第679回 便利で快適な暮らしにはコストもかかるが・・・

このブログでは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論」を展開しております。

10日おきの更新になりました。引き続きご愛読賜りますようお願い申しあげます。(次回は5月10日です)

こちらのブログと5日おき、交互にアップしています 。

https://www.e-mansion.co.jp/blog/archives/author/mituikenta/

大都会東京。ここで暮らすためのマイホームと言えばマンション。この常識は最近30年か40年くらいで定着したものです。マンションが分譲の形で日本に登場してから60年を超えましたが、黎明期にマンションを買った人たちは、一般勤労者ではありませんでした。一般勤労者に普及し始めたのは東京オリンピックが終わってから、昭和40年台半ばのことだったのです、地価が高騰して庶民は庭付き一戸建てを買うことが困難になりつつあったためです。

 それでも新しい住居形態についての論評が飛び交い、誤解もたくさんあったようです。代表的なものは、「1階住戸に住む住民はエレベーターを使わないのだから管理費が同額なのはおかしい」、「一戸建てでは不要な駐車料金も管理費もかかるマンションは損だ」でした。

 地方へ行っても、今は分譲マンションのない都市はないと言って過言ではないほどです。47都道府県は言うに及ばず、人口10万人以上の都市なら、ひとつや二つは必ずあるようです。一戸建て住宅が安く購入できる地方でマンションを選択する人は、どのような考えでマンションを選ぶのでしょうか?

 ともあれ、今日は、東京圏における最近のマンションで気になる高い管理費・修繕積立金等の問題点を考えてみました。

●管理費が高いとこぼす人

 一戸建てには不要な管理費がマンションでは必ずかかることに、一定の理解を得られるようになって久しいですが、管理費の高いマンションが増えている気がすると感じている人も最近は多いようです。

 マンションの管理費は、人件費や物価の違いからか地方と東京では明らかに差があるのですが、国土交通省の調査では関東圏が1㎡あたり235円、近畿圏は189円となっています。

 これは、あくまで単純平均なので、東京でも建物の規模や高さ別にして比較すると、例えば大規模マンションにも意外に高いものが多いこと、タワーマンションも一般の中高層マンションより高いことが知られています。

 また、高級マンションでは平均の2倍もする1㎡当たり400円台後半から500円台の物件もときおり見られます。

 マンション購入者はブライダル層からシニア層まで年代の幅は広く、所得階層も様々です。最近はシングル女性がマンションを取得する比率も高まっていますが、それぞれの階層で管理費についての反応は分かれます。

 シニア層の中には、「収入が減る老後はランニングコストが少ない方がいいね」と語る方もいらっしゃいますし、若い世帯も高いことを気にする人は少なくありません。

 快適なマンションライフを望む人にとって「欠かせないのが管理費と理解はするけれども、何故こんなに高いのか」と不審に思ったりする人もあります。

 エレベーターをやめれば安くなるでしょうし、管理人不在(巡回方式)の形態にすれば安くなりますが、エレベーターがなければ快適なマンションライフは送れませんし、管理人がいないのもどうかと思いますよ。こんなふうに説明すれば「それはそうだけど・・・」と、あとが続きません。

 管理費が高いのは、それなりの理由があるからです。それが負担に感じる人は購入を見送ればいいだけのことです。また、管理費も駐車料金も払いたくない人は一戸建てを選択するしかないでしょう。

 しかし、管理費の安い物件を探したり、一戸建てにしたりすれば、別の何かを犠牲にしなければならなくなるのです。ここでは詳しく書きませんが、本末転倒になりかねないということだけを申しておきます。

●各階ゴミステーションは便利だが・・・

 タワー型のマンションの管理費は高いのが普通と書きましたが、その理由のひとつは各階にゴミ置き場があって、24時間いつでも運んでおけばよい、エレベーターを使って1階のゴミ置き場まで運ぶ必要がないので便利なものです。ただし、例えば30階建てなら、30か所のゴミ置き場からゴミ収集日のつど運び出す人手がいります。

