高くつく中古マンション。「やっぱり新築」の声に思う

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

「中古マンションを購入してリノベーションする事も考えましたが、築年数がたっている物件は修繕費が高い事もあり、毎月の支払い総額を考えると、中古で購入するリーズナブル感があまり無さそうなので新築がいい」――このような考え方をする方にネット上で遭遇しました。

「新築と中古、どちらがいか」、その経済性のみを検証してみます。

1)物件代金:言うまでもなく新築の方が高いわけですが、稀に中古でも新築並みというケースがあります。しかし、ここでは平均像で比較して行くことにします。

※平均像を設定した方がよいので、70㎡の新築が6000万円、70㎡の中古が4500万円とします。 (これは、新築なら6000万円の予算が組めることは組めるが、先行きの不安から予算をもっと減らしたいと考えて中古物件を探してみたところ、築年数が新しいものは中々見つからないので15年までと妥協した結果の4500万円の物件を発見するに至ったという設定)

2)物件代金以外の購入時におけるイニシャル費用(登記料・不動産取得税・ローン保証料など):新築には修繕積立基金(一時金)が必要ですが、一方、中古には仲介手数料がかかります。

新築は修繕積立基金を除くと約200万円、中古はローンの利用額(後述)を減らせるので、約170万円で足りるとします。

これに修繕積立基金として50万円を加えて新築のトータルは250万円とします。中古は物件代金の3%+6万円(+消費税)の仲介手数料が必要なので、約150万円を加えてトータル約320万円の諸費用が必要となります。

築15年では、リフォーム費用がかかる中古も多いですが、設備はまだ交換の必要がないので、壁紙の張り替え・洗面所とトイレの床材の交換程度とし、費用は50万円とします。

中古はトータルで370万円

※物件代金を加えたトータルの購入費用は、新築が6250万円、中古は4870万円となります。

※頭金が1000万円出せる買い手だとした場合、住宅ローンの利用額は新築なら5000万円、中古は3500万円ですが、35年返済の10年固定金利0.8%で融資を受けたとすると、10年間の金利負担は次のようになります。

(10年としたのは、10年後に売却することを想定=後述=しているためです)

10年間の金利は、新築は350万円、中古は240万円となります。しかし、ここから住宅ローン控除を差し引くと、5000万円の借入が可能な買い手の所得は500万円以上であることは確かなので、10年間の金利負担は、新築も中古も実質ゼロとみてよいでしょう。

3)毎年かかる固定資産税(土地+建物):新築マンションの場合、建物部分の課税は5年間に限り半分に軽減されます。尚、建物は完成後に課税されるので引き渡しの翌年からの納税となります。中古の場合は、軽減措置がない代わりに建物の課税価格が安いので、トータルでは大差ないものとします。

4)毎月の修繕積立金:新築の場合、初年度の設定は安く、5年か10年ごとに増額される計画になっています。70㎡の標準的な物件では、初年度が6000円、6年目7500円程度です。中古は、築15年クラスの標準的な積立金が12,000円なので、それぞれの10年間で比較してみます。  新築は81万円、中古はその後の増額がないもとすると10年で144万円となります。その差は中古が63万円多いだけです。

※ここまでの総費用(10年合計)で新築が6331万円、中古は5014万円となりました。中古は約1200万円少ない費用で住むことができるというわけです。

5)10年後に売却するとしたときの損失額:ここまでの試算で、10年間の総費用は中古の方が1200万円も少ないわけですが、問題は資産価値の差です。 

新築は10年後に築10年となります。築15年の中古は築25年となります。 どのくらいで売れるのかは、市況や物件の立地条件と建物価値などによって大きく変わるのですが、平均的なデータを用いて比較してみます。

23区の平均では、築10年マンションは新築相場の80%程度になっています。築15年マンションは同75%程度です。25年マンションは同55%程度です。

新築は10年で100から80へ20%ダウンし、中古は10年後に75から55へ27%ダウンするという理屈です。

ただし、これは10年後の新築相場が購入時とレベルだった場合です。新築相場が上がれば中古も連動します。 過去のデータは新築相場が10年で20%以上上がったために、上記のような値下がりは起こっていません。しかし、ここでは10年後も相場が変わらないもとして試算します。

6000万円の新築は×80%で4800万円となります。中古は4500万円×27%ダウンなので3285万円に値下がりします。損失額は、新築が1200万円、中古も約1200万円です。つまり差はありません。

ここまでの計算で欠落しているのは住宅ローンの元本返済金です。借入額に1500万円の差がありますから、毎月の返済額で13万6千円と9万5千円、差額4万1千円の120か月分、合計で約490万円が中古の負担軽減額となります。

一方、中古は25年に達する間に設備の交換が必要になるかもしれません。その分を200万円と見積ったら、負担軽減額は290万円になります。

以上から、10年間の総費用の差は、1200万円+290万円、計1490万円となり、中古の方が明らかに少ない負担で居住することができると分かります。冒頭に掲げた「中古で購入するリーズナブル感」は十分にあるわけです。

しかし、購入物件が築15年でなく、築30年を超える物であった場合、全面的なリフォーム、つまりリノベーションを要することでしょう。その場合は数字が変わって来ます。

リフォーム費用を当初の50万円と後の200万円を計上していましたが、ここがプラス500万円としたら、それでも中古は約1000万円もの負担軽減になるのです。さらに、購入時のイニシャル費用も大きく減るはずです。

中古購入にはやはり「リーズナブル感」はあるのではないでしょうか?

鍵は、売却額が握りそうです。 この試算では新築も中古も約1200万円の損失としましたが、ここに差が出るほど「リーズナブル感」は変動します。

詳しくは割愛しますが、筆者が提供する「将来価格の予測サービス」の経験値から言えることは、新築も中古も物件次第で損得の数字は大きく変わって来ます。 新築であっても、選択を誤れば総費用は無論のこと、売却損も大きくなるのです。

 
中古は到底考えられないという人もありますし、反対に積極的に中古から選ぼうとする人もあります。 

新築がいいと思っているが中々見つからないので、次善の策として築浅の中古を検討している人もある一方、築年数にこだわらずに中古を探している人もあるのです。

 新築にこだわるか、中古も検討するか、あるいは中古に絞って探すか、どれにするかは個人の価値観になるのでしょう。その意味では中々微妙な問題です。

購入時のイニシャル費用は中古の方が負担感が軽いとしても、また毎月の負担感も同様としても、売却時に大きな損失が出るようなら、元も子もないということになります。

とはいえ、筆者は新築にこだわるべきでないと考えています。

関連記事:「基本の新築VS.中古」http://mituikenta.blog.so-net.ne.jp/archive/20160320

「築30年のマンションに10年住んで売却の構想」http://mituikenta.blog.so-net.ne.jp/2015-04-25

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