(11/20の2)住友不動産 新築マンション市場を席捲か?

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。
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新築マンションの発売戸数で、2年連続日本一になった企業が住友不動産で、同社の物件ホームページを覗くと、必ずポップアップの形で「2年連続マンション供給戸数 全国・首都圏第1位のアピール広告が出て来ます。

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どの物件でも同じように表示され、数の多さを誇示しています。ある業界人は言いました。情報誌SUUMOを通覧すると、まるで住友不動産専用の情報誌みたいだと。

そのような印象は確かにありますね。ちなみに、2016年9月13日号で同社が売主となっている物件数をカウントしてみました。

東京23区では112物件中24物件、横浜・川崎・湘南エリアで19物件中4物件、東京市部・神奈川県北部エリアでは27物件中7物件、埼玉エリアで17物件中3物件、千葉・茨城南エリアで、19物件中2物件となっています。合計では、194物件中40物件20.6%となっています。

供給戸数のレベルが高かった時代、中堅業者の元気だった時代には、「大手の寡占化」などと言われても上位20社の合計で20%台だったと記憶していますが、このシェアを住友不動産1社で達成した勘定です。

寡占の状況は、2015年だけのデータで見ると、20社合計で40489戸、全国シェア51.8%とあります。

寡占化が大きく進んだのは、中小デベロッパーが経営破たんしたり、撤退したりと元気がなくなってしまったことにもよるのですが、上位20社の中でも住友不動産、野村不動産、三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンスの4社が抜きん出ています。

絶対戸数は、かつての大京の年間1万戸以上には遠く及ばない戸数ですが、トップの住友不動産が5398戸、2位の野村不動産は4556戸、3位の三井不動産レジデンシャル:4308戸、4位の三菱地所レジデンス:4005戸と続きます。5位はがくんと下がって2770戸の大和ハウス工業がランクされています。

(データ出所:不動産経済所)

今後の新築マンション市場はどのような変遷となるのでしょうか?

個性的で大手に負けない中小デベロッパーは育って来ないものでしょうか?そんな視点で眺めていると、独特の成長戦略を持つ企業はあるものの、伸び悩んでいるという印象です。

建築費の壁、用地取得の壁に突き当たっているのでしょう。そんな中、伸びている企業もあるので、着目して見るのですが、商品企画の面で水準を下回り、安いだけが取り柄の粗悪な建物にしか見えなかったりするのが残念なところです。

今年は関西本社の京阪電鉄不動産や阪急不動産などが首都圏でも存在感を増していたように感じます。

業界がマンションの普及と発展に伴って成長した時代には、大京を筆頭に独立系のデベロッパーが大手と堂々と渡り合っていたものですが、すっかり影が薄くなってしまいました。

今後も、大手中心のマンション市場が続くと見られます。そうなると、「マンションを買うなら住友不動産で」などということになってしまうのでしょうか?

まあ、そんなことになるとは全く思いませんが、住友不動産の供給日本一のPRを何度も見せられると、住友不動産の総合マンションギャラリーへ行けば首都圏の新築マンションは全部そろっているかのような錯覚に陥ってしまう人もあるのではないかと思ったりもします。

ともあれ、新築マンションの多くが大手の手になる物ばかりというのは、品質の安定とアフターケアの観点から買い手にとっては安心材料ではあります。なにせ、財政基盤が異なります。いざとなれば、信用第一の措置をしてくれるに違いないからです。2015年に発覚した傾斜マンションで三井不動産レジデンシャルが取ったような行動を期待できるのですから。

財務基盤が強いのは先に述べた4社ばかりではありません。メジャーセブンと言われる他の3社も、準大手と言って良い、大和ハウス工業や積水ハウス、大成有楽不動産、新日鉄興和不動産、伊藤忠都市開発、阪急不動産、近鉄不動産といった企業も十分な力を有しています。

欠陥マンションが誕生しないことが一番ですが、大手のマンションですら起きることを私たちは学んだのです。ある意味で大手寡占化は歓迎すべきことと筆者は思います。

今日の最後に、いずれ詳しく書きますが、「瑕疵担保責任保険に入っているから(中小企業の)当社でも安心です」の甘言を鵜呑みにしない方がよいことを添えておきたいと思います。