新年特集「2015年以降のマンション市場を展望する」

ブログテーマ:元、大京マンが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

新築マンションの市場は、昨年後半に変化が見えました。価格の上昇が郊外エリアなどで売れ行きに影響を与え始めたのです。

2015年はどのように推移するでしょうか? まずは昨年を振り返ってみます。

●2014年のマンション市場を振り返る

① 新規供給が予想を下回った

2013年の年間供給戸数は、前年比23.8%増の56,478戸でした。2000年のピーク時95,635戸には遠く及ばないものの、大きく伸びた1年だったのです。

そして、2014年は、ほぼ2013年並みの56,000戸になると調査機関の不動産経済研究所は予測していました。

ところが、実績は何と11月までの累計で35,524戸と激減してしまったのです。

原因は、着工の見送りでした。

国土交通省が毎月発表する「新設住宅着工戸数」統計によれば、2014年1月?10月に首都圏で着工されたマンションの戸数は51,227戸、前年同期比12.2%の減少となっています。

一般的に、新築マンションは着工してから数ヶ月後に販売が開始されるので、2015年も上半期に限れば販売戸数が急回復することはなさそうです。

着工の見送りと書きましたが、正確な表現ではありません。「着工したくてもできなかった」が真実だったのです。

理由は、ゼネコンとの工事請負契約が締結できていないからです。周知のように、建築費の高騰でデベロッパーの予算から遠い工事費になってしまったからです。

数あるゼネコンに次々と見積もりを依頼しては予算に近い請負先を探すのに時間がかかり、それでもなお決まらないという状況にあるのです。

工事費のアップした分をそのまま分譲価格に転嫁すれば問題ないわけですが、それでは売れないとの危機感があって、各社とも様子見したり、コストダウン策を練ったりしているのです。

着工戸数の動きを注意深く見ていると、10月と11月は前月より増加しています。これは、対策を実行して着工に至ったものが増えて来た兆しかもしれません。

② 価格が高騰した

コストダウン策を採ったものの、建築費の上昇を相殺するような画期的なものはなく、結果的に発売に踏み切った物件が多かったのですが、無論、当初計画を上回る高値になってしまいました。

既に2013年は前年比で約8%上昇しましたが、その流れは2014年も続きました。

まだ1年間の集計が終わっていないので1~6月半期の数字のみ紹介すると、2013年は東京23区のみが先行して値上がりし、周辺部はさほどでないという傾向だったのが、2014年は全域で急騰傾向を示したのです。

1~6月のみのデータ(1坪当たり単価)を2012年、2013年、2014年と比べてみます。
単位は万円。( )が前年同期比     出所:不動産経済研究所

東京都区部:@262.0[→]@280.5(+7.0%)[→]@287.8万円(+2.6%)
東京市部 :@184.1[→]@188.1(+2.1%)[→]@204.2万円(+8.6%)
神奈川県 :@184.6[→]@190.7(+2.1%)[→]@201.3万円(+5.5%)
埼玉県  :@176.6[→]@171.6(▲2.8%)[→]@183.2万円(+7.3%)
千葉県  :@158.1[→]@158.4(+0.2%)[→]@170.0万円(+7.3%
首都圏全体:@212.2[→]@221.8(+4.5%)[→]@233.3万円(+5.2%)

都区部はややスピードダウンしたものの、それでも2年前に比べると9.8%の大幅アップです。東京市部も、2年前に比べ10.9%アップ、神奈川県は同9.0%アップ、埼玉県は同3.7%アップ、千葉県が同7.5%アップとなっています。

7月以降の首都圏全体データを前年同月比で見て行くと、7月6.1%アップ、8月14.5%アップ、9月6.6%ダウン、10月10.3%ダウン、11月6.2%アップとなっており、5か月の内、2か月はダウンしているものの、おそらく下半期も前年同期比+5%くらいになるのではないかと思います。

