第750回 「高級マンションの条件を考える」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

東京の港区や千代田区、渋谷区の新築マンションは、ファミリータイプの価格は1億円を超えるのは当たり前という昨今ですが、調査(評価)依頼を受けて調べてみると億ションなら当然の仕様でないものも散見されます。   今日は、「億ション」の条件を8項目に整理してみました。頭の片隅にでも残していただければ幸甚です。  

①ブランド地にある

3A地区(赤坂・青山・麻布)や番町、広尾、代々木などの高級住宅街、いわゆる「ブランド地」は、庶民の憧れの街であり、賃貸マンションなら驚くほどの高額家賃でも借りる人がいる街ですが、分譲マンションの価格も高く、億を超える高額なものが普通です。  

*昨今は価格高騰の波が来て、1億円でなく2億円のマンションすら普通になりかけています。そのせいもあって、上述のブランド地以外でも、稀に億円台の物件が散見されますが、1億円を超えれば何でも億ションと言えるかには疑問が残るのです。  

*やはり、億ションは似合う場所があるのだと言えそうです。  

②ブランドマンションである

高級マンションは、億ションに限らず商品ブランドも軽視できません。億ション購入者の多くは社会的ステータス(地位や身分)を誇りとする人です。言い換えれば、地位と身分の象徴が億ションであり、ブランドネームなのです。

  *元来、人には他人から尊敬されたいという願望があります。日頃は意識していないとしても、成功者の証として家を構えようとするものです。

*「どこに住んでいるの?」、「どんなお住まい?」という他人の興味・目を気にしながら生活しているものです。

  *ゆえに、住所、最寄り駅名、マンション名は軽視できません。造り手も、その点を当然意識し、億ションにふさわしいブランド名を冠するのです。買い手も、名の通ったマンション名でなければ選びにくいものです。  

③閑静な住宅地に建っている

億ションは、いわゆる商業地の喧騒の中に建っているものもありますが、これは億ションの定義には当てはまらないと言って過言ではありません。  

*億ションは「閑静な住宅地」にさりげなく建っているようなものを言うのだと聞いたことがあるためです。しかし、それは随分前のことで、近年は大型化しているせいか、高級マンションの多くがタワー型であったりします。

  *タワーマンションの場合は、建築規制の緩やかな商業地域に建てられることが多いため、その中に配される億円住戸は「閑静な住宅地」という条件に当てはまらないものもあるのです。

  *開発企業は、億ション購入者の性向をよく知っているらしく、億ションにふさわしいとは言えない喧騒の立地であっても、タワーマンションの最上階なら、買い手の購買意欲をそそることができるに違いないと考え、そこに億円台の住戸を配置します。

  *こうして、億ションは時代遅れの定義を壊してしまったようです。

*言い換えましょう。現代の億ションは、庶民マンションの最上階に創られるものだと。

  *従って、閑静な住宅地に億ションは企画されるものではなく、庶民を見下ろす天上界気分が味わえる超高層マンションの最上階~上から3層程に限った特別な住まいと定義されるようになったと言うべきかもしれません。  

④大規模過ぎない

本来、億ションは中低層の小規模なものであるとされていましたが、その定義は時代遅れです。 とはいえ、これぞ億ションという高級マンションは「小規模で数が少ないからこそダイヤモンドの輝きを放つ」のです。  

*大規模タワーマンションの中の億ションはピンと来ない。そういう古手の業界関係者は少なくありません。筆者も、ワンルームマンションが混在するタワーマンションの中の億円住戸に違和感を覚える一人です。

  *時代の潮流はまぎれもなく億ションの定義をかえてしまったのも事実として認めざるをえないのですが、先述のように、庶民住宅の上層にあるからこその億ションと考えるべきかもしれません。

  *億ションの定義から、規模は外すべきかもしれません。  

⑤建物もハイレベルである

億ションは場所が良いだけでは不十分です。建物の内容・質も問われます。具体的には、次のような点です。  

天井高・・・共用のエントランスも含みますが、専有部分の天井高も一般マンションより高いことが望まれます。一般マンションの天井高は2500ミリか2600ミリですが、億ションは2700ミリ以上が当然とされます。  

