増える「修繕積立一時金」

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

新築マンションの場合、「修繕積立基金」という名目の一時金を納める慣習が定着しています。

納める先は管理組合なので、購入者の貯蓄の性格を持つものです。貯蓄は多いほど良いのですが、最近の傾向は新築分譲時に大きな金額をまとめて徴収する例が増えていることにあります。

ご承知のように、修繕積立金は文字通り毎月の「積立金」と「基金」で構成されています。基金は、新築分譲時に一時金として最初の購入者から徴収してしまうというものです。

毎月の負担を軽減するための基金ですから、その金額が大きければ大きいほど毎月の負担は小さくできる理屈です。

ところが、現実はそうなっていないのです。毎月は従来同様で、一時金だけが大幅に増えている傾向が目につく昨今です。

実態を少し拾ってみましょう。

●三菱地所レジデンスの場合

同社のある都区内マンション(工事中。完売)で、65.07㎡タイプの毎月が7160円、一時金78万円という例があります。

毎月の負担7,160円は、1㎡当たり@110円となります。一時金の78万円は、毎月分の100倍強です。

東京の場合、毎月が@80~100円、一時金は60倍(5年分)というパターンが多いので、三菱の設定はどちらも多いですね。

同社の別の物件で、@90円/㎡と100倍となっているものもあります。毎月は普通ですが、一時金はやはり多いですね。

●野村不動産の場合

同社が今月販売を開始する中規模物件の例です。 75.25㎡のタイプの毎月が8190円、単価@109円、一時金81万2700円、100倍弱となっています。

別の物件(今月発売)も、毎月が@107円/㎡、一時金は87倍となっています。

こちらも高い設定です。

●住友不動産の場合

最新の発売物件のひとつを見ると、71.11㎡で毎月が6750円、単価95円/㎡、一時金が37万7900円で60倍と従来パターンです。

●修繕費が足りなくなる?

読者ならご存知のことですが、最近の建築費の高騰は激しく、その影響でマンション価格が上昇中です。

分譲価格の高騰も困った問題ですが、建築費の高騰は中古マンションの大規模修繕などにも影響を与える可能性があります。

修繕積立金は、将来の修繕費用を予め見積って金額を設定するはずです。とはいえ、10年先の工事予算を正確に見積れるわけもなく、現在価格で見積ることになります。

しかし、正確に見積ってみても10年先には数字が変わって来るはずなので、分譲時の予算は概算での適当な予算書を作成するに違いありません。

つまり、過去の見積もり実績をベースにして用意した規模別・高さ別の基準書のようなものが管理会社内に存在するのではないかと思うのです。

三菱地所レジデンスや野村不動産が販売時に買い手に提示している修繕積立金、同一時金が高くなったのは、筆者の憶測ですが、傘下の管理会社に命じて基準の数値を上げさせたのではないかと思うのです。

修繕積立金も一時金も、高い設定は販売成績に影響を与えます。できたら上げたくない。これが販売現場からの偽らざる声です。

ランニングコストは、管理費、駐車料金も加わえると馬鹿にならない金額です。

小型マンションでは、管理人を置かずに巡回方式にして管理費を抑えたりするものです。

それなのに、なぜ修繕積立金・一時金等を増額しているのでしょうか? 先に述べたように最近の建築費上昇が直接の影響なのでしょうか? どうも違うような気がします。

●修繕費用の段階的増額ペースは急すぎる?

マンションのメンテナンスは、社会的ストックであるマンション、建て替えが簡単にできないマンションといった認識を前提に置くと、長期的な視野で計画しておくべき重要なテーマです。

分譲したら終わりというマンション業者のかつての姿勢は改善され、分譲後も買い手の資産を守ることに関心を払い続ける姿勢に転換され、分譲時に「長期修繕計画書」の策定をするのは業界標準として定着しました。

その中に設けられる修繕費用の収支計画表30年分を見ると、積立金は5年ごとに上げられているのが一般的です。

ある例を紹介すると、1~5年:7,000円、6~10年:10,164円、11~15年:13,319円、16-~20年:16,473円、21~30年:19,628円となっています。

初期の7,000円と21年目の19,628円を比べると、3倍弱に増える計画です。

マンションが比較的新しいうちは修繕費も少ないから安く、古くなればなるほど費用が嵩むので高く設定するという論理は正しいにしても、買い手の負担感が大きいと、購入をためらう原因になります。

最近の買い手の多くが、段階的に増額する修繕積立金を尋ねるからです。

中古マンション販売の世界では、修繕費が足りないので一時金を徴収するとか3倍に値上げする予定とかの説明があると、急に購買意欲が萎えてしまう見学者も多いと聞きます。

積立金の増額ペースを滑らかにしたり、減額したりする形で買い手の負担感を抑えつつ、必要な積立金を蓄積して行くには、分譲時の基金を多くしておく方法がベターと考えられます。

購入者心理としては、購入時の頭金と登記料などの一時金支払いには比較的抵抗が小さいというか寛容というか、そんな傾向があるからです。

マンション業者は、その使命として長期的な視野で販売先と関わっていくことが必須です。それが結果的にマンション業者自身の信用の拡大につながるのです。

最近、増えて来た一時金増額の動きには、マンション業者の良い意味での深慮遠謀があるということかもしれません。

●基金は売主も協力したらいいのに

最後にもうひとつ、もし毎月の負担を和らげるために基金が多額に必要というなら、分譲主も一役買ったらいいのです。つまり、基金に寄付すればいいのではないかと思います。

1住戸あたり50万円なら東京圏の1住戸あたりの価格5000万円の1%に過ぎません。

まあ、そこまで踏み切るのは無理としても、半分の25万円くらいなら可能なのではないかと思ったりします。

もっとも単純な寄付というわけには行かない税務上の問題など、何らかのネックはあるでしょうが、そんなものは必ず解決策があるはずです。

業界各社に真剣な検討を促したい。ついでに言えば、それは販売促進にもプラスだと思うのです。

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