第752回 「安いマンションはないか」と考えてはダメ」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

マンション探しで失敗しないためには、どんな手順で検討し、何をよりどころに結論を出したらいいの?  こんな質問が届きました。 失敗って何? 成功って何? 改めて考えてみました。  

●失敗したくない心理を分析すると

いざ売りたいというとき、損をしないようなものを選びたい

入居したら欠陥マンションだったなんて、そんなことはないか

隣のマンションから覗かれてしまうほど近い距離にあるとは思わなかった

隣の住戸や上階の住戸から生活音が聞こえるとは考えもしなかった  

転勤の可能性があるので、いざというとき貸しても売っても問題ない物件か

10年後に売るとしたとき、残債割れ(ローンの残債以下)の売り値になってしまうことはないか

売るとき損をしない物件と言えるか

子供がもう一人できたときも困らない広さかどうか  

実際は、他にもあるのですが、おおむね以上のような心配をしているようです。特に、いざ売るというとき、首尾よく売れるかどうかを気にする買い手さんが多いのです。「儲けようとは思わないが、大損はしたくないしなあ」、こう語るご相談者が多いのは確かです。

●安いと割安とは意味が違う

失敗したくないという心理からか、多くの買い手は「高値の物件を掴んでしまわないように」と身構えるようです。新築マンションの場合で説明すると、価格表を目の前に置いて、「割安な住戸はどれだ」と、目を皿のようにしながら候補を探そうとするようです。

 

安い住戸(お得と錯覚する住戸)を見つけ、鬼の首でもとったかのような喜びを表現するご相談者にも何度かお会いしたことがありますが、安い理由を筆者に指摘されて問題に気付き、大きく落胆する光景に何度も遭遇したものです。  

 

一見安い住戸は簡単に見つかるものです。しかしながら、安い住戸には必ず、何かしらの問題・弱点・欠点があるのです。 当人も、ほどなく気付くものの、認めようとはしないのです。 「確かに良い部屋を見つけましたね?」や、「お得な住戸を探し当てましたね」と賛美して欲しいようですが、筆者はその期待に応えません。   

 

「これを言ったら落胆するだろうな」と思いつつも、筆者の役割は適切な助言を送ることですから、問題点はズバリと指摘せざるを得ないのです。 「安いとお得とは違うのですよ」と。  

●安いマンションを求めると罠に嵌まる

安い(お得な)住戸を見つけて喜んだ買い手が、「お得ではなかった」と気付くのは後年です。 しかし、それでは手遅れかもしれません。「かもしれない」と言ったのは、全く気付かないで終わる人も多いからです。  

 

2つのマンションを買ってみて、どちらが得か試してみよう、などという買い方ができないからです。失敗だったことに全く気付かないで終わる人も少なくないのかもしれません。  

相場が購入後10年で2倍になれば、半値になったかもしれない物件も元値で売れる可能性があるからです。 また、住宅ローンの返済が進めば、売却時の残債額が減るので、例えば2割安で売ったとしても手元に何百万円かの清算金が残るからです。  

 

結局、買ったマンションが損か得かという判定は所有者の価値観や売却時の清算金の多寡によって、それぞれが実感するほかないのです。とはいえ、筆者への相談事項には「損したくないから」や、「儲けなくてもいいから、残債割れしない物件を選びたい」と記してあります。   

 

筆者は言います。 10年後にローンは20%以上も減っていますから、値下がりしても20%未満に留まれば損はないのですと。 できたら10%程度の値下がりに留まってほしい、あわよくば値上がりしてくれればラッキー。そうと思うお気持ちも分からないではありません。  

 

また、いざ売りたいというとき、ローン残債以上の値段で売れますか? こう尋ねて来るご相談者も多いのです。 「割安な物件を選んでおけば損はあるまい」という心理は、ここから生まれるのかもしれません。  

しかし、それは裏目に出るものだという指摘をせざるを得ません。割安な物を選べば、儲からなくても損はしないはずだという買い手の願望・心理は理解できますが、割安と思うところに間違いがあるからです。  

安い物件(住戸)は何かしら問題がある物件(住戸)なのです。 その問題点・弱点は価格の下方修正を強いるのです。 逆に、高いなと思っても、条件の良い住戸は、期待した以上の高値で買い手が付く可能性が高いのです。

 

その意味で、筆者はいつもこう助言します。 「高値の部屋・条件の良い部屋を探しましょう」と。 または、安値の部屋を宝探しのように探すと、長い目で見たとき結局は宝でもなんでもないモノを買っていたんだと後悔することになりますよ」と。  

具体的な方法論を言えば、「予算の範囲内で一番高い価格の住戸はどれか」と探すのが正しいのです。 無論、「一定の広さのあるタイプの中で」ということになりますが、そこも重要です。それについては次でお話ししましょう。  

●70㎡にするか60㎡で我慢するか?

