第641回 中古マンション検討時のチェックリスト

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

日本人は新築志向が強く、初めから中古住宅を買おうとする人は少ないと言われますが、中古住宅が不人気な理由はそれだけではないようです。アンケート調査では、以下のような結果が出ています。

 

●国土交通省の調査による「中古住宅に抵抗がある理由」

~平成23年度「土地問題に関する国民の意識調査」から~

 

中古住宅に抵抗がある理由」 複数回答

第1位:新築住宅の方が、気持ちが良いから 55.2%

第2位;中古住宅は間取りや仕様を自由に選べないから 32.9%

第3位:中古住宅の方が、耐震性や断熱性能等の品質が低いから  20.5%

第4位:中古住宅のリフォーム費用やメンテナンス費用が分からないから 18.4%

第5位:抵抗はない   15.3%

第6位:中古住宅の方が、品質に関する情報が少ないから 14.6%

第7位:中古住宅の方が、価格の妥当性の判断が難しいから  11.7%

第8位:中古住宅の方が、住宅ローンや税制面で不利だから  4.1%

第9位:「その他」+「分からない」  3.0%

 

 

●中古マンションが買いにくい5つの理由

買い手の立場で考えてみると、中古マンションが買いにくい理由は5つに集約できると考えられます。

理由(1)室内の見た目が悪い

中古マンションの多くが、壁が黄ばみ、浴槽は「湯あか」がついている、ガスコンロは油まみれになっていたりします。こうした光景を目にすれば、見学者の購買意欲が高まることはないでしょう。

 

理由(2)外観や共用部分が古ぼけていたり汚れていたりする

レトロ好きな人もあるのでしょうが、日本人の多くは古い物より新しい物を好む傾向があります。新しいものは良いものという先入観もあるのでしょうか、一目で古いと分かると、購買意欲はがたんと落ちるのです。

室内の見学前に必ず目にするのが外観であり、エントランスやロビー、エレベーター、共用廊下です。 定期的に清掃や修繕を実施していても、決して新築と同じようには見えません。

 

理由(3)設備が古いもの・ないものも多い

ディスポーザーは新築でも付かないものが少なくはないですが、食器洗浄乾燥機は大半が標準装備されています。中古は食器洗浄乾燥機もない物が多いのが実態です。ビルトイン浄水器なども中古マンションでは少ないですね。

 

浴槽のまたぎは、新築マンションなら450ミリ以下が定番ですが、中古マンションは600ミリタイプが多いことに加えて、浴室内のデザインも「お洒落感」はかなり劣ります。

 

テレビモニター付きのインターホンが100%普及したマンションですが、モニターの画像がカラーか白黒かというと、築20年以上では白黒が多いのです。

 

理由(4)バリアフリーになっていないものが多い

1階の玄関ホールから住戸前までバリアフリーになっているだけでなく、室内も大きな段差がないのが最近のマンションですが、古いマンションでは共用部も室内も段差が解消されていないものが多いので、これにも抵抗感を覚えてしまいそうです。

 

理由(5)建物に対する不安が拭えない

中古マンションが買いにくい最大の理由はここにありそうです。 先に挙げた4つの理由はむしろ付け足しと言ってもよいほどです。

不安を具体的に言うと、次のようなものと考えられます。

 

  • 耐震性の不安

  • :幾多の地震経験から新しいマンションは対策がしっかりなされているが、古いマンションは十分ではないという漠然とした不安と言えましょう。

 

  • 耐久性の不安

  • :築20年以上の古いものを検討する人が主に抱く部分です。あと何年ここに住めるのだろうかというものです。

 

  • 瑕疵がないかという不安

  • :瑕疵は「隠れたキズ」というほどの意味ですが、悪意のない売主には追及できない瑕疵担保責任のことです。まさか欠陥マンションということはないだろうかという疑問と言い換えてもよい部分です。

 

最近は大手仲介業者が売主に代わってガスコンロや湯沸かし器といった設備の瑕疵担保保証というサービスを導入していますが、重要な点は目に見えない構造的な部分の瑕疵に関するものです。入居後しばらく経って(例えば数年先に)発覚したときどうなるのかという不安です。

 

大抵は個人の売主から購入する中古マンションですから、瑕疵担保は免責になっていて万一のことがあっても責任を追及する先はないのです。

 

  • 遮音性の不安

  • :これは新築マンションでも同じですが、古いものは最近のものより遮音性が低いという先入観が働くためと考えられます。

 

 

●中古マンションの検討項目を整理すると・・・・・

以上を踏まえて検討項目を整理してみましょう。

 

1.築年数と耐震性 (1983年以降の竣工物件かどうか=1981年以降の建築許可物件か?)

