大規模修繕でマンションは何年若返るの?

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

マンションは何年住めますかというお尋ねをよく頂きます。
コンクリートの箱は、100年持つとか60年が限度だとか、あるいは税法上の耐久年数を持ち出して来て47年だなどという的外れな答えもネット上には飛び交っています。

一体どれが正しいのでしょうか? 実はズバリ何年と答えることはできません。コンクリートの質、かぶり厚の差、修繕の仕方、地震被害の頻度などで差ができるのです。

最初から概ね100年は持つマンションなどが建てられている昨今ですが、これとて何もしないで放置しても100年持つということではないのです。

木造住宅に比べれば長持ちするマンションではありますが、いつかは建て替えなければならない時が来るのは間違いありません。しかし、建て替え費用をどうするのかを筆頭に、問題はたくさんあって建て替えが決まるまでには長い時間がかかってしまうものです。殆んど不可能に近いケースさえもあります。

そこで、少しでも長生きさせようという動きが起こります。小修繕と大規模修繕を適切に行うことで延命を図ろうという動きです。

マンションはコンクリートの「構造体(躯体)」と給排水管、電気・ガスなどの「設備」で構成されています。躯体の寿命は比較的長いですが、設備ははるかに短いのです。

設備の寿命は15年から、長いもので30年程度とされます。給排水管を人間の血管や内臓に例えると、コレステロールなど不要なものがこびりついてしまったり、がん細胞が道を塞いだりするので、除去手術や移植(交換)することが必要になってしまうのです。

水が出ない、出ても赤水である、排水が不調である、エレベーターがよく故障する、ガス漏れが起きる、駐車場の機械が稼働しなくなるなどといった状態は未然に防がなければ危険極まりない家ということになります。

話を戻して、躯体も雨漏りが起こらないように屋上の防水工事は定期的に行いますし、外壁の塗装、タイル貼りであっても剥離があれば補修をしなければなりません。放置すれば雨水が浸透して鉄筋を錆びさせ、コンクリートがボロボロになってしまうのです。

非常階段が鉄骨であれば、錆びを取って塗装し直すことが必要です。共用廊下が外廊下式なら、バルコニーとともに床の定期的な防水工事を必要とします。

こうした工事を適切に行うことで寿命が延び、長く快適に住んで行けるわけですが、完璧に実施したとしたら、寿命は永久に伸びて行くのでしょうか?

寿命30年か40年と言われるエレベーター設備一式を30年目にそっくり新品と交換したら、寿命は30年延びるでしょう。排水管が40年で排水不良を理由に交換したら、40年の延命ということになりますね。同様に、ありとあらゆる設備を新品と交換し続ければ、いつも新築と同じ状態となる理屈です。

大規模修繕は共用部分が対象ですが、築30年も経つと専有部分の漏水なども出て来ますから、
専有部分の配管(横引き管)も交換しなければ完璧とは言えません。

リフォーム工事のついでに専有部分の配管を個人負担でリニューアルすることは可能です。
しかし、躯体は交換ができません。表面は化粧をすれば新品と同じに見えることでしょう。しかし、築40年経たマンションが化粧直しだけで新築と変わりませんと言えるほど完璧に若返ることは不可能なはずです。

手入れを怠らずにして来たと自信を持っているマンションであっても、完璧はあり得ないことです。どこかに見落としがあって、小さな傷が致命的な傷に発展しないとも限りません。コンクリートの壁の中までは見えないのです。地震に何度も見舞われれば、隠れたどこかに小さな傷を負っているかもしれません。

原因箇所が特定できない漏水や異音などに悩まされるマンションなども出て来ます。

いずれにせよ、費用の問題もあって、こことここは大手術をするが、他は応急措置だけ、表面処理だけといった方法を取るのが現実です。

結局、いつかは手の施しようのない状態に陥ります。場当たり的な修繕、応急措置的な修繕を頻繁に繰り返すようになるのです。化粧しても、もはや年齢を隠しようのない状態に至ります。費用も続かなくなるケースも増えて来ることでしょう。

今日のテーマは「大規模修繕したら何歳くらい若返るか」でした。最初の大規模修繕工事は12~15年目に行います。対象は、防水工事や外壁塗装、給排水・電気設備工事となっています。

これらが適切に行われれば、築12~15年のマンションは新築同様になるでしょうか?答えはノーであると見当が付くことと思います。

長く使っていると、機能は衰えなくても美観的な衰えの目立つ部分もあるわけです。つまり新品と交換しなくて支障はないとされる部分は残っているはずです。それらが、一目で12~15年を経過したマンションだと感じさせます。中古マンションの見学に行くと、それが良く分かります。ある部分は年齢を感じさせないが、別の部分を見ると年相応に見えるのです。