「60㎡では2寝室しかないし、遠くない将来、きっと狭くなってしまうから、やっぱり70㎡以上はないとなあ」と考えてしまいがちですが、「1室は夫婦の寝室、もう1室が子供部屋、子供がもう一人出来たら、その時は広い部屋に移ればいい」と割り切れれば60㎡でもいいではありませんか?  

 

ついでに言えば、二人目の子ができても、直ちに子供部屋が必要になるわけではないのですから、できてから数年後に買い替えを検討しても遅くはないはずです。  

良い条件の物件を選んでおけば売却は容易ですし、良い値で売ることもできるのですから、当座は無理をしないで60㎡の中から最も良い条件(眺望・採光)の住戸を選べばいいのです。  

立地もよく、建物全体の価値も高い物件、その中の価値ある2LDKなら、買い手にこまることはないのです。  

 

新築マンションの価格表をつぶさに見て行くと、条件の良い位置に2LDK住戸は存在しないことがあるかもしれません。 東南の角の位置は、3LDK以上の大きな住戸が配置されているはずですから。 それでもいいではありませんか。真北を向くような、あるいは目と鼻の先に隣地のビルやマンションが迫っているのでなければ。  

●立地条件がカギだが

コンパクト住戸でも、少子化時代の今日、買い手は多いと言って過言ではありません。とはいえ、立地によって需要構造は変わるという点を補足しておかなければなりません。  

 

郊外立地の物件は、安値の物件を求める買い手が多いものです。子育て世代の中でも、共稼ぎでなく、収入が夫だけという買い手が多く、無理をしたくない・できない買い手も多いのでしょう。そのために郊外立地のマンションは高値に誘導される傾向はないのです。  

 

とはいえ、郊外に予算が多い買い手がいないわけではなく、高値でも条件の良い物件を買いたい人はあるのです。その絶対数が都心より少ないので、物件格差が広がる傾向はどうしても出てしまいます。そこで、郊外マンションの場合は、「より立地条件に優れる、地域一番にこだわる」ことが重要になるのです。  

言い換えましょう。郊外マンションは地域一番マンションにこだわるべきと。そのうえで3LDK70㎡以上を、無理があるなら「駅前立地で大型マンションといった最高の物件の中の60㎡以上を」選びましょう。  

●マンションの価値は立地で決まる

賢明な読者はお気づきだと思います。マンションの値打ちは立地で決まるのです。無論、立地が全てとは言いませんが、立地条件の良し悪しで売却価格は左右されてしまうと覚えておかれると良いでしょう。  

駅に近いこと、環境が良いこと、嫌悪施設がそばにないことなど、価値あるマンションは立地によって左右される比重が大きいのです。  

 

駅前立地は、しばしば電車の走行音や駅のアナウンスがうるさいというケースもありますが、窓を閉めている分には気にならないという程度なら、やはり駅に近い物件は人気があって、価格も高く誘導されます。

 

駅から5分は、近いもののインパクト不足というエリアもありますから、そのような街では2分以内とした方が良い場合もあります。また、駅によっても見方は変わります。駅前にスーパーマーケットが1軒もないような、飲食店も数えるほどしかない寂しい駅、急行電車が止まらない駅、私鉄の小さな駅の場合では、駅に近いだけでは不十分ということもあります。  

 

賑わいがある駅」が良いのです。ただし、東京都心の駅の場合は、これにこだわる必要はありません。なぜなら、駅は周囲に複数あって、最寄り駅にはなくても、不便でない別の駅へ行けば小型でも品ぞろえに問題がないスーパーマーケットがあるからです。  

●安くて良いマンションは中古から探すほかない

郊外立地にせよ都心・準都心立地にせよ、立地条件の良いマンションを求めて行くと、どうしても価格が予算を超えることが多いものです。そこで、予算を増やさずに選ぶとしたら、新築をあきらめて中古にするほかありません。  

立地条件の良いマンションを選ぶためには中古に目を転じるほかないのです。 中古も高いと感じる人も多いのですが、高い中古、新築と変わらぬ高値の中古、それが市場価値というものです。

 

売り手の中には、強気過ぎる値段をつけて売り出す人もいるのは確かで、そのような物件には注意しなければなりませんが、仲介業者さんに「最近の取引事例を教えて」と問えば、きっと最近1年なり2年間の成約事例を教えてくれるはずです。

 

中古マンションで「割安なもの」があるとしたら、それは何かの事情で売り急いでいるためと考えられますが、「単に安い」のは、安い理由があるのであって、「割安とは言えない」と考えた方が良いのです。  

