「今は買うと損」の声に反論するとしたら

ブログテーマ:マンション業界出身者が業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

前回の記事で、「最近のような短期間に大きな価格上昇が起こると、その恩恵を受ける人が増えます。2010年~2012年頃に購入した人は、みなさんそうかもしれません」と書きましたが、反対に急激な上昇が起きてしまった最近1~2年に買った人、または間もなく買おうとしている人は損失を被ってしまうのでしょうか?

同じような条件のマンションを値上がり前夜の2012年に5000万円で買った人の方が、値上がりの進んだ2015年に6000万円で買った人よりお買い得だったのは確かです。

これは結果論みなたいな話です。価格動向を横目で見ながらタイミングを計って買うなどという芸当はしないものだからです。

とはいえ、高くなったことを報道や販売広告などで知ると、しばらく様子を見ようとか、高くて手が出ないから中止だとかの考えに至るのは仕方ないことかもしれません。

しかし、前向きに検討している人の意欲に水を差す周囲の声があるとしたら、それを跳ね返す信念を貫くことも大事です。今日は、そんな声への反論を書こうと思います。

●買ってしまった人へ

最近のマンション購入者は、急騰した状態を知らずに買った人、そうらしいと知りながら買えるから買ったという人、どちらにしても合計で何万人もいますが、この人たちの家の将来価値はどうなってしまうのでしょうか?

この答えを導くためには、今後のマンション価格がどのように動くかを先に抑えておくことが必要です。

急騰した相場は、いずれ調整の時期がやって来ます。ここでは、ケーススタディとして次のように前提を置くことにします。

2016年(現在)を100とし、今後も更に上昇して東京オリンピックの2020年が120になったとします。その後は値下がりして、10年後の2026年には100に戻ったとします。

今年、新築マンションを100で買った人の10年後を考えてみましょう。築10年の中古マンションは、その時点の新築マンションに比べると、地域や物件固有の条件で異なるのですが、平均すると東京都区内は8掛けくらいになっています。

10年後の新築が100としたケースでは、10年中古は80となるわけです。つまり、20%値下がりするということです。

ケース2として、15年後に新築相場が120になったときの中古価格を考えてみましょう。

15年中古は、その時の新築相場の7掛け程度というデータ(23区の場合)があります。としたら、120×0.7=84なので、100で買ったマンションは15年後に84で売却が可能という理屈になるのです。

10年後が80で15年後が84。 これを読者の皆さんはどう感じますか?15年で84はともかく、10年後が20%ダウンの80と聞いて、どう感じるでしょうか?

そのくらいなら損はないと思う人、そんなになってしまうのかと思う人、その割合は分かりませんが、ここで筆者が支持するのは、前者の「損はない」です。

詳しい計算は割愛し、要点のみ述べることにします。

10年間に支払った総費用、大きなものは住宅ローン返済ですが、ご存知のように金利はただみたいなもので、大半が元本返済に回ります。従って、10年後の残債は大きく減少しており、20%安で売却しても銀行清算後の手取り額は意外なほどに多いのです。

ちなみに、30年返済で1000万円を借りた場合、金利は10年固定0.8%として試算すると、10年後の残債は約690万円となります。つまり、31%も減るのです

結果として、イニシャル費用(頭金・物件代金以外の諸費用・不動産取得税)の100%回収どころか、150%となる人もあります。150%になった人の場合、イニシャル費用を投資元本と考えると、10年間で50%の金利が付く金融債を買ったようなものです。

一方、150ではなく、90%しか回収できなかった人は、損ということになるのでしょうか?

この場合も、一概に損とは言えないケースが多いことが分かりました。

資金内容、ローン利用額などの条件によって大きく変動するので、ここでは試算例を紹介しませんが、総支払額と売却による入金額のキャッシュフローを計算して行くと、マイナス(支払い超過)になります。これを120か月で割り、借りた場合の想定家賃と比較してみると、メリットがある方が多いからです。

●高値掴みの場合はどうなる?

ここまでの説明は、あくまで平均的な数字を前提としたものです。10年後なり15年後の価格が80なり84になるという話でした。ところが、「平均80」の統計を構成する数字には、60もあれば100もあるわけです。

60になってしまうものと、80や100になるものとの差異は、いくつかの要因によって生まれるわけです。立地条件、建物価値、ブランド価値、管理状態などですが、中でも立地条件は大きく左右します。

最寄り駅から5分と10分の差もありますし、同じ5分でも線路沿いの物件と公園前の物件では価値が違います。

しかし、条件の悪い物件は購入価格も安かった可能性があります。

その反対もあります。問題は、中途半端な立地で建物価値も「普通」でしかないのに、同エリアの平均を10%も20%も上回る高値で販売された物件を買ってしまった場合です。そのような物件は、この3年くらいでは多数見られました。

仮に新築時に相場の2割高という高値掴み(120で購入)してしまったらどうでしょうか? 10年後に新築相場が100とするなら、相場の80となるような平均的な中古物件は80となり、これは購入価格120から見ると、80÷120なので34%もの値下がりになってしまいます。

次に、この中古物件が10年後に新築相場に対して90%くらいに高く評価されるような優良なものだったとしたらどうでしょうか?購入価格120から90になるので、それでも25%の値下がりになるのです。

優良な物件を手に入れることができた。将来が楽しみだと期待していたとしたら、裏切られるということでもあるのです。

勿論、少し高いかなと思いつつも、大規模な再開発が進んでいるので、購入価格より高値で売れるはずだと期待する買い手も多いのです。実際、そうなることもあります。

つまり、広域の平均では10年後も現状と変わらない100の新築相場になっていたとしても、特定の狭域では10年前より高い150にバリューアップとなる場合があるかもしれません。

そのような期待が大きいエリアの物件を120の高値で買った場合は、10年後の新築相場が150に対し、8掛けの120となれば、買い値と変わらない計算です。

もしかしたら、そのエリア内で最も駅に近く、付加価値が高い大型物件で、50階建てのタワーマンションであるといった同エリア内でも圧倒的な差別感がある物件なら、10年後の新築相場を超える価値と見なされる可能性も高いのです。 そのような物件なら、購入価格が120でも、10年後の新築150を超える160で取引が成立するかもしれません。

このケースは高値掴みではなかったという結果論で語られることになるのかもしれません。

こうしたケーススタディを多数してみると、僅か3年で平均20%以上も急騰した東京圏のマンションですが、そんな時期に買ったら損をするとは断定できないことが分かって来るのです。

とまれ、物件固有の条件によるわけで、どれだけ競争力のある物件を買ったかがカギを握るということになるのです。

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