住宅性能評価書への誤解

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

「住宅性能評価書付き」とあるマンション。その意味を誤解している人も多いようです。

今日は、住宅性能評価書を正しく理解していただこうと思います。

●誤解を招く「住宅性能評価書付きマンション」の広告表現

〇〇マンションは、国土交通大臣が指定した第三者の「指定住宅性能評価機関」により、住宅性能評価基準に基づく「設計住宅性能評価書」を取得済みです。また、数回の中間検査を経て交付される「建設住宅性能評価書」も取得予定です。「住宅性能評価書」は第三者機関による公正な評価で、高品質で安心な住まいづくりの品質管理の一環として重要です―――このようなHP上の説明を見かけます。

これ自体は誇大広告でも虚偽の説明文でもありません。しかしながら、多くの買い手が誤解してしまう危険をはらんだ文章なのです。

読者はこれを読んで今どう感じられましたか? 正確な知識を既にお持ちの人はともかく、「高品質で安心な住まいづくり」といった辺りから、クォリティやスペックの高い良いマンションと印象付けられてしまう人が少なくないのではないでしょうか?

一定の基準に基づく公正な評価であることは確かです。問題は、その評価が100点なのか30点なのかということにあります。

住宅性能表示制度が創設されてから約15年、住宅性能評価書の持つ意味を理解している人は随分増えていることと思いますが、それでも「初めてのマンション購入です」という人の多くが、上記の説明文を読み営業マンの説明を聞いて誤解してしまうようです。

●住宅性能評価書付きマンション=高性能マンションではない

住宅性能評価書の評価項目は大きく分けて9つあります。

①構造の安定に関すること(耐震性など)  ②火災の安全に関すること ③劣化の軽減に関すること(耐久性など) ④維持管理・更新への配慮に関すること ➄温熱環境に関すること(省エネ対策) ➅空気環境に関すること ⑦光・視環境に関すること ⑧高齢者への配慮に関すること ⑨防犯に関すること

これら項目ごとに最高点を設定しており、それぞれ何番目かを評価するのです。①の耐震性は等級1~3までしかなく、➄の省エネでは1~4まであります。最低が1となっています。

耐震性が1というマンションが90%以上なので、2や3のマンションは高評価となるわけです。③の劣化対策等級は最高が3ですし、➄の省エネは最高が4です。

耐震性は最低でも、耐久性や省エネが最高等級の評価となっているマンションは多数あります。

項目ごとに評価は出ていますが、合計点で何点とか何等級とかの評点が付くわけでもないのです。

低い評点の物件も、比較的高い評価項目が多い物件も、それぞれに客観的な評価を下されるわけですから、大手=高級とか、中小=品質に不安といった偏見や誤解はなくなるのです。

実際、大手に負けない高い品質を求めてマンションつくりを実践している中小デベロッパーが少なからず存在します。中でも、3.11震災以降の開発では「耐震等級2」を全物件で設計基準に定めた企業もあるのです。

●住宅性能評価書の評点が中古売買の査定額にどこまで反映されるかは不明

住宅性能表示制度は、新築志向の強い日本において中古住宅の流通を欧米並みに増やすという遠大な目標に近づけるための一歩としてスタートしたのです。

中古売却の際に、適正な売り出し価格、ひいては成約価格に結び付けたいということなのです。品質を計測する物差しがないため、単純に築年数だけで判定されてしまうことが多いという流通業界の実情を打破したいということでもあるのです。

顕著なのは一戸建ての判定で、注文で頑丈に建築し、かつ手入れをマメにしながら経過した住宅も、安普請の建売住宅も、25年を超えると評価はどちらもゼロで、値が付くのは土地代だけという極端な判定(業者の査定)をされてしまうからです。

この実態を変えたい思いが、住宅性能表示制度創設となったのです。

しかし、マンションでは築25年や30年で建物がゼロ評価になる例はなく、この制度は何となくマンションには馴染まない気がします。

マンションの査定額は土地代と建物代のような分割査定方法を採っていませんし、築30年を超える古いマンションでも新築並みの高値で取引されている例もあるので、こうした事例からどう見ても建物代がゼロとか半分とかの評価にはなっていないことが分かるのです。

古いマンションは、耐震性が1である可能性が高く、省エネ性能も低いことが明らかです。また、1999年以前の完成マンションであれば評価書は付いていないのです。それでも高い価格で売却が可能であるとしたら、住宅性能評価の9項目は意味をなさないとは言えないでしょうか?

●性能評価書中の重要項目で高い等級を得ていれば売却時に有利

しかし、長い目で見れば、高い等級を獲得しているマンションは資産価値を高く維持できる可能性を有しています。

耐久性、耐震性は言うまでもなく、維持管理等級が高い物件は、「大きな工事、すなわち比較的多額の費用を要せずに維持管理をして行ける仕様になっている」ことを意味するので、古くなっても改修や更新などが実施しやすく、従って古さを感じさせない建物として高い価値を維持できるからです。

●住宅性能評価に関心を持ちましょう

マンション選びで最も重要なことは立地条件です。建物がどんなに優れていても立地条件の良くない物件のデメリットを補えるものではありません。

しかし、立地の差が小さい物件同士の比較になれば当然のことながら建物比較になるわけです。そのとき、性能評価の各項目が資産価値の維持にどう影響して来るかを考えることは意味があります。

劣化対策等級が最高の3であるマンションに住んだ場合、例えば30年後あたりでは等級2以下のマンションと比較して明らかな差をつけるかもしれません。

勿論、適切なメンテナンスを施せば等級2以下のマンションでも変わらない姿でいられる可能性はあります。その代わり、修繕費用の負担が比較してはるかに重いかもしれないのです。

⑧の高齢者への配慮に関しても、自分が年を取ったときにストレスなく暮らしていけるマンションなのかどうか、ここは無関心ではいられないはずです。最近のマンションは例外なくスロープ付きのエントランスであったりしますが、ちょっとした段差でもつまずきやすいのが高齢者です。他の箇所ではどうなっているでしょうか?建物完成前に購入するときは気付きにくい問題です。

いわゆるバリアフリーが共用部分、室内とも徹底されているかどうか、車いすの生活になったとき、室内廊下やトイレのドアの幅は十分かどうか。こうした点を評価書は明らかにしてくれるはずです。

自分は当分関係ないと考える買い手であっても、売却の際に買ってほしい相手が高齢者か高齢者の仲間入りが近い人かもしれないのです。

住宅性能評価署は、将来の資産価値に影響を少なからず影響を与える可能性があると思いましょう。評価書は小さな字で書かれており、読みにくく分かりにくい箇所も少なくありませんが、是非とも内容をよくチェックしましょう。

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