 

中古なのに高いと感じてしまう人の心理は理解できますが、築10年の中古の余命と新築の余命は大差ないのです。 繰り返しますが、マンションの価値は立地で決まるのです。その立地が好条件であればあるほど、新築と中古の差は小さいものです。「中古なのに・・・」と考えるのは適切ではありません。  

 

築30年を超えて、近隣の新築と大差ない高値の中古マンションを納得がいかないとおっしゃる検討者に何度かお会いしたことがある筆者ですが、「市場が、そう評価しているのであって、売り手が一方的に強気に値段を付けているわけではないのです」とお答えして来ました。  

●中古を嫌う人へ

新築にこだわっても、市場に商品は並んでいないのです。新築だけに目を向けても品物がないと感じることができないのは、スーパーマーケットや百貨店のように、そこへ行けば品物が並んでいる光景が目で分かるわけでないからです。  

 

先述のように、新築と変わらない高値の中古マンションに抵抗がある人は、是非とも高値の有名中古マンションを見学に出かけましょう。 1軒でなく3軒は見たいですね。きっと、高値の理由が伝わってくることでしょう。 中古アレルギーを取り払うためです。  

筆者が勧める見学マンションの条件は、都心5区の大型タワーマンションと、中規模高級マンションの2種です。SUUMOで検索して選んでみましょう。 買わないという前提ですから、依頼しにくいという懸念を感じるかもしれませんが、そう思う人は筆者にご連絡ください。 遠慮なく見学ができるように手配をしましょう。   

 

このような行動を経て、「中古でもいいかなあ」と思えたら、そこから本格的な物件選びに移行すればいいのです。  

●リフォームの知識を身に着けよう

中古マンション探しの過程で問題になるのがリフォーム予算です。素早く結論を出す構えがないと、良い物件は買い逃してしまいがちです。  

予算に余裕のある人は別かもしれませんが、大抵の買い手は予算の上限を持つものです。そこにリフォーム費用も含まれているとしても、そもそもリフォーム工事ってどのくらい費用が掛かるのかが分からない人も少なくないはずです。  

 

そこで、どの程度の工事をするかを検討する際に大まかな工事代の目安を知っておく必要が出て来ます。リフォーム会社に提案と工事代を見積もってもらう前に大まかなガイドラインを知っておくことを提案します。   

 

リフォーム事例を乗せた雑誌や単行本もありますが、初期段階ではピタリの本は見当たりません。そこで、我田引水で恐縮ですが、筆者の提供する資料をお勧めします。

(こちらです➡ http://www.syuppanservice.com/mikoukai-siryou.html)  

●リノベーション物件を検討するときの覚悟

中古物件の中にはリフォーム済み物件というのがあります。大掛かりなリフォームをした、いわゆる「リノベーション」物件を検討する人もありますが、筆者はお勧めしません。  

 

中古マンションの中には、立地条件が悪いために買い手が付きにくいものが多数あります。そんな物件ほど、リノベーション業者に狙われやすいと言えます。売り出してみたが買い手が現れない、売り出し価格を二度、三度と下げたものの、それでも買い手は決まらないという物件です。

このような物件の所有者は、買ってくれるなら安値でもいいと腹をくくるのでしょう。 こうして、リノベーション業者に買い取られます。買った業者は、内装を新築並みに改装して商品化し、市場に出すのです。  

 

このような物件は何かと問題があるようです。そもそも不人気なマンションゆえに、リノベーション業者に安く買い取られているのです。不人気な理由・要因は立地が悪いか、築年数が古く、管理状態が良好とは言えない残念な物件です。換金できるなら安くても仕方ないと覚悟して手放した物件です。  

 

それでも、綺麗にお化粧した物件は、買ってくれる人が現われるようで、味を知った業者は、市場で売れ残った物件に目を付け、買い叩いて仕入れ、リノベーション工事をして市場に投入します。  

問題は異様に高い売出し価格にあります。 安値で仕入れた物件でも、そこにリフォーム工事費用を投下し、かつ大きな利益を目論むのですから、当然に高い売り値となるのです。 しかし、その売値が高いのか適正なのか、それが非常に分かりづらいのです。比較対象となる売買事例はあっても、参考にならないと言って過言ではないからです。  

 

それでも、新築同様、もしくは新築以上の内装に化粧された物件を見せられると、感動して購買意欲を高める買い手もあるのでしょう。 しかし、ご依頼によって筆者が調査してみると、例外は殆どなく、どれも異様な高値販売を目論んでいるのです。  

筆者は言います。「リノベーション物件」は例外なく高値だ」と。  

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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