糸魚川大火とマンション。そして木造住宅密集地。

このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

NHKスペシャルという好番組があります。そのシリーズで、つい2週間前(2017年1月22日)に「地震火災」の恐怖についての番組を見ました。タイトルは「メガクライシス~地震火災~」でした。

新潟の糸魚川市で起きた、1か月前の大火災は日本中に衝撃を与えました。1軒の中華料理店から発生した火事が、あのような被害をもたらしたことで、我が町は大丈夫かと各地で不安にかられる人も多数あったことでしょう。

NHKスペシャルでは、地震が火事を発生させれば、火元は1軒ではなく、同時多発的に街を襲い、広域避難所へたどり着けない事態もあり得るというシミュレーション映像を放送しました。恐ろしい光景でした。火事によって何千人もの命を奪うリスクを伝えたからです。

番組では、1995年の阪神淡路大震災の火事の実写も放送しました。神戸市の長田区で起きた大火でした。地震による死者の数は5000人以上でしたが、このうち火事によるものは400人以上と言われた惨事でした。あれと同じことが、東京都内でも起こり得ると世田谷区の住宅街でのシミュレート映像を研究者が作製したのですが、それをNHKは番組で流したのです。

世田谷区をよく知る筆者は、広域避難所に向かう道の両側の家が火事になれば、熱風が吹き付け、通り抜けることができなくなる光景を想像することができます。引き返して違うルートを探して右往左往し、最後は行き場を失って焼け死ぬかもしれないと語る番組のナレーションを聞いて、ぞっとする思いを抱きました。

東京には木造密集地として、しばしば足立区や葛飾区などの下町が話題になって来ましたが、世田谷区もそのひとつなのだと認識したのです。もしかすると、杉並区や練馬区、大田区などの住民も「我が街は大丈夫か」との思いを抱いたに違いありません。

木造住宅密集地で火事が起きたとき、道路が狭いために消防車が入れないという心配は昔から語られていましたが、街をまるごと作り替えるのは至難の業なので、全く手つかずの状態が続いているのが実態です。

そんな中、品川区の「大井町駅4分」で住友不動産が進めている「(仮称)大井町再開発タワープロジェクト(全629戸)」は、注目すべき再開発案件です。

工場や倉庫、研究所などの大型の敷地が連続していた武蔵小杉エリアなどと異なり、小規模な住宅が立ち並ぶエリアの再開発は、着工までに途轍もなく長い時間がかかるものです。住民の合意形成という非常に難しい課題が立ちはだかるからです。

それが、前に進んだというのは、今後、都区内各地のの再開発を誘発するプロジェクトになるのだろうと期待させるニュースだったかもしれません。

たまたま大井町に行く仕事があった筆者は、開発現場に足を伸ばしましたが、既に解体工事が終わっていたので元の姿は想像するしかなかったのですが、駅に近くて雑多な街の一角の裏に街の風景を一変させるタワーマンションと、おそらくは足元に広く残される公開空地を思うとき、「安全・安心の街」の誕生を他人事のように思えない、どこか心地よさのようなものを感じたのです。

また、これも住友不動産が関わる形ですが、品川区の「西品川1丁目」が再開発され、2018年に高層マンションに生まれ変わるのだそうです。報道によれば、2013年に火事があったそうで、消防車が現場に近寄れず、放水ホースも届かなかったとあります。このときの教訓が住友不動産の再開発計画に住民(西品川1丁目市街地再開発組合)がもろ手を挙げて賛同するきっかけになったということでした。

そう言えば、武蔵小山(これも品川区)でも再開発が進んでいたはずです。東京都のホームページによれば、「本事業は、東急目黒線武蔵小山駅に近接した住商混在の密集市街地において、街区再編と大規模な共同化により、土地の高度利用を行うことで、賑わいと都市居住が複合した安全・安心な魅力ある市街地を整備し、品川区の西の玄関口・荏原地区の中心核にふさわしい地域拠点の形成を図るものである」とあります。

面積は、約0.7ha、総事業費約321億円、整備内容は延べ面積 約53,900平方メートル、主要な用途は住宅、商業、公益施設、駐車場等、 住宅戸数 約500戸とあります。建築工事着工予定、平成29年 3月とあります。

このような動きが他の地域にも飛び火し、不燃化事業として増えれば、街の安全と景観的な魅力も増すことでしょう。デベロッパーから見れば、住民運動が盛り上がることで合意形成が促進されれば、用地難の克服ともなります。

ところで、この数年、マンション価格は急激に上がりました。高騰原因は、建築費の上昇と用地取得費の上昇にあります。

建築費の上昇要因は、ご存知の通り「東日本大震災の復旧・復興工事」と「アベノミクスによる公共工事の増加」、「東京五輪を睨んだホテル建設やオフィス建設(都心再開発)」による建設ラッシュが人手不足を生んだためとされています。

