第626回 五輪後マンション価格は下落するか?

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

 

マンションの売れ行きが好調ではないと聞きますが、今後は価格が低下するのでしょうか?・・・このようなご質問をいただくことがあります。

 

今日は東京オリンピック後も見据えて価格の推移についてお話しします。

 

●売れ行きの低迷は価格の下落につながるか

売れ行きが悪化しても、たちまち価格が下がってしまうことはありません。

新築マンションは生鮮食品とは異なります。通常でも値引き販売はありますが、その数字を公表することはしません。公表するのは、完成済みマンションの売れ残り住戸、しかも、その中のごく一部、モデルルームとして何か月か使用した住戸などに限られます。

 

売れ行きの低迷は2016年初頭から続いています。このため、価格の下げを視野に入れているデベロッパーもあるのは事実です。予告広告の反応を見て、住戸ごとの微調整レベルに留まらない、全体的な引き下げに動く物件も時々耳にします。

しかし、その調整幅は買い手の期待するレベルからは遠いのです。

 

完成物件を中心に水面下では値引き販売が増えています。これは、統計に表れにくい価格低下現象です。

 

統計上の価格も下がる可能性があるとしたら、まだ着工していないマンション、着工はしているが未発売の物件からです。しかし、それも大きく下がることはありません。

 

何故なら、土地代という原価も建築費という原価も確定済みだからです。利幅は通常10%程度しかないのがマンション事業ゆえに、下げ幅に大きな余裕はないのです

 

赤字販売を余儀なくされる状況になったときは、開発を凍結、もしくは着工を中止して時期を待つのが大手企業の策でもあります。

 

建築費が決まっていない、つまり原価が決まっていないケースでも、現状では発注金額(建築費)が下がる可能性は低いので、新築マンションの価格が急落することはありません。

 

工事費が下がるのは、東日本大震災の復興工事がなくなるか、東京オリンピック関連工事がなくなること、東京都心の再開発工事が止まることなど、建設業界の繁忙が落ち着くこと、建築資材費が値下がりすることなどが条件になるのです。

 

ときどき、建築資材(鋼材など)がいくらか値下がりしているという報道に触れることもありますが、建築費の45%は労務費(人件費)と言われるだけに、建築費が大きく下がる材料とはなりにくいのです。

 

労務費の上昇が一服したという声もありますが、人手不足は解消されていないため、建築費が値下がりに転じることにはならないようです。

 

結局、最後はマンション分譲会社(デベロッパー)が赤字覚悟で価格を下げるしかないのです。しかし、売り出し前から赤字事業を進めるのは企業としては中々できないことです。

 

地価が急に下落するとも思えないので、安い土地を新たに取得してコストダウン策を徹底するなどの策も非現実的ですし、開発期間を計算すれば短時間に安いマンションが出て来ることはあり得ません。

 

●マンション市場の展望

日ごろのマンション評価サービス業務を通じて強く感じるのは、新築マンションの価格上昇です。

4年くらい前から、地域相場を大きく超える高価格の物件が増えていると感じていましたが、その印象は日増しに強まりました。値上がり前の旧相場から3~5割高といった相場破壊の高額マンションが続出したのです。

新築マンションの価格上昇原因は、地価の高騰、建築費の高騰にあるのは言うまでもないのですが、その背景を整理すると、次のようになりそうです。

 

地価の高騰>・・マンションに向く土地が少ないため、用地争奪戦が続いています。このため、1年前に付近で取引された地価の2割高だったなどという例が当たり前になっています。

新聞に発表される地価統計は全般的な傾向を示すもので、東京都心の商業地は前年比でプラス2%であったが、郊外の住宅地はマイナス3%だったなどという僅かな変化にしか見えません。

 

これらの数値と比較すると、マンション用地の取得額は地価調査の数値とは大きな隔たりがあるのです。前年比で20%も30%も高くなった土地取引の実態を一般の人は殆んど知りません。

 

マンション用地は、ある程度まとまった大きさが必要であり、かつ交通便が良いことや環境が良いことなど、マンション建設にふさわしい条件を具備している必要があります。ところが、そのような土地はそうそう沢山あるわけではありません

 

工場や倉庫、社宅、ガソリンスタンド、運動場などが企業のリストラの一環や移転、廃業といった事情で売り出されると、マンションメーカーはこぞって入札に参加します。そして、一番札を入れた企業に高値で売却されます。

 

マンション市況が良いときは、マンションメーカー各社は土地取得に積極的になります。高い札を入れてでも優良な土地は何とかして確保しようと前向きになります。その結果、新聞発表の地価上昇率3%などとは大きく隔たりのある高値取引が成立してしまうのです。

