第644回 徒歩10分よりバス便マンションに価値があると思った人の話

このブログは5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論を展開しております。

 

「渋谷駅から徒歩8分」は遠いなと思いますが、バス停に2分なので、バスを使えばいい。タクシーを呼べばいいし、帰りも渋谷ならタクシーは捕まるので問題ない。何より、大きなお屋敷と高級マンションが集まる環境というか、景観が良いというべきか、この街が好きなので。少し古い気もしますが、価格も1億5000万円で高くないと考えています。管理状態も良いので購入する気でおりますが、このマンションはどうですか?

 

このようなお便りを下さった人がありました。

 

また、次のようなメールが最近届きました。

予算は7000万円程度に限られていた結果、目黒区のバス便マンションを候補としました。徒歩距離が長くても問題なく、最寄り駅までは健康のために歩くつもりです。妻も駅から買い荷物を持って10分歩くよりは、停留所まで1分のバスを使う方が楽だと言っております。 現在我々が住んでいる物件の立地も同じような立地であり、特に不満なく暮らしているため、立地の問題はないかなと思っております。

モデルルームを見たときは、入った瞬間になんとなく立派そうに感じました。中古という選択肢もあったのですが調べてみると意外に高く、これなら新築マンションの方がよいのでは思った次第です。もう少し広いといいのですが、ギリギリの妥協範囲とも考えています。

 

二つのメールは対称的です。前者は渋谷区の高級住宅地の中古マンション、後者は目黒区の新築のバス便マンションです。この2つのメールを対比しながら、「バス徒歩圏と言えても駅から10分も歩くマンション」は避けるべきという筆者の持論を改めてお伝えしようと思ったのです。

 

●バス便でも資産価値に影響が小さい都心マンション

渋谷区には、交通便が良いとは言えないエアポケットのような場所が少しだけあります。松濤町や代々木大山町、南平台、猿楽町などの中の狭い一角です。中央区にも晴海エリアには駅から10分以上を要するマンションが存在します。

 

一方、目黒区では東横線の都立大前・学芸大前などの駅から徒歩10分を優に超える立地条件のマンションが多数あります。広い世田谷区にも、駅からバス便のマンションは少なくありません。

 

駅から遠いマンションでも、リセールバリューに影響が小さいのは前者です。渋谷区の高級住宅地に建てられたマンションは、今の相場では中古でも70㎡なら1億円を超える物件が目立ちます。これらの地区は新築の供給が長年途絶えています。富裕層に属する世帯は、自ずと中古に目を向けて売り物を探すことになります。筆者に届くご相談物件は、どれも駅から遠いにも関わらず高値をつけています。

つまり、高級住宅地の場合は冒頭に書いたようにタクシーを活用する階層が求めるので駅からの距離は問題外です。優先するのは「場所のブランド価値」が高いことなので、駅から遠いことでの価格の下方圧力は弱いのです。

 

中央区には、港区や渋谷区に点在する高級住宅地のようなブランド力の高い街は殆どありません。敢えて挙げれば、佃島のリバーシティくらいです。

晴海エリアは高級住宅街とは言いませんし、最寄りの勝どき駅・月島駅から徒歩10分以上の物件もいくつかあります。晴海エリアの物件を検討する人から、駅から遠いのでリセールバリューに影響するのではないかと心配する声が届きます。ここでもお答えしておきますが、実はあまり影響はないのです。

 

なぜでしょうか?バスが利用できるからでしょうか?いいえ、バスを利用するにしても停留所は遠いのです。そのことを知っていた分譲時の売主はマンション専用の「シャトルバス」を用意したほどです。では、BRTが運行されれば便利になるからですか?それもあるかもしれませんが、今はまだ運行してないですね。それにも関わらず、高い価格の中古売買が今日も成立しています。では、何が価格を支えているのでしょうか?

 

一般に、駅から徒歩10分以上のマンションの場合、立地条件を良いとは言わず、価格にも影響することが多いものです。しかし、その弱点を補って余りある要素があれば、影響がなくなるか、大幅に緩和されることがあるのです。

 

駅からの長いアプローチの大半が商店街ロードであるとか、幅広で街路樹が美しい歩道が続くとか、現地に着くと今度は感動的な眺望、例えば横浜の港の見える丘公園のような高台にあってオーシャンビューが圧巻であるとか、緑豊かな大公園の最前列に建ち「まるで森の中のマンションといって過言ではないほどの自然林や公園に接する」といった環境の良さが必須です。このくらいのインパクトある代替条件があれば、なければ、駅近マンションに優るとも劣らないのです。

 

BRTも使えるようになると、駅から遠いマンションも今後は援護射撃を受けることになりそうです。

 

ここからが答えなのですが、中央区晴海エリアは直線距離において、より都心(例えば大手町や丸の内、東京駅、銀座など)から近く、電車がなくなる深夜でも帰宅に困ることがないからです。横須賀線で20分の武蔵小杉は15kmも離れていますが、晴海はタクシーで20分でも、距離は3㎞圏です。多忙な東京人はここに大きな魅力を感じるのです。

 

●外周部のバス便マンションは弱い

毎日、どこかの物件とその周辺調査を仕事にしていると、データを見て「やはり」と確認できるので、これが筆者の持論の裏付けになるのですが、「バス便マンション、駅から遠いマンションは値下がり率が大きい。都心マンションは例外だ」と思っています。

 

外周部というのは少し語弊があるのですが、調布や三鷹、武蔵野市などの市部は無論、目黒区や世田谷区にもバス便マンションは存在します。歩けないこともないが10分以上を要するという物件と、駅近マンションとの価格差は歴然としています。

 

バス便もしくは徒歩10分以上のマンションは例外なく売りづらく、結局は値を下げて買い手を待つしかなくなるのです。もちろん、冒頭で紹介したように重い荷物を下げて帰るのが大変ということなら、8分でも遠いということかもしれませんが、だからバス便がいいと考える人は少数派です。駅から遠い道を雨の降る日に歩くというのも辛いし、最寄り駅でタクシー待ちするのも嫌だ。だから駅近がいい。せいぜい5分だ。そう考える人が多いのです。

 

目黒区も駅に近いマンションの売り出しは少なく、もちろん新築などは皆無という実態にある今、仕方なくバス便でもいい、駅から10分以上歩くのも仕方ないと考える人もありますが、それも少数派です。中古マンションの価格(新築を買ってもリセール時は同じ)は需要の大きさに比例します。需要の多い駅近マンションが高い価格を維持し、駅から遠いマンションの価格は弱含みとなるのは道理です。

 

バス便マンションを買った人からは嫌われてしまう筆者ですが、予算を少なく抑えたい人はバス便でも仕方ないし、リセールのときも同様に考える人は結構いるのではないですかと反論されたこともありました。 結構いるという所が問題なのです。結構が「結構大きなボリューム」なら、価格はここまで安くなりませんよと事例を示して教えてあげたことがありました。

 

駅から遠い物件は、購入時点でかなり安く買っておかないとリセールでは大損する可能性が高いのです。安いと感じた新築も、バス便だから当然の安値であって、筆者の分析と「将来価格の予測」では決して安くないというケースが大半なので、「もっと安く買っておかないとダメです。新築なら、販売が行き詰って値下げする時期があるので、交渉して20%くらい下げてもらいましょう。20%は無理でも15%を獲得目標にしましょう」。こう進言したこともありました。

 

都心なら駅からの距離の遠さはリセールバリューに以外に響かない物件もあるのですが、外周部は例外なく高く売るのは難しいことをお伝えしました。

 

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