広さ・間取り・・・100㎡超は当たり前で、70㎡台では億ションらしくありません。筆者の印象では、平均120㎡か130㎡が平均です。  

リビングルームの広さ・・・20帖が最低基準。客を迎え入れることもあるリビングルームの広さは20帖が最低と言えるでしょう。  

玄関ホールの広さ・・・玄関は家の顔です。共用エントランスも同様ですが、住戸の玄関ホールも贅沢と思われるような広さが必須です。尋ねて来る客との応対も、親しくない人や賓客以外は玄関で応対するはずですから、その場合に接客が可能な「ちょっとした応接スペース」が住戸内にあるものです。  

設備は一級品・・・キッチンからスイッチプレートにいたるまで、その品質はさることながら一級品と分かるデザイン性も必須です。  

開放廊下型でない・・・億ションに開放廊下はそぐわない、ありえないと言っても過言ではありません。  

何といってもデザイン・・・外観から室内の細部まで、格調高いデザインが億ションの億ションらしさと言って過言ではありません。デベロッパーも心得ていて、有名建築家を起用するなどしてデザインには力を注ぎます。

  *管理費は高いが、レベルの高い管理体制がある・・・セクレタリー・バチェラー・コンシェルジュなど呼び名はいろいろですが、管理人が日中勤務しているだけでは不十分です。管理人の普通業務以外にも居住者の様々なニーズにきめ細かく応じる体制をとるのが当然とされます。  

*億ションでなくても、近年は管理サービスの枠を超えるサービスを用意しているマンション(大規模)が増えていますが、億ションの場合は、小型であっても管理サービスは充実しています。  

*無論、その分が管理費の高さにつながりますが、購入者は経費よりサービス内容を求めるので、億ションでは管理サービス体制を軽んじることはありません。  

⑥セキュリティも高いレベル

管理サービスの延長上にあるのがセキュリティですが、億ション以外も昨今はレベルの高いセキュリティを売りにするマンションが増えています。  

*億ションは、当然のことながら二重・三重のセキュリティラインを設けています。共用玄関、各階フロア、住戸前の3段階にロックが掛けられ、映像で訪問客の顔をチェックすることができるので、滅多に部外者は侵入できないシステムになっています。  

*ドアだけではありません。 塀・門扉などで外部と隔絶する形状も億ションの条件のひとつです。  

⑦緑地スペースが広い

無味乾燥なコンクリ―住宅であってはいけないと、昔から開発・建設者は敷地内の植樹には力を入れて来たのですが、植栽はイニシャルコストも安くありません。運搬費用だけでも馬鹿にできないのです。

  *プロジェクト費用を抑えたいデベロッパーも、億ションの企画はコストを無視しても良い物を作ろうとしますから、要所要所にシンボル的な大木を植えたり、中小の植樹もふんだんに配置します。

  *中古マンションの見学をした経験がある人はお気づきと思いますが、何年も経過すると、木は成長して建物を覆うようになるのです。 常緑樹も多いので、その姿は美しく、目に優しく、居住者・訪問者を和ませてくれます。  

*工事中の新築マンションでは確認できないので、「こんなふうになりますか?」と参考写真でも見せて確認を取りたいところです。  

⑧価格は億円を超えるのが当然

以上のようなチェック項目の大半で満足点を取るような高級マンションは、当然「億ション」になるのですし。冒頭で述べたとおり2億円を超えることも多いはずです。  

*中古マンションでも、億ションは新築と大差ない価格が相場です。億ションは、時を重ねても価値が下がらない要素が多いからです。むしろ、時を重ねて価値が高まる要素もある、それが億ションと言えるのかもしれません。  

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  いかがでしたか、億ションを買うまでに至らない人でも、億ションの基準を知っておくことは無駄ではありません。 高いレベルを知ることで、現実の買い物で失敗しないことにつながる・・・筆者はそう考えます。  

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