「15階建てマンションは危ない」のTV番組が・・・

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

9月8日、このブログのアクセス数が平常日の5倍に増加しました。調べてみると、「15階建てマンションは要注意」という記事に極端な集中が見られました。

は~ん、なるほどと思いました。というのも、当日、民放のテレビ番組の中で、「不動産業者のマル秘手口公開」に続き、筆者のブログと全く同じタイトルで、うんちくが語られていたからです。

偶然そのコーナーを筆者も視聴し、出演の建築士の説明を「少し分かりにくいなあ」と感じたのですが、それがアクセス急増につながったのでしょう。あるいは、もっと詳しく知りたいと思った視聴者が多かったのかもしれません。

というのも、番組は15階建てマンションは天井が低いとか、床が直貼りだとか「ネガティブ」な印象で語られたからです。

15階建てのマンションは、全でそうだということではないものの「床構造」が二重でなく、コンクリートの上にフローリング材を直貼りしたものが大多数であることを筆者は1年半前にブログ投稿しています。

詳細は過去記事(昨年3月20日投稿)をご高覧いただくとして、今日は、直貼りマンションの問題点を別の角度からお話ししようと思います。

●直貼りはコスト削減が狙い

マンション建築は、商業ビルなどに比べると、細か過ぎて面倒、人手も多くかかり、従ってあまり儲からないので、ゼネコンはできたら請けたくない仕事だと言われています。

筆者は、マンションが完成したときに行われる内覧会の立会いサービスで沢山の新築マンションを訪ねる機会を持っていますが、行くたびに、日本人の完全主義とでもいうべき微細な製造へのこだわり、完璧な品質の追及に感心させられます。

噛み砕いて言いましょう。内覧会では、小さな傷や汚れ、手垢なども見逃さないように勧めています。無論、筆者も先頭に立って検査しています。

洋服やバッグは、糸がほつれていたり、接着剤が付着していたりすれば、店頭に陳列されることもないでしょう。

マンションは唯一無二の商品であり、かつ工事中の段階で売買契約を結ぶという変則的な取引形態になっています。このため、完成するとともに、商品陳列し、かつ買い手の検査を経て代金授受と商品の引き渡しという取引の流れが定石となっています。

脱線が過ぎましたが、内覧会で思うことがもう一つ。それは、壁の内側やフローリングの床の下がどうなっているか、一瞥しただけでは誰も分からないということです。

断熱材は設計図通りに打ち込んであるだろうか? 排水管に遮音シートは巻き付けてあるだろうか? 隣の住戸、上下階の住戸との境壁や床、天井の遮音対策は大丈夫だろうか? そもそも設計図通りにコンクリートの厚みは確保されているのだろうか? 鉄筋の本数は足りているのだろうか?

このような疑問を持ったとしても、内覧会では全く解消しません。大きな音を試験的に出すような実験、大量に排水してみるといった試験をするわけではないからです。

結局、遮音性は住んでみないと分からないのです。売主と施工業者の技術力や品質管理などを信じるしかありません。

そんな中、コンクリートの床にフローリング材を直貼りした構造のマンションは、そもそも「裏側は大丈夫か」の心配をしなくてすみます。

この床は、歩くとふわふわした感じがします。床が沈むのです。柔らかな床と言えばよいでしょうか。落ち着かないと語る人もあります。

このような構造のマンションは、どのような経緯で誕生したのでしょうか?

実は、分譲マンションの黎明期は直貼りでした。ただし、床の表面材は「絨毯」だったのです。

その後、フローリング材が使われるように変化し、その過程で浮き床工法(二重床)が誕生したのです。

絨毯張りは子供の喘息を引き起こすという声が高くなって、今では超高級マンション(二重床の上に絨毯張り)以外は採用例が消滅しました。

浮き床工法は、当初「根太」と言われる角材をコンクリートの上に等間隔で並べ、その上にフローリングを敷くという工法でした。さらに、現在主流となっているゴム付きの鉄脚の上に下地になる板を乗せ、その上にフローリング材を張るという工法が完成しました。

そして今日、再び直床工法が現れたというわけです。ただし、絨毯ではなくクッション材付きフローリングに変わったのです。

直貼りにすると、コンクリートに音が直に伝わってしまうので、居住性が甚だよろしくないこととなります。そこで、フローリング材の下、つまりコンクリート床との間にクッション材を入れます。正確には、クッション材が接着されたフローリング材を張っていくのです。

二重にすれば手間がかかりコストもかさみますが、直貼りは工程を二つくらいは省いているわけですから、手間もコストも少なくてすみます。

うまい比喩ではないのですが、30工程もあるオーダーメードの背広と工程数が半分もない安物の既製服との差でしょうか?

15階建てマンションの多くは、床が単層構造 、すなわち直貼り構造であり、コスト削減のために選択された工法によって建てられた住まいなのです。

そのようなマンションは、コストカットが床の工法だけに留まりません。コスト削減のために他の部分でも設計の単純化や工法の省力化などを採用している可能性が懸念されるからです。

直床は、氷山の一角みたいなものと思うべきでしょう。詳細は別の機会にお話ししますが、コストカットは様々な方法があります。小さなことの積み重ねもありますが、品質低下に重大な影響を及ぼすものもあります。

直貼りかどうかだけではなく、コストカットをどこでどのように図ったかの見極めが、大事になりつつあるようです。

●建築費高騰が粗悪マンションを誕生させる?

このブログで何度となく書いてきたことですが、震災以降の建築費の上昇は、発注者たるマンション業者を窮地に陥れています。すなわち、予算に収まる金額で受注してくれるゼネコンがいないのです。

予算を超える額であれば応札して来るゼネコンもあるそうですが、それでは利益が取れない。利益を確保しようとすれば、分譲価格に転嫁するほかないが、それが市場で通用するかどうか大きな懸念が残るというわけで、マンション業者は苦境に立たされています。

どこまでなら通用するか、言い換えると需要がついてくるか、その見極めに躍起になっているとも言われます。そのために、工事発注に踏み切れないでいます。そのことが着工件数の減少(国土交通省が毎月公表)という形で表面化しています。

着工しなければ販売も始まりませんから、発売戸数の減少となっています。

マンション業者は、建築費の高騰を受け入れざるを得ない状況にあると腹をくくったはずです。

では、今後どのようにコスト上昇の課題を克服するのでしょうか?

道は大きく分けて三つです。

1. 分譲価格に転嫁し、強気で乗り切る(大手メーカーが採る策。邸宅地や駅前物件など一等地に限られる)

2. 専有面積をコンパクトにして総額を抑制する(70㎡の3LDKを60㎡の3LDKにするなど。食品メーカーが価格据え置きで分量を減らすという、実質値上げ作戦と類似の方法)

3. 建物の品質を落とす(設計をシンプルにする。設備の一部を有料オプションにする。上・中級品から普及品に変える。共用部分の面積を切り詰めて販売面積を増やすなど)

これから販売されるマンションは、このいずれかに該当することになります。マンション選びがますます難しい時期に入ったと言えるかもしれません。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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