バス便の大規模マンションってどうなの?
- 2016.04.30
- マンションの資産価値
ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
300戸を超える規模と様々な付加価値を持つマンションだが、交通便がよいとは言えないバス便マンション。郊外部では、年に1件程度販売されることがあります。
筆者の手元の記録を紐解いてみると、最近数年間では下記のような物件があります。
今日は、これらの「バス便の大型マンション」についてお話ししたいと思います。
●大型バス便マンションの実例
竣工時期の古い順に、それぞれの特徴を簡単に紹介します。
?千葉県浦安市「プラウド新浦安パームコート550戸(バス8分)」平成23年1月竣工済み/野村不動産:完売
綺麗に整備された、まるで南国のリゾートタウンといった雰囲気を醸す特異な街、それが新浦安で、国土交通省が選ぶ「都市景観100選」にも選ばれたほど美しい景観を持っています。西隣の「舞浜」駅は、ご存知ディズニーランドがあります。
ここには複数のマンションデベロッパーが妍を競って建設した大型物件が多数並びます。平成17年竣工の「パークシティグランデ新浦安(バス10分)」もプラウドと同じ550戸の大規模物件で、人気マンションとして有名です。
湾岸道路の南側を京葉線が走り、「新浦安」駅が開設されましたが、プラウド新浦安パームコートは、最も南の「ベイエリア」に位置し、駅からバスを利用するほかない場所にあります。
②千葉市美浜区「THE 幕張 BAYFRONT TOWER&RESIDENCE 308戸(京葉線・海浜幕張より徒歩21分)」平成27年8月竣工済み/三井不動産レジデンシャルほか:完売
この物件は「幕張ベイタウン」と呼ばれる、海浜幕張駅(JR京葉線)を最寄りとするニュータウンの中にあります。
千葉県のHPを見ると、幕張ベイタウンは、21世紀の国際業務都市を目指す新都心にふさわしい、魅力的な都市デザインと新しい時代の社会的ニーズやライフスタイルに対応した快適な居住環境の実現を目指して(中略)、住棟を街路沿いに配列した沿道型建築とし、街のにぎわいを創出するため、建物の低層部に商業・業務系施設を配置しています。
幕張ベイタウンでは、1995年3月に入居が開始されてから、今までに9,400戸が供給され、約25,400人が住む街になっています。(2015年11月末現在)
幕張ベイタウンでは、ヨーロッパ風のデザインに統一され、街全体の調和をとりつつ、それぞれの街区に個性的で色鮮やかなデザインを採用しています。特徴的な点は、街区の中央に憩いのスペースとなるパティオ(中庭)を設けたヨーロッパスタイルの住宅です。
幕張ベイタウンの街区は駅から徒歩5分程度と近いものから、徒歩20分もかかるものまでありますが、パティオス1 ~ 22番街、グランパティオス公園東の街、グランパティオス公園西の街などの街区が形成されています。
幕張ベイタウンには何度も訪問した経験を持つ筆者ですが、ここは本当に日本なのかと感じるほどの街並みと景観で、初めての人ならきっと感動することでしょう。
「THE 幕張 BAYFRONT TOWER&RESIDENCE」は、駅から最も遠い位置にるためか、販売には多少苦労したと聞いていますが、竣工時までに完売しています。
?東京都武蔵野市「パークシティ武蔵野桜堤405戸(武蔵境よりバス10分)」平成24年3月竣工済み/三井不動産レジデンシャル:完売
豊かな緑に囲まれた25,700㎡の敷地にゆったりと建った6棟。水音の庭、集いの庭、静寂の庭、夏の庭などの憩いのスペースがあります。バーベキューコーナー、キッチンスタジオ、ゲストルーム、フィットネススタジオ、ライブラリー、コンシェルジュサービスなどの共用設備があります。
④東京都調布市「グランドメゾン仙川305戸(徒歩19分)」平成28年6月竣工予定/積水ハウス:竣工前完売
物件のHPには、「豊かな自然と一体となり、 スローでスマートな暮らしを実現する全305戸の大規模レジデンス」とあります。4階~8階建て8棟の団地型開発ですが、隣接に広大な緑地があり、環境の良さを売りにした物件でした。
京王線と南をほぼ並行して走る小田急線。その中間に立地しますが、京王線の「仙川」からのアプローチ以外に、小田急線の「成城学園」からもバスが出ています。
?東京都調布市「パークホームズ調布桜堤通り325戸(バス7分)」平成28年7月竣工予定/三井不動産レジデンシャル・・・販売中
物件HPによれば、「多摩川の潤いと緑を身近に、調布駅へのアクセスも快適なのが<パークホームズ調布桜堤通り>の魅力のひとつです。物件から徒歩1分(約50m)の「日活撮影所」バス停から、「調布」駅へは約7分。朝8時台は約6分~約7分おきに運行しているので、スムーズにアクセスが可能です。きらめく水面や富士山を眺める開放感、広大な河川敷。春は桜、夏は花火、休日には水と触れ合う――。多摩川の自然が、心豊かな暮らしを与えてくれるでしょう」とあります。