用地費の高騰は、土地の供給がひと頃より大幅に減ってしまったことによります。

1990年代から2000年代初頭のポストバブル期、企業は抱え続けて来た土地を大量に放出しました。社宅、グランド、倉庫、資材置場、工場などが続々と売り出され、これをマンションデベロッパーはこぞって買収したのです。

しかし、その流れも一巡してしまったため、マンション業者にとって適地とされる「都心・準都心の駅近・大型」は、公示地価の2倍などという、とんでもない価格でなければ落札できない事態となったのです。

500戸とか1000戸などというメガマンションは、元は倉庫か工場だったものが多いはずですが、それらは都心に近いエリアでは湾岸だけです。中央区月島や勝どき、江東区豊洲、港区芝浦、港区海岸といったエリアでは、一時、供給過剰を心配するほど建設ラッシュとなりました。

今後も、東京五輪の選手村に5600戸が建設され、閉幕後は民間に払い下げられて一部賃貸、一部分譲となりますが、これもご存知のように中央区晴海、つまり湾岸エリアです。

そう言えば、有明の土地を大和ハウス工業が最低入札価格の2倍の値で落札し取得したというニュースが2年ほど前に流れたことを思い出しましたが、あの土地はマンション用地ではなく物流基地の建設用地でした。ネット通販市場が拡大したため、このような土地需要も増えていたのですね。

マンション建設は、敷地が広いほど時間はかかるものの、やりやすい側面があります。また、1件の敷地で大きな売上を作ることができるので効率的です。広い敷地は、嫁一人に婿10人の状態にあります。

一方、日本橋エリアでは、現時点で10か所以上のマンション建設ラッシュとなっています。老朽化した小型商業ビルの売却が進み、そこにマンション業者が多数集まった格好になっているのです。

元々が立錐の余地なくビルが建っている日本橋エリアで、土地を売却する人(会社)がなぜ急増したのでしょうか? 考えてみると2015年に改訂された相続税の強化策に辿り着くのですが、その分析の正否はともかく、10か所以上のマンションは、どれも超小型です。150戸ほどの「ザ・パークハウス日本橋大伝馬町」を除くと、50戸前後ばかり、20戸台も見られます。

小規模マンションは、開発に時間がかからない利点がある反面、付加価値の高い物件を創りにくい欠点があります。それでも、大手(三井・三菱・野村・東急など)、中小デベロッパーが大挙して開発・販売している現状を見ると、いかに用地取得に苦労しているかを窺い知ることができるのです。

こうした情報を集約すると、マンション用地を取得するのは益々困難になっていることが確実であり、やむを得ず郊外の不便な立地にも手を出さざるを得なくなってきたようです。

しかし、新築マンションの品数が少ないからと言って、何でも売れるわけではなく、バス便マンション、工場地帯に近いマンション、都心から遠く離れたマンションなどは苦戦を強いられることを覚悟しなければならないのです。そのことをデベロッパー各社はよく知っており、用地取得に当たっては慎重にならざるを得ません。

結局、今後は好立地の建て替え事業を狙う、すなわち冒頭の木造住宅密集地の再開発や、旧公団分譲のマンションの建て替えなどに活路を見い出すしか、デベロッパーの生きる道はないのかもしれません。

勿論、今後も相続絡みの売土地は出てくるでしょう。工場の移転もあるはずです。企業保有の古い社宅や都心の公務員住宅の売却などもあるでしょう。また、築50年を超える老朽化した、とりわけ耐震性の劣る分譲マンションの建て替えも少しずつ現れる可能性もあるでしょう。

しかし、大量供給の可能な時代はもう来ないかもしれません。ただ、長い目で見れば、人口も減って来るので、新たな建設はさほど必要がないとも考えられるのです。

ともあれ、新築マンションの供給が増えなければ、今後の住み替え、買い替え対象は中古マンションが主流になるかもしれません。

★差し上げております
未公開資料NO.79初めての方へ「三井健太流・マンション購入サクセスロード」こちらからご請求ください http://www.syuppanservice.com/mikoukai-siryou.html

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

★★★三井健太の「名作間取り選」はこちら
https://mituimadori.blogspot.com

★★★「三井健太の住みたいマンション」はこち
https://sumitaimansion.blogspot.com

完成内覧会の立会サービスを「格安」で。ただいま予約受付中!!
詳細はホームページのトップにある「メニュー」内の「内覧会立会いサービス」をクリックするとご覧になれます。こちら・・・http://www.syuppanservice.com