先が見えない立地で大化けするマンション

ブログテーマ:業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

今は何もなく先も見えない街だが、長い目で見ればきっと発展するだろうと期待できる街・駅があります。

既存の鉄道の駅と駅の中間にできた新駅や、延伸して生まれた新駅、昔からあった駅ではあるものの駅前は古い大工場や住宅団地が占拠していて、まるで時が止まったままのような駅の前に、大型マンションが開発され売り出されることがあります。

駅前と言っても何もなく、通勤専用無人駅というほかないような(ではないのですが)寂しい駅です。商店街すらなく、店があるとしてもコンビニやラーメン店がぽつりとある程度といった、そんな街・駅のマンションについて書こうと思います。

最近話題を集め、今も何番目かの大型物件を販売中の駅前再開発と言えば「武蔵小杉」が真っ先に浮かんで来ますが、武蔵小杉駅の場合は、ある程度まで完成した街・駅と言ってよいでしょうし、このような駅とは対称的です。

●発展確実な街はすでに高い

「武蔵小杉」のようなケースは、首都圏各地に「〇〇地区整備計画」として多数見られます。

このような区域内に誕生するマンションは、どこも注目を集めます。

街並みが綺麗、環境が良い、便利といったキーワードで表されるエリアのマンションは価値があります。

開発の初期は、まだ殺伐感があり、スーパーなどの進出も未定であるとか、あくまで未来予想図の中で生活をイメージするしかありませんが、それでもごく近い未来が具体的な形で見えているだけに発展が約束されたような印象を受けます。

それゆえに、将来性は間違いないと確信して大勢の買い手が集まります。

当然、販売も順調に進みます。ときに高倍率の抽選となって短期完売に至ります。

しかし、このような物件の特徴は価格が高いことです。発展途上なのに、すでに再開発が終了した街の値段がつけられていると言わざるを得ません。
(この部分は10月5日の記事を併せてご高覧ください)

そこに気付かないのか、まだまだ発展すると読んでいるのか、買い手の心の内は不明ですが、急騰した値段(相場から乖離した高い値段)なのに、先行きに更なる期待をかける心理に違和感を覚えます。

●まだまだ先という時点では格安に分譲される

今年発売になったある大型マンションですが、そのスペックの割に格安と感じた物件があります。物件名は伏せますが、簡単に言えば先の見通しが見えないエリア・駅の物件だから安いのです。

当該地区にいつ頃どのような施設ができるかは、何も決まっていません。未来予想図はないのです。

現状では既成市街地の利便施設を活用するほかないのですが、その駅は最寄りではなく、徒歩10分以上を要するのです。徒歩3分の最寄り駅には現在何もなく、来春コンビニが1軒できるらしいということだけです。

現状では何も決まっていないというわけです。売主やその関連企業がスーパーや大型SCなどの商業施設の誘致に動いているわけでもないようです。徒歩10分以上を要する隣駅に既に出店しているからでしょう。

結局、人口増加に伴い、自然発生的に商業店舗が出店してくるのを待つほかないのかもしれないと悲観的になってしまうほどです。

そんなことから購入を見送った人も多数あったと聞きました。しかし、購入した人も同じくらい多数あったのです。

そこには、長い目で見ると発展しそうな雰囲気があります。誰もその保証をしてくれませんが、1000戸を超える大型マンションが開発されることによって、駅付近の人口が一気に3000人も増えることだけは確かなのですから。

現状の不便さからか、売主は免震構造とし、耐震性や防災対応、省エネ性、耐久性などに優れた高機能の、かつ中級以上のグレードと品質を持つ建物を企画し、格安で売り出したのです。
それが奏功したのでしょう。短期間に500戸以上も売れました。

この物件に関して、とてもリスクの高い買い物だったかもしれないという見方をする人がありました。しかし、大局的見地から潮流を観察すると、さほどリスクが高いと思えないとする意見もありました。

少なくとも私も後者の意見に与(くみ)します。少し不便ではあるが、陸の孤島というわけでもないし、日常生活は工夫しながら多分快適に過ごせるはずです。街がどのように変貌するかは気長に観察していけばいいのですから。

購入を申し込んだ人たちは、どのような思いで決断に踏み切ったのでしょうか?
リスクを取って将来に賭けたのでしょうか? 最寄り駅は通勤のためだけと割り切り、隣駅の利便性を享受できるからと考えたのでしょうか?

購入者のアンケート調査のようなものでもあれば明確になるのですが、今のところは推測するほかありません。

ともあれ、先行き不透明な街づくりの中、長期的には間違いなく発展する街であることは衆目の一致するところです。

ただ、それがいつ頃どうなるかグランドデザインもない現状では、売主もセールストークすら持ち得ないのです。ゆえに、価格も安くせざるを得なかったのでしょう。

このような一見リスキーな物件の方が、実は大きな楽しみを持てるものです。

過去のマンション開発事例を振り返ると、現状は殺伐とした場所、荒涼たる砂漠のような場所、工場と倉庫しかないような環境に優れるとは言いがたく、かつ生活便も良いとは言えない場所の大型マンションが安値であったことから飛ぶように売れたというケースがいくつも思い出されます。

どれも、安いだけではなく、それなりの建物プランであったと記憶しています。大型マンションゆえに、いずれも付加価値がいくつも用意された物件でした。

こうした物件が10年以上20年の時を経て、今は驚くような街の変貌とともに、中古マンションとしての価格も驚きのレベルになって所有者を喜ばせています。

このようなエリアの格安マンションを購入した人たちの中から、買い替え先の物件についてご相談を受けることがたまにありますが、一様に「こんなに変わるとは想像もできませんでした。大化けしました」と感想を寄せてくれます。

「安いけど、環境がどうもねえ」そんな印象があるマンションに出くわしたときは、ぜひ未来を想像してみてください。「長い目で見ればきっと変わるだろう。いつかは分からないけれど」そんなふうに思える物件なら先行きは楽しみです。

ただし、「駅から徒歩5~6分。どんなに遠くても10分以内」が前提となることをお断りしておきます。