第577回「修繕積立金の高い中古より新築がいい」その判断は正しいか?

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ご存知のように、修繕積立金は「30年間の均等積立方式」を導入している物件も例外的に存在しますが、大半は「逓増方式」です。5年後、10年後、20年後といった節目に増額され、20年目には初期の5倍になっていたりします。
 
 初期は70㎡で7000円(月額)が標準的ですが、築15年くらいになると20,000円くらいになってしまう計画が一般的です。これを負担に感じる人も多いらしく、そうなる前に売ってしまおうなどと考える人もありますし、「中古の修繕積立金は高い」という先入観を持ってしまう人も少なくないようで、「買うならやっぱり新築だ」につながってしまうのでしょうか。

新築か中古かを検討するときは、別の見方も働くはずです、まさか修繕積立金が安い(当面10年くらいだけ)というだけで新築に決めているわけではないと思いますが、それがネックで中古に目を向けることをやめてしまうのは、いかにも惜しいので、今日は中古マンションの修繕積立金について調べて新築と比較してみました。

ご相談では、「ある中古マンションを検討しています。購入後5年くらいで修繕積立金が毎月20,000円以上に上がるらしいので、その先が心配です。新築の方が負担は少ないので、中古はやめた方がいいのでしょうか」という声をたびたび聞きます。

購入者心理としてはもっともなことと思います。では、新築にしたら心配は消えるのでしょうか? 新築で購入し10年か15年住んだ場合と、築15年の中古マンションを購入して10年か15年住んだ場合の積立金の差はいくらになるでしょうか?

まず、新築マンションを調べてみました。モデルとして、タワー大型と小規模マンション、その中間と3種類を比較してみましょう。

●新築マンションの積立金10年

シティタワー国分寺ザ・ツインWEST 300戸・36階建て・平成30年2月竣工予定
73.33㎡の例・・・1~5年:7,450円・6~10年:17,380円・11~15年:27,310円・16~30年:37,220円/一時金:186,250円となっています。
一時金を合わせた10年間の合計は、1,676,050円。平均は13,967/月です。

グローリオ田園調布  23戸・7階建て・平成28年8月竣工
専有面積:65.48㎡の例・・・1~5年:7,200円、6~10年:12,440円、11~15年: 18,990円、16~30年:24,880円 /一時金:691,200円となっています。
     一時金を含めた10年合計は1,869,600円。平均は15,580円/月です。

ザ・パークハウス浦和別所 117戸・8階建て・平成26年11月竣工
専有面積:70.01㎡の例・・・1-5年:7000円、6-10年:10164円、11-15年:13319円
16-20年:16,473円、21-30年:19628円/一時金:711,340円
一時金を含めた10年合計は1,741,180円。平均は14,510円/月です。

この3例を見ただけでは、大差ないことが分かります。

念のため70㎡換算しておくと、シティタワー国分寺ザ・ツインWESTは13,333円/月、グローリオ田園調布が16,656円/月、パークハウス浦和別所は14,513円/月となります。

最高と最低では約3000円の差なので、15年合計では54万円の差となっています。これを僅かと見るか大きいと見るかは意見が分かれるかもしれませんが、まあ差がないと言ってよいのではないかと思います。

●中古マンションの積立金

築15年くらいの中古マンションを購入するとして、先入観としては「積立金の水準はかなり高いのではないか」というものでした。確かに、そのような例もあります。

最近遭遇した例では、ライオンズマンション飯田橋駅前(築17年)が51.3㎡で15200円、1㎡当たり@296円、70㎡換算では20,741円/月でした。しかし、これは例外的です。

古いマンションは修繕積立金の必要性について認識が薄かったためか、十分とは思えない例が多く、調査データがないので不確かですが、築15年くらいで10,000円程度(150円/㎡)が平均的のように思います。

現在売り出し中の中古マンションを少拾ってみました。

東京テラス1036戸(築12年):70㎡換算11,496円
桜上水レジデンス35戸(築14年):70㎡換算10,364円

クレストフォルム鶴見グランステージ138戸(築17年):70㎡換算9,799円
クレッセント千歳船橋98戸(築17年):70㎡換算10,892円
パルテール目黒青葉台62戸(築17年):70㎡換算13,440円
中目黒サニーフラット31戸(築19年):70㎡換算19,387円
コスモ用賀46戸(築19年):70㎡換算11,108円

シャリエ横浜ベイグランデ97戸(築20年):70㎡換算14,374円
三軒茶屋シティハウス91戸(築22年):70㎡換算17,468円
恵比寿ガーデンテラス壱番館(タワー)290戸(築23年):70㎡換算13,957円

築15年前後は、10,000円~11,000円、築20年未満が11,000円~20,000円、20年~14,000円~17,000円となっています。筆者が感じていた10,000円程度よりは少し高いようです。

これを新築の3例の16年目以降の数字と比較してみましょう。

シティタワー国分寺ザ・ツインWESTは37,220円、70㎡換算で35,530円/月、グローリオ田園調布が24,880円、70㎡換算で26,597円/月、パークハウス浦和別所は16,473円でしたから、現在市場に出ている築15年前後の中古の実態は新築マンションの計画値と比べると遥かに少ないと気づきます。

ただし、パークハウス浦和別所は近似です。

これでお分かりのように、中古マンションを買うと高い修繕積立金が重くのしかかるかもしれないというのは当たっていないのです。むしろ、物件によっては新築マンションの方が負担は多いかもしれません。

もちろん、これら中古もその先で段階的に上がって行くものと考えられるので、新築10年間の比較と、中古10年間の比較をしなければ正確ではありません。しかし、購入した中古の積立金が入居して程なく3倍、4倍になるようなことがなければ「中古の負担は大きい」とも「中古は損だ」とも言えないのではないでしょうか。

●修繕積立金は多いほど良い/見直しがある

誤解のないように補足しておかなければなりません。

第一に、修繕積立金はマンションの劣化を防ぎ、資産価値を長く維持するためのメンテナンス費用として不可欠な貯蓄です。多ければ多いほど、潤沢な財政基盤を持つ管理組合ということになり、歓迎すべきことであるという点です。

第二には、修繕計画は3~5年ごとに見直しを行い、それに伴って徴収する積立金の額も変わる可能性があるということです。実際に大幅な見直しの結果、当初計画が大きく変わった例もあるのです。筆者が知る武蔵小杉のあるタワーマンションでは、6年目に一度増額したのち、残りの25年は増額なしになったのです。

どちらが損か得か、一概には言えないものであること、少なくとも「中古は修繕積立金が新築より高いというわけではない」ことがお分かりいただけたのではないかと思います。

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