第670回 目が肥えすぎて決められない人

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論」を展開しております。


5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

たくさんの物件を知っている人に時々お会いします。毎週のように見て歩くという感じで、物件にはとても詳しい。お話を伺っていると、殆どモデルルームの見学マニアで、半ば趣味のようになっている人たちです。

中古物件も多数見たのだという人にも出会います。

これらの行動は、目を肥やすために始めたもので関心はあるが買う気はないのか、良ければ購入したいという気持ちがあって見学に行ったが難点があって決められず、結局いつも同じ結果を繰り返しているのか、そのあたりの事情は分かりませんが、筆者の勘では「いつまでも買わない・買えない人」です。

筆者の主張は、下手なものを選ぶと10年先に後悔するから「資産性の観点」を念頭に置きつつ「より換金価値の高い」マンションを選ぶようにした方がいいというものです。

例えば、駅から遠いマンションを環境がよいというだけで選んでしまうと、リセールバリューが低くなってしまう。言い換えれば、売却時にキャッシュがほとんど残らなかったり、下手すればローン残債の清算のために手出しが必要になったりするからです。

見学マニアさんは、資産性に疑問があって見送りを繰り返しているようでもないのです。あれが気に入らない・ここがダメだの「ダメ出しばかり」をしているように思います。それら見送り物件の中には、あとで「あれは良かったよね」「でも価格が高かった」などと夫婦で会話を交わすようです。

つまり、見学した物件の中から、とっくにどれかを買っていたはず。そんなふうに思える人がいます。筆者の存在をご存知なかったのですから、「たられば」はないですが、迷ったとき相談してくれていたら、今頃はどこかの新居でマンションライフを楽しんでいたことでしょう。

ご相談者の中には、買い替えの人もあります。比較的上等なマンションに住んでいるのに買い替えを考えているのだと言います。理由は多くの場合、手狭になったからですが、それすらも一般的な基準では狭くなさそうなのです。会話してみると、より高みを望む人だと分かります。

購入体験済みの人だけに、マンションの良し悪し、居住マンションへの不満、問題点などを認識しています。次に買うマンションは「もっと良いマンションを」と高みを目指します。

見学マニアになった購入前の人も購入体験者も、理想を求めているという点では目の肥えてしまった人かもしれません。しかし、どちらもゴールに達するまで長い時間がかかりそうだ。そんな気がします。現に、5年前から探しているという相談者もありましたし、2年前から探しているが中々決まらず、疲れたと語る人もあるのです。

目を肥やすことは必要ですが、下手に見て歩くと理想ばかり追いかけてしまうことになりかねません。パーフェクトはないのです。それを指摘すると「分かっています」と言います。しかし、適当なところで妥協するのは嫌だとも言います。だから今日も見学に歩くというわけです。

堂々巡りでいつまでも決められない。筆者の目の前で夫婦喧嘩を始めてしまう人すらありました。

こうした人たちは親でも兄弟でもない筆者が意見を述べたところで効き目はないのかもしれません。あとで知るのですが、結局、「えっ、それを買ったのですか?」と筆者が思わず口にしたくなる不思議な選択をしてしまう人もあります。

担当営業マンに取り込まれたのかどうか、誰かの意見に従ったのか、知る由もないのですが、人の価値観は千差万別です。

メールであれ、面談であれ筆者が年間にご相談させていただく(物件の評価レポートをお届けする)人は、最高で延べ600人です。1年間でマンションを購入する人は新築・中古合わせて8万人もいる首都圏のこと、その1%にも満たないのです。筆者の貢献度などたかがしれています。しかし、一人でも多く、お役に立ちたいと年中無休一日15時間態勢で奮闘しています。ご縁があれば、そこはこうした方がいい、こう考えてはどうか、その選択は感心しないなどと進言・助言ができます。

他人の意見など要らないという考えの人も、このブログを読んでくださっているなら、「あまり考え過ぎず、衝動的に買っても間違いない」ことをお伝えしましょう。世の中には「知らない方が良い」場合もあります。マンション購入も、そんなものだと思って買いました。十分満足しています。そう感想を述べる人もいるのです。

このブログで発信してきたことは、資産性です。他人の筆者が個人の事情や趣味嗜好に踏み込んで選択のお手伝いをするなどというのは傲慢すぎるので、「他人目線で客観的に価値あるマンションかどうか、すなわちリセールバリューはどうか」に焦点を当てています。

