第587回 減った新築マンション。リセールバリューに期待

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首都圏の新築マンション年間供給戸数の推移をみると、最近数年は10年前と比べると半減しています。23区だけは40%減。

2004~2005年頃は8万5千戸も供給されました。ところが、10年後の2014年、2015年は4万2千戸に半減したのです。

この前後も同様で、10年前は8万戸、最近は4万戸、ざっくりと言えば数字はこうです。2016年は3万5千戸台とさらに減少、2017年も10月までのペースを見ていると年末までに4万戸には乗らないことが明らかです。

近畿も、中部も同様の傾向にあるのです。

どうしてこんなに減ってしまったのでしょうか?理由は二つ考えられます。

この話は前にもしたので、要点だけにしますが、ひとつは、中小デベロッパーの減少です。つまり、作り手がいなくなったのです。

理由の二番目は、用地の取得ができなくなっていることです。

昔からマンション用を買収することは簡単ではなく、デベロッパーを泣かせて来ましたが、この数年の状況は半端ではないと現場の諸氏は語ります。「土地がない。買えない」と嘆いているのです。

大量に土地を買収して5年分の用地を取得済みという噂が聞こえて来るのは住友不動産だけらしいとも。

●マンション開発は長い時間がかかるもの

マンション開発には平均して2年くらいの時間がかかるとされます。大規模物件が多い東京でのことですが、中小規模でも1年はかかるのです。土地を買い、商品企画を練り、図面を描きながら何度も見直し、間取りなどのディテールを決めて建築許可を取りに行きます。最終的な建築許可は「建築確認通知書」を受けとることで一旦終わりますが、その後も商品として本当にこれでいいかと何度も何度も図面を見て議論し、プランの部分変更を行います。

並行して施工会社との建築費のネゴシエーションを行ったり、建設地の近隣住民との話し合いを行ったりします。例外なく反対運動が起こるので、プラン変更も要求されて作業は停滞します。

そんなこんなで、ようやく着工に漕ぎ着けても、14階建てなら工期はざっと17か月、タワーマンションなら30か月も必要です。建築はITを駆使したり、ロボットを使ったりして昔の半分の時間で完成させるといった芸当はできないのです。今も昔も、労働集約型の産業なのですね。

マンションは販売契約(売買契約)を結ぶだけでは売り上げに計上できません。会計基準は「引き渡し」が要件です。

2019年の3月期の決算に間に合わせるには14階建てなら2017年の今頃には着工していないと間に合わないというわけです。現在工事中で2018年3月に引き渡しをしようとして販売中のマンションは着工が2016年秋で、販売準備が整ってモデルルームに見学者を迎えたのは、多分2017年春だったはずです。その土地は、もしかすると2015年秋に買収したのです。

これは順調に進んだ場合のことですが、2年前に土地を買い、1年前に着工し、半年以上前に販売を開始しています。そして土地を買ってから2年半後にようやく売り上げが立つというわけです。

デベロッパー各社は、今日も良い土地がないかとブローカーたちに声をかけて歩き、紹介された土地を素早く見学して適否を判断します。机上で採算をはじき、出入りの設計事務所か自社内の設計部に仮の図面を描かせ、おおまかなプランニングをしながら、商品になるかならないか、価格は販売可能な範囲に収まるかなどと検討するのです。

そうして買収の方向が決まったとしても、首尾よく買えるとは限りません。競争相手があるからです。適地であるほど激しい争奪戦に勝たなければなりません。

筆者もデベロッパーに在籍し、土地を買わなければならない立場に立ったとき、それまでの販売部門との違いに驚いたものです。土地を買うというのはマンションを売ることの何倍も難しいと思ったものです。

●新築がなければ中古を狙うほかない

脱線がいつもの癖で長くなりました。ここで止めますが、要するにマンションデベロッパーは再来年の売り上げのためには土地の仕入れを今やらないと間に合わないのです。その土地が今ないというのです。

しかも、その状態もう5年以上も続いているのです。日本人は新築志向が強く残っているらしく、住宅取引の80%は中古でなく新築だなどというデータがよく登場しますが、マンションに限れば、いくら待っても商品が棚に並ぶことはないのです。並んでもわずか、このような状況が少なくとも東京圏では続いています。