 

先に述べたように、市況が悪化しているため、今後は少し様子が変わってくるかもしれません。しかし、業界が一斉に土地取得を手控える状況に転じる様子はまだ見られません

 

一方、土地の需要はマンションデベロッパーだけではなく、例えば都心の商業地などはホテル用地と直接競合し、ホテル業者に競り負けることが多いと聞きます。東京オリンピック後も訪日客の増加が見込まれており、ホテル建設ラッシュは続くと見られるので、今後も用地難にマンション業界は悩まされることでしょう

 

こうした動向を注視していると、当分の間、安価なマンション用地を取得できる状況にはならないと見るほかありません。

 

建築費の高騰>・・・マンションの建築費が大幅に上昇しました。

工事はマンションメーカー(デベロッパー)から施工するゼネコンへ発注されますが、マンションメーカーには当然ながら予算があり、その範囲で受注してくれるゼネコンを探します。

普通は「指名入札」方式で、複数のゼネコンを指名して見積もりを依頼します。過去数年間の傾向は、予算内に納まるゼネコンがいなくて当たり前、予算を2割、3割上回る見積もりが普通。そのような状況にあります。

 

背景には、東日本大震災の復興需要、続いて東京オリンピックの関連工事によって専門職・建設労働者の人手不足が深刻な状態にあるためと言われています。先にも述べたように、建築費の45%は労務費と言われるので、建築資材が少し下がったくらいで値下がりに転じることはないからです。

 

今後の見通しについても、建築費に関しては悲観的な見方が圧倒的です。つまり、まだ東日本震災の復興需要は残っていますし、国土強靭化政策によるインフラへの公共投資が急増しているうえ、東京オリンピック関連需要が本格化しているからです。

 

オリンピックは、国立競技場の建て替えや各種競技の会場建設、老朽化した高速道路の改修をはじめとする道路工事などが、合わせて兆円単位で発生すると言われます。

また、中央区晴海に予定されている選手村の建設も注目されます。これは、オリンピック終了後に民間に払い下げられます。取得する民間企業は、これを住宅に改修して一般に分譲または賃貸することになりますが、選手村の建設費は全部で5600戸もの大規模なものだけに、周辺整備費も含めると数千億円にもなると見込まれています。

 

建設需要はオリンピック前年、プレ五輪開催時まで続くことでしょう。しかし、3年後には東日本の復興関連も終盤に差し掛かっているはずです。建設業界には一服感が出ていると予想されます。従って、3年先には建築費も多少なりとも低下傾向に転じるかもしれません。とはいえ、建設業界の繁忙が緩和し、建築費が期待するほどのレベルに下がる可能性はないと考えます。

 

というのも、品川駅のリニア新幹線関連工事や山手線「新品川駅」の開設と関連工事、浜松町駅周辺開発、東京駅北口・常盤橋再開発、虎ノ門~麻布台開発など、都市再開発が目白押しに予定されています。訪日客の増加によるホテル建設の需要も続くに違いありません。

 

さて、マンション市況はどう推移するでしょうか?

建築費の高値が続くことは間違いなさそうです。地価も、先に述べたように用地の争奪戦が続き、高値が続くに違いありません。販売不振が続いているのは確かですが、それでも地価、建築費が急低下することはなさそうです

 

ただ、その結果として起こる(既に起こった)マンション価格の上昇に、どこまで需要がついて来るでしょうか?

カギは景気回復が握ります。言い換えれば国民所得の増加が進むかどうかです。アベノミクスが成功し、賃上げが進めば需要の後退は起こらないかもしれません。

大企業ではボーナスや残業代が増えていますが、定期昇給やベースアップが伸びて来ることで購買意欲の高まりは裾野を広げて行きます。2014年4月からベースアップは再開され始めました。ベースアップの基本的な流れは続いています。

 

時計の針を少し前(2013年~2015年頃)に戻すと、右肩上がりが続いた株価の上昇などで資産効果の恩恵に浴した富裕層や、一足早く好調な経営を回復した一部の大企業などに所属する人たちがマンション購入に積極的でした。さらには、一部の都心物件で外国人投資家の買いが増えていると伝わって来ました。2015年に税率が上がった相続税対策としてタワーマンションの高層階を狙って購入する資産家の動きも目立っていました。

 

つまり一部の階層によってマンション市場は支えられていたのであり、広がりを見せるには至りませんでした。

 