 戸数にもよりますが、管理人一人ではこなせないはずです。それが管理費に影響するのは明らかです。

 (各階のゴミ投入口から投げ入れる形式もないことはないですが、問題がいろいろあるらしく、日本では普及していません)

●コンシェルジュの存在

 大規模マンションと、大規模ではないが超高級マンションではホテルコンシェルジュと似たサービスが導入されています。

 毎日の暮らしの中で起きる用事を入居者に代わって処理してくれるコンシェルジュはありがたい存在なのでしょう。コンシェルジュカウンターがあって、そこには少なくとも8時間程度、誰かが座っていて入居者サービスに務めています。

 どんなサービスかは各種各様ですが、ありとあらゆるものと言って過言ではありません。共用施設の予約受付、来訪者の受付・案内、荷物の一時預かり、メッセージ預かり、クリーニングの取次、宅配便の発送受付、デリバリー・ケータリングサービス紹介、各種レンタルサービスの紹介、はがき・切手の販売、郵便物の発送、タクシー・ハイヤーの手配、室内清掃業者の紹介、ベビーシッターの紹介、粗大ごみ回収業者の紹介など。

 コンシェルジュから、出かける時に「行ってらっしゃい」、帰ってきた時に「お帰りなさい」と声をかけられて優越感に浸る人、家族のような温もりを感じる人などもあり、お金には換算できない存在かもしれません

●24時間有人管理

 大規模マンションになると、セキュリティの問題が気になります。小規模であれば、監視カメラを設けて、ロックをしっかりかければ問題はないのかもしれませんが、防犯対策には盲点もあるらしく、機械の目だけではダメらしいと聞いたことがあります。

 セコムやアルソックが到着したときには遅いということもあるのでしょうか?マンション内に直ちに駆けつけてくれる人がいる方が、未然の防止に役立つだけでなく、入居者の安心につながるので、大規模マンションには必ず24時間の有人管理、すなわち夜間警備員を配置するシステムが用意されています。

 その費用は当然、管理費から支払われますが、夜間警備員を置くことができるのは、大規模マンションならではのことです。戸数割にすれば高くないからです。

●管理サービスを享受するために費用を払うのは当然

 私たちの暮らしは、公共サービスだけでなく、通勤のための交通・輸送サービス、多忙なワーキング主婦に代わって家事をするサービス、子供預かってくれるサービス、受験勉強をサポートしてくれるくれるサービスなど、様々な分野で誰か・何かのサービスを享受することで成り立っています。そして、そのために料金を払うのは当たり前のことと認識しています。

 マンションライフで利便性を享受するためには、その場所と器というハードに購入または賃借の対価を払いますが、購入の場合は、それ以外に「管理費」と、この後に述べる「修繕積立金」というソフト対価を納めることが必須です。

(余談ですが、賃借の場合は名目上の管理費はあるにしても支払い義務があるのは所有者の方のそのせいか、賃貸マンション暮らしをしていると、管理サービスに対する料金支払い意識は薄らいでしまいますが、建物全体または1戸のオーナーの立場では管理費と修繕費は必要経費なのです)

 便利な暮らしをしたかったら、都心に住むしかないでしょうし、駅の近くに家を構えるしかありません。その選択は多額の出費を伴います。毎月のランニングコストでも同じことで、一定の出費は都会生活には不可欠です。

●快適な暮らしの持続に欠かせない修繕費用の積立

 管理サービスを享受しながら生活をしていると、慣れによってありがたみも薄らいでいくものですが、日ごろ丁寧に行われている清掃のおかげで気落ちよく暮らせています。ところが、掃除を毎日していても、時間とともに汚れが目立つようになっていきます。

 長年放置すれば、見かけだけでなく、雨漏り、配水管の詰まり、機械故障など生活に支障をきたす事態も起きます。それは快適な暮らしを妨げ、ストレスをもたらします。

 そうした事態を未然に防ぎ、快適なマンションライフ長く続けるためには修繕と改良が欠かせません。そのための費用は、オーナー全員で出し合うことが必要ですが、経済事情はそれぞれ異なるので、多額の臨時徴収は困難を極めます。そこで、あらかじめ積み立てておくという制度ができました。それが「修繕積立金」です。

