第637回 安価なマンションの裏に潜む問題点

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

ときどき、人気を博しているらしい安価なマンションについてのご相談を受けます。そんなとき、とても暗鬱な気分になります。

 

理由は、格安物件なのに「良い物件を選ばれましたね。前進しましょう」と言えないからです。客観的に物件を判定すると、格安物件といえども「良い物件」にはならないことが多いのです。

 

今日は、格安マンションは止めた方がいい、「高い物件を選ぶ方が正解」という話をしたいと思います。

 

 

●安さを求めて何が悪い

誰でも良い品を安く買いたいと考えるものです。しかし、不動産には、安いものは値打ちがない、高いものは値打ちがある。また、掘り出し物などはないのです。

 

とはいえ、微妙に「安いが値打ちある」、または「良い物件であることは確かだが、価格が高過ぎる」マンションが存在するのは、確かです。

 

筆者に毎日届くご相談の数々、それらには大いなる勘違い、誤りも多いことに気付きます。安さと品質のバランスを量る物差しがないので仕方ないのですが、安さを求めると10年後、20年後に後悔することになりかねない。そのことを知っておくことが必要です。

 

ご相談者には「資産価値という観点がいかに大事か」をお伝えし、マンション選びの手順や優先順位を筆者なりの理論で提示してきたつもりです。本稿も、そうした観点から最も大事な安さの裏を述べようとするものです。

 

●格安マンションの多くは立地条件に問題がある

格安マンションの代表格「バス便マンション」についてお話ししましょう。バス便マンションは、利便性に劣るマンションと読み替えてご高覧いだだくといいでしょう。

 

マンションの広告を見ると、交通手段の項目には、複数のルートや駅などが併記されます。広告はできるだけ多くの人に関心をもってもらうことが狙いなので、当然の措置ですが、毎度思うことは、販売担当者の心理が反映されているという点です。

 

A駅なら徒歩5分にある物件の筆頭に掲げている駅がB駅から8分とあるとき、A駅の物件とは言いたくないのだろうと感じます。8分と少し遠くてもB駅の方が人気が高いからです。 東京駅から徒歩15分の物件、最寄り駅は八丁堀5分なのです。これなどは、東京駅まで歩くこともできますと言いたいのだろうなどと想像します。

 

バス便マンションも、最寄り駅から徒歩23分などと表示されている物件があります。これなども、バスという表現を避けたかったのだろうと思ったりもします。

 

ともあれ、バス便マンションは、人気が二分されます。バス便に抵抗があるため、検討はしても最後は見送るという結論に至る人も多いのです。

スタート当初だけは格安が受けて売れ行きは好調ですが、やがて反響が低下して売れ行きはダウン、建物完成後も在庫を抱えます。そして、大幅な値引きを余儀なくされるというのがお定まりのコースです。

バス便マンションは、格安にしたつもりでも売主の期待を裏切る結果となってしまうのです。

 

これに対し、最寄り駅から遠くない、概ね5分前後であるのに格安という物件をたまに見かけます。例外もありますが、首都圏郊外の駅近・格安マンションは人気を集めて短期完売という、売主にとっては笑いを堪えられない良好な成果となります。

同じ格安マンションでも、駅から徒歩圏の物件とバス便の物件の差はこれほど違うのかと、事業者に改めて教訓を残す比較事例となっています。

 

このように書くと、それは一体どのマンションかと知りたくなって来ることでしょう。できたら、ここで具体の物件名を表記して解説の続きを書きたいところですが、支障があるので差し控えます。

 

さて、郊外の駅近マンションという、その駅はどのような駅なのでしょうか?格安価格で分譲できるということは、言うまでもなく、郊外の、かつ都心へのアクセスは良くない、そんな駅です。

 

各駅停車しか止まらない駅、始発駅でもない、幹線鉄道でなく支線・枝線の駅、乗り換えの不便な路線etc.

それだけではありません。郊外だから環境は良いだろうと想像しがちですが、実際に現地を確認すると、あまり好ましいロケーションでないケースが多いのです。

畑と雑木林、住宅地と工場や倉庫・資材置き場等が雑然と混在する未整備な街、ローカル色の濃い駅前商店街といった光景が代表的で、いわく言い難い風景・環境なのです。

 

●格安にできる理由

しかし、そのような場所であっても「駅近で格安」、一見して「普通以上の価値ある建物計画」ゆえに、人気を集める例が見られます。

 

相場を下回る安値は当然ですし、仮に支線・枝線にある物件であるとしたら、本線・幹線の物件に比べて20~30%も安い印象を与えます。本線・幹線の物件が4000万円というとき、同じ面積で当該物件は3000万円前後、1階住戸などは2800万円といった低価格です。

 

さて、そのような価格はどのようにして実現しているのでしょうか?