今後も、英国のEU離脱問題、中国経済の減速、米国トランプ政権の混乱など、マンション販売を取り巻く環境は「マイナス金利の導入で一段と下がった住宅ローン金利」を除くと良い材料は見られません。

今後どのようになるかは依然として不透明で、先行きに関しては予断を許しませんが、マンション市場が低迷の時期に移行したことは確実です

 

少し戻って、全般的な動静とは別の動きにも注目しなければなりません。オリンピック会場周辺地域では、高い人気を集めるマンションが増え、局地的な価格急騰が発生しました。また、「国家戦略特区」に選ばれた地域では、同様の傾向が見られます。

国際的に有名な一部の街(新宿・六本木・品川・田町・五輪会場周辺など)ではミニバブルと表現されそうな状態がもう少し続くことも考えられますが、一時の過熱感は見られなくなったようです。

 

1980年代後半、株式や不動産・マンションは「上がるから買う、買うから上がる」という循環をもたらし、永遠に右肩上がりの繁栄が続くとの錯誤をもたらしました。

これがバブルでした。バブル(泡)はやがて弾けてしまいました。それ以来、25年以上もの長い間、日本は景気停滞とデフレに悩まされて来ました。

 

安倍政権が誕生した2012年11月以降、期待と不安が交錯しなからも着実に景気回復とデフレ脱却が進んで来たかに見えました。統計上、戦後2番目に長い景気拡大は続いています。「成長戦略・3本の矢」の内の2本の矢(異次元の金融緩和と公共工事へ財政出動)が効果を表しているとも評価されました。

しかし、最近は効果がなくなり、一服感とでも言えばよいか、或いは息切れ感でしょうか、元に戻ったという見方も強いようです

 

ともあれ、成長戦略に当初なかった「オリンピック開催」が幸運の第4の矢となって浮上したのは確かです。五輪の経済効果に期待したいところです。

 

マンション価格が急騰すれば需要はついて来なくなります。しかし、所得の増加が伴って来れば需要は持続します。また、2016年2月16日から実施された日銀のマイナス金利施策は、住宅ローンの低下を呼び、これが購買力の押し上げに寄与しています。

 

価格の高騰に嫌気して一気に市場が冷めてしまうか、それとも、先行きに明るい展望が開けるとともに「上がるから早く買わなくちゃ」と、買い手心理が再び拡大して極端な低迷とならず、現状維持か再び上向きになるのか?こうしたことを占うとき、現状は悲観的な見方が支配しています。

 

多くの識者が語るように2020年以降はオリンピック投資の反動減によって景気が後退局面に向かうことから、マンション需要も減退し、オリンピック以降は一段と売れ行きが悪くなるという観測が正しいかもしれませんが、 建築費の大幅な低下はないと見なければなりません。

 

用地取得がたやすくなって廉価なマンション用地を各社が次々に仕入れられるようになるとも思えないのです。

 

このように考えると、新築マンションの価格が下がることは考えにくいのです。下がるとしたら水面下です。売れ残りが大量に出たら、嫌でも値引きをして販売を促進させようとするからです。

買い手は、じっくりとそのタイミングを計った方がよいかもしれません。

 

●品質の低下と利益圧縮による引き下げの可能性

統計上の新築マンション価格は下がりそうにないと言いましたが、最後に付け加えておきます。それは、マンションの品質を下げることによって表面的な価格の低下を実現することはないかという疑問です。

 

答えはNOです。というのも、既に品質は限界レベルまで下がっているからです。2013年から始まった価格高騰の局面で、デベロッパー各社はコストダウンに腐心し、これ以上はしない方が良いという限界までコストダウンした商品を送り出しているからです。

建物品質はもうこれ以上は下げられないとしたら、価格を下げる方法はもうないのでしょうか?ゲストルームやキッズルームなどの共用施設を減らすとか、エレベーターの台数を減らす、天然石をタイルにする?もう既に策は出尽くしています。

 

見えないところで品質を低下させる策はクレームにつながるので限度があるのです。今日は割愛しますが、この数年、残念な建物が増えてしまいました。

 

利益圧縮が最後の手段になりますが、こちらも売り出してみてからというスタンスらしく、顕著な価格低下は起こらないと見ています。先述のように、デベロッパーの利益率は10%程度なので、そこから本店経費を生み出す必要もあって、値下げ余力は5%程度しかないのです。

売り出し当初から5%の引き下げをしてしまうと、販売終盤の販促費(値引き枠)がなくなってしまいます。

 

やはり、新築マンションの価格が下がる期待は当分持てそうにありません。

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室(http://www.syuppanservice.com)までお気軽にどうぞ。

 

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