新築マンションで選択するべき住戸はこれだ

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

50戸とか100戸とか、メガマンションなら500戸もの多数の部屋の中から選ぶべき住戸で迷う買い手は少なくないはずです。

ただ、予算に上限があるので、本当はこれがいいと思う住戸があっても対象から外さざるを得ない場合もあることでしょう。

いずれにせよ、「あちら立てればこちらが立たず」で、しばし判断に迷うのが住戸選びです。一定の予算の枠の中で、階数、間取り、向き、周囲の建物等の関係などを睨みながら、「ああでもない、こうでもない」と思案します。

今日は、住戸選びにおける重要なポイントについてお話ししようと思います。これは将来の売却において強みとなる住戸の条件を述べるものです。

初めにお断りしておかなければならないのは、「理想と現実のギャップ」があるからこそ悩み、迷うのであって、本稿が理想論に過ぎないとお叱りを受けるかもしれないという点です。

できるだけ現実論を踏まえながら筆を進めようとは思いますが、限度があることをご理解いただきたいと思います。

●高層階ほど値打ちがある

高層マンションは、上に行けば行くほど価格が高くなっています。上層階と下層階では住戸面積が異なる場合もあるので比較がしにくいかもしれませんが、1㎡または業界の慣習である1坪(3.3㎡)当たりの単価を出して見れば一目瞭然です。

タワーマンションでは、下層階が坪単価@200万円なのに、トップ階は@400万円もするケースさえあります。2階の住戸が15坪(約50㎡)で3000万円であるのに対し、30階の30坪(約100㎡)住戸は1億2000万円といった例は珍しくないのです。

トップ階(しばしばペントハウスと言ったりします)や、その下の何層かを「プレミアム住戸」と呼び、内部仕上げ・設備も上級グレードにして差をつけたりしますが、その特別な仕様の差以上に価格は高く設定されることが多いようです。

それでも、特別であることに購買意欲を刺激された買い手は多く、早い段階で完売してしまうのです。

優越感を覚えるのは、仕様もさることながら、価格差を納得させ得る価値があるからです。言うまでもなく、それは「眺望価値」です。

10階から見える景観と30階からの景観では大きな差があるはずです。そして、その眺めを我が物にできる特権こそが価値であり、プレミアムプライスとなっているのです。

新築マンションは未完成の段階で販売されるため、売主が眺望価値をアピールする方法は、専門業者に撮らせた階数別の眺望写真を見せることです。

新築マンションのモデルルームを訪問経験のある読者の中には、パソコン画面に映し出された写真を見た人もあると思います。

晴れた日には富士山が、夜は銀座のネオンが、〇〇公園が、夏には花火大会を、等々。これらが入居初日に(実際には内覧会で)想像通りのものであるとき、居住者は歓声を上げることでしょう。

その感動は、友人を招いたときなどに共有することになるのです。同時に優越感に浸れる瞬間なのかもしれません。

友人を招く習慣はないという人でも、高層階に住み圧巻の景観を楽しむ暮らしは密かな自慢となるだけでなく、自身を癒す空間として価格以上の価値を与えてくれるということかもしれません。

新築マンションの価格表を一覧すれば明らかですが、中高層マンションの場合でも1階上がるごとに50万円ずつ高くなるとか、下の方は30万円程度の差でも10階から上は100万円の差を付けてあったりします。

この差は妥当なものかという議論があります。5階と10階で500万円の価格差があるケースで、そこまでの価値の差があるとは思えない物件も少なくないのですが、売主は分かっていながら大きな差をつけたりします。

新築マンションの価格決定は、売主の販売戦略と密接な関係があり、敢えて実質価値と合致しない価格を設定するのは普通のことです。人気タイプ、人気住戸ほど価格を吊り上げ、そこで浮いた利益を売りにくい住戸の価格引き下げ原資としています。

実質価値以上の高値かもしれないとしても、高層階は人気が高い証拠です。大勢の人が眺望の良さを買ってくれると予想しての強気の価格なのです。

分譲時の人気の高さは、いざ売却というとき、内覧者を感動させる要素を持つ我が家であることを表しています。圧巻の眺望価値は、言ってみれば希少性、つまりダイヤモンドの輝きを持っているようなものです。

購入時は高いと感じたかもしれない我が家は、輝きを失わないゆえに、市況によって多少の差はあっても高値で売却できる可能性が高いのです。

●東南の角住戸が最高

東南の角住戸が良いと思う人は多いのですが、予算の関係から対象とできない人も少なくありません。角住戸と中住戸という分け方をすると、中住戸が70㎡の3LDKであるのに対し、角住戸は80㎡の3LDKなどと広めにするのが普通なので、これだけで価格差は広がりますし、単価も上げるので、価格差はますます拡大してしまうからです。

しかし、少し無理すれば買えないこともないという人は、ぜひ角住戸を選んでおきましょう。間取りも日当たりもいい、我が家の玄関前は誰も通らない端の住戸の価値はやはり高いのです。

売却の際、見学者はそこを気に入り「欲しい」と感じることでしょう。商談はきっと前に進むはずです。そのような価値ある間取りなら見学者も多く、買い手間で競争が生まれることでしょう。それが価格の下振れを防ぐに違いありません。

中でも東南の角住戸が一番人気なのですが、その理由は日当たりの良さにあります。しかし、その住戸が2階にあって、お隣さんが切迫しており、日当たりは大丈夫でも壁のようになって見通しが悪いとか、プライバシーが侵害されそうな場合は、角住戸の価値が相殺されてしまうかもしれません。

