第662回 無駄な共用施設という言い方に強い抵抗感

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

余分な共用施設がないのがメリットだ」・・・こんなフレーズをときどき目にします。こう語る人には、共用施設は要らない、使わないと考えていることが窺えます。

 

そう言えば、「我が家では共用施設は使わないと思うから、大型のそちらには興味がありません」という木で鼻を括ったような言い方にも遭遇したことを思い出しました。

 

今日は、共用施設の持つ意義を改めてお伝えしようと思います。

 

●共用施設に感動したという声を聞いて

本日、●●マンションの内見をさせていただきました。10年経ったとは到底思えない豪華なエントランスなどの共用部分、オーシャンビューの素晴らしさ、ショッピングモールへのアクセス性など、魅力がたくさん詰まったマンションで、人気が途絶えない理由が分かりました。

これは、この地域で買うなら●●マンションが一番と勧めたことを受けて売りに出ていた中古マンションの部屋を内見したご相談者の感想です。

 

このマンションには、複数のラウンジからパーティルームやキッズルーム、スタディルーム、フィットネスジム、屋内プールまで備え付けられています。エントランスホールには、ピアノが置いてあり、自動演奏の響きが一定時間楽しめるのです。

こうした施設を見学すると、大抵の人は感動します。大型マンションなので、管理サービス面も充実していて、コンシェルジュが当たり前のように配置されています。そんな場面を見ると、「便利そう」と多忙な主婦は嬉しそうに感想を漏らします。

 

これら室内施設以外に、野天のプライベートガーデン、プラザ、遊歩道、ジョギングロード、サイクルロードといったものが設けられているマンションも少なくありません。以下は、山手線の大崎駅から徒歩5~6分にある大規模タワーマンションについてWEBサイトに記載されていた惹句です。

 

1階にはエントランスラウンジ、2階には、ホテルラウンジのような木質感漂う落ち着いた空間のライブラリーラウンジ、水盤の煌めきがリゾートホテルのような安らぎが感じられるウォーターラウンジ、親水広場の緑や目黒川の桜を眺められるリビングのようなパークサイドラウンジと、それぞれの表情を持つ3つのラウンジと合計4つのラウンジがあり、その日の気分によって、異なるコンセプトのラウンジをチョイスできます。

続いて、エントランスラウンジの奥にはコンシェルジュカウンターがあり、快適な暮らしをサポートする様々なサービスを提供してくれます。

2階には、フィットネスジム、25階には、書斎やスタディールームとして利用できるエグゼクティブルーム、26階には、シアター機能を備えた和サロンがあります。

31階には、ジャパニーズスイートとノーブルスイートという2つのゲストルームがあり、都心の夜景を眺められ、大切なお客様をおもてなしできます。

また、都心の眺望や夜景を一望できるジュエルビューサロンがあります。屋上には、スカイテラスがあり、デイベッドやハンモック、芝生を敷き詰めたコーナーもあるので、風や陽射しを感じながら眺望や夜景、星空を愉しむことができます。

スカイテラスの一画にバスタブを備えたスカイジャグジーがあり、地上152mの都心の眺望や夜景を愉しみながら、リラックスしたひと時をお過ごしいただけます。

 

このアピールは、逆説的ですが、共用施設が見学者を感動させる、喜ばせる、住みたい気分にさせる要素であることを売り手(この場合は仲介業者)がよく知っている証拠です。

 

 

●共用施設不要論

「無駄な」とか「余分な」という人は、共用施設の豊富なマンションに住んだ経験から「要らない」と言っているわけでもないように思いますが、不要論はどこから生まれたのでしょうか?

 

共用施設は物珍しさからもあって、利用に当たっては当初、順番待ちを余儀なくされたりします。ところが、時間の経過とともに利用者が減り、無用の長物と化した施設もあると聞きます。

 

マンションの共用施設はどこまで必要なのか。維持管理の費用もかかることだし、資産価値の観点から見て、果たしてどこまで貢献するのだろうか?「魅力的な」と述べましたが、そう思わない人も多いのも事実です。

 

業者曰く「大型マンションやタワーマンションが嫌いな人は、そもそも見学にやってこないので、気にしていません。大型の魅力は大半の人に受け入れられると思いますから」と自信満々でした。

 