2.築年数と修繕履歴 (大規模修繕がいつ行われたか。その範囲は?)

3.分譲主・施工会社 (売主か施工会社、または両方のブランド力は高いか?)

4.管理会社と管理体制、管理状態 (管理会社の経験・実績は豊富か?管理人の勤務日数は?滞在時間は1日5時間以上か? 清掃は隅々まで行き届いているか? 放置自転車はないか?)

5.管理費・修繕積立金 (管理費は1㎡当たり首都圏平均の@235円より高いか安いか? 高い理由・安い理由は? 修繕積立金は築年数の割に安いことはないか?)

6.建物規模と共用施設 (100戸以上の規模か? どのような共用施設があるか? 中庭や植栽スペースはたっぷり取られているか?)

7.外観・玄関等のデザインとグレード感 (個性的・高級感・上質感・洗練されている・重厚感・格調高い・威風堂々・優美・壮麗などのキーワードのどれかに当てはまるか?)

8.間取り (10年住んで行ける間取り・広さがあるか? 主寝室のプライバシーは問題ないか?家具配置はどうか?)

9.リフォーム費用 (どこをリフォームすべきか?設備機器は交換を要するか=使用期間は何年経過しているか?)

10.立地条件・交通便 (坂道はないか?歩道付きの道か?学校までの時間は?)

11.立地条件・環境・眺望・日当たり(嫌悪施設はないか?)

12.品質保証 (瑕疵担保責任はどこまでか?仲介業者による瑕疵担保保証はあるか?

 

●内覧のときの観察ポイントは?

次に、内覧時の観察ポイントをいくつか紹介しましょう。入居中のために観察を遠慮しがちでしょうが、できるだけ売主さんにお願いして見せてもらいましょう。質問についても同様です。

 

①ひび割れの有無を目視で探してみる

・・・長く放置しておくと雨水が入り込み鉄筋が錆びて、耐震性・耐久性ともに低下してしまうからです。 外壁や廊下の天井、バルコニーの天井などに30センチ以上の長いひび割れがあったら要注意です。タイルの剥離も同様です。

 

また、仲介業者を通じて、管理組合に修繕予定はいつかと質問をしましょう。

この点検項目は、管理の良し悪しを見る重要なものとなります。

修繕積立金が十分でないためか、それとも管理意識が低い管理組合なのか、どちらにしても適時、適切に修繕を行ったマンションと、そうでないマンションでは、長い間に資産価値に大きく差がついてしまうからです。

 

②設備機器の耐久性をチェックする

・・・ガス器具、エアコン、ディスポーザー、食器洗浄乾燥機、床暖房などは、有無を確認しつつ、何年使用しているかを尋ねましょう。 入居後すぐに新品と交換しなければならないのか、まだ数年は使えそうかの判断をするためです。

 

③結露の有無を調べる

・・・北側に位置する個室を見るときは、明るさと通行人の足音を聞くことに加えて、窓の周囲の壁と天井に目を凝らしましょう。

黒ずんでいたり汚れがひどかったりするようであれば、冬季に結露ができやすいことを示すものであり、原因は断熱材の施工が十分でない可能性が疑われます。そして、リフォーム費用に大きく響きます。

 

④床・壁・天井の表面を全体的に点検する

・・・トイレや洗面所の床の表面材(普通はクッションフロアという材料で仕上げてある)がめくれていないかどうか、壁紙の張り合わせ部分がめくれて隙間ができていないか、変色していないか、傷や汚れがないかどうか、フローリングの表面仕上げ部分がはがれていたり、傷が目立ったりしている所がないかどうかなども。

リフォーム工事の予定に組み込むかどうかの判断に必須だからです。

 

 

●必ずチェックしたい修繕履歴と修繕計画

内覧とは別のチェックポイントとして重要な点がこれです。この確認には、管理会社からの「管理に関する重要事項説明書または報告書(仲介業者が管理会社から取り寄せてくれます)」をよく読むことと「管理組合議事録」の閲覧もした方が良いでしょう。

 

<修繕履歴>

「管理に関する重要事項説明書」には、いつ大規模修繕を実施したかが書かれていますが、その内容は必ずしも明確に記載されていないので、「管理組合議事録」で何をどのように行ったかをチェックしましょう。

