同一エリアに3000戸もの大量供給。将来、売り物多数で値崩れしないか?

 このブログはマンション業界OBが業界の裏側を知り尽くした目線で、マンション購入に関する疑問や諸問題を解き明かし、後悔しないためのハウツーをご紹介・・・・原則として、毎月5と10の日に投稿しています。

標題のご質問をときどき頂きます。新築マンションの供給が減っている時ですが、特殊な集中エリアもあるためのようです。

例えば、都区内では月島や勝どきといった中央区の湾岸エリア、品川シーサイド駅や天王洲アイル駅、国際展示場駅といった品川区、港区、江東区などの湾岸エリア、川崎市の武蔵小杉エリアなどでしょうか?

筆者の答えは、「ご心配は無用」です。

沢山のマンションがあれば、中古物件の流通も増える、市場に多数出回れば価格競争が起こって値崩れする。理に適ったご心配ですが、現実はそんなことになりません。売りに出す人の心理や動機から考えてみましょう。

 「中古マンションが急騰していて我が家も随分高く売れそうだ。売るなら今がチャンスだ」。そう言って自宅を直ちに売りに出すでしょうか? 売った後はどうするのでしょうか?子供の学校は?通勤は?同じエリアのマンションは、我が家と値上がりしています。買い替えのメリットはあるでしょうか?

たまたま「転勤になった、丁度いい、愛着のあるマンションだが、この際売って多額の現金を手に入れよう」――このような人もあるでしょうが、そんな人が市場価格を攪乱するほど多数重なる可能性は低いはずです。

 同じようなライフステージにある所有者が多ければ、子供の成長とともに住み替え時期が重なることもあるかもしれませんが、一斉に売り出されることは考えにくいものです。

 もちろん、転居者が多い時期やマンション売買が急増するシーズンというのがあることは確かですが、その時期は売る人も多いかわりに買いたい人も多いことを意味します。

 しかも、特定の地域だけに集中して起こるわけではないはずです。人口が多い地域では、それなりの沢山の売買が行われます。高齢化によって取引が活発でないエリアもあるでしょうが、新築マンションが大量供給されるエリアは、人口流入が多いわけですし、商業施設も増えて活気ある街になっているか、そうなる期待を抱かせる街です。

そのような街では、マンション需要も多いので、売りに出される数が多かったとしても問題はありません。

ただし、100戸のマンションから売りに出る数より1000戸のマンションから売り出される数は多くなるものです。従って、同一マンション内での競争と同一エリア内の競争は起こります。その意味では、できるだけ競争力の高い物件(住戸)を選択することは必要です。

 しかし、極端な悪条件を抱えている物件でなければ、市場原理に従って売買は成立します。つまり、買い叩かれてしまうことはありません。

 東京の場合、買い手は地元の狭い区域のみで探すということはなく、広域に探す傾向があります。従って、広域の中で需給がバランスしていればよいのです。

最近は、新築の供給が大幅に減っている関係で、例えば10年後あたりを展望すると、築浅中古が市場に少ない状況を迎えるはずです。その意味でも、全体的に中古マンションの価格が落ち込む確率は低いのです。数字を見ましょう。

 
  首都圏の新築マンション年間供給戸数の推移をみると、最近数年は10年前と比べると半減しています。23区も同様で、40%近くも減りました。

2004年、2005年、この頃は35,000戸ほどが供給されました。
(39,147戸・31,025戸)
最近は、22,000戸程度に減っています。
(2012年:19,398戸、2013年:28,340戸、2014年:20,774戸、2015年:18,472戸)

これは、次の10年後に築浅マンションの流通戸数が非常に少ない状況を予想させるデータです。

 どうしてこんなに減ってしまったのでしょうか? 理由は二つと考えられています。

ひとつは、中小デベロッパーの減少です。つまり、作り手がいなくなったのです。

2008年秋に起きた「リーマンショック」は世界金融危機と世界同時不況を招きました。日本も例外ではなく、百年に一度の不景気が来るとの危機感が広がり、とりわけ金融機関はバブル崩壊の過程で巨額の不良債権を抱えてしまった経験から、守りの姿勢を強めました。その影響を最も強く受けたのが、負債比率の高い中小マンション業者とゼネコンでした。

マンション供給戸数で一度は大手「大京」を抜いて全国一位になったA社を筆頭に個性派のマンション業者が、株式上場企業も含めて銀行から資金を止められ、多数倒産してしまいました。

大手は大規模マンションを、中小は大手が手を出さないエリアと中規模以下のマンションをと、住み分けしていた業界でしたが、その構図が崩れ、中小業者の分がごっそりと減ったのです。

理由の二番目は、用地の取得ができなくっていることです。

良い土地が中々ないと嘆きながらも用地を確保し、マンション供給を続けていた業者に強い順風が吹いた時期がありました。

バブル崩壊後の地価下落過程で、法人・団体は一斉に土地を放出し出したのです。それまでは一度取得したら手放さないで抱え込むことが含み経営のメリットであり根幹をなすものでしたが、右肩上がりの土地神話が崩壊し、並行して会計基準が国際化されたことなどによって、方針転換する企業が続出しました。

社宅、グラウンド、工場、倉庫、資材置き場、廃校や移転で空いた学校など、マンション業者にとって垂涎の土地が次々と売り出され、マンション業者の手に渡りました。その結果、バブル期には殆んど途絶えていた(※)と言って過言でない新築マンションが息を吹き返したように急速に開発され、市場に送り出されたのです。

(※1991年の首都圏全体の新規発売戸数は、20数年ぶりの低水準だった2016年の戸数35,772戸すらも下回る26,248戸と極端な数だった)

2000年からリーマンショック前年の2007年までの年間供給戸数は、平均80,000戸を超えることとなりました。首都圏の年間需要は50,000戸くらいと言われていましたが、バブル期の供給不足がウエイティング需要を蓄積させていたことによって爆発的な売れ行きをもたらしたのです。

ところが、その後はマンション用地の取得が極端に減少しました。企業のリストラ(土地の置き換え・単純放出)が一巡してしまったのです。特に大規模敷地は湾岸エリアに限られてしまったかのようです。地価の高騰もあって、2007年以降の供給戸数は減少トレンドとなったのです。

供給が減っても、需要も減ればバランスするわけですが、最近数年の40,000戸前後の供給戸数に対して需要はどのくらいあるのでしょうか?

この答えとなる適切なデータは見当たりません。しかし、市場実感として言えるのは、50,000以上はあるということです。

超長期で見れば、人口の減少が住宅需要の減少をもたらすことは間違いないですが、首都圏、とりわけ東京都区部は減少スピードが遅いと考えられています。最近も全国の傾向と逆の人口増加傾向にあります。

こうした背景を見ながら考察して行くと、向こう10年程度で需要が2割も3割も減ってしまうことはないでしょう。しばらくは50,000戸程度の新築需要はあると見てよいのです。まあ、減っても40,000戸くらいは維持できるはずです。

そんなマクロ市場とは別に、都区部・都心などという特定エリアになると需要は底堅く、むしろ増えると見てもよいかもしれません。
 需要が供給を上回る状況になれば、どんな中古物件でも底上げされる期待が持てることになります。

あとは、物件固有の条件格差ということになるわけです。いかに競争力の高い物件を手にするか、この一点に検討課題を絞っておけばタイトルの「供給過剰問題」は心配無用なのです。

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