●ルーフテラス付きは極めて稀少価値が高い

東南の角住戸は縦にずらりと並んでいますが、ルーフテラス付き住戸は数えるほどしかありません。ご承知のように、建物は法律が定める制限の中で作られています。

「容積率」と「建蔽率」の基本的な制限のほか、「絶対高さの制限」、「日影規制」、「道路斜線」といったものがあります。

その結果、いわゆる「セットバック」ができてしまうのです。階段型の建物に誕生する屋上部分がルーフテラスです。マンションの中の数少ないテラス付き住宅は、その希少価値から常に高い人気を博します。

狭いマンションでは、バルコニーやルーフテラスはリビングルームの延長のように見えるのでしょう。思い切り体を伸ばしたり、休日にブランチを楽しんだりと夢が広がる住戸なのかもしれません。何より、テラスに出れば少なくとも三方を眺める開放感が魅力です。

100戸のマンションに1戸しかないようなケースも多いので、テラス分の価値が価格に大きくONされて販売されます。階数にもよりますが、強風のために物が置けないのです。そもそもテラスは「共用部分」であって「専用使用権」を与えられているものの、勝手なことはできないのです。

それでも競争率は高く、発売とともに複数の買い手が購入を申し込み、抽選で契約者を決めるのが普通です。

価格ほどの価値はない、売却するとき、思ったほど高くは売れない。このような指摘もあります。しかし、稀少価値は高値を呼び、一般住戸より人気を集めるのは確かです。

●ワイドスパンなら北向きでも価値は高い

バルコニー側から見た横幅寸法は、殆どのマンションで縦よりはるかに短い長方形ですが、反対のケースも稀に見られます。

反対とまでではないとしても、横寸法(スパン)がワイドな住戸は、バルコニーにに面して普通は2室しかないところ、3室をレイアウトできることから、人気を博します。

南面3室ならいうことなしですが、仮に北方向に3室であってもワイドな窓が取れることから、明るく開放的な住まいになります。

南向きの間取りでもスパンの短い住戸では、北向きにある2室は窓面積も狭く、昼間から照明が必要な暗い部屋になりがちなので、ワイドスパンとの差は大きいのです。

幅の広い大きなバルコニーとともに、ワイドスパンの間取りを気に入らないという人はありません。売却のとき、とりわけ「ワイドなリビングと1室の個室という形」の間取りは、内覧者を大いに喜ばせること請け合いです。

●1階住戸は付加価値の大きさで選択したい

一般に、1階住戸は嫌われます。眺望が楽しめないことに加えて、セキュリティの問題、プライバシーの問題がありそうに思われるからです。

嫌われる住戸を販売するには価格を大幅に下げる以外に、なんとか短所を補う付加価値はないものかと事業者は考えます。

最もポピュラーで効果が高いのは専用庭とテラスを設けることです。これが子育て世帯の関心を呼びます。室内を走り回ることで下階の住民に迷惑を掛けるという心配がないことに加えて、庭で遊ばせておけば、けがなどの心配をせず家事に専念できるからです。

専用庭の一角を専用駐車場にし、テラスから出入り可能としたプランもあります。

そのほかでは、和室を設け、そこに堀こたつを作るという策です。昔は随分あったものです。

また、キッチンに床下収納を設ける策が流行したことがありました。その収納も、階段で体ごと降りるような大型のタイプも珍しくなかったのですが、最近は殆ど見かけません。

掘りごたつにせよ、床下収納にせよ、採用例が減った理由はコストカットのためです。そこまでのコストをかけても高い人気を得られないからです。効果が薄いなら、大してコストの要らない専用庭とテラスだけに留めようというわけです。

その庭も猫の額ほどしかないのでは、買ってくれる人はありません。元気な男の子を抱えているか、近々そうなりそうな心配のある世帯だけに限られてしまうのです。

売却のときも同様です。限定ターゲットになる物件は、それだけ競争が働かないので、高く売れる確率は低いのです。

従って、1階住戸は「短所を補って余りある付加価値があるかどうか」で選択の是非を判断することが望ましいと言えるのです。

●価値ある住戸は10年程度で売却を想定しても間違いはない

70㎡くらいの3LDKを条件に探しているが、予算の関係で中住戸の、しかもスパンの狭い「ぱっとしない」中住戸で、かつ下層階しか選べないというようなときは、発想を転換しましょう。

例えば、60㎡の2LDKで価値ある住戸がないかどうかを検討することです。または、北向き住戸を敢えて選択することです。

長く住むという前提を置かなければ選択の幅は広がります。必要な時期が来たら、必要な条件を具備した物件に買い替えればいいのです。

価値ある住戸なら、売却も有利に運べるはずです。

●間取りに執着する買い手は実に多い

筆者が提供する各種資料の中で最大のヒットは「住んで気付くダメ間取りと名作間取り・特選50」ですが、その傾向から、買い手の間取りに対する関心の強さが見て取れます。

予算の中で選べる住戸は多くないという現実があるのかもしれませんが、逆転の発想も含めて可能な限り幅を広げながら、価値ある住戸位置(階・方位)を選択するよう努力したいものです。とりわけ間取りは重要と言えるかもしれません。

 ・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://mituikenta.web.fc2.com)までお気軽にどうぞ。

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