共用施設が充実しているのが売りで、グランドラウンジや、青山ブックセンターと提携し、毎月定期購読書誌が更新される、ライブラリーラウンジなど複数のラウンジを設置しているとありますが、三井不動産レジデンシャルの他の大型物件に比べると物足りなさが残る印象です。
⑥東京都小平市「シティテラス小金井公園922戸(武蔵小金井バス6分)」平成30年1月竣工予定/住友不動産・・・近日発売
この物件は、西武新宿線「花小金井」駅からも徒歩8分でアプローチできる位置にあるのですが、人気・需要の面で中央線が西武線より上と見た売主は、バス便を承知で中央線・武蔵小金井駅を前面にアピールしています。
今日のブログのテーマの援用に丁度いいので、バス便物件として取り上げることとしました。
物件からほど近い((約670m・徒歩9分)小金井公園について、物件HPは次のように紹介しています。
「小金井公園は日比谷公園の約4.9倍、上野公園の約1.5倍の広大な面積を誇る大型都立公園です。玉川上水沿いにあって、広々とした草地や雑木林、桜の園、子ども広場、弓道場、テニスコートなど、豊かな自然とスポーツ施設などが一体となっています。雑木林は武蔵野の面影を残し、野鳥の楽園「バードサンクチュアリ」として、四季を通じ多くの野鳥が飛来します。
広大な草地広場は、ピクニックや子どもの遊び場であり、散策、ジョギングをする姿も見受けられます」
また、「シティテラス小金井公園の敷地北側には約3,600m2の(仮称)ウィズパーク(提供公園)が計画されています。その広さはテニスコート約18面分。ケヤキや桜の既存樹を活かしながら、子ども広場のスペースにはクライム遊具、スイング遊具、マウンテン遊具をご用意。テーブルセットやベンチもあり、子どもの遊び場としては十分な広さがあり、身近な子育ての場としてご利用いただけます」とあります。
さらに、「現地南側には約770mにわたり「第1種低層住居専用地域」があり、高い空の下、低層の家並みが続く開放的な風景が広がります」と環境の良さ、とりわけ子育て環境の素晴らしさをアピールしています。
「922家族のコミュニティを創造する多彩な共用施設&サービスが、快適・安心、楽しい毎日をサポート・・・3万㎡超を誇る敷地に、緑豊かな環境と呼応するやすらぎのレジデンスを創造する同物件。家族の暮らしを快適・安心、楽しく彩るのは、全922邸というスケールならではの充実した共用施設やサービス(以下)が魅力のポイント」とも語っています。
屋上ビューテラス ・ゲストルーム(2室) ・ライブラリー・シアタールーム兼カラオケルーム ・パーティラウンジ ・キッズルーム&ペアレンツサロンをはじめとした17の共用施設に加え、コンシェルジュサービスや24時間有人管理、専用シャトルバス等の便利なサービスも導入。
●バス便の大型マンション。その共通点とニーズ
ここに紹介した物件は「バス便・大型」の二つをキーワードとするものですが、他に共通点として次の5点を挙げることができます。
1)街並みの美しさ・緑の多さなど、環境がすばらしい
2)共用施設が充実している
3)管理サービスが細やか
ここまでは、先に述べた物件の紹介記事でお分かりいただけることと思います。
4)価格が安い
何を基準に安いというか、それは最寄り駅の徒歩圏マンションの相場と比べてのことですが、概ね20%くらいは安い価格で分譲されています。
これに、自然環境の良さや景観のすばらしさを持つロケーション価値と、建物(敷地内の共用空間のデザインを含む)の圧倒的な差別化策がもたらす付加価値を加味すると、交通便・買い物便等のマイナスも多分に相殺されてしまうのです。
5)広い専有面積の住戸タイプが多い
価格が安いということは、例えば駅前物件なら70㎡しか届かない予算で、バス便物件では80㎡以上の部屋に届いてしまうことを意味します。
広い部屋と美しい環境の中で、ゆったりと暮らしたいというニーズ、もしくは子供を自然の豊かな環境で育てたいというニーズにはぴったり合致するのです。
●それでもバス便マンションには見向きもしない人が多い
以上のような魅力に溢れたロケーションと付加価値の高い大型マンションですが、バス便と聞いただけで全く対象外と考える人が多いのは事実です。
人間は霞を食って生きて行くことはできないので、環境は大事といえども利便性を軽視できないからです。
自家用車で30分も走れば職場に着いてしまう小都市とは違い、東京圏ではどこに住んでも勤労者の平均的な予算では通勤時間が1時間から1時間半かかってしまうのが普通です。それだけに、時間のかかるバス便立地は避けたいのです。