予算に余裕があれば、ここも化粧しようとか、交換しようということになるかもしれませんが、大抵は「まだいい」と見送られます。その結果、完全リニューアルにはならないのです。40年ほど経た古いマンションを訪ねたとき、各住戸の玄関ドアが新品と交換されていることに出会ったことがありますが、集合郵便受けは15年前に交換したのだとかで、一部ですが壊れかかっていました。

築15年のマンションが大規模修繕を終えたばかりというとき、その内容によっては全体としては10歳くらい若返るということはあるかもしれません。しかし、残念ながら裏付けるデータはないのです。

新築と大差がない価格で取引された築15年マンションがあったとしても、髙い価格の売買が成立したのは、大規模修繕をしたかしなかったかの差であるとは言えないのです。多くは、立地条件や建物が元から持っていたグレード感のようなものによって価格が決まってしまうからです。

購入者は、築何年かという数値で品質の高さを量ります。その一方で、見た目の美しさ(新しさ)も加えます。さらには、類似物件との差によって価格の妥当性を量ろうともします。
新しい5000万円のマンション、こちらは築年数で20年も古いのに4000万円、1000万円しか変わらないなどと不満顔を見せたりします。

価格を決めるのは、駅からの距離や環境、建物全体のグレード感や存在感、管理状態、室内の設備と綺麗度、眺望、日当たり、天井高など多数の要素が絡み合っての結果なので、大規模修繕前の取引事例と、同マンションの修繕後の取引事例を比較するという方法でしか「大規模修繕効果」を明快に説明することはできません。

残念ながら、そのデータを入手することは叶いませんでした。たまたま遭遇した事例は僅かに一例だけあるのですが、ビフォー・アフターの間が1年近く、その間に市場変化もあったようで、確証を持てるデータとなり得ません。 

また、近所の築14年マンションが大規模修繕を最近完了しましたが、工事中をずっと観察していたので、どこをどう修繕したかは知っているものの、完工した姿は見違えるように変わったふうには見えないのです。これでは、中古取引の価格を押し上げる効果は殆んどないだろうと思わざるを得ないのでした。

一方、共用エントランスのタイル張りの床をそっくり天然石の石張りに変え、壁の素材を天然石と木質系の素材のコンビネーションなどで上質感を打ち出したり、天井から下がる照明を高級なシャンデリアに変更したりすれば、バリューアップは間違いないでしょう。

ただ、そこまでお金をかけてリニューアルする例は極めて少なく、実施することがあるとしても、築30年、40年を経たような古いマンションに限られるはずです。

引っ越しのたびに傷がついたエレベーターなどは、新品と交換するまで、30年以上使い続けます。籠の中の表面材と外枠だけ化粧をし直すとしたらできるのでしょうが、実行した例はあるでしょうか?

見えないところで劣化防止の修繕工事を実施しても、目立つ場所の見映えが古いままでは効果は高くないのが実態です。ところが、そこから更に10年、20年と経過した後に行う大規模修繕工事の効果は確実に現われます。

旧・耐震の築40年マンションで耐震補強工事を施し、壁や床の亀裂を完璧に埋めて、かつ化粧もやり替えた「本格的リノベーション」物件なら、室内のリノベーションとともに、施工完了後に売り出せば築20年マンションと変わらない価格で売買が成立します。そのような事例は散見されます。つまり、20歳も若返ることになります。

結局、今日のテーマに明快な答えは出せずじまいとなりましたが、価格押し上げ効果は、やはり「〇〇年も経っているとは信じられない」という感動を買い手に与えられるような表面的な美しさがカギを握ることになりそうです。

忍び寄る病魔から救うための地味な修繕工事ももちろん重要であり、かつ優先することですが、それだけでは価格の底上げにはつながらないのです。マンションを10年以上も若返らせるには、躯体構造部分の修繕と美貌を取り戻すための若見え化粧の双方が必須なのです。

最近、築年数で30年以上の中古マンションを検討なさる人が増えています。購入したマンションに何年住めるのかと、資産価値はどうなってしまうのか、このような不安を持つのは当然ですが、今日述べたことを念頭に、管理組合の討議に参加する機会があれば、その主張をなさると良いでしょう。購入以前には、修繕積立金が長く潤沢に維持できる計画になっているかどうかのチェックも必要です。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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