第682回「40年先を見据えてのマンション購入作戦」シリーズ第1回

※このブログでは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論」を展開しております

10日おきの更新になりました。引き続きご愛読賜りますようお願い申しあげます。(次回は6月10日です)

40年、そんな先のことまで考えて買う人は現実にはいないでしょうが、今回から、敢えて先の先まで考えてマンションを買うことの大切さについて何回かに分けて述べたいと思います。

●人生100年時代が近づいている

35歳のあなたは40年経っても75歳、まだ元気老人でいるに違いありません。そのとき、あなたはどんな生活をしているでしょうか?

同じ会社に勤め続けているでしょうか?現時点の定年は65歳かもしれませんが、あと20年もしたら定年は75歳になっているかもしれません。

としたら、相変わらず職場に判で押したように通う必要があるかもしれません。定年が伸びなくても、再雇用という制度があなたの復帰または継続勤務を歓迎するかもしれません。

子会社に移って社長を務める立場になっているかもしれません。起業して、75歳の堂々たる社長さんになっているかも。個人業者として自立する人も。 

定年後に田舎暮らしを希望するかもしれません。晴耕雨読が夢だとおっしゃる人もあるでしょう。定年後こそ、現役時代にできなかったことをアクティブにやりたいという人も少なくないはずです。

それぞれの人生があり、夢も暮らし方も生計も様々です。

ライフプランによって、住まいの形も場所も広さも変わることでしょう。

介護が必要な人、必要ない人、認知症になってしまう人、死の直前まで意識がしっかりしている人など、その心身の状態によって、住む場所も変わるのでしょう。

自宅住まいを続ける人、同居家族のいる人・いない人、病気になって病院暮らしで終末を迎える人、残された家族に迷惑を掛けたくないからと介護付き老人ホームの世話になる人など、住居の形態も場所も様々です。

いずれにしても40年も先のことは誰にも分かりません。長く住むつもりで買ったが40年先には無用の長物になる家・ならない家、空き家で放置する人、子供が受け継いでくれる家、換金して老人ホームの入居資金にできる家、二束三文でも売れない家、住まいの内実も様々です。

●老境にさしかかり後悔している人

これは、ご相談くださる人のお便りなどから筆者が創造した架空の話です。ご相談者はXさんとします。

Xさんは、夢だった庭付き一戸建てを38歳で郊外に建てました。直前まで住んでいた社宅より通勤時間は長くなりましたが、一国一城の主になった喜びが大きく、17年もの間、その通勤(痛勤)を一度も後悔したことはありませんでした。

会社では同期の誰よりも早く出世し、これもマイホームを持ったことによる自信が要因だと思っていました。部下にも、ことあるたびに「早く家を持て」と諭しました。

そんなXさんも55歳を迎えようとしていましたが、最近は悩むことが増えました。娘が一人暮らしをしたいと言ってきたことがきっかけでした。娘は都内の有名出版社に勤めていますが、出勤時間が遅いので郊外の家から通勤することに抵抗がないはずとXさんは勝手に思い込んでいました。

ところが、入社してから4年目になって責任の重い仕事を任されることが増えたらしく、朝も早く出ることがあり、帰宅時間も遅くなっていました。最寄り駅まで車で迎えに出ることもあった妻が心配し出した矢先、娘は会社の近くにワンルームを借りて住みたいと言い出したのです。

弟は大学生ですが、スポーツに熱心で合宿だ、遠征だと家を空けることがよくありましたが、就職活動も始めていない段階だったのでXさんは何も考えていませんでした。

娘の別居問題をきっかけに、妻が「そう遠くない将来、私たち二人だけの寂しい家になってしまうわ」などと語るようになり、やがて「都内に引っ越しできないかしら?それができたら、家族みんなで今と同じように暮らせる」などと願望を告げたのです。

Xさんは、城を明け渡すなどとんでもないことだと思いました。 17年間この城を拠点に俺は頑張って来た。そのおかげで人並みの暮らしもできるようになったんだ。子供たちも私立大学に通わせることができた。これといった家庭内トラブルもなく、健全な暮らしを送って来られたのも、マイホームという基盤があったからだ。そのマイホームを捨てるなど考えられない。Xさんの心境は複雑です。

家庭内事情は変わるものだということすらXさんの頭には浮かんだことが一度もありませんでした。通勤は自分一人の問題だから、自分が良ければ場所はどこでも良い、駅から距離もあったが、バス停までは2分とかからないし、抵抗はなかった。小学校も中学校も遠くなかったし、買い物便も悪くはなかった。我が家には何も問題はなかったはずだ。

定年後も同じ家に住むとは限らない、その理屈が頭の片隅になかったわけではなかったものの、両親が住む家は自分が生まれる前から同じだったし、そこから移転する気配は微塵もなかったので、買った家を買い替えることなど、Xさんには全く想像できなかったのです。

