1期788戸連続即日完売:どこか変!?富久クロス

1期788戸連続即日完売:どこか変!?富久クロス

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

3か月で総計788戸。連続申込み登録即日完売数日本一。おかげさまで、今回販売予定の第2期をもって最終期となります。・・・これは今話題のマンション「富久クロス(新宿区・最寄り駅は、
地下鉄丸ノ内線・新宿御苑)」の広告(2月11日発行のSUUMO)に登場したコピーです。

また、2月14日配布のチラシには「予想を上回る早さで販売が進み、いよいよ今回、最終期を迎えます。最終・第2期204戸」とあります。

さらに、注釈として「1次2次3次の累計戸数が788戸。2013年中の物件の中で最高。不動産経済研究所調べ」とありました。

「あれ?確か何回かに分けて販売したはずなのに1回だけだったかなあ?」と「1期」の文字を見た瞬間はそう思い、同時に、「1回の販売で連続とは一体これはどういうことだ?」と、またまた疑問が湧きました。

さらに読み進むと「1次・2次・3次」とあって、「やっぱり3回に分けて売ったんだ」と得心しましたが、いつものマンション業界の意味不明な広告・販売手法に惑わされた瞬間でした。

何戸売り出して何戸残っているかが分からない

ともあれ、この広告は何とも誇らしげです。もう788戸も売れたよ。しかも3回とも即日完売だったよ。次の204戸で最後だよ。早くしないとなくなってしまうよ――そう語っています。

富久クロスは、販売済み788戸と最後の売り出しが204戸で合計992戸の分譲総戸数(他に非分譲住戸がある)と分かりやすい物件ですが、他の物件はそうではないのです。富久クロスが分かりやすいのは、よく売れているからで数を誇示したいからです。

人気物件でも、普通は後半で販売スピードが鈍り、期を重ねて行きます。そのせいで、残戸数が分かりにくいのです。例えば「第3期 新発売」となっていても、随分前から売っている印象が強いし、きっとたくさん売れ残っているのだろうと推測することはできても、あと何戸あるかが見えない。しかも、その期で何戸売り出すかも広告には記載されず「戸数未定」とあることが多いのです。

しばらくして再び当該物件に注目してみると「第3期3次」などと変わっています。一体、何回に分割して販売しているのだろうと、疑念が湧いて来るのです。

買い手は売れ行きに注目する

自分が買ったマンションが入居してからも未販売戸数を多数かかえていたら、いかにも不人気マンションを買ってしまったみたいで、いい気持にはなれないものです。このような場合、入居者は早く完売して欲しいと祈るそうです。

その一方で、値引き販売はして欲しくはないとも考えるようです。

話を戻しますが、業界は売れ行きを巧妙に隠すのが普通です。営業マンに聞いても本当のことは言いません。どちらかと言えば、実態とは反対の状況をアピールするものです。

「今度の週末で決まってしまうかもしれない」、「おかげさまで多数のご来場を頂いています」、(壁に大きく張り出した価格表を指さして)「こんなにお申込みや商談中が入っています」などと、実数より上積みして(膨らませて)人気があるかのごとく訴求するのです。

週末のモデルルームに自分たちしか見学者がいないようなら、ウソと分かるでしょうが、多少なりとも複数の見学者が見えていれば、説明を真に受けてしまう人も少なくありません。

人間心理として、「よく売れていると聞かされると、その商品は良い商品・人気ある商品と錯覚する」ものです。そして、良い商品だから買おうとなるのです。

反対のケースはこうです。「良い商品と思って見に来たが、買いに来ている人は他にいない。良くない商品なのか」と意欲は後退して行きます。

売り手が恐れるのは、言わずもがな後者の方です。その売り手心理が、実態よりよく売れていると言わしめるのです。

●売れ行きの良い物件は良い物件か?

富久クロスは、売り手が誇示するように本当によく売れているのでしょう。よく売れているということは、多くの買い手に支持されたということと同義です。

つまり、良い物件であることは間違いないということです。

しかし、支持しない人も、実は多数存在します。見学者が何千組に達したかは知りませんが、少なくとも5000家族は超えているはずです。

その中には、同業者、関連業界、マスコミなども含まれますが、大半は購入を考えている人たちです。意中の物件が他にあるが、比較のために見に行ったという人もあるでしょう。しかし、ほとんどが購入を検討したい人たちです。

ただし、価格が未定という段階での来場者も含むので、購入可能な予算を持つ人は半分から多くて8割くらいでしょう。

購入可能な見学者が少なくとも2500組以上はあったはずですが、そのうち契約に至った人は、30%程度(業界標準では20%以下)のはずです。つまり、70%くらいの見学者は「気に入らない」として検討を止めたのです。

理由はさまざまでしょう。しかし、止めた人は自分にとって良い物件と思わなかったことになります。

人の好みはいろいろです。結局、「対数で、より多くの買い手」が集まるものが良い物件なのでしょう。

●売れ行きの悪い物件は悪い物件?

富久クロスのことではありませんが、筆者の判定で非常に割高とした物件を購入したご相談者がいました。

その人は、こう言いました。「高いのは百も承知です。しかし、自分たちにとって理想のマンションなのです。予算は増やせないので、向きと広さを我慢することにしましたが、買ってよかった。今は入居が待ち遠しいです」と。

このようなメールを寄せてくれましたが、その物件は高いために竣工後2年を経てまだ売れ残っています。筆者の見る限り、とても良い物件ですが、いかんせん高すぎるのです。

予算を増やせる人、もしくは予算があってないような富裕層にとっては、買い気をそそられ購入へ踏み切る例も多かったことでしょう。しかし、そのような買い手は、その物件の位置するエリアには集まって来ないのです。ゆえに、今も残っているのです。

翻って、都心の一等地に建つ物件は、8割の不支持者がいても、2割の支持者ボリュームが大きいので、短期間に完売に至るのです。

ここでは、「良い物件は高くても売れるが、その数にはエリアによって限りがあること」言い換えれば、「価格の高さが主な原因で売れなかったとするなら、それは高額商品市場が狭い証拠であるということ」、このことをご理解いただけたら幸いです。

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