第633回 同地区で供給過多の心配と五輪後の晴海エリア

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

大型マンションがほぼ同時期に二つ、三つと販売中であるとき、買い手の多くは供給過多を心配します。「近隣でマンションの建設が増えています。同地域にマンションが増えることでリセールへの影響は大きいでしょうか」という質問を過去何回も受けました。

 

具体的には、武蔵小杉に大規模タワーが続いたとき、最近では品川シーサイド駅に3物件が続き、合計1800戸余の供給がなされたときが代表的です。今後も、そのような集中的な供給が行われることはあるのでしょうか?

 

そのことによって既存マンションはどのような影響を受けるのでしょうか?今日は、東京オリンピックの選手村から供給される約4000戸のマンションの影響についても考えてみました。

 

●大量供給はリセール市場をかく乱するのか?

このブログで何度か述べて来たことですが、首都圏の新築マンションは供給戸数が減少し、需要量とマッチしていない状態が数年続いています。このため、新築マンションを探し続けているうちに、当初考えていなかった物件に流れ着く人が多くなっています。品川シーサイド駅の物件も流れ着いた人が多いのです。

 

マンションが欲しいと思ったとき、希望するエリアになければ他に行くしかありませんが、首都圏の場合は、東京に住んでいて横浜の物件を選んだり、埼玉県の物件を選んだりすることは珍しくありません。10年で人口が3倍になった豊洲エリアは、分譲マンションを大量供給したことが要因ですが、買い手の大半がが豊洲以外の地域から来たのは言うまでもありません。

 

その豊洲の中古マンションは今、どうなっているかと言えば、少なくとも大量供給のために中古マンションが値崩れしているという事実はありません。

 

豊洲の中古を購入する人は域内に無論ありますが、域外の人も多いのです。新築マンションが大量供給されたときと同じと言ってよいかもしれません。筆者へのご相談者で、東京都下に住んでいるAさん、千葉市に住んでいるBさんは半年以上の間に各地を放浪して最後に豊洲の中古マンションを買ったのです。

 

郊外の大量供給エリアでも、武蔵小杉のように品川駅、東京駅、渋谷駅、新宿駅へ全てダイレクトにつながる利便性の高い地域のマンションは、それだけ背景に巨大な市場があるので、中古マンションが値崩れする懸念はないのです。あるのは、物件格差だけです。

 

●今後、大量供給されるエリアはどこ?

新築マンションの供給が停滞しているのは、用地がないためです。

小さな土地で大きなマンションの建設はできません。大手のデベロッパーの場合、小規模マンションばかりでは売り上げ目標の達成が困難なので、大きな土地の取得を目指しています。しかし、都区内で広い空き地が残っているのは晴海と有明くらい、倉庫跡地に建つ可能性では品川区の海岸エリアか中央区の月島と勝どき辺りです。つまり、用地供給源は湾岸エリアだけなのです。

 

オリンピックの選手村予定地も湾岸エリア(晴海)です。東京都の所有地で、都営大江戸線「勝どき駅」から徒歩約10分の位置にありますが、民間デベロッパー複数社に譲渡することが決まっています。東京ドーム3個分の広さの敷地に23棟の中高層マンション、戸数で5600戸を建てるそうです。入口までは徒歩10分ですが、13.4ヘクタールもの広大な土地なので遠くの棟は15分を要するかもしれません。

 

賃貸マンション4棟以外の分譲対象は5600戸の70%、約4000戸です。オリンピック終了後に改修しながら、おそらく4年がかりで販売すると考えられます。計画では街区内にスーパーマーケットもできるそうで、人口1万人以上の街にする予定になっています。

 

詳細はまだ見えませんが、過去に5600戸もの大型開発はあったでしょうか?板橋区に「サンシティ」という巨大なマンション群(都営地下鉄「志村三丁目」駅10分。1970年代開発)がありますが、1900戸に過ぎません。2013年に横浜磯子の山の上に開発した「ブリリアシティ横浜磯子」も低層ばかりで13棟でした。戸数で1230戸。億ション団地の「広尾ガーデンヒルズ」は1984年(昭和59年)から1986年(昭和61年)にかけて竣工した、全15棟1181戸でした。

港区芝浦の「芝浦アイランド」はタワー2棟で1928戸、同じく港区港南の「ワールドシティタワーズ」も巨大なタワー(板状型)マンションですが、それでも3棟で2090戸でした。

 

海浜幕張駅の「幕張ベイタウン」は1995年3月に入居が開始されてから、今までに9,400戸が供給され、約25,400人が住む街になっていると千葉県のHPに紹介されていますから、これが最大かもしれません。ただし、開発期間は20年くらいを要したはずです。幕張は中層の建物中心の面的な開発(横広がり)なので、14階~18階、23棟の中高層マンション群になる選手村の景観は想像しがたいところがあります。

 

●選手村マンション4000戸のインパクト

ともあれ、あと2年足らずで街の全貌が見えてきます。どのような形、どのような品質のマンションがどの程度の価格で分譲されるでしょうか?噂はいろいろ飛び交っていますが、超高級マンションになるはずもなく、標準的なグレードで標準的な分譲価格になると思います。

タラレバ論はあまり意味がありませんが、仮に安く販売されると、どのような影響が表れるのでしょうか?