新築がなければ、買いたい人は中古を狙うしかありません。中古はなぜか市場に溢れています。売った人はどこへ行ったのか、そんな疑問が湧いて来る人もあると思いますが、それはさておき、これから買おうという人は新築だけを狙っても、やすやすとは買えないと覚悟しなければなりません。

たまに素晴らしい新築物件が販売を始めることがあります。まさにとっておきの魅力ある物件です。しかし、優良な物件ほど人気が集中し買い手同士の奪い合いになってしまい、運が悪ければ抽選に落ちて買えないことになるのです。

仕方なく、「二番手」の物件を狙って、何とかゲットするということになるのですが、それすらも買いそびれる人がたくさん出ています。

新築がないエリア、例えば2017年秋の現在、豊洲エリアにはわずかに売れ残りの1物件があるものの、事実上新築マンションはない状態です。筆者に届く「マンション評価サービス」のご依頼は当然中古物件ばかりです。

その中古物件が価値あるものかどうか、価格は適正か、オーナーが強気な値付けで売り出して来たのではないか、物件価値はいかがか、その物件を購入した場合、例えば10年後にいくらで売れそうか、こうした依頼内容に基づいて調査をしますが、真っ先に気付くことは築8年、9年経ているのに少し前に完売した新築マンションと変わらない価格で取引が多数成立しているという事実です。

これと全く反対の、中古相場が「安いなあ」と感じさせてくれるエリアも多数あります。

地域格差の主たる原因は、そこに出ている新築価格と、新築物件の数に関係があります。

今、新築マンションが全く売り出されていない街・駅は無数にあります。なにしろ供給戸数が半減しているのですから。では、そのような街は豊洲の例のように中古相場が高くなっているのかというと、必ずしもYESとは断言できないのですが、その傾向は見られます。

●人気ある街の中古は高い

中古マンションの価格は需要と供給の関係で決まって来ます。需要がなければ値はつきません。需要があって供給がなければ値は高くなるのです。これは地域格差のあることです。

個別の条件や地域格差の問題はあるものの、新築が全く存在しない街で買いたい人があれば、少し前に完売した新築価格に近似の高額で売りだしても買ってくれるかもしれません。

しかし、売り中古がたくさん市場にあって、一方が3000万円であるとき、5000万円で売り出しても買ってくれる人はないでしょう。しかし、3000万円の品が売り切れた後に、3500万円の値札に付け替えて売り出せば5000万円だった品は売れるかもしれません。

このような経過をたどりながら、相場はいつの間にか3000万円から3500万円に上がって行くのです。しかし、それも需要があるからのことです。いつまでも3000万円の品が多数店頭に並んでいる状態が続けば、5000万円の品は3500万円でも売れないでしょうし、逆に3000万円の在庫品は2500万円に下がってしまうかもしれません。

東京圏全体を見たとき、新築がこれだけ少ないと、中古市場に供給される物件数も減る、つまり最近数年間の激減状況は、次の10年後に築浅マンションの流通戸数が非常に少ない状況が確実にやって来ることを示しています。

品数が少なければ、買い手の多いエリアの中古は間違いなく値上がりする。値上がりはしなくても値下がり幅は小さい。そう期待できるのです。

需要が供給を上回る状況になれば、どんな中古物件でも底上げされる期待が持てることになります。

ただし、地域によって異なるのです。総じて、新築がないエリア、あっても需要に応えるだけの供給がないエリアにおいては、中古でもこれまでのような格安にはならないはずです。オーナー自身がびっくりするような高値が付いたり、思いがけない価格で売却が成立したりする時代が来るのです。

無論、10年後に新築が続々供給されるような状況が再来したら、思惑は外れるのです。しかし、今後も新築マンションが急増する可能性は低いと思います。

新築も中古も今はとても高い時期に当たっています。このため、みなさん高値掴みを警戒しています。しかし、買い時は当分来ません。今日の記事は、将来の希望の光のひとつになるでしょう。もちろん、あくまで地域と物件の選択がカギですが、全体的に中古価格が押し上げられる可能性は高いのです。

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