新築と中古で異なる瑕疵担保責任
- 2015.08.30
- マンション購入アドバイス
ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
不幸にして、購入したマンションに欠陥が見つかる場合があります。 そんなとき、買主は売主に対し瑕疵担保責任を追求することができます。
瑕疵担保責任とは、売買の目的物に瑕疵 (欠陥状態) があり、それが取引のときに通常の注意をしても気付かぬものである場合のみ、売主が買主に対して負う責任をいいます。
瑕疵とは、簡単に言えば「隠れたキズ。見えないキズ」といった意味です。
この場合、買主は瑕疵があることを知った時から1年以内(民法の原則)ならば、売主に対し損害賠償の請求ができますし、また瑕疵のために契約の目的を達することができないときは、契約を解除することもできます。
●新築マンションの瑕疵担保責任
新築マンションには、瑕疵担保責任が売主に課せられています。しかしながら、瑕疵があれば責任を負うと約束したところで、当該売主が倒産してしまえば実際に責任を取ることは難しくなります。
そこで、法律は保険加入等を義務付けています。 売主に万一のことがあっても保険がかばーしてくれるというわけです。
ただし、構造耐力上の主要な部分(住宅の柱や梁、基礎など)と「屋根等の雨水の浸入を防止する部分」の瑕疵に限ります。かつ、引渡の日から10年間に限ります。
尚、主要な部分以外に関しては、売主が「アフターサービス規準」として部位ごとに定めた期間内ならば、無償で補修・交換を行うのが業界の標準となっています。
たとえば、室内建具、建具金物、造付家具、室内床仕上げ:2年間、塗装のはがれ、塗装吹付の欠損:2年間、設備機器(浴室暖房乾燥機、照明器具、換気扇、湯沸器、暖冷房機器等):2年間などと定めています。
●10年未満の中古マンションの場合
新築で保証される瑕疵担保責任も、中古取引では、分譲主のデベロッパーに瑕疵担保責任はありません。
責任(保証)期間は、構造に関するもので10年間ありますが、その期間満了前であっても売買の当事者でないからです。新築分譲時の売主責任は、そのときの買い手までしか及ばないのです。
もっとも、マンションの場合は「構造耐力上の主要な部分」と「屋根等の雨水の浸入を防止する部分」とは、特定住戸で発見される瑕疵ではないので、瑕疵担保責任から除外されてしまうことはないと言えましょう。
「建具、建具金物、造付家具、室内床仕上げ」や「設備機器等」に関するアフターサービスは、年数に関係なく買主が転売してしまえば、そこで保証期間が自動的に終了することになります。
ただし、メーカー保証が付いている設備機器は、その期間満了まで保証されることになります。 もっとも、多くは2年が期限なので、築後2年を超えた中古を買った買主にとっては何も保証はないということになるわけです。
●中古マンションの瑕疵担保責任範囲
中古住宅の取引は、一般に現状有姿(ゆうし)の取引のため、瑕疵担保は免責されると明記されます。
現状有姿(ゆうし)の取引とは、物件は現状のままで引渡すという意味で、排水、柱、など見えない所の不具合があっても責任は無いというわけです。取引後に不具合・傷等を発見しても売主は責任を負わないのです。。
そういうリスクがある旨を買うか買わないかの段階で説明しているので、上記リスクが顕在化したとしても、売主には責任はないという意味になるのです。
中古物件は売主が個人である場合が多く、個人売主には、不動産を売ってしまった後で長期間にわたり、契約解除も含めた担保責任を負わなければならないというのは事実上無理だからです。
そこで、責任範囲はガスや電気機器などまでと明記した契約が一般的です。
この場合でも、個人間の場合は引渡し後3ヶ月以内(瑕疵担保責任の範囲を限定)の取り決めが多いようです。
完全に免責にしてしまうと、買主はどんな不具合も甘受しなければならなくなってしまうので、上記の範囲に限定するにせよ、売主に責任を負わせる事で、一応のバランスをとっているということなのでしょう。
尚、中古マンションでも売主が不動産業者である場合、多くはリノベーション物件ですが、瑕疵担保責任は免責されません。瑕疵担保を免責にするとか、期間を短くするなど、買主に不利な特約をしても無効とされ、瑕疵を発見してから1年は責任を負うという民法の原則に従うことになるのです。
売主が負う瑕疵担保責任は、「隠れたる瑕疵」のみです。隠れていない瑕疵、つまり不具合が一目瞭然なものは、買主も容易に気づくでしょうし、中古であれば瑕疵などあって当然でしょうから、法的に保護する必要もないという理屈になります。
簡単に点検すればわかるようなものの場合、隠れた瑕疵ではなく、購入者の見逃しという購入者側の過失と認定され、売主に責任はないということになるというわけです。
●仲介業者の責任範囲
免責の特約は、売主自身が瑕疵の存在を知っていたら無効となります。
売主が瑕疵を知っていて、敢えて買主にその事実を告げなかった場合は責任を負うのです。不具合を隠して売った売主を守る必要は、個人といえどもないのです。
その為、仲介業者は、売主にキチンと不具合の有無を「告知」させる、すなわち説明義務を負わせています。
ただし、売り主・仲介業者とも、専門家による調査でなければ発見出来ないようなものである場合、説明義務はありません。
仲介業者は建設業者ではなく、擁壁のような構造物の専門家でもないので、構造物の専門家が行うような調査を行ってまで調査しなければならない義務はありません。
したがって、中古物件を購入する場合は購入前に物件をよく調べておく必要があるというこになるのです。
●個人用の瑕疵担保保険もあるがマンションでは非現実的
瑕疵担保保険は、売主が加入する性質のものですが、中古マンションの取引で売主が保険に入ってくれれば、買主は安心して取引ができますね。
しかし、そのようなケースは不動産業者が売主となる物件(リノベーション済みマンションなど)のみで、個人の売主の物件で保険に加入しているという話は聞いたことがありません。現実には殆ど無理だからです。
保険期間が5年で最高1千万円の保険の保険料は、70㎡マンションでも36,400円(株式会社日本住宅保証検査機構の場合)で済むのですが、問題は保険に加入できる住宅の条件に「特定の検査機関による建物検査を実施しなければならない」ことにあります。
マンションの場合、部屋の中だけの検査ではないため、費用は多額になります。ちなみに、30戸程度のマンションで約50万円も検査料が必要になるのです。
この費用負担を売主と買主で負担するというような契約は考えられますが、そのような提案をする契約当事者がいるとは思えません。
万一、瑕疵が原因で雨漏りが起きたような場合、売主が知らないとするなら売主の責任ではないと思いますし、分譲主に要求することもできません。基本的には管理組合全体の問題になるはずです。
従って、専門家に依頼して原因箇所を特定し、費用を修繕積立金から支出して修復するということになると考えられます。
このようなことを考えると、購入前によく調査しておきましょうと言ったところで、現実には不可能に近いとも言えます。
としたら、最後は施工したゼネコンの経験・実績、分譲主の信用、品質管理能力などを拠り所にするほかないのかもしれません。
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