③ 売れ行きは好調が続いたが一部で変調の兆しも

価格が大幅に上昇したにも関わらず、売れ行きは好調に推移したようです。

ただし、地域格差が出て来たようで、9月の埼玉県と千葉県は50%台、10月も千葉県が39.9%、神奈川県60.2%、東京市部59.5%と低迷、11月も千葉県は61.6%に低下したのです。

首都圏全体の契約率の推移を見ておきましょう。

1~6月の平均78.4%(以下7~11月)[→]83.7%[→]69.6%[→]71.6%[→]63.8%[→]78.4%

好調・不調の分岐点とされる70%を下回る月も出て来ました。

数字は省略しますが、東京都区部だけは依然として高い契約率が続いているので、郊外部が足を引っ張った形です。

とはいえ、都区部もこのまま好調が続くかは予断ができません。

●新築マンション市場の30年の変遷

ここで、時代をさかのぼってみます。

もう大昔と言えるかもしれない昭和40年代、地価が暴騰して普通のサラリーマンがマイホームを都区内で持つことは次第に困難になりつつありました。

敷地面積が狭くなり、それでも高くて手が出なくなり、やがて都民はトコロテンのように外周へ押し出されたのです。

このころ、マンションの供給が活発になっていましたから、通勤時間の長さを嫌う人たちは都区内のマンション住まいを選択し始めました。

それまでの分譲マンションは、社会的地位の高い人や進歩的な階層によって求められていましたが、徐々に大衆化、すなわち一般サラリーマンが購入するように変わって行ったのです。

当初は、マンションなんて空中を買うようなものとか、土地がないのも同然なので価値がないなどと、今では考えられない誤解と偏見に包まれていました。

昭和50年代になると、地価の高騰が一段と進み、庭付きのマイホームは片道2時間の通勤(痛勤と言われた)を強いるため、次第に敬遠されるようになりました。代わってマンションが庶民の住宅として主流になって行ったのです。

この頃の認識は、マンションとは一戸建て住宅の代替というべき存在でした。一戸建てを買うまでの仮住まい的な位置づけでもありました。

地価の高騰は、住宅価格の高騰につながり、マンションも値上がりするものという認識が広がっていましたから、とりあえずマンションに住み、いずれは高値で売却して頭金を増やし、それを元手に一戸建てを買うというシナリオを描いた庶民が多かった時代です。

その後、昭和60年代に入るとバブルが発生し、異常な地価の高騰からマンションも外周部へ押し出されます。

ピーク時には、新幹線で通勤するしかない遠方、具体的には高崎や三島などでマンション開発が行われるようになったのです。

もはや都民がマイホームを取得することは夢のまた夢と遠ざかって行きました。

平成の初期にバブルがはじけてからは、地価の下落が始まり、平成10年代半ばにようやく底を打ったのですが、この間にマンションは価格低下に伴い「都心回帰」現象をもたらします。

土地を買ったら決して手放そうとしなかった法人が、様々な新政策の影響もあり、かつリストラの断行のために社有地を放出し始めたことが、開発の途絶えていた都心・準都心でマンション開発の再開に繋がったのです。

バブル期最後の平成3年、23区内で新築マンションは年間に僅か4,743戸しか発売されなかったのですが、平成16年には39,147戸と急増しました。

ブロック別のシェアを見ても、23区内は最も低かった平成3年の18.3%から16年には45.8%と大きくシェアを増やしました。

分譲価格も比較してみましょう。平成3年の23区は1戸平均8,667 万円でしたが、16年には4,663万円と大きく下落しています。

このころは住宅ローン金利も大幅に低下し、購買力を押し上げました。

ちなみに、住宅金融公庫の基準金利(現在のフラット35)は平成3年ころが5.5%でしたが、15年は最も低いときで2.0%に、その後は一時3%台に上がったものの、再び低下し現在はご存知のように1%台まで下がっています。