 積立金は漸増方式が一般的ですが、稀に30年間一律としているマンションも登場しています。とまれ、その額はマンションの規模や、形態、高さなどによってまちまちです。しかし、、国土交通省のガイドラインでは、均すと専有面積当たり200円程度となっています(下表参照)。

70㎡のマンションなら月々14,000円ということになります。しかし、漸増方式なので、築年数を重ねている中古マンションでは、毎月300円以上になってしまうマンションも珍しくありません。

階数/建築延床面積 平均値 事例の3分の2 が包含される幅
【15階未満】5,000㎡未満 218円/㎡ 165円~250円/㎡・月
【15階未満】5,000~10,000㎡ 202円/㎡ 140円~265円/㎡・月
【15階未満】10,000㎡以上 178円/㎡ 135円~220円/㎡・月
【20階以上】超高層マンション 206円/㎡ 170円~245円/㎡・月

●稼ぐマンションに変貌する?

 暮らしにコストがかかるのは当然という理屈は分かるが、収入が減る老後のことを考えたら高い管理費、高い修繕積立金のマンションは避けたくなるのも理解できます。

 新築マンション、もしくは築年数の浅いマンションを買えば毎月のランニングコストが安いから、買うなら新築か築浅マンションだ。古いマンションは考えない。また、無駄な共用施設のあるマンションも余分な管理費を払うことになるから検討しないという人もあります。

 このような人に遭遇することも度々あります。

 しかし、そのように限定するとマンション探しは大変です。選択肢が少ないと、いつまでもマイホームが持てないことになるかもしれないからです。

 積立金が高くならないようにしなくてはいけないが、改修工事を先延ばししてばかりもいられないので、積立金を増やす工夫も必要だというわけで、空きが出た駐車場をマンション住人以外にも貸し出して、稼ぐマンションに変えた話をときどき耳にします。

 最近の新築マンションは駐車場比率が低く、建築時から戸数の30%分しかないのが一般的になっていますが、古いマンションにはこれが50%以上、中には70%、80%というのもあり、車の保有率低下の風潮から空きが増えてしまったので、非住民にも貸し出すことにしているのです。

 共用施設の一角をクリニックなどに貸している管理組合もどこかにあると聞きました。

 管理組合がこのようにして収入を増やすことができれば、ランニングコストを抑えることも可能になるのは確かです。

●安い修繕積立金の高級マンション。その秘密は?

 都心の古い小規模マンションで、信じられないほど安い修繕衝立金のマンションを見つけました。築年数から見て、こんな金額では積立金の残高はしれているはずと思ったものの、念のため修繕積立金の収支表を取り寄せてもらったところ、そのマンションには大きな収入源があったのです。

 日常管理の費用は管理費で賄うことにしており、駐車料金は修繕積立金勘定にすることが定められていました。それ自体は普通のことですが、そのマンションの駐車料金は1台当たり月額4万円もしており、しかも住戸数分の台数があって、かつ空き台数が1台もない状態なので、毎月多額の積み立てが可能になっているのです。このため、新築時から積立金の増額は一度もないのだそうです。

 聞くと、そのマンションは会社経営者や自営業者ばかりで、車の保有率が高いことが分かりました。都心の一等地ゆえのことかもしれません。

●修繕費の少ない設計・長持ちする素材の採用

 今後は、既に研究が進んでいるようですが、大規模修繕を実施する周期を長くしても問題ないような建物の仕上げ材や設備機器に長寿命製品を採用することによって修繕費を抑える工夫が進んでいます。今後は、さらに改善が進むことでしょう。

 長期修繕計画の見直しによって、上がるはずだった積立金の額が上がらずにすんだマンションもあると聞くので、今後は既存マンションにも普及することが期待できます。

* * * * * * * * * 

 マンション選びにおいて、ランニングコストはある程度仕方ないと割り切ることも必要だが、長い目で見れば軽視もできない。本末転倒だと言われても、やっぱり気になる。特に中古マンションを探しているとき、高い修繕積立金の物件に当たることがある。これをどこまで許容していいのか分からない――こんなご相談もたまに受けます。ケースバイケースなので、ここでは書きませんが、マンション選びはバランスをどう取るかがカギです。

