第720回 「住んで気付くマンションのダメ間取り」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

マンションの間取りは、こうありたいというものがあっても、法的な規制や事業採算の都合などから理想通りにならないばかりか、短所・デメリットの解消ができないままで世に送られています。

これは事業者や設計士の努力不足だけではなく、「宿命的なもの」とも言えます。

今日は、代表的なマンションのダメ間取りについて述べることにします。何故そうなるのか、何故こんな短所ができてしまうのか。そんなことが一部明らかになるでしょう。

理由はともかく、マンションとはそういうものだと知っている方が、遠回りだけはしなくてすむのではないかと思います。

◆雨が吹き込む開放廊下

開放廊下とは、玄関側の共用廊下が外気に面していて壁のないものを言います。

マンションに最も多い形が、この開放廊下タイプです。

開放廊下のデメリットは、横殴りの雨が降ったときなどにエレベーターを降りてから自宅玄関に至るアプローチで濡れてしまうことです。

外出先から帰って来て、1階で傘を閉じたのに再び外に出るのが嫌だという人も少なくありません。冬季、寒い外出先からようやく家に帰り着いたと思ったら、また外へということになります。

◆ホテルライクな内廊下タイプにも問題がある

ではホテルライクな快適設計の「内廊下タイプ」はどうでしょうか?

内廊下タイプは超高層マンションに多く、廊下は絨毯貼りになっていることが多いのです。正に室内、かつ豪華な印象の廊下です。1階の玄関に辿りついたら、あとは快適な室内空間というわけです。

しかし、問題がひとつあるのです。

窓のない、個室がひとつあります。窓が付いていたとしても廊下の壁が邪魔をするため、風は通り抜けません。つまり、風通しが悪いという欠点があるわけです。

エアコンや24時間換気設備があるから構わないと考えるか、自然の風が抜ける構造が良いかという選択になるわけです。

◆風通しが心配な間取り

では、開放廊下タイプなら風通しは心配いらないかというと「さにあらず」です。

多くのマンションの欠点は、窓があっても風が流れないことです。つまり風通しが悪いのです。理由は簡単です。風の通り道が塞がれてしまう設計が多いからです。

例えば、居間から廊下に出るリビングドアが風の通り道を塞いでいます。ここが閉まっていれば、バルコニーから入る風が奥(玄関側)の洋室には流れて行きません。

では、いつもリビングドアをストッパーで止めておいたらどうなのでしょうか?

たとえそうしても、玄関側の洋室にある窓を開けなければ、バルコニーの窓を開けても風は通り抜けません。では、窓は開けられるでしょうか?

そこが中高校生の女の子用の個室だったら、窓を開けておくことは少ないでしょうね。

では男の子だったらどうでしょうか?窓を開けても、部屋のドアを閉めれば同じことです。

バルコニーから入った風はリビングドアの開いた状態のときに居間を抜け、さらに個室のドアから廊下に面した窓へと流れていくのです。

バルコニーから玄関ドアへまっすぐ抜けるようにしたらどうでしょうか?つまり玄関を半開にするのです。それも大いに抵抗のある方法で、そうしている家庭はあまりないようです。

結局、密閉空間となって、マンションの場合、24時間の常時換気設備で人工的な空気の入れ替えはできますが、体に感じる風を取りこむということになると、角部屋などの特別な場合を除き、かなり難しい課題になっているのです。

外の開放廊下を歩く近隣住民の視線を気にしないでもよいように、プライバシーを確保しつつ、風が抜ける最小限の窓や個室のドアの開閉に工夫をすれば解決できます。

具体的には、①玄関に通風専用の小窓を設置、②開け閉めの空間を自由に設定できる引き戸にする、③開放廊下側の個室の窓を開けても視線を気にせずにすむブラインド型の格子(ルーバー面格子)にする、といった方法です。

◆廊下側の居室は声が外にマル聞こえ

開放廊下タイプの間取りで、もうひとつの問題はプライバシーです。

大抵、廊下(玄関)側に2つの個室が配されています。このレイアウトが一般的ですが、これでは廊下を通るご近所さんや訪問者に声を聞かれてしまいます。

一瞬のこととはいえ、いつ誰が通るか分からない共用廊下にダイレクトに面する個室はプライバシーがあってないようなものです。

プライバシーを確保するには、廊下を歩く人との距離をできるだけ長く取るか、廊下側には個室を設けないで全室バルコニー側に配するか、タワーマンションのように「窓なし壁」で仕切った部屋にするほかないわけです。

