家は玄関が命。間取りは玄関にこだわりたい

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています

この記事はデベロッパーへ届きますようにと願いながら書いています。

建築費の高騰が続いているため、マンションの設計・企画に悪い影響を与え、とても残念な建物を生み出しているからです。

その最たるものが「住戸の玄関」部分です。以下は、そばにチラシやパンフレットがあれば、その図面を横に置きながら読んで頂くと良いかもしれません。

●アルコーブ・ポーチが貧弱な玄関

アルコーブとは、語源は「窪んだ小部屋」という意味で、壁の一部に窪みを設け、そこが寝台のようになっているものを指すらしいのですが、誰が最初に良い始めたか、マンションの玄関を廊下側から見て窪ませた部分に使い始めた言葉です。

古いマンションや木造アパートを思い浮かべてみましょう。 廊下に立って斜め方向に玄関を眺めると、壁と玄関ドアに凹凸はなく、のっぺりしています。同じ形、同じデザインの扉がずらりと並んでいますね。

この部分に「門構え」の要素を持ち込んだのがアルコーブでした。アルコーブは、扉を開けた瞬間に走って来た子供との衝突を防ぐという目的で、扉が廊下へはみ出さないようにすることが採用の動機だったという説もあります。

どちらにせよ、アルコーブは分譲マンションの玄関の定番となりましたが、最近それをなくしてしまったプランが散見されるようになりました。

廊下にPS・MB(パイプシャフト・メーターボックス)を飛び出す形にした設計のマンションがあります。

これはコンクリートの壁面に金属のボックスを張り付けたような恰好になっているので、玄関にアルコーブを設けなくてもPS・MBの面から見ると玄関は窪んだ位置にあるわけですから、のっぺりした玄関にはなりません。

しかし、このケースは玄関も両隣の個室の窓面も同じ面にあり、玄関前だけが窪んでいるわけではありません。しかも、PS・MBの飛び出し寸法は500ミリ程度に過ぎません。

玄関を「門構え」とする発想としては貧相と言わざるを得ません。

ところでポーチとは何でしょうか? 辞書によれば、「本来は門・入り口・通路などの意味だが、建物の本屋根とは別の庇を持ち、壁から突き出た建物の入り口」を指します。

従って、アルコーブとは少しニュアンスが異なり、マンションのパンフレットなどでは角住戸の門扉が付いた玄関前の専用通路部分を指して使っています。

ポーチをアルコーブと混同させている例もありますが、本稿では無視して以後はアルコーブに用語統一して使います。

●アルコーブを止めた理由


木造アパートやコストを抑えて建築した賃貸マンションに住んでいると、のっぺり玄関に慣れているのか、分譲マンションでも抵抗がないのか、気付かない買い手が多いのか、多分後者なのでしょう。

未完成マンションのモデルルームを見学したときは、横に隣接がずらりと並ぶ光景にはなっていないので、殆どの人が見落してしまうはずです。

室内設備に目を奪われるからですし、間取り図面を見てもそこに注目する人は少ないのです。

何故アルコーブを止めてしまったのでしょうか?お気付きと思いますが、コストダウンが狙いなのです。

建築物は、形状が複雑なほど、言い換えると凹凸が多いほど表面積が増えてコンクリートの量も手間も増え、コストが高くなります。シンプルにすれば安くなるのです。実は、PS・MBを金属のボックスにして張り付ける設計も同じ趣旨です。

アルコーブを止めてしまうことのコストダウン効果はいくらでもないという反論もあるでしょうが、建築費高騰の折り、これもあれもと積み重ねてコストを下げて行くほかないのです。

バルコニーの水栓やスロップシンク(靴洗い流し)を止める、部分的にタイル貼りを吹き付けに変更する、エレベーターを1基減らす、機械式駐車場の台数を減らすといったことがよく見られる策です。

アルコーブがないマンションは、コストダウンに徹底的に取り組んだ最後の砦なのかもしれません。つまり、そのようなマンションは、見えないところで仕様を落としている可能性が高いことを教えてくれていると思った方がよさそうに思うのです。

飛躍してしまいますが、室内設備が有料オプションだらけなどというマンションも突き詰めるとコストを抑えるための苦肉の策の末だったのでしょう。

実装したいところを、エアコン20万円、食器洗浄乾燥機は15万円、床暖房50万円、洗濯機の上部棚が5万円、洗面所の鏡の曇り止め加工2万円などと有料にしている例がよく見られます。これだけでも、合計で100万円は価格を下げることができます。

勿論、根本的な部分でのコストダウンの方法は別にありますが、その話は別の機会にしたいと思います。

●玄関は住まいの顔だ

アルコーブ付きの玄関は言い換えると凹の字型の玄関ですが、扉を開けた内部は凸型が望ましい形状です。凸型とは?

玄関の踏み込み(靴脱ぎ部分。たたきとも言う)の幅は、中級マンションではワイドが1000ミリ(1メートル)~1400ミリです。そこから奥行き400~450ミリの靴箱を隣の個室に窪ませる形で設けてあります。

中にはシューズインクローク(靴のまま入る物入れの意)という名の大型収納が人気なので、その形もありますが・・・

さて、ここからが問題です。玄関を入ったらホールがあるというのが家の形です。その先は廊下で、廊下を通って居間や個室へ向かいます。

このホールのないマンションが多いのです。これは最近のコストダウン志向とは無関係な話ですが、間取りへの取り組みにおいて残念なマンションが多いので加えてお話しします。

ホールがなく、いきなり廊下、言換えると廊下とホールの区別のないマンション、幅が1000ミリで、ストレートに居間につながる形ですね。ホールらしさのない「ずん胴」形です。

ドアの外も内も、玄関は住まいの顔ですから、門構えはそれなりに必要です。このようなことを書くと、「そんなのは単なる見栄だ」と反論する向きもあるようですが、自分はそれで良いとしても売却するときの新しい買い手は門構えを大いに気にする人かもしれません。

まあ、普通の感覚の人なら顔は立派な方がよいに決まっています。

住まいは間取りの良し悪しだけで決めるわけではないものの、「より優れた間取り」を望まない買い手はないのですから、デベロッパーには一層の企業努力を望みたいところです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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