●現状のマンション市場

以上の経過をたどって今日に至っているわけですが、現状のマンション市場は次のように要約できそうです。

① 供給の中心は東京都区部

② 供給戸数はピーク時の半分

平成12年(2000年)は、首都圏全体で史上最高の95,635戸も新築マンションは供給されるに至ったのですが、そのうちの37%の35,318戸が東京23区内でした。この動向を多くのマスコミや業界関係者は「都心回帰」と称しました。

その後は供給数が減少、リーマンショックが起こった平成22年(2010年)以降、激減した最近数年間のうち2013年を見ると、56,478戸のうち28,340戸、50%が23区となっています。

ピーク時と比べると、絶対戸数は減らしていますが、都心中心の開発という傾向が続いています。

③ 2020年オリンピック効果で湾岸エリアの超大型タワーマンションが人気

駅で表すと、「月島」「勝どき」「豊洲」などのほか、「田町」「品川」など、区別では中央区、江東区、港区、品川区などに多数の人気物件が登場しました。

今後も、これらのエリアで注目される物件が次々と出て来そうです。

④ 住宅ローン金利が史上最低水準を更新中

⑤ 住宅ローンの金利低下で購買力がアップ。価格上昇を吸収

ローン金利は購買力を押し上げます。少しの価格高騰も、金利低下が相殺してしまうのです。

⑥ 価格は安定期から上昇期に移行した。

直近ではリーマンショックのあった2008年をピークに、その後2009年、2010年と下落し、2011年、2012年と横ばいだった価格が、2013年から上昇トレンドに。

⑦ 価格急騰が嫌気され契約率が低下傾向に。

金利低下が価格上昇を吸収した面もあるのですが、吸収しきれなくなったと見て良さそうです。それは、購買力の低い層において顕著です。

このため、郊外部を中心に売れ行きに陰りが見られます。

⑧ 中古マンションの価格も緩やかながら上昇中

全体で見ると、新築のように急な上昇、下落がない中古マンション市場ですが、それでも徐々に影響が表われ始めています。

新築を諦めて中古を探そうという需要が市場に流れており、人気物件の取引価格を押し上げています。

⑨ 中古も新築も供給が減少=品数が少ない

新築の品不足のため、新築への買い替え需要も顕在化しにくくなっています。このため、中古の売り物も増えません。

新規に売り登録される物件数が伸び悩んでいます。

●中長期の新築マンション市場展望

足元の市場から離れ、中長期的な展望をしてみようと思います。ここでは10年先の2014年くらいを目処に考えて行きます。

◆人気を集めるポイントは「高齢者とアメニティ」

最近、都心のタワーマンションを購入する層に「高齢者」が目立つと言います。彼らはどこから来たのでしょうか?

一部は、郊外の一戸建て住宅を処分して来た買い替え層なのです。

高齢化が進むと、働かない人が増え、余暇時間が増えます。すると、利便性より余暇を楽しく過ごせる場所、すなわちアメニティを求めるようになって来ると、社会学者は分析しています。

よく自分へのご褒美などという表現を老若男女から見聞きしますが、高齢者の場合は、これまで長い間家族のために働いて来た自分へのご褒美としてプチ贅沢をするということのようです。

アメニティは多様な方がよいわけで、例えばコンサートや演劇、博物館・美術館、買い物、世界中の料理、スポーツ観戦する・自ら楽しむ、公園が近い、医療サービス、行政サービスといった多種多様なものが近くに揃っている街を望むということになるのです。

この条件を満たす街・エリアが、従来の要素に加えて今後の価値あるマンションを見定めるポイントと言えるかもしれません。

◆建築費

2013年~2014年のマンション価格は、先に見た通り、2012年比で10%くらい上昇した模様です。この流れは、いつまで続くのでしょう。

建築費は高止まりするでしょうか? 建築費の高騰の原因は、建設技能者・労働者の人手不足と建設資材の価格高騰にあると説明されていますが、この原因は解消されるでしょうか?