距離を取った間取りは廊下側に大きなポーチと吹抜けを設けるという方法もありますが、なかなかお目にかかることはありません。

◆南向きの場合、共用廊下側の居室は暗くて寒い

向きが南である場合、廊下側の個室は北向きということになります。多くのケースで、この個室は暗くて冬は寒いと覚悟しなければなりません。

せめて一部屋だけでも南側に配することはできないものでしょうか?できたら全室を希望する。勿論、そうなっているマンションンもあります。

そのような間取りを「南面3室間取り」や「南面4室プラン」などと呼び、実現するにはハードルが高いものの、ときどき目にします。

◆南面ほど間口の狭い間取りが多い

南面3室タイプの間取りは、間口(横幅)が長くなりますが、こうすると敷地の長さに対して住戸数が多く取れないため、採算が悪化します。言い換えれば価格が高くなるわけです。

そこで、間口(スパン)を狭くすることになりがちなのです。

敷地が東西にあまり長くないケースほど、人気のある南向きをたくさん作ろうとすれば間口(スパン)は短い間取りとなってしまうのです。

◆来客と立ち話していると玄関から居間が見えてしまう

玄関に客が立ったとき、居間のドアを閉め忘れて、中が丸見えになる瞬間に遭遇することがあります。このような間取りが多いものです。

では、どうなっていれば覗き見が避けられるかですが、その答えが「クランクイン玄関と「クランクイン廊下」です。

但し、クランクイン廊下タイプの方には短所があります。

ひとつは廊下が長くなって、無駄ができることです。もうひとつは、大きな荷物の出し入れのときに角に当たるなどの弊害が起きることです。

◆玄関が狭いと、家全体が狭く見られる

限られた面積の中に効率よくレイアウトしようとする結果、しばしば玄関スペースが犠牲になります。高級マンションでは、幅も広くて大きな玄関の靴脱ぎスペースがあり、かつその先にはソファを置いてちょっとした接客ができるくらいのホールが作られています。

そこまでは必要ないという方でも、「せめてもう少し」と感じる幅の狭い玄関が多いのが実態です。

玄関が広いと、家全体も「さぞかし広いのだろう」と想像してもらえます。

尚、玄関は窓のあるタイプは少ないものです。それが普通なのですが、採光窓を設けた明るい玄関は、ついでに狭小感も緩和してくれます。

◆暗い玄関

玄関は採光窓がないケースが多く、そのために外出するときはいちいち点灯しなければなりません。帰宅したときも開けた瞬間は明るくなりますが、閉めれば暗くなってしまうため、点灯しなければなりません。

この面倒を解消するため、普通は人をセンサーで感知し自動的に点灯する設備が付いています。しかし、できたら自然光が差し込む玄関の方が良いはずです。

◆デッドスペースのリビング内廊下

マンションの間取りをよく見て行くと、やがて誰でも気づくのが、畳数表示の錯覚です。

リビングダイニング約13.5畳などと表示してあっても、これには実質的に通路でしかない部分もカウントされているのです。

つまり、13.5畳と書いてあっても使えるスペースは11.5畳しかないといった例は普通です。

これを「リビング内廊下」と呼びます。

これができてしまうのは仕方ないのですが、一見してリビング内廊下がなさそうなタイプでも、よく考えてみると、各個室に向かうには居間の中に通路を確保しなければならないので、実際はたいして変わらないというケースは少なくありません。

◆コンパクトタイプ1DKのレイアウトに注意

コンパクトタイプの住戸は、しばしばDKと個室がバルコニーに向かって縦長に配されるものがあります。

一人暮らしの人は間のドアを常にオープンにして生活するでしょうから、普段は問題ありませんが、来客があったときに寝室を見せたくないという場合、ドアを閉めることになります。

そうすると、当然ながら照明が必要になりますし、開放感のない印象を与えることとなるでしょう。

その点、バルコニー面に並べて配したタイプは、その心配がありません。

どちらが良いかは言うまでもないわけですが、縦長(うなぎの寝床などと揶揄する人もいます)のタイプができてしまうことは少なくありません。

◆価格抑制のための圧縮間取り

マンションの価格は、物件ごとに階や向き、眺めなどの条件を考慮して決められていますが、その要素に広さが加わるのは当然のことです。

専有面積当たりの単価が平均@200万円としたら、1坪面積を増やすだけで売値が200万円上がってしまいます。逆に、1坪狭くすれば売値を200万円低く設定できることになります。

デベロッパーにとって、この1坪の差は販売成績を左右する大きな意味を持っているのです。

そのことから、70㎡の3LDKでなく65㎡の3LDKが誕生することがあります。

このようなコンパクトに設計した間取りを「圧縮間取り」と呼んだりします。

LDKの畳数は13.2畳とあった場合、キッチンが3.2畳あれば、それを引くと10.0畳しかありません。リビング内廊下を除くと、実質9.0畳もないリビングダイニングということになり、かなり苦しい空間が出来上がってしまうのです。

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