 

土地の取得費がとても安いことは当然ですが、それだけではありません。郊外は原価に占める土地取得費の比率が元々低いのです。言わずもがな、建築コストをギリギリまで落とすのです。表面的な建物品質(モデルルーム)も標準以下、見えないところも低品質にしてコストを抑えています。

 

土地代が安いのは、競争相手の同業者がないこと、環境的に難のある場所にあること、この二つが理由です。

広い土地であれば、スケールメリットが生まれて建築費も抑えやすいのです。駐車場もコストのかかる機械式にせずにすみます。

 

●格安マンションは売却価格も安いと覚悟しなければならない

首都圏の新築、中古の両方をウォッチングしていると、大雑把に言って、高額マンションほど値上がりし、安値のマンションほど値上がりしないことに気付きます。

 

このことを知れば、立地条件に問題ありそうなマンションを安値に釣られて買ってしまうと、のちのち後悔することになると予想でき

ることでしょう。しかし、一般の買い手がそれを知るのは困難です。

 

銀座の土地は売り地自体が滅多にないものですが、売り地があれば坪あたり1億円出しても買いたい人(法人)が常にいます。そんなに高い価格で購入して採算が合うかと疑問を持つ向きもありますが、採算だけではないのです。

 

マンションも同じようなもので、代え難い価値の場所に、35年以上前の旧耐震基準で建てられた物件であっても、新築マンションと変わらない価格の人気マンション、今やヴィンテージと呼ばれる物件が都内にはいくつかあります。

坪単価で言えば500万円クラス、分譲時の価格を超える中古の億ションです。それでも、「そのマンションに住みたい、価格はいくらでもいい」といった需要があるのです。

 

この対極にあるのが、格安・郊外マンションなのです。いくら安くても要らないというわけです。「まあ、1000万円くらいなら考えるけど」という発言すら出て来るほどです。

 

高いマンションは、ますます高値になり、安いマンションは買い手を見つけることすら難しい。このように考えるしかないのです。

 

●高い物件は立地が良いからだ。買うなら高い物件を!!

マンションは立地条件が全てと言っても過言ではないのです。都心は高い。駅近は高い。人気のある街は高い。全て場所の値段です。

大手デベロッパ―の手になる優良な物件だから建物コストもかかっている、だから高いということもありますが、ここでは他の要素を無視します。

 

人気のある場所では、なかなか売り地が出て来ません。たまに出たら、競争入札で高値の取引が成立し、取得したデベロッパ―はそれでも強気に企画し、高額マンションを売り出します。すると、滅多に出ない新築物件ということから、あっと言う間に完売してしまいます。

こうした場所は、需要に比べて供給が少ないのですから、当然の結果でもあるのです。人気の街では、新築がないなら中古というわけで、中古マンションも高値取引が当たり前になっています。

 

また、そのような街では中古の売り物も実はあまり出ないのです。高く売れることを知った所有者は、売ってしまうと次に買いたいというとき買えなくなる恐れがありそうだと考えます。かくして、売らずに賃貸して転居する人も多いからです。

 

場所が良ければ高いけれど、それを買っておけば将来の資産価値は倍増する。だから安い物件を探すのではなく、結果的に高い物件を探すスタンスが望ましいのです。

 

勿論、人気エリアというだけで建物プランがよろしくないものもありますし、価格も妥当とは言えない物件もあります。また、人気の街とはいえ、ピンポイント的に良いとは言えない場所もあります。そうした基本のチェックは必要なのですが・・・

 

マンションの価値を大きく左右するのは、何と言っても立地条件です。

 

立地条件を分解すると、都心へのアクセスの良さであるとか、駅からの距離であるとか、はたまた商業施設等の充実度、自然環境の良さとかということですが、その中で、最寄駅からバス便というのは大きなマイナス点となります。

駅から遠くて徒歩物件に優るバス便マンションというのは、これまで殆んど見たことがありません。

 

一般に百点満点のマンションはなく、短所を長所で補う形になるものです。バス便の短所を補うものが何かと言えば、普通は抜群の自然環境が挙げられます。開発地の周囲が自然環境に恵まれているという条件です。大きな森や河川、広大な公園などに隣接するといったことです。

加えて、マンションの敷地内に公園や散策路や遊びの広場といった空間を用意し、建物内にもキッズルームやパーティールームなどの複数の共用施設を設けます。もちろん、大型マンションにしか実現できないものです。これら共用施設は、駅近マンションでも見られる施設ですから、バス便の弱点を補える決定版というわけではありません。

 

ともあれ、駅前で自然環境が良い場所というのは、望んでも得られない、つまり両立しにくい条件なので、バス便マンションに環境の良さがあれば少しはバリューアップになるのは間違いありません。しかしながら、不便さを補って余りあるとは言えません。

 

では、隣地に大型ショッピングモールが新設されるような場合はどうでしょうか?駅前までバスに乗って買い物という必要がないわけですから、マイナスを幾分かは補ってくれるでしょう。しかし、ショッピングモールの中には、飲食店も併設されますが、数が足らないので飽きが来ます。

 

やはり、バスの不便さを補ってお釣りが出ることはありません。霞を食べて生きることができないのと同じで、働き盛りの買い手にとって、通勤の便を犠牲にすることをヨシとできる人は多くないからです。

 

●シャトルバスでは補えないか?