建設需要が増えたのは、東日本大震災の復興関連工事の続伸と2012年末に誕生した安部政権が打ち出した国土強靭化策による公共工事の増加です。

これらの受注に走ったゼネコン各社は、人手不足に陥りました。何故、公共工事に走るのか、答えは簡単です。マンション工事より条件が良いからです。

マンションの施工は、細かくて手間がかかる割に利益が出にくいのです。

マンション業者から見積もり依頼が来るたびにゼネコン業者は何を思うのでしょうか?

「どうせ要望に沿えるような金額にはならないが、これまでの付き合いもあるので精一杯の数字でお答えしよう」と考えるゼネコンがある一方、「どうせダメだろうから適当に見積書を作成して出せばいい」と義理で見積りに参加するゼネコン、または最初から参加を見送ってしまうゼネコンなどに分かれます。

見積り依頼を出す側のデベロッパー内部では、「5社では危ないから10社くらい候補を指名して依頼しろ」などの指令が飛び、指名ゼネコンに声をかけて行きます。

それでも結果は不調で、予算からはるか遠い金額ばかりという現実。仕方なく、指名先を追加して見積もり依頼することも。  

それでも、有力な先が決まらず契約を保留し、対策を検討。そうこうして、着工に至るまでの時間が無為に流れて行きます。

そうして、仕様はレベルダウンし、価格だけが当初計画をオーバーしてしまうのです。

このような状況はいつまで続くでしょうか? 高値でも止まってくれたらいいのですが、その期待も淡いものと言えそうです。

理由は、東京オリンピックです。

解体が始まった国立競技場をはじめとする競技会場建設、道路改修・建設、電線地中化などのインフラ整備、さらには選手村の5000戸と言われるマンション建設などがこれから始まるわけです。

一方、東京は現在ビル建設のラッシュです。オフィスビル、ホテルなどの大型再開発が目白押しになっています。

こうした状況は、おそらくオリンピック開催前年の2019年をピークに続くと予想されていまう。

資材は円安が続けば下がらないでしょう。原油安の好影響があっても僅かとはずです。

人材不足も様々な対策が講じられているものの、技能が必要な職種ゆえに短時間で効果は現れず、焼石に水のようなものと言われます。

つまり、マンション建築のコストが下がる材料は当分見当たらないのです。

建築費は高止まりもせず、2019年までは上がり続けると考えるほかありません。

◆地価の見通し

マンション価格を構成するのは建築費と用地費です。地価は足元で上昇傾向にあるようですが、この先どうなって行くのでしょう。

各種地価調査では、都心や経済特区に選ばれたエリアで再開発が進み、伴って地価は上昇傾向にあるようです。

都区内の開発案件は目白押しです。東京はまるで高度経済成長期のような建設ラッシュになるのです。

将に東京大改造です。 毎年、都区内のどこかで街並みが変わり、人の流れが変わって街の価値が高まります。それが地価の上昇につながって行くことは多くの言葉を要しません。

こうなると、マンション用地の取得も大変です。マンション用地は、普通2~3年先に発売するためのものを取得して行きます。小規模なもので1年先の商品化に向けて物色して行きます。

都心ではマンション以外の土地需要があるため、マンションデベロッパーにとって、今は一段と取得がしにくい状況にあるのだろうと思います。

建築費が上がり、用地費も上がったのでは価格が飛び抜けて高くなってしまいます。それでも通用する好立地のマンションなら強気でも取得に向かえるはずですが、そんな土地は滅多にあるものではありません。

全般的な傾向として、用地取得は一時的に手控えることになるでしょう。しかし、土地がなければ仕事にならないのも事実です。

そこで、首都圏を隈なく走り回って土地探しをすることになります。一部は郊外やバス便の土地を、一部は手を出したくないエリアの土地に辿り着くことでしょう。

先に見たように東京23区が半数を占めるという開発傾向が幾分23区外にシフトするかもしれません。23区内でも、あまり好まれないエリアを選択せざるを得ないでしょう。

しかし、開発を避けて来たようなエリアですから、その中で「より良い条件」を求めて各社が競争を始めます。結局、都心以外でもマンション用地に限ると地価は上がらざるを得ないのです。

