込み(要望書なるものを書くよう求めてきます)を入れてくれたから、この分だといつまでに何戸は売れそうだなどと予測をするのです。

売り手は販売不振状況を招くことを極端に恐れます。売れ残り感は、販売不振の悪循環を招くという学習を何度もして来たからです。

売れないマンションと分かると、買い手は何かあるのではないかとか、価格が高いのではないかなどと勘ぐる傾向があります。

さほど悪くない物件でも、客の入りが悪いと売れていないと感じるとともに、買い意欲が萎えてしまったりしますし、気持はあっても決断までの時間が長くなったりします。

反対に、たくさんの人々が次々と購入している姿を見れば、「こんなに沢山の人が支持しているのだから、きっと良い品なのだろう」と考える心理が働きます。

売主は、こうした両極の経験をしています。そこで、苦戦が予想される物件でも、何とか沢山の人が買いに来ている様子を演出しようとします。サクラを使うなどという時代遅れの演出はしませんが、様々な工夫をして「人気物件・優良物件」と思わせる工夫をしているのです。

●見学者の反応や商談内容から販売を予測

マンション販売は一般消費財と同じで、何らかの広告を行なって集客を図ります。新聞広告やチラシの折り込み広告、交通広告、SUUMOなど雑誌広告、インターネット広告、看板といった広告媒体が一般的なものです。

広告予算が少ない物件と多い物件で動員数に差ができるのは当然です。大型マンションは億円単位の広告費を投下し、短期間に大量の顧客動員を図ります。モデルルーム公開初日から3か月も経過していないのに1000家族、2000家族の来場者があったなどというメガマンションも少なくありません。

販売事務所とモデルルーム(マンションギャラリー)はごった返し、目が血走ったような見学者も多数現れます。営業担当者からの報告を集計すると、同一住戸に希望者が複数いたりもします。

選挙ではありませんが、票読みをしていくと、こうした状況は販売の成功を予測させることとなります。
反対の場合はどうでしょうか?

週末だというのに、見学者は一桁どまり、モデルルーム公開から1か月で累計50家族の来場者。これでは5戸も売れないだろうなどと、販売現場のムードは落ち込んでいます。先行きには悲観的にならざるを得ません。

仕方なく販売開始を延長し、2か月経過しました。来場総数は100組を超えました。しかし、仮申し込みを入れてくれた人は何と10人もいない。確実に買ってくれそうな人は5人、5戸だけであるといった惨憺たる販売状況を招く事例も少なくありません。

反応が悪すぎて、価格を見直す例もあります。

●売れそうな数だけ発売するのが常套手段

既述のように、売れゆきの悪い物件と見られるのを避けたい売り手は、何とか売れ行きがよさそうに見せようとします。少なくとも、売れゆきが分からないようにカモフラージュします。

商談席が一杯になるような同一時間帯の誘導も考えますし、発売戸数を減らすことで希少性の錯覚を起こさせようと企てます。また、抽選を匂わせることで購買意欲を煽り、決断を急がせる営業トークが使われます。

販売戸数は未定(流動的)としておいて、一定期間のセールス活動から確実に売れそうな部屋は5戸と票読みした場合、売り出し戸数は当該住戸の5戸のみとします。

そのようにして読み通り5戸が売れれば契約率は100%となり、以降の顧客には「おかげさまで第1期は完売しました」とアピールできます。

●10戸発売して5戸しか売れないより5戸売り出して5戸売れる方を選択

票読みをしながら売り出し戸数を何戸とするかを決めるとき、売り手が気にするのは売れ残りを出さないことです。
10戸売り出して5戸しか売れないより、5戸売り出して5戸完売となる方を選択する売り手が多いのです。

しかし、例えば50戸の物件を毎回5戸ずつ発売して10回繰り返せば一定期間内に完売できるかと言えば、さにあらずです。長くは続きません。

小出しにしながら完売を繰り返して行けたとしても、1回に5戸しか売れないような物件はやがて息切れしてしまうものです。

どのような広告をしたかにもよりますが、5戸を完売するのに長い時間がかかるようになりますし、5戸の予定がキャンセルによって3戸で終わることもあります。当選は堅いと読んでいた候補者が落選したりするのと同じで、当てがはずれることもしばしばです。

結局、1回に5戸や6戸のチビチビ作戦を採るような物件は、理由はともかくも市場で見限られる物件なのです。

駅から遠い、環境が悪い、価格が高い、売主が不安、品質が悪いetc. といった、何らかの売れない原因・理由があるからです。

疑問に感じた買い手が「どうして5戸しか売り出さないのか」と質問したら、「宣伝費が少ないのです。その分を価格抑制に充てているもので。宣伝していないのでお客様のご来場が少なく、その数に見合う戸数というわけです」とかなんとか誤魔化したりします。

このような作戦を採っている物件は、よく吟味する必要があります。400戸も売り出し、それでも1住戸に複数の申し込みが重なってしまい抽選で外れるかもしれないような人気物件を選択するか、確実に購入できる少戸数販売の物件を選択するか、購入者にはそれぞれの事情や動機があるだけに、どちらがいいかは即断できませんが、よく考えてみる必要があるようです。

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