1)格安で販売されるとしたら?

東京都が土地を不当に安く売るということも、反対に高く売り渡したとも思いません。買い手がつかないということがないよう、適正な価格で民間業者に譲渡したものと推測しますが、広大な用地でもあり、比較的安値であった可能性も否定はできません。

 

また、建築費もスケールメリットが働いて抑え目になると推察できます。このように考えると、さほど高い価格で販売されるとは思えませんが、格安になることもないはずです。

 

しかし、駅から距離があるとはいえ、最近の相場を大幅に下回るような低額で販売されるとしたら、同時期に販売を予定している晴海エリアのマンションは売りづらくなるでしょう。また、これから用地を取得しようとしているデベロッパーは慎重にならざるを得ません。よほど良い条件の土地が出て来ない限り、同エリアの土地取得を断念する可能性もありそうです。

 

このように考えると、晴海エリアで検討したい人にとって、選択肢は「選手村マンション」しかないということになるかもしれません。同マンションの販売が終盤に近い時期まで、おそらく3年以上は別のマンションはないと思った方がよいでしょう。

 

ただ、選手村マンションが低価格で分譲されれば、それが晴海エリアの新相場ということになる恐れも出て来ます。そうなると、マンション業者は自分の首を自ら絞めることになります。

としたら、晴海エリアでは選手村のような「広大で整った美しい街」という付加価値はなくても、月島駅や勝どき駅直結など地下鉄の利便性が高い立地条件で勝負できるマンションだけが、従来の(つまり、現相場の)価格で販売することができるのかもしれません。もっとも、そのようなマンション用地はなさそうにも思うのですが・・・

 

2)影響を受けにくい物件は?

問題は、既存マンションの価格への影響です。現在販売が進んでいる工事中マンションも、選手村マンションの販売時には中古マンションになっているわけです。短期間に売却を目論む人は困ったことになるかもしれません。

 

中古マンションの価格は新築マンションの価格に連動する傾向があります。新築相場が上がれば中古も値上がりするのです。

もし、選手村マンションが安値で販売され、数年の間「新相場」として定着してしまうと、既存マンションの流通価格に影響を与えることは必至です。とはいえ、選手村より価値あると認められるマンション、言い換えれば別格のマンションも月島・勝どきエリアにはいくつか存在します。選手村マンションより、こちらがいいと選んでもらえるマンションなら影響はないか、あっても僅かということになりましょう。(具体的なマンション名を挙げたいところですが、いろいろ差し障りもあるのでここでは割愛します)

 

仮に、自分のマンションは「選手村マンション」に比べて劣るなと思ったら、売り出し時期を遅らせるほかありません。しかし、そう長く待たなくてもいいと思います。前で述べたようにマンションの新規供給が今後も停滞すれば、中古マンションを探すほかなく、人気地域や都心に近い地域のマンションは買い手探しに困ることもないからです。従って、値崩れするリスクも小さいはずです。選手村マンションに住み替える人もあるので、いっときは売り物が多く出回ったりするかもしれませんが、しばらくすると落ち着いて来ます。その間だけ待てばいいのです。

 

●マンションの価格は固有の価値によって格差ができるもの

ただし、中古の取引価格は物件固有の条件で大きな格差ができてしまうものです。中古マンションの価格は地域相場が上がる(下がる)ことで、どのようなマンションでも少しは上がる(下がる)のですが、優良マンションは大きな値上がりを見せる一方、値下がりするときも、その幅は小さいのです

 

例えば、港区の青山・麻布・赤坂・高輪・白金・三田、渋谷区の広尾・松濤・代々木・代官山といった名だたる高級住宅地では、そのアドレスの家に住みたいという「こだわり」から、駅に遠くて谷地・底地のマンション、あるいは日当たりの悪いマンションを買う人があります。調べてみると、信じられないほど安いのです。同じくらいの築年数で同じ面積の優良物件が1億5000万円であるのに対し、8000万円か9000万円と格安で取り引きが成立している地域があります。

 

晴海エリア(月島・勝どきエリア)は、上記のような極端なことにはならないはずですが、格差は小さくないのです。今でも、「AマンションとBマンションは高いよね~」と聞きます。他方「こんなに安いのもあるのね」という声も。具体の数字で比較すると、その差が実感できます。選手村マンションが出てくるまでに購入を検討する人は、新築であれ中古であれ慎重に考えた方がよいでしょう。

 

影響を受けにくいのは優良物件、受けやすいのは普通以下の物件です。同じエリアの中で比較するのですから、①ミクロの立地条件が良いこと、②建物価値が高いことが優良物件ということになります。

 

ミクロの立地条件とは、駅に近い(1~3分)こと、もしくはピンポイントの環境、なかんずく眺望が抜群であること(永久眺望が最高)など、インパクトが強いことです。

また、建物価値が高いとは、このエリアなら大規模タワー、個性的なデザイン性、大規模ならではの豊富な共用施設を備え、24時間有人管理やコンシェルジュサービスを提供していることが最低条件となりましょう。

 

この地域では、①か②ではなく、①も②も具備した物件が最も影響を受けにくいと言えましょう。

 

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