◆新築マンション価格の見通し

建築費が強含みで推移し、地価も高い状態が続くとなれば、マンション価格が下がる可能性は低いことになります。

その状況は、2019年まで続いて行くと予測します。ただし、高くなり過ぎれば需要はついて来なくなります。高くても通用するのは、ごく限られた物件だけです。

既に兆候は出ていますが、やがて買い手は業界を見限るでしょう。つまり、足が遠のき、売れ残りマンションが増えて行きます。

そうなると、価格は徐々に調整されて行きます。

調整とは、売れ残った物件の値引き販売という形で行われ、また、その市況認識が新規発売物件の価格決定に影響を与えるというものです。

後者は、買ってしまった土地を安値に戻したり入れ替えたりはもはやできないので、仕方なく利益を圧縮して販売に踏み切ることを意味します。

値引き販売による実質の価格は統計に表れないので、新規発売分の価格でしか価格の推移を見ることはできません。従って、定価での価格統計では2019年まで上昇が続くと予測します。

ただし、上昇率は2013年~2014年の10%の勢いがそのまま続くとは思いません。とはいえ、高値安定とも行かないはずで、2019年までにあと20%くらいは上昇するだろうと考えています。

◆マンション業界の対応

「業界は今後どのようにコスト上昇の課題を克服するのでしょうか?道は大きく分けて三つ」とお伝えしました(9月15日のBLOG)。

それは、この2年間の価格急騰対策で既に見られるものです。これにもう一策加えて、4つの対策をここに改めて説明します。

1. 分譲価格に転嫁し、強気で乗り切る(大手メーカーが採る策。ブランド地や駅前物件など一等地に限られる)

2. 専有面積をコンパクトにして総額を抑制する(70㎡の3LDKを60㎡の3LDKにするなど。食品メーカーが価格据え置きで分量を減らすという、実質値上げ作戦と類似の方法)

3. 建物の品質を落とす(設計をシンプルにする。設備の一部を有料オプションにする。上・中級品から普及品に変える。共用部分の面積を切り詰めて販売面積を増やすなど)

4. 交通便の劣る物件を安値で販売するケースも

これから販売されるマンションは、このいずれかに該当することになります。ただ、郊外マンションなど、交通便が良いとは言えない物件が急増することにはならないかもしれません。

理由はこうです。

元々郊外は価格に占める土地代比率は低く、建築費の比率が高いという構造になっていますから、建築費の上昇によるマンション価格の高騰を根本的に解消できるわけではないからです。

郊外エリアの数か所で定点観測を行うと、建築費上昇のためにマンション価格は高騰していますが、都区部のマンションに比べれば安いのは確かです。

都心の高額マンションを買えない需要階層を狙って郊外都市とバス便物件などの開発に踏み切る業者も増えることでしょう。

◆供給は都心集中・郊外減少の二極化。量的にも低水準が続く

2000年のピーク時は、首都圏全体で95,635戸も新規に供給されました。その後は徐々に減って、2008年のリーマンショック以降は大きく減少しました。

なんと2009年には36,376戸に激減したのです。

2010年~2012年は、45,000戸前後と回復、2013年は56,478戸まで戻ってきたのですが、2014年は先に見た通り、おそらく42,000~43,000戸くらいに再び減少する見込みです。