そう言えば、以下のようなお便りをいただいたことがありました。

「物件のスケールや共用施設、それこそが私にとって不要なものだからです。大規模な物件の場合、マンション外に出るのに時間がかかり不便でおっくうになりそう。自分の部屋を出てエントランスを抜けるまで数分かかるなんて時間の無駄。また、ほとんど使わない共用施設の分を維持費に上乗せされるのは嫌だ。だから余計なものはいらない」・・・これは、将に共用施設不要論者のメッセージです。

 

一方で、要らないと思っていたが、考えを改めたという声もありました。

街角にあるコンパクトで小奇麗な、緑と共に佇んでいるようなマンションの方に心を奪われてしまうと語る人からでした。「将来価値を考える場合は、多数の人達の視点が必要という当たり前のことに気づかされました。ひとりよがりでは失敗する可能性もある、という点に目が覚めました」というお便りです。こちらは、先入観排除主義です。

 

●共用施設が多いために修繕費が高いという誤解?

「余分な共用施設」とおっしゃる人の心理は、無駄な金がかかるという忌避感があるのかもしれません。毎月の経費が少ない方がよいのは確かですが、その経費で年間10万円多くかかるマンションでも、売却の際に何百万円も高く売れるなら、結局お得なのですから、使わない共用施設のあるマンションを毛嫌いなさるのはいかがなものかと思います。

 

筆者がこのように反論すると、「たまたま選んだマンションには余分な共用施設がなくていいな、そう感じただけです」と言い訳した人もありました。

 

毎日どこかのマンションを調査・分析している筆者ですが、管理費・修繕積立金も必ずチェックして、1㎡当たりの単価の幅が大きいことを実感します。

 

共用施設が多いほど、管理費も修繕積立金も高いのは確かです。本来はスケールメリットによって割安になるはずですが、施設の数と広さがメリットを消してしまうのでしょう。

 

修繕積立金は経年によって変わるため比較がしにくいので、管理費だけを紹介すると、300戸を超える大型マンションに限って言えば、@150円/㎡から@300円/㎡くらいまでの幅があります。安いマンションは、特別な共用施設が全くないと言って過言ではありません。

 

修繕積立金も、マンションごとに違い、幅ができてしまうのは当然です。

 

共用施設なんか要らないという人は、無駄なものに金を払いたくないという考えがあるのかもしれません。

 

最近、とあるマンション(大規模タワー)を価値評価してほしいと依頼されて調べてみたら、意外なことにラウンジとキッズルームしかないことに気付き、失望感を味わいました。しかし、その割には管理費が高いではありませんか。高い理由は、共用施設のせいだけではないことが分かるのです。

 

もちろん、中には平均的な管理費の半額以下という大型の非タワーマンションも少なくありません。そのケースは「販売価格も安い」物件で、価格も毎月のランニングコストも安いことを「売り」にしている物件です。つまり、そうしないと売れない立地のマンションなのです。

「共用施設は全部そぎ落としました」と語っているマンションです。

 

●共用施設は必要か?

あまり良い例えではありませんが、筆者は3年前に携帯電話をスマホに換えましたが、換えた理由はパソコンに入るメールを同期してスマホでも見ることができると知ったからです。そうでなければ、ガラケイで足りる方です。たくさんの機能を使いこなせないということかもしれませんが、電話とショートメールができいれば十分と考えているからです。

 

しかし、スマホに変えたことで、スケジュール表も使うようになりましたし、辞書もよく使います。大好きなスポーツの試合経過や結果を移動中の電車内で見たいときもスマホなら多岐に渡って、かつライブに近い状況で見ることも可能になっています。

 

便利なものに金がかかるのは当然です。マンションも共用施設の豊富なマンションに住めば、きっとその便利さや快適さに気づき、毎月の負担も気にならないということにならないでしょうか?

