第571回 「相変わらず高いマンション価格」1~7月の動向

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新築価格の動向を毎月注視していますが、中々値下がりに転じないようです。

●新築マンションの動向

2017年1~7月の7か月の価格を見ると、前年同月比でマイナスになった月は3月の1回だけでした。1~6月の平均では前年同期比4.0%上昇となった模様です。7月単月では16.0%も高い(不動産経済研究所)と発表されました。

首都圏の半分弱を占める東京23区の上昇率が最も高く、その影響力が高いことは確かですが、他の地域も東京市部を除き少しずつ上昇しており、首都圏全体の傾向と言えます。

売れ行きは相変わらず低調で、毎月の契約率(新規発売分が当月の月末までに売れた初月契約率のこと)は好不調の分かれ目とされる70%を超えた月は5月と7月だけでした。

売れ行きが低調のときは、売り出し戸数も減るものですが、この1~7月は前年同期比2%ほどの伸び(7か月合計17,880戸)となったようです。といっても、前年が最近10年で最低の35,772戸(年間)だっただけに低調ぶりは変わっていません。年間では、8月以降に増える見込みらしいのですが、それでも前年並みに留まるのではないかと思います。

品薄感が続き、価格も高い。買いたくても買えるものは少ない。このような状況は相変わらずというわけです。筆者は、2018年でピークアウトすると読んでいますが、その兆しはちらちらしていますが、はっきり前倒しになる様子は見られません。

最近聞いた話ですが、水面下では数百万円単位の値引き提案が行われている売れ残りマンションは10物件以上あるのだそうです。筆者の実感では、そんなものではないと思うのです。売れ残りを「竣工後に継続販売中のマンションのこと」と定義すると、365件(23区だけで119件)もあるからです。これらのうち、竣工後1年以上を数えてみると、72物件もあるのです。2年以上も少なくありません。

●マンション業者の姿勢に異変?
建物竣工後のマンション販売で「第●期・新発売」の広告が目立ちます。これを見て、違和感を強く覚える人もあると聞きます。筆者もその一人です。何故なら新築マンションは遅くとも竣工完売が業界共通の目標で、竣工後に「新発売」というのはあり得ないことだったからです。

竣工までに完売できないと悟った売主は、腹を決めたのでしょう。とにかく売れる数だけ、1期00戸、2期00戸・・・と小出しにして売るのが最近のスタイルです。しかし、そうしながら販促を進めても、竣工までに完売できそうにないので、長期戦を覚悟したというわけです。

入居が始まり、居住者のいるマンションに外部から見学者を多数、しかも長期間招き入れる図は好ましいものではないはずですが、管理費は売主が負担するのだからご迷惑をおかけすることはない、そう割り切っているかのようです。

業者の中には、竣工前だろうが竣工後であろうが、「新発売マンションであって売れ残りではない」と開き直り、値引きなどとんでもないと語るデベロッパーもあります。

しかし、ホンネは違います。早く完売して別の物件の販売にかかりたいのです。販売が長期化すれば販売要員も足らなくなります。販売委託先の人員も限られるので、経験不足のスタッフが増え、顧客サービスに不満や説明の誤りによるトラブルなども出てきます。

早く完売しなければ、そのためには、値引きもやむを得ません。そう考える売り手が大多数です。

先週(2017.8.8)のSUUMOの中から「旧価格6468万円を新価格5800万円に(約10%引き)。1戸販売中」という物件を見つけました。竣工が2016年2月となっていますから、1年半経過したことになります。残戸数(販売戸数)は6戸とありました。

売れ残れば、やむなく値引き販売に踏み切って早期完売を図るか、定価で(値引きなしで)買ってくれる人を何年かかろうと待ち続けるしかありません。後者は、筆者の知る限り、関東では2社しかありません。大多数の売り主は「モデルルームだから」の大義名分(先行契約者に対する言い訳)を設けて、「家具付きモデルルーム販売」をメーンに、実質的な値引き販売に踏み切るものです。

しかし、そうしても「売れないマンション」とか、「高いマンション」とかの烙印を押されてしまうせいか、上記の例のように竣工後1年半、2年となって完売にはまだ遠い状況に陥ったりするのです。

中には販売初期から値下げを開始する例も見られます。といっても、この場合は利幅の中で住戸間のバランスを調整する程度のようです。例えば、北向きは不人気だから、もう少し下げようというようなケースです。発売前なら、モデルルーム来場者にも「予定価格」としか伝えませんから、訂正は可能なのです。

さて、売れ残った物件がすべて条件の悪い住戸とは限りません。条件の良くない住戸は最初から価格を目玉商品的に下げているので、案外初期に売れてしまうからです。残ったのは存外角部屋などの条件の良い部屋なのです。上述の値引き事例も実はルーフテラス付きの角住戸です。

売れ残るのは、価格が高いからです。買い手は、こうした住戸を狙えばいいのです。ただし、もともと高過ぎるので少し引いてくれたくらいでは、忽ちお買い得住戸になるとは限りません。値引き後の価格が適正かどうかをしっかり判断しないといけないのです。

●中古マンションも全体的には値上がりが続いている

新築価格が上がれば、連動して中古も値上がりします。2013年に始まった今回の価格上昇サイクルは、「高値警戒感」を経て「諦めるしかない高値水準」へ至り、売れ行きの悪化、そして価格上昇のピークアウトが近づいていますが、中古も同様の傾向が感じられます。とはいえ、はっきりと値下がりに転じたとは言えません。

レインズ(東日本流通機構)のデータによれば、2017年7月の成約単価は前年同月比で4.5%上昇、成約価格も前年比で5.4%上昇し、ともに2013 年1 月から55か月連続で前年同月を上回ったからです。

これは首都圏全体の動向ですが、都県別にみても大きな変化は見られません。しかし、ミニバブル的だった湾岸エリアでは値下がり物件も増えていますし、7月5日の本ブログ記事「中古マンションがもうすぐ買いやすくなる??」の中で紹介しましたが、東京都区部の中古マンションの3分の1が値下げに踏み切ったという調査データがあるのです。

調査したのは東京カンテイ社で、中古市場に出ているマンションのうち、直近3か月で値下げに踏み切った住戸の割合は5月時点で32.4%だったそうです。そして、このデータは早晩価格下落サイクルに移行するシグナルだと、同社はコメントしています。

筆者の読みは、新築同様、来年には中古マンションもピークアウトし、値下がりに転じるか、多少読みが外れても前年比で横這いになると思っています。

このような動静を見ながら、購入判断をしていかなければなりませんが、待って得策とは思えないので、うまく探す、うまく値引き交渉する、そんな買い手の行動が重要な時期にあると言えましょう。

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