郊外のバス通勤であっても、職場が最寄り駅の近辺にある人とか、駅で鉄道に乗り換えるにしても二駅以内の近さに職場があるといったふうに、都心通勤でない人なら抵抗も小さく、十分に魅力を感じるはずです。現に購入した人の大半は、その種の人なのです。
しかし、首都圏居住者の多くは東京都心へ通勤しています。その証拠に、通勤電車は2~3分おきに運行されているにも関わらず通勤時間帯は超満員です。
首都圏内での転勤がある企業に勤めている人も多数あります。そのような人は、支店・営業所のどこへ移動になっても不便にならない立地条件のマンションを取得しようとします。そのような人も、バス便マンションは考えにくいのです。
通勤に1時間半もかかる人は、時差通勤によって満員電車を避けたりしているかもしれませんが、帰宅が遅くなると困る人でもあります。遅くなったときタクシーで帰ることのできる都区内に住みたいと考えるのは交通費の問題だけでなく、睡眠時間を極力確保したいからという動機があるのです。
上級国家公務員の場合などでは、いざというとき直ちに役所へ駆けつけられる近場に住まなければならないようです。
2011年の大地震以来、いざというときに帰宅難民にならない距離に住みたいというニーズが増えて、ますます郊外のバス便マンションは不人気です。
●問題は将来の売却時にある
同じバス便マンションでも、大型の場合は不便さを補って余りある(?)付加価値の高い建物、すなわち専有面積の広さと共用施設の充実、管理サービスの細やかさ、価格の安さといった魅力があります。
そのおかげで、大規模=戸数の多さも克服し、さほどの期間を要することなく完売に至るものです。
しかし、その需要と供給のバランスは拮抗しており、都心の駅前マンションのような高い競争倍率で短期完売とは行かないことが多いのも現実です。
売り出し当初は「第1期・第2期、連続即日完売」などと誇らしげに広告で謳っても、やがてジリ貧となって、建物が竣工するくらいまで長い時間がかかってしまうケースも少なくないのです。
このような事実からも、バス便でもいいというニーズは多くないので、将来、中古マンションとして売却する際に、短期間で買い手が付くかという懸念を残します。
勿論、バス便マンション同士の比較になれば、大型で付加価値のある物件は買い手が付きやすいに違いありません。売れなくて売却を諦めるというようなこともないかもしれません。
とはいえ、賃貸は容易でないので、最後は価格を下げて買い手の要求を呑むということになりかねません。
●安く買ったのだから損失は小さいのでは?
「買い手が中々つかないとき、最終手段は売り出し価格、もしくは内見後の買い手からの要求に応じて売却価格を下げるということにするとしても、そもそも購入価格が安かったのだから損は小さくすむのでは?」?―このような考え方を取る人がいます。
実際はどうなのでしょうか? そもそも価格が安いということは、安くしなければ売れない、言い換えると、バス便マンションの販売成功条件は「安さ」にあるのです。そうしなければ目を向けてくれないことを意味しています。
買いたい人が多数あって、買い手同士で競争し合う状態が生まれるような駅前マンションなどは、価格は上方へ振れやすくなりますが、バス便マンションは逆です。
駅前マンションが100から転売時に90へ10%下がったというとき、バス便マンションは80で購入しても10%下の72では収まらないと考えなければならないのです。
勿論、例外もあります。 80で買ったバス便マンションが、転売時に80か85で売れることもないわけではありません。しかし、それは多分に幸運というほかありません。
同じバス便でも大型物件の方が値下がり率は低く、大型マンションの中でも周辺環境や買い物便が良いなどの差別感が明確な物件は値下がり率が低いのです。
しかし、分譲時の価格が市場全体で高値のときに買えば、付加価値が高い大型マンションであろうと、また、素晴らしい自然環境や街並みの中にあろうとも、売却の時期によっては値下がりが大きいということがあります。
結局のところ、購入マンションの魅力と欠点とを冷静に見極め、その価値に見合う価格かどうかという視点と、将来も高い競争力によって少ない需要の中から買い手を見つけられる物件かどうかという視点、このふたつによって選択の是非を判断することが重要なのです。
今日の話は、バス便マンションに限らない「マンション選び普遍の法則」を述べたことになるのかもしれません。
・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。
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