そのためか「辛口批評」になりがちですが、その方が後年、きっと感謝されるはずだという信念があるからです。

筆者のマンション評価サービスは、どちらかと言えば、「マンション購入の迷いを解いて決断の後押しすること」にあります。従って、「ダメ出し」は控え目にし、枝葉末節の部分は大らかに見ようと努めています。

その過程で、評価した結果を淡々と伝えるだけでいいか、このマンションはやめた方がいいと踏みこんで言うべきか、あるいは立地条件に少々問題がある気がするが、「現地を見ていないので」と曖昧なコメントで逃げるべきか、立地に問題はあっても購入する価値はあるという理由をコメントすべきか等々、表現方法にひとしきり悩むのが常です。

客観的、かつ具体的に所見を述べることをモットーとしております。しかしながら、言葉選びを誤れば相談者の感情を害することもあるでしょうし、購買意欲を一気に冷ましてしまうこともあるでしょう。それが良い場合もありますが、購買意欲が一層盛り上がるように言ってあげた方が良い人だってあるはずです。

単に評価ポイントを出し、短所・欠点ばかりを重箱の隅をつつくように探して「ダメ出し」レポートをお届けしても、このサービスの価値はないと考えているからです。しかし、言葉足らずであるかもかもしれません。あるいは、言葉の選択を誤り、依頼者様の逆鱗に触れることになるかもしれません。

以上のような気遣いをしているつもりではあるのですが、それがストレートに伝わっているかは自信がありません。

回りくどい話になってしましまいました。

「目を肥やし過ぎない方がいい・「見過ぎはかえって仇になる・衝動的に買ってもいい」ことをお伝えしたいのです。

もう遅いかもしれないが、目を肥やし過ぎで決められない人になりかかっている人に強くアピールしたいために前段が長くなりました。

昔の女性の中には「18でお嫁に来ました。世間のことをよく知らず、交際期間も短かいまま親の選んだ人と結婚しました。もう何十年と過ごして来増したが、幸せです」。そう語る人がいます。何も知らないうちに親の勧める縁談を受け入れて良かった人たちです。

マンション選びにも通じるのではないかと思います。目を肥やし過ぎ、見学し過ぎはときに災いとなります。

何事も「過ぎたるは及ばざるが如し」というではありませんか? 自ら罠にはまってしまうことに気づかない可能性があると筆者は感じます。昨日こんなお便りをいただきました。

(個人を特定できないよう、筆者が一部削除、加筆しています)

「文章によるレポートがあるお蔭で、日々薄れていくアドバイスの記憶を自分の都合の良いように捻じ曲げていく、という間違いから救ってくれることに気付きました。実際、ご相談後少し時間が経つと、また迷いが出たり、あらぬ方向に行きそうにもなったりしましたが、レポートを読み返すことで軌道を戻すことができました」。

とてもうれしいお便りです。筆者のレポートが役立つものでありますよう、今後も努力を続けて行こうと改めて思いました。

どんなに優秀な人でも、人間は間違いをしたり、感情が理性に勝ってしまったりするものです。目を肥やしているつもりの行動が仇となる場合もあることを知ってほしいと思います。

筆者の使命は、「よく考えずに決断してもいい、その代わりこれだけは気をつけてね」と縁談における親の立場にあるかのように、「マンション選びの原理原則」をお伝えすることと思っています。

「自分が気に入ったなら、それでいい」ではなく、「それを選ぶと、きっとこうなる。それでもいいのだね」を具体的にお伝えしてきました。

今後も、「手を変え品を変えしながら」マンション選びの際の留意点を売却の際ことを踏まえながら発信し続けようと思います。個別のご相談では、迷い・悩みを整理して解決します。初期段階にある人には、方向付け・指針をお渡ししようと思います。

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com

※サービス中止のお知らせ※

2019年1月29日より、「マンション評価サービス」は中古マンションに限り「無料ご提供」を中止させていただくことになりました。お申込みが多くなって、サービスの提供が困難になったためです。

できる限り長く無料サービスを提供させていただこうと頑張ってまいりましたが、年中無休・1日15時間の活動も限界が来てしまいました。

これもひとえに、皆様がブログを愛読してくださっているおかげと感謝しておりますが、いかんせんアシスタントを雇える状況にもないため、3年前に決断した「地方都市の有料化」に続き「中古マンションの有料化」に踏み切ることといたしました。

引き続き新築マンション(バス便を除く)は無料サービス(初回のみ)を承りますので、ご利用賜りますようご案内申し上げる次第です。  三井健太

※こちらのBLOGも是非ご購読ください。同日更新です。

https://www.e-mansion.co.jp/blog/archives/author/mituikenta/