ここまでやる?賃貸マンション仕様の新築マンション

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

新築マンションの完成後、購入者を招いて実施される「内覧会(ユーザー検査)」に立ち会う業務に従事すると、様々なことが見えて来ます。

マンションは完成してしまうと、入居者に知り合いがいない限り中を見ることができなくなるので、筆者のような研究者にとっては貴重な体験ともなるのです。有り難いことです。

とまで、最近感じた業界への失望について今日は書こうと思います。

●乾いた雑巾を絞る発想

その昔、高収益を上げるトヨタ自動車の秘訣を分析・研究した講演や著書が流行したことがありました。「カンバン方式」と呼ばれる独創的な生産管理方式が最も有名ですが、「トヨタの秘密」の中に、「乾いた雑巾を絞る」と表現されたコストダウンの徹底ぶりもあったと記憶しています。

4年くらい前の本ブログで、筆者は建築費の上昇を業界がどのように乗り切るかについて書きました。その策のひとつは、見えないところで建築コストを下げることが徹底されるだろうというもの。

そして、その策は着実に業界内で浸透し、あまり褒められないマンションを増やし続けています。

具体的には、本ブログで人気の高い記事でもある「アルコーブのないマンションに注意」と「15階建てマンションに注意」、そして「直床構造の何が問題?」などで指摘した問題マンションでした。

他にも、ホームページやパンフレットでは見えない、または見落してしまいそうなところでコストダウンを図った例も少なくないのです。例えば、「タイル貼りと謳いながら、張る面積は最小限である」などが最たるものです。他にも、「排水管の遮音性に配慮」と書きながら、専門家が見ればC級グレードの対策に過ぎないといった例もあります。

これらのコストダウン策は、筆者の予想を超える広がりを見せています。大手はやらないだろうと考えていた筆者の観測は甘かったようで、「〇〇社さん、お宅もやるの?」と首をかしげるマンションが続々と誕生しているのです。

それで終わりではありませんでした。目に見える部分でも明らかなコストダウンを図ったマンションが目につき出したのです。目に見える部分は買い手の支持を得られず、販売成果に影響するので、やらないものですが、「露骨」な事例も出て来たからです。

それは将に「乾いた雑巾を絞る」発想に近いものと言えるのです。

●客をなめているのか?

「客をなめんな」と言いたくなる、そんなマンションが出て来ました。それは、いわゆる一次取得者向け、低価格の郊外マンションで散見されます。それをこの目で見た筆者は、無知な買い手を欺くようなビジネス手法だなと感じたものです。

近年は、洪水と言って過言でないほど情報が多いので、素人でも玄人はだしの人が増えたと言われて来ました。下手な営業マン顔負けの専門知識を携えた買い手が多いのです。

ところが、一方では毎年新しい購入予備軍が誕生して来ます。彼らは将に無知な人たちです。しばらく経てば玄人はだしになって行くのですが、所詮は仕事の合間に勉するだけですし、見学するマンションの数も個人差があります。

たくさん見て来たと自負する人でも、目の付け所が違えば、短時間に問題を発見する能力を身に着けるわけでもありません。中には、ぼんやりとしか見ていない人もあって、件数に比例して知識が増えているわけでもないのです。

さらに言えば、間違った知識を信じてしまうしまう人もいます。

筆者に届くメール文からダイレクトに、または行間からご相談者の知識のレベルを窺うことができるのですが、「三井さんもブログで書いているように」と断ってから検討マンションの懸念点について質問を寄せて下さる人、どこかで聞きかじったマーケット法則や建築知識などをいつの間にか我が物にして知ったかぶりに書いて来る人、専門的な分野ではあるものの、購入に当たっては気にするほどのことでもないような些末な問題を心配し過ぎる人、反対に「初めてのことなので、何も分かりません。わたしどもにも理解しやすい言葉でお答えください」と書いて下さる謙虚な人など、様々です。

