建築費高騰が招く危険なマンション施工

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

建築費の上昇がマンション業界で大きな問題になっています。無論、マンション価格に影響を与えるからです。

建築費は3年前に比べて25~30%も上昇しているそうです。

建築費上昇の要因は、建設労働者や技術者など人件費の高騰にあるとされます。背景には、東北地方の復興需要があるのだそうです。

さて、建築費の上昇は足元ではっきりと見えていますが、今後を展望したとき、もう一段、二段と上昇する懸念もあります。

そこで、既に着工したマンションに及ぼす影響について書くことにします。マンション建築は1年、2年と長い時間を要します。その間に人件費が一段と上がったとき、どうなるのか、その観点で考えてみました。

●建築業界と建築費の構造

建設業界は、元請けから下請け、下請けから孫請けといったピラミッド構造になっています。
マンションの場合、杭工事から始まって基礎工事、鉄筋工事、型枠工事、コンクリート工事、配管工事、電気工事、電話工事、インターネット回線工事、テレビ受信設備工事、タイル工事、造園工事、機械駐車設置工事、室内設備工事、内装工事といった各種工事は、段階的に元請ゼネコンから、それぞれの専門業者へと回っていきます。

下請け業者は、さらに一部の工事を下請けに、元請から見れば孫請け業者に発注されます。

元請ゼネコンは、言わずと知れた鹿島や清水、大林、竹中、大成といったスーパーゼネコンから準大手の前田や西松、さらには中堅ゼネコンまで多数ありますが、下請けや孫請けクラスになると、一般の人は聞いたことない中小企業が全国に何万社もあります。
従業員50人未満の零細な企業、個人業まで入れると、建設業は50万社もあるのです。

建築費は、生コンや鉄筋などの材料費も無論ありますが、45%もの比重を占めているのが人件費と言われます。人件費は正社員としてのものだけでなく、「日当いくら」で期間雇用する労務費も含みます。

受注量が増えて職人さんが足りないとなったとき、この日当はうなぎ上りに挙がることもあります。バブル期に、確か東京ドーム建設で日当が4万円になったこともあったと記憶しています。

マンションに限らず、建築工事は配管工、鉄筋工、型枠大工といった専門職を使って行うものであり、「受注が増えるのは有り難いものの、人手の確保が大変なのだ」と、ある工務店の社長は言いました。

●1年先のコストや費用を予約できない

マンションデベロッパーは、建築費の上昇という局面にあって、分譲価格の抑制に懸命に努めているようです。

それでも予算を上げざるを得ないのが昨今の実情です。それはともかく、ゼネコンと契約を締結してしまえば、途中で工事費が上がる心配はありません。

工事期間中に材料が上がろうと人件費が上昇しようと、建築費が工事期間中に契約額を変更するなどということはないのです。

問題は、デベロッパーと契約をした元請ゼネコンにあります。先に見たように、各段階でそれぞれの専門業者に下請けさせていきますが、マンション工事は長いもので2年、10階建て程度でも1年の期間を要しますから、例えば基礎工事は直ちに始まりますが、室内のフローリングを張る工事などは1年先になります。

各段階・各部門、すべての工事契約を1年も前に結んでしまうわけではないので、いざ契約をというとき、下請け業者は見積り額から増額して契約したいのがホンネです。

しかし、力関係から当初の見積り額で契約せざるを得ません。下請け業者は、仕方なく利益確保のために、孫請け企業にしわ寄せすることにします。

零細な下請け・孫請け企業ほど1年先の分まで材料を大量にキープしておいたり、一定の労務費で人手を確保しておいたりするといった余裕がありません。

このため、工事期間中に材料費が上がったり、労務費が上がったりすれば工事採算は当然悪化します。

材料を粗悪なものに変えるといった策は無理ですが、高い人件費を回避するには、少ない人手で複数の現場を掛け持ちさせるような方法を採ることが可能です。

例えば、7日かかる工事を6日で仕上げれば、別の工事現場へ1日だけでも人を回せます。重機でも同じです。回転率を上げれば新たに購入またはリースしなくてもよい理屈になるわけです。

●手抜き工事や雑な工事が増える危険

採算の悪化を実際どのようにして食い止めようとしているかは正確に把握できませんが、下請け業者なりに知恵を働かせることになります。

それが雑な工事を生まなければいいのですが、施工現場の隅々まで付きっ切りで見張るような真似は現実問題として不可能なことです。

しかし、作業目標が高いところにあればあるほど、また直截的な表現を使えば雇い主からの圧力が強ければ強いほど、手抜き工事・雑な工事になる確率は高いと言えます。

昔のことですが、完成内覧会に行って驚いたことがあります。
平らなはずの外壁のタイル面が波を打っていたのです。また、別の現場では、観音開きの扉の左右で高さが微妙に違っていたり、クロスの張り方も天井の一部に皺があったりと、プロの仕事とは思えない雑なものでした。

こうした現場を見せられると、確かめようのない床や壁の内側まで疑いたくなってきます。

躯体工事の部分は、広く見渡せる状態で行われるので、手抜きや危険な工事が行われる確率は低いと考えられるものの、怖い実話は過去にたくさんあっただけに、今後は施工の信頼性を疑ってみる必要がありそうです。

●工期を聞いてみよう

人手不足は、工事期間の遅延につながるかもしれません。契約はしたものの、職人の確保ができず、例えば3人で1週間かけて仕上げる工事が、2人しか確保できなかったために10日を要してしまったというような事態が発生する可能性があるのです。

工事スケジュールが遅れると、契約を守れないことになり、元請ゼネコンへ、引いては施主であるマンションデベロッパーへ、最終的にはマンション購入者へと波及することになり、影響は極めて大きいものがあります。

末端の業者は、工期を守ろうとして無理な作業、雑な作業を自ら強いて行きます。結果的には、上述の利益確保策と変わらない粗雑な建物ができてしまうのです。

このような事態を恐れる真面目な業者は、契約前に工期の延長を条件に出しているようです。その結果、マンション全体の工期は過去の実績から3~6か月も余裕を見るケースが増えていると聞きます。

こうした実情から考えると、買い手としては「工期を聞く」ことで危険を察知することができそうです。

普通の時期なら、マンションの工期は「階数+2~3か月」が常識です。例えば10階建てなら12~13か月で竣工となります。(超高層は当てはまりません)

それより長くなっていれば安心して良し、逆は少し心配と言えるかもしれません。

完成予定日はパンフレットや広告で知ることができますが、着工日は記載がありません。そこで、「着工日はいつですか?」をぜひ聞いてみましょう。

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