2015年以降も大きく増えることはないでしょう。

理由は、ここまでに見て来たように価格が購買力を超えるほどの上昇を続けるからで、それが販売不振を招き、開発努力を削ぐからです。

言い換えると、デベロッパーは「売れるエリア」でしか開発しない傾向が続いて行くのです。

長期的にも、売れるエリアと売れないエリアに一段と二極化して行く可能性もあります。

人口減少によって衰退する街と現状維持以上の街に分かれて行くという見方です。国・自治体のコンパクトシティ構想と関連する動きです。

一般には郊外が衰退するという見方ですが、郊外でも衰退しない「郊外の中心地」ができるでしょう。

デベロッパーが郊外での供給を絞っていることとは、今のところ無関係な話ですが、将来は明確に継続供給地と空白地とに分かれて行くことでしょう。

◆建て替えや大規模再開発などで垂涎の地で供給

1年に5か所あるかどうかの数ですが、マンション黎明期に建設された公団住宅の建て替えや街ぐるみの整備で誕生する一等地の物件が今年も注目されそうです。

大地震が近々高い確率でやって来るだろうと予測される中、合意形成が難しいとされる建て替えマンションが増えて来る可能性が高まっています。

耐震強化工事より、いっそのこと建て替えた方がメリットは大きいと考えられる既存マンションが水面下で増えているからです。

単体のマンションだけでなく、木造住宅密集地(略称「木密」地域)では防災上の観点から街ぐるみの建て替え、すなわち地域再開発が推進されようとしています。最近、有名になったのは、話題を集めた新宿区の「富久クロス」です。

また、公団住宅団地の建て替え事例では「桜上水ガーデンズ」も注目を集めましたね。

大規模な開発は、住居とオフィス、商業施設、病院などの複合開発となるのが普通で、魅力あふれる物件となるものです。

2015年も既にニュースとなっている下記の5物件=「西新宿」、「目黒」、「阿佐ヶ谷」、「豊洲」、「武蔵小杉」など、いずれも交通便に優れ、大規模面開発の特徴である足元に豊富な緑地ゾーンが配される、すなわち交通便と環境の良さが両立するという希少な物件が登場して来ます。

*都庁前駅8分「ザ・パークハウス西新宿タワー60」 60階建て、総住戸数954戸(非分譲177戸含む)、売買対象面積7,530.65㎡

*目黒駅1分「仮称・目黒駅前タワープロジェクト」38階・48階の2棟、総住戸数945戸(非分譲284戸を含む)、開発面積17,211㎡

*南阿佐ヶ谷駅5分「プラウドシティ阿佐ヶ谷」2~6階・5街区・17棟、総戸数575戸(非分譲189戸含む)、開発面積43,170㎡

*豊洲駅5分「パークホームズ豊洲レジデンス」22階、総住戸数693戸、敷地面積10,591㎡

*武蔵小杉駅4~5分「仮称CO-SUGIプロジェクトA地区」53階、総住戸数592戸、敷地面積8,498㎡

◆1棟まるごとリノベーションも増えて来る

最近とこどき見かける「1棟まるごとリノベーション」物件も徐々に増えて来そうです。

区分の中古購入は、共用部に不安が残るものですが、1棟まるごとリノベーションなら、事業者が耐震強化工事や屋上の防水工事など、共用部分の大規模修繕、老朽化した設備の更新などを実施済みのものが多いので、安心して購入することができます。

案件としては多くないものの、価格の安さもあって、人気を集めそうです。

◆税優遇策が後押しする?

現況の住宅購入促進策の中で柱となっているのは、①住宅ローン控除と②住宅資金贈与の税金軽減です。

これらは、いずれも時限立法ですが、どうやら19年まで延長されそうです。贈与税の特例については、1000万円までの非課税枠が3000万円に拡大されるとのことです。

これらが、購買意欲を高め、また購買力を押し上げるので、価格の上昇分を吸収してくれます。

勿論、全ての買い手が恩恵に預かれるわけではありません。しかし、何%分かの下支えになってくれることは間違いはずです。

◆景気回復と所得増加が期待されるものの?