悪意があってもなくても、インターネット時代になってからは、間違った情報と知識が横行しています。この洪水をかき分ける、言い換えれば正誤を嗅ぎ分ける、仕分けする、堅い表現を使えば、情報を取捨選択する能力も必須になっています。

話を元に戻しましょう。保有する情報と知識のレベルと質は、買い手によって格差があります。中には、殆んど無知であるがために最近の新築マンションにしては低品質の「上級マンションもどき」を買ってしまう人もあるのです。

買わされてしまうと言い換えた方がいいかもしれません。今住んでいる賃貸マンションと較べれば、はるかに上質であるかもしれません。しかし、分譲マンションというものは、もっと上級なのです。そのことを知らないゆえに買ってしまうのでしょう。

筆者は、ある販売現場で「随分コストを切り詰めましたね」と営業マンに語りかけたことがありました。営業マンは、図星を突かれたからでしょうか、怒ったように「どこがですか」と応じて来ました。論争する気はないので、すぐに話題を切り替えたのですが、「この人たちは誇りを持って販売に当たっているのだろうか」そんな疑問がかすめた瞬間でした。

●売り手の論理は

良いものを提供したいが、仕方ないのです。なにしろ建築費が上がり過ぎて。販売価格が高ければ希望に添えないので、質は少し低くなるが、これでも構わないというお客様があるなら、それを提供するもデベロッパーの務めです。

売り手は、「本意ではないのだ」こんなふうに言い訳しているようです。

大昔なら、これでも十分に満足したユーザーが多かったに違いありません。「昔は食器洗浄乾燥機がなかったのですから、インターホンもテレビモニターはなかったのですから、テレビモニター付きになってからも、最初は白黒で満足していたのですから、これでも十分にレベルの高いマンションのはずですよ」とでも言いたげです。

一定程度は、的を射た説明です。実際に満足して買って行くユーザーがあるのも事実ですから。
しかし、買い手とは、契約した後も「この選択は正しかったか」と調査を続けるものです。筆者に寄せて下さる「物件評価」のご依頼には、そうした買い手の心理が色濃く反映されているのです。

その結果、自分の買ったマンションの質の低さに落胆し、後悔してしまう人も少なくないようです。「知らない方が良かった」と感じた人もあるに違いありません。

●乾いた雑巾を絞った結果はこれだ

ずいぶん前置きが長くなってしまいました。販売に影響を与えにくいと売り手が信じる(?)究極のコストダウンマンションをお伝えしましょう。それは、たとえて言えば「乾いた雑巾を絞る」類のものです。

不採用例を探すのが難しいほど、今ではどこのマンションでも当たり前に標準装備している(オプションなどではない)スペックを持たないマンションが再登場している事実をご覧ください。

◆ソフトクローズでない調理台の引き出し(最後まで押し切らなくても勝手に閉まるのがソフトクローズ)

◆吸気口に防塵フィルターがない

◆防犯設定がない(共用玄関のモニター付きインターホン機能があるだけの住宅情報盤)

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◆足元保安灯がない(室内廊下には、取り外して懐中電灯としても使える)

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◆玄関の人感センサー(暗闇でスイッチの位置を探す必要がない便利な自動照明装置)

◆格子窓(右下。左下のブラインド型なら窓を開けても通行人から室内が覗かれない)

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◆玄関横のエアコンの室外機の露出置き(左下。玄関の脇にエアコンの室外機が設置されるケースは花台などで半分は隠すのが普通=右下)
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◆廉価な洗面化粧台(何という材質か、あまり美しいとは言えないい)
◆浴室のランドリーパイプは1本(普通は前後2本)

◆シャワーホースのホルダーが固定式(左下。ユーザーの背丈によって使い分けるには上下スライド式が便利=右下)
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今日の記事は、スペックのレベルを分からないまま買って後悔しないように願って書いたものです。十分な知識を持ち、見分ける目を持っていると自信のある読者にはつまらない、あるいは無用な記事だったでしょう。最後までお付き合いくださりありがとうございます。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

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