 非常に気に入ったマンションを見つけたが、修繕積立金が高いことで迷っているという場合は、その金額が他のマンションとの差でいくらなのかをチェックしてみましょう。毎月1万円も高い物件だとしたら、年間に12万円、10年住んだら120万円の出費増かもしれませんが、その物件が好立地にあり、大規模タワーマンションなどであれば、売却時に120万円高く売ることは可能のはずです。

 結論を下す前に、検討マンションの長期修繕計画を確認しましょう。積立金の現在残高も聞きましょう。それらの情報から、先々の負担が重いと思ったら購入を見送ればいいのです。もしくは。負担が重く感じるときが来たら売却すればいいのです。良い立地、良いマンションを選択しておけば、売却も良い結果が得られるでしょう。

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com

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4月25日 第205回は「販売促進の裏技と買い手の駆け引き」です。

★三井健太の新刊 「選手村マンション・晴海フラッグは買いか?」 

2019年5月13日発売アマゾンにて予約受付中

https://www.amazon.co.jp/dp/4023317926/

<プロローグより>

賛否両論が飛び交う注目の物件。「果たして買いか否か」その判断のために公平な指針となる書を目指したい。これが執筆動機です。

筆者の日常業務は、買い手(購入を検討している人)からのマンションの評価レポートを作成することですが、人気のマンションでも不安要素があるものなので、大規模になると複数の検討者からレポート依頼が届きます。晴海フラッグも戸数が多いこと、販売が数年に渡ることからみて、大量にご相談・評価依頼が来るだろうことを予想しています。交通便で疑問が残る物件だけに、判断しかねる人も多いだろう。そうなると大変だな、いったいどれだけ来るだるうか。

この本でレポートの前段部分を代用できたら助かるなどと思っています。

前後しますが、特定の物件だけで1冊の本にするというのは、冒険かもしれない。商品になるだろうか?そんな疑問も持ちましたが、走りながら考えようと決心して動きだしました。朝日新聞出版の調査協力の申し出があったことも決心の後押しになりました。

業界関係者は無論、購入を検討する買い手の迷い・悩みの解消に資するなら筆者の日頃のスタンス、すなわち購入者向けアドバイザーの立場としても本望であるし、売り手にとっても第三者の客観的な意見はマイナスにはなるまい。このように、筆者自身の心の整理をして臨むことにしたのです。

分譲マンションだけで4000戸余の極めて大きな分譲プロジェクトゆえに、また、選手村マンションという話題性もあって、全国的な規模で関心を持つ人が多い。ゆえに出版の意味は十分にあるとも思いました。

前著でも「晴海フラッグ」のことを少し書きましたが、情報が十分でない中で述べることができたのは、僅か12頁でした。

ページタイトルは、「選手村マンションの激安価格に思う」でしたが、内容は少々疑念に満ちたものでした。価格は格安とは思わないとか、BRTの運行に期待していいのかといったことでした。

前著を書き上げてから数か月の時間が経過し、販売活動(いわゆるプレセールス)も始まっています。この本が店頭に並ぶ頃には、検討者の手元には細部の情報が届くことでしょうから、この書では物件の細部について論評することは最小限に抑え、販売現場ではおそらく聞けない情報を主体に紹介しながら、読者の判断に有益な書にしたいと執筆しました。

<主な内容>

 *晴海フラッグというマンションの位置づけを整理する

 *バス便マンションの将来価値を考証する

 *晴海フラッグに魅力を感じる階層を予想

*カギを握るBRT

*晴海フラッグの将来価格を予想する?

★出版記念セミナーも予定しています。

【開催日時】:2019年5月12日(日) 11:00~12:30(10:30開場)

詳しくはこちらで

https://www.excite.co.jp/news/article/Prtimes_2019-04-12-4702-671/