アベノミクスが打ち出されて2年、金融の異次元緩和と財政出動によって景気を刺激し成長を押し上げるとともに時間稼ぎをして、その間に第三の矢(規制緩和・法人税の減税・女性就業率の向上・TPPなど)を繰り出すというものでした。

しかし、今のところ第三の矢は放たれていません。

消費税の増税によって消費は低迷しています。

まるで、労組のように企業に賃上げ交渉した安部政権。その効果は確かに一部の大企業で実行されました。

さらにアベノミクスは円安と株価の上昇をもたらしました。円安は外国人旅行者を増やし、消費に一役買っているというものの、大きなボリュームではありません。

円安と株価の上昇は、一部の資産家や大企業のサラリーマンを潤したと言えます。しかし、中堅・中小企業のサラリーマンまで波及するには至っていません。

昨年、大企業を中心に賃上げ(ベースアップ)が行なわれました。加えて賞与も加増されたのはご存知のとおりです。景気が回復し、中小企業の残業代などの増加につながれば雰囲気は変わるでしょう。

マクロ経済では、物価上昇分を引いた実質賃金が増えるかどうかが鍵ということにもなるのでしょうが、2015年半ばには、原油安が円安による物価上昇を緩和し、消費が上向く可能性が高まっているという分析も見られます。

もし広く景気回復の恩恵が行き渡るようになれば、価格が上がっても購買力も上がり、マンション市場は順調に動くはずですが、期待が確信に変わるまでにはまだ時間が必要です。

◆住宅ローン金利のレートが攪乱要因か?

ご承知のように2014年は過去最低を更新する低金利が続きました。金利が低下すると、住宅ローンを多く借りることができます。その分、予算を増やすことができるというわけです。

価格が上がっても、金利が下がれば返済負担が変わらないので、2013年~2014年の価格上昇も、金利低下が何割かを吸収した可能性があります。

その金利が上昇したら、言うまでもなく購買力を押し下げることになります。今のところ、その不安を感じさせる兆しは見られません。

エコノミストの多くが当面、金利が急上昇することはないという見通しを表明しています。しかし、世界のどこかで何かが起きたら、それは対岸の火事ではなくなるのです。

長い間、低金利に馴らされて来たせいか、金利が上がるなんて頭の片隅にもないような人が増えてしまったようで、リスクの高い変動型の住宅ローンを利用する購入者が6~7割もあるのが実態です。

ここまで述べて来た「中長期展望」が大きく狂うとしたら、金利の急上昇だろうか。そんなこと少し心配します。

◆需要構造の変化

かつてマンション購入の中心は、30代前半のニューファミリーと言われる若い世帯でしたが、最近は随分変化し、幅が広がっています。

この10年~20年で特徴的なものは、「単身需要の台頭」、「株長者の登場」、「シニア層の増加」、「外国人の参入」などです。

単身需要:結婚しない独身男女の増加によるものです。

株長者:若手起業家が自社株の公開で俄か富裕層に。サラリーマン・OLにも勤め先の株のストックオプション行使で金持ちになった人が結構いるらしいと聞きます。

シニア層:子供の独立を機に郊外の一戸建てを売却して都心のマンションに住み替える階層。

外国人:これが最も新しい需要です。都心の高級マンションを買い漁る人もあるとか。

●2015年のマンション市場

ここまでに述べて来たことで、2015年がどのようになりそうかは、賢明な読者ならお分かりと思いますが、最後に簡単に整理しておきましょう。

◆供給戸数
あまり増えません。

◆供給エリア
聞きなれない街・駅、バス便、郊外物件も少し増えるでしょう。

◆商品内容
蛇足ですが、相続税対策物件が増えると予想しています。ワンルームを含むコンパクトマンションも少し増えるはずです。
ただし、価格は高いでしょう。税金対策に購入する人は高くても気にしないので、デベロッパーを喜ばせるかもしれません。

◆価格
高値掴みに注意しなければならないでしょう。

◆住宅ローンの金利と選択
フラット35Sなら1.29%で借りられ、当初10年間は0.3%マイナスなので1%を切る銀行も出てくるでしょう。

ただし、住宅ローンは融資実行時の市場金利で変動するので、売買契約時とは異なる(引き渡し時には上がるかもしれない)ことに気を付けなけれなりません。

◆売れ行き
物件によって大きく格差が付くでしょう。売主、エリア・駅、街などによって、二極化が鮮明になることでしょう。

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