不便なマンションには大型で管理費に余裕が生まれやすいので、マンション専用バスを運行する計画を持っている例が少なくありません。マイクロバスを管理組合で購入し、専属の運転手を雇用して走らせます。

 

マンションの玄関前が発着所なので傘も要らず、ストレスフリーで利用できるのが歓迎されています。しかし、運行本数が少なく、終バスの時刻も早いので帰りが遅い人には不評です。バスは不便という先入観もあるのか、販売時にシャトルバスがありますよと営業マンがアピールしてもインパクトは弱いのです。

 

リセールの際も、バス利用前提でネット検索する人は少なく、キャッチされにくいものです。予算から検索するとキャッチしてもらえそうですが、交通欄を見てバスと知ると候補から外されてしまいます。

 

●購入価格が安ければ大丈夫か?

交通便の悪い物件を販売するとき、売主は更なる魅力アップを予め付加することを考えます。それが価格戦略です。

 

徒歩物件では得られない広さのマンションが安く買えるというとき、または徒歩物件では手の届かないものばかりという地域において、それまで見たことがない安値で分譲されると知った人は、交通便を我慢しようと決心します。

 

多くのバス便マンションが、価格抑制のためにコスト削減を徹底します。その結果、あるマンションは室内の設備・仕様がB級になり、あるマンションは建物全体がシンプル過ぎる造りになったりします。

 

しかし、どんなに安くても売れ残りを抱える事態になることがよくあります。共用部に付加価値を設けて中小型マンションにはない魅力を打ち出すことが必須なので、最低限の共用施設を設けたりします。バス便物件の多くは大型なので、それが可能です。

 

しかし、数が多過ぎて売れ残るのです。言い換えると、不便を我慢する人の数が底を着いたことを意味します。仕方なく、最後の手段で価格をさらにダウンするという策を採ります。建物竣工から2年近く経過しているようなケースでは、15%くらいの値引き販売は珍しくありません。

 

そのくらい安かったらメリットがあるのではないかと安値に釣られて動く人もあります。しかし、あまりお勧めできません。

 

●バス便マンションの将来価値の低下は大きい

マンション購入にあたっては、将来リセールするときの価値を購入時に想定する、若しくは考慮しておくということが大事です。いつなんどき、売却の必要が生じるか分からないからです。

そのとき、できるだけスムーズに、少しでも高く売りたいと考えるのが普通の感覚であり自然な行動・人間心理というものです。その際、大きな弱点になるのが、利便性の悪さです。

 

将来価値を決定する要素は、①ブランド、②スケール(存在感)、③外観・玄関などのデザイン、④設備や仕様、⑤管理体制、そして⑥立地条件(利便性と環境)です。

この中で一番比重が大きいのは⑥の立地条件です。立地条件に劣るマンションの将来価値は、相当低いものになると覚悟しなければならないのです。

 

購入価格が安ければ将来の売却価格が低くても、損失は大きくないのではと考えがちです。バス便でも新築時に売れたのだから、中古になったとき安ければ売れるのではということですね。これは、とても危険な考えです。

 

詳細は割愛しますが、100円で買った商品は20年先に50円になり、1000円の商品は逆に1500円になるといったことが不動産では起こるのです。バス便マンションがどちらかは、は言うまでもありません。

 

●予算が足りない人はどうすればいいのか

買えればいい、マイホームが持てればいい。そのように考える人もあるようです。通勤の不便さもなんのその、買えた喜びでいっぱいになりますし、慣れれば不便さも抵抗がなくなって、長く暮らしていくのかもしれません。

ところが、10年か20年経ったとき、買い替えすることになり、検討すると、売却してもローンの残債を精算したら手元には1円も残らないことが分かり愕然とします。買うとき、将来どうなるかなんて考えてもいなかったというのです。

 

確かにマイホームは売らなければ損も得もないのです。しかし、想定外のことが起こるのが世の中、人生というものです。購入時には漠然と永住するつもりだったのかもしれませんが、現実問題として売却する必要が起こりました。

そのとき、残債が消えればいい、精算のために手出しがないのは不幸中の幸いなどと友人は慰めを言うが、結局はマイホームを持っても何も残すことができないことを知り、買ったことが良かったのかどうか分からない。賃貸マンションでも同じだったのではないかと悔悟する人もあります。

 

マンションは生活の基盤たる器であるとともに「資産」でもあるのです。マンションライフをエンジョイしつつ、資産形成も図ることを意識しなければなりません。このブログを読み続けていただいている愛読者はお分かりのはずですが、最近のご訪問者で初めてマンションを買おうという方には是非「資産でもある」ことを意識して欲しいと願います。

 

さて、若い世帯には予算が少なめという人が多いものです。従って、安い物件を探そうとします。しかし、そこには落とし穴が待ち構えていることを覚悟しなければなりません。

そんな罠にはまらないためには、広さを妥協してでも立地優先とすることをお勧めします。いつなんどき売却の必要が起こっても、有利な条件で買い手をキャッチできる物件を選択するに限るのです。3LDKにこだわってはなりません。70㎡にこだわってはなりません。筆者は、いつもこう主張します。

 

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。http://www.syuppanservice.com

 

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