 

ある購入者は言いました。「ホームパーティが開ける家が夢でしたが現実は厳しいと知って、共用施設を利用できる大規模タワーマンションを買いました。親兄弟を呼んで年1回はパーティを開いています」と。

こんな声もあります。「余分な施設がいっぱいある。それに毎月何千円か払っているはずだから、使い倒して元を取るんだ」と。

 

そもそも一戸建てには不要なランニングコストがマンションにはありますが、最近は一戸建てを売却してマンションに住み替えるシニア層が増えていることでも分かるように、ランニングコストがかかっても、マンションがいいと考える人が多いのです。

 

共用施設がたっぷりのマンションを賞賛し、共用施設がないマンションを誹謗するわけではありませんが、マンション選びは共用施設が多いか少ないかを優先条件にするものではないと考えます。条件に合う立地、その他の条件も気に入ったが共用施設が多いからだけで止めてしまうのは勿体ないと思うのです。

 

住んでみたら分かると思いますが、あると便利と思う施設やスペースが設定されており、無用の長物になったという話は減っているからです。デベロッパーも管理会社も経験を重ねて来たので、余分なものが何かを知っているのでしょう。

 

●管理費と修繕積立金のコストパフォーマンスは?

筆者のように使いこなさない者でも、スマホの料金は一定程度かかります。もっと安くしたかったら、ガラケイに戻るほかありません。

 

マンションでもエレベーターは使わないから安くしてほしいと思う1階住民でも割安にはしてもらえませんから、たまたま選んだマンションに共用施設が豊富にあったら、使わないと損と思って使えばいいのです。

 

ともあれ、ランニングコストは共用施設の充実したマンションと、何もないマンションでは毎月150円、70㎡なら10,000円も高い場合が多いことになります。修繕積立金も何年かの平均を取ると5000円以上高いかもしれません。合わせて15,000円です。年間では18万円、10年なら180万円の差となるかもしれません。物件によっては300万円かもしれません。

 

しかし、仮に10年後に売却するとして、何もないマンションより300万円高く売れるなら損はありません。

 

同じような規模のマンションが同じ立地条件に、対照的な姿であるわけではないので適当な比較データはありません。しかし、仮に二つが並んでいたとするなら、共用施設が豊富で立派なマンションの方が、高値で売れるのは間違いないのです。

 

●管理費・修繕積立金の高いマンションが敬遠される時代は来るか

現状では共用施設は付加価値と見なされ、高く売れるという実態があります。

将来はどうでしょうか? 管理費には理解が進むとしても、修繕費の高いマンションは売れないから修繕積立金を下げよう。このような事態に陥ることはないでしょうか?

答えはNOです。修繕費を節減すれば最低限の修繕しかできなくなり、見栄えは悪化する。見映えが悪いマンションの価格は下がるからです。資産価値が下がることは望まないはずです。

 

共用施設の豊富な物件であっても、立地条件によっては負担を重いと感じる需要層が中心という場合がありますが、価値あるマンションにはランニングコストの負担が気にならない所得層が集まるからです。

 

飛躍しますが、長期的には人口の減少がマンション需要の減少をもたらします。その傾向の中で大事なことは「より価値あるマンション」を選択することにあります。共用施設の豊富なマンションが価値のないマンションと見なされ敬遠されるようになるとは思えないのです。

 

●小型マンションが好きという人へ

本稿は「共用施設の充実した大規模マンションが良い」と述べているに等しいのですが、先述のお便りにあるように「街角にあるコンパクトで小奇麗な、緑と共に佇んでいるようなマンションの方に心を奪われてしまうのです」という人もあります。

 

価値観は人それぞれなので、どれが正しいなどというものは存在しないのかもしれません。しかし、リセールバリューの観点では明らかに「大規模マンション・超高層マンション」が小型マンション・中低層マンションより有利であることをデータが証明しています。

 

その意味では大規模・超高層を選んでおいた方がよいのです。しかしながら、大規模もタワーマンションも好きになれないという人がいます。好きな家に住んで心地よい暮らしを送ることに幸福感や満足感を覚えるなら、その選択を誰も批判はできません。

 

筆者も、以前の住まいは低層で30戸未満のマンションでしたが、そこに17年も住んでいたのです。その前は14階建て120戸の中規模マンションでしたから、小規模マンションに家族の満足度は高かったと信じています。

 

小型マンションが好きな人もリセールバリューの観点を無視しているわけではないでしょうから、大規模・タワーマンションほどの価値評価はないとしても、可能であれば「より価値ある物件」を選びたいはずです。

 

小型マンションの場合でも、立地条件に優れる優良マンションはいくらでもあります。しかし、大規模マンションでは、共用施設がなくても価値あるマンションは少ないように思います。

 

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。http://www.syuppanservice.com

 

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