最終期と言いながら、その先もある奇妙なマンション販売
- 2014.08.30
- マンション購入アドバイス
ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
新築マンションの販売方式には、「一括分譲」と「期分け分譲」があります。
一括分譲とは販売予定住戸の全部を一気に店先に並べる方式で、期分け分譲は販売総戸数を何回かに分割して「蔵出し」しながら販売する方式のことです。
期分け分譲、すなわち分割販売方式が採用されるのは大規模物件だけでなく、中規模物件でも採用されることが珍しくありません。
分割販売の実例を少し覗いてみましょう。
話題となっている「勝どきザ・タワー」は1420戸もありますが、第1期で500戸を一気に発売して完売。第2期は10月に予定しているようですが、今度は何戸発売するのか他人事ながら楽しみです。
好調な物件は、この例のように大量に発売し、かつ発売分を完売すると、次も1期ほどではないもの大量に発売し、次いで3期、4期と回を重ねて行きますが、全戸完売に至るまでの分割回数は多くても5回くらいが通例です。
対照的なのは「ブリリアシティ横濱磯子1230戸」で、9月中旬に発売予定となっているのは第6期1次です。経過を追跡しているわけではないので詳細は不明ですが、これまでに重ねた回数は6回ではありません。
何故なら、期ごとに小分割して販売しているからです。「ブリリアシティ横濱磯子」の次回売り出しは、6期1次とありますから、6期2次も予定しているのです。5期まではいったい何回に分割したのでしょうか?
さて、今日の注目点は「販売戸数」、その裏返しの「残戸数」が見えない「新築マンションの販売方式」です。
●最終期は最後ではない
「〇期〇次」という累計で何回目かが分からないような販売方式は、すっかり業界に定着した感があるのですが、このような方法を採用するようになったのは何故かを解明して行こうと思います。
その前に、最終期は本当に最後ではないことをお伝えしましょう。最終期ということは、完売時期が近づいていることは間違いありません。
しかし、お気づきの人もあると思いますが、「最終期1次」があり「最終期2次」があるのです。無論、「最終期・最終次」などというのもあります。
●「完売」の2文字を使いたい売り手
分割販売方式では、「第〇期 完売」と謳いたいのが売り手のホンネなのです。理由は、人気のある物件であることを端的に表す言葉、それが「完売」だからです。
裏返せば、「先着順受付中」では、売れ残り物件を順次販売中と言っているようなものだからです。
人間の心理は、売れたと聞くと、例えそれが不人気の品でも人気を博した品と思いたがるものです。「逃がした魚は大きい」という諺があるように、ないと分かるとよけいに欲しくなるという心理が働くのです。
売り手は、全部の戸数が売り終わるまで人気が続くようにしなければなりません。そのためには、「販売が好調に推移」していることを買い手に伝え、「良い部屋は早くしないとなくなる」と買い手に錯覚させるのがストレートで最も効果の高い方法です。
それを強く印象付けるには、抽象的な表現ではなく数字を用いるのが一番です。「販売が好調に推移」と言うより、「完売」すなわち「全部=100%」と言う方が良いのです。
この「100%」を繰り返すのが分割販売の狙いです。売り出しの都度「100%売れた」と言いたいのです。
●抽選に持ち込むのも狙いのうち
分割販売方式でカギを握るのは、売出し戸数です。買いたい人の数と同じ戸数を売り出しても、決して100%完売とはならないのです。
マンションは同じ商品が二つとないので、どうしても嫁一人に婿三人といった状況が生まれ、他方、貰い手はゼロというケースも生まれます。
結局、1住戸に1人以上を目標とし、0の住戸が出ないように様々な工夫をしながら100%を狙うことになるのですが、その状況は複数申込、すなわち抽選住戸を発生させることを意味します。
売出し住戸の大半に複数申込が入る状況になれば、売り手は完売を喜ぶと同時に、売り出し戸数が足りなかった、もう少し戸数を増やせばよかったなどという反省が生まれます。
反対に、無抽選住戸が80%か90%もできてしまうと、例え完売しても人気が高い印象は弱いので、そのようなときは売り出し戸数が多過ぎたという失敗を悔やむことになるのです。
抽選住戸も多数あって、買い手には人気物件という印象を残しつつ、売り出し住戸が100%成約になるのが理想の売り方になるわけです。
そうなると、「おかげさまで全戸完売いたしました。大勢のご来場ありがとうございました」などと広告のヘッドコピーが踊ります。このコピーは、モデルルーム見学には来たが申し込みを見送った人、まだ来場していない人たちに向けて「人気物件ですよ。是非ご検討ください」と言っているのと同じです。
●ダミーの申込みで人気ありと思わせる
売り出し戸数の決め方、正確に言えば売り出し住戸の数と位置の決め方は、「人気」を演出するための重要な営業スキルになっています。
売り出し前に展開する商談会で買い手の反応を窺い、買ってくれそうな客数と住戸の位置(階やタイプ)を特定して行きます。いわば、選挙の票読みを行うというわけです。
買ってくれそうもない住戸があれば、売り出し時期を延期して買い手を集めて埋める営業をしますが、売り出し時期を延期するのも限界があるので、最悪の場合は売り出し戸数を減らします。
また、売り出し住戸を決定して正式に売り出したところ、票読みが甘くて受付期間中に申込みが入らない住戸が出てしまったり、全戸に申し込みが入る見込みは立ったものの、無抽選住戸が多過ぎて「人気」の度合い、言い換えると熱狂感が足りないというときは、ダミー(架空)の申し込みを入れたりもします。
買い手は、流行品・人気商品に引かれます。売れていないと聞くと、良くない品と思う傾向があります。売れていると、これだけの人が買っている商品なら良い品なのだろうと思うのです。
この人間心理は未来永劫、きっと変わらないはずです。人の好みは多様であるとしても、周囲のみんなと同じなら安心という心理も働くのです。ゆえに、売り手は、そこにこだわるのです。
●売り手の策略はやがて買い手の知るところとなるが
分割販売方式は、途中の段階での累計の発売戸数がよく分かりません。発売戸数が分かりにくいことは、残戸数がよく分からないことと同義です。
これが買い手を惑わします。回を重ねれば当然ながら残戸数は少ないわけですが、比較的早い段階でも残戸数が少なく見せるようにしています。
以上に紹介した分割販売戦略、この売り手の策・意図を知らない人は大勢いるはずです。
しかし、やがては自分自身の観察や研究によって業者の策略を知るときが来ます。問題は、その時期です。言うまでもなく、早いに越したことはありませんね。
業者の策にはまって購入してしまうことが全てよくないこととは思いませんが、買い手の意に反する形で購入してしまったために後悔する人は少なくありません。
できるだけ売り手の誘導をかわしながら、冷静に情勢を分析し、適切な判断をして行かれることを筆者は心から望んでいます。
とりわけ、「良い物件だと思うのだが、何故か売れ行きがぱっとしない」、そんな疑問を感じたら、その理由と背景を分析することが大事です。 どこかに問題が隠れているものです。
そのためのお手伝いを筆者は今後も続けて行く所存です。第三者の目で物件価値を評価するところに意味があるはずです。
「ズバリ、買いの決断が正しいのかどうか」といったお尋ねも日常茶飯事ですが、そのほか住宅・マンションのことなら、どのような疑問・お悩み・迷いにも的確にお答えすることができると思います。お気軽にご質問・ご相談いただきたいと思います。
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