竣工後12年目に最初の大規模修繕の必要時期がやってきます。次は24年目ですが、専門家に診断の結果、遅れても問題ないという場合もあります。

 

しかし、修繕積立金が足りないために延期したかもしれないのです。そのあたりのことは、議事録を読み込むほかありません。

 

仲介業者に依頼して報告してもらうのが手間なしでいいですが、心配な人は議事録を保管してある場所(管理人室か管理会社)に出向いて閲覧するほかありません。居住者以外は見せてくれないことが多いので、売主さんに依頼しましょう。

 

議事録を読み込むと、管理会社からの提案がなされたが実施は見送られたとか、その理由、提案を受け入れて修繕に踏み切った場合では、工事会社はどのように決めたのか、例えば組合役員に一任したとか、決定に当たっては数社から見積もりを取って、その中から組合総会で決定したのかなどの経緯が克明に記されています。

 

また、修繕積立金の増額提案については、議論されたが反対決議であったとか、毎月はそのままで一時金徴収を決議したなどという記録もあるものです。

 

ついでに、駐車場の空きが長く続き、収入が不足しているので管理費の増額を検討中といった記録も発見できるかもしれません。

 

 

<修繕計画>

国土交通省の調査によると、古いマンションでは「長期修繕計画」を立案していないものが30%近くあるのだそうです。 長期計画がないということは、行き当たりばったりで修繕を行って来たこと、今後もその方向にあることを示唆しています。

 

そのようなマンションは、資産価値の劣化が早く進んでしまう懸念があるわけです。

 

長期修繕計画書がある物件なら、それを是非とも確認しましょう。 その中には必ず「収支対比表」があるはずです。 年次ごとに必要となる修繕項目とその費用見込み額が「支出欄」に記載され、その支出を超える積立残高をキープするための年次・積立金合計と残高が「収入欄」に記載されています。

 

年次の積立金が変わっている(増額になっている)年があれば、その年から毎月の積立金の変更が行われる、または一時金徴収が予定されていることが判明します。

 

尚、長期修繕計画書がいつ作成されたものか、日付を確認することも大事です。長くとも5年ごとに見直しが行なわれて来た計画書ではなく、分譲当初のままであれば、管理組合の管理意識が低いことを疑わなければなりません。

管理意識の薄さは、マンションの資産価値を下げてしまうことにつながるからです。

 

その疑いがあれば、先に述べた「ひび割れの有無」や「鉄部の塗装のはがれ」、「タイルの剥離」などを再度見て回るようにしましょう。

 

●マンション購入の最終チェックは5つの視点から

もう十分に検討して来た結果、多少の問題・不満はあるが、百点満点の家はないのだし、多少の妥協もやむを得ないと思うから、ここで決めよう。そう決めかかったとき、もう一度足を止めて最終チェックをしましょう。チェック項目は5つです。

 

【マンション購入の5大視点】

1:住みやすさの視点

□通勤・通学・街の雰囲気・街の賑わい

□環境(騒音・公園・道幅など)

□自治体の支援策はどのような内容か?

□住戸(設備・日当たり・眺望など)

□間取り(日当たり・寝室のプライバシー・廊下幅・家具配置など)

 

2:安心・安全の視点

□耐震性は問題ないか?

□地震の揺れの軽減策は?

□防災対策は万全か?(防災備品・防災拠点・防災訓練など)

□治安は大丈夫か?(夜道は問題ないか?)

□セキュリティシステムは大丈夫か?

 

3:予算策定の視点

□広さと予算の組み合わせで選択可能な地域・駅は希望条件の範囲にあるか?

□新築・中古どちらになるか?

□予算の上限は?

□繰り上げ返済の可能性は?

□長期のフィナンシャルプランに問題はないか?

 

4:転勤や転職の視点

□貸しやすいか?(いくらで貸せるか)

□住宅ローンの返済額より高く貸せるか?

□損なく売却できるか?

 

5:資産形成の視点

□貸しやすいか?

□売りやすいか?

□10年後に、どのくらいで売れるか?

 

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選定基準:➀立地条件が良い(駅に近いこと。都心や中核都市にあること)②デザイン性が高い ③ある程度のスケール感・存在感がある ④売主または施工会社に信頼を置ける  ➄総じて特徴が明確な物件・・・・・この基準に達していない物件は除外しています。