とまれ、Xさんは妻の都内への買い替え作戦の実現性について考えてみましたが、そこで厳しい現実を知ることになったのです。

まず、我が家を売却するとしたら、価格はいくらになりそうかを調べました。なんと、購入額の半値にもならないのです。35年ローンはおよそ半分経過しましたが、売った後に残るキャッシュは殆どないことを知って愕然としました。契約時に払った頭金もなくなってしまう勘定です。

ポータルサイトの売出し情報から推定しただけなので、実際はもっと低い可能性がある。Xさんは、我が家の資産価値はゼロと同じだと思いました。

●住まいは生活の基盤というだけでなく資産でもある

Xさんは、「買い替えることがなければ、つまり家は売らなければ損も得も実現しないが、売りにかけることによって資産性がクローズアップされて来る」と気付きました。住まいが「資産」という現実を思い知らされた格好です。

住まいは生活の基盤である。住まいは家族を納める器である。男子たるものは、家を持って一人前だ。社宅は狭く、家族が快適に暮らすには狭すぎるから、家族のために広い家を用意してあげたい。Xさんの当初の考えは、このようなものでした。それが購入動機でした。

立場上、帰宅が多くなることも多いXさんですが、そのときは都内のビジネスホテルに泊まることにしていたので、郊外の我が家を恨めしく思ったりすることはありません。そこは、家族4人が顔を合わせる唯一の大切な場所なのです。

自宅はキャッシュを生まないと覚悟したうえで、Xさんは都内に家を持つというのは可能なのかを検討しました。年収から見て、住宅ローンは結構借りられるらしいことが分かりました。貯金の一部を頭金として入れるとすると、予算の上限は自分でも驚くほど大きな額でした。

定年までは時間がまだ10年はありましたが、定年後の仕事は見えていません。長いローンを使うのはリスクが大きい。かといって、退職金を全額ローンにつぎ込むのもどうかと思う。年金で老後の暮らしが成り立つだろうか?その研究もしてみました。

仮にリスクを取って購入するとしても、どんな家が買えるのだろうか?その調査も始めました。提案した妻に、どんな場所にどんな家があるのかを探せと命じたのです。

妻は、いくつかの不動産業者を訪問したようです。一戸建ては所詮無理と早々に断念し、マンションを中心に研究しました。新築マンションのモデルルームにも行きましたし、大手不動産会社の「マンション総合情報館」の存在を知り相談にも行きました。

その会話の中で、「自宅の仮査定金額を拝見しますと、土地が広いのですから、もっと高く売れてもいいのですが・・・」という係員の声を聞いた妻は、Xさんへの報告でそのことも加えました。Xさんはその言葉が心に刺さりました。家は古くなっても土地が残るから財産になるというのは思い込みに過ぎないのだと認識せざるを得なかったのです。

買い替え先の物件候補として、妻が持ち帰った資料を見ながら「こんな狭いマンションになってしまうのか」と落胆もしました。Xさんの家は150㎡を超えるのです。

100㎡くらいの広さがなければ親子4人が住むことはできない。Xさんは、そう感じました。妻は「他の皆さんは80㎡くらいだって。それでも贅沢なほうだと言っていたわ」と補足しました。

●相談者としてXさん登場

Xさんが、あるブロガーさんの紹介というルートで筆者の前に現れたのは、娘が別居を言い出してから4か月後のことでした。明日にも娘が家を出て行きかねないXさん宅では家探しが焦眉の急でした。Xさん自身も焦っていたようです。

Xさんと筆者の会話を紹介しましょう。

「過ぎたことに言及するのは失礼かもしれませんが、先の話に関係があるので是非とも冷静に聞いていただきたいのです」筆者は、Xさんからヒヤリングしたあと、こう切り出しました。

「住まいは快適に住まうことができるかどうか、つまり居住性ですが、その満足度がどうかという視点と、売却したときにどれだけキャッシュが残るか、言い換えますと、資産性という視点から検討することが大事です。一般的には買ってから10年か15年経つとライフステージに変化が生じ、居住性に不満・不都合が生まれます。住み替え、買い替えの必要も起こります。買い替えがスムーズに運ぶかどうかは、自宅売却処分で手にするキャッシュの額がカギを握っています。このキャッシュが多ければ多いほど予算に余裕を持つことができるからです」

「一戸建てもマンションも、古くなれば建物部分が劣化し値下がりします。土地部分は劣化しないと考えられますが、その地域が発展するかどうかで変わります。一戸建ての多くは駅から遠いところにあるので、その街全体が発展しない限り土地の価値は上がりません。最近は人口の減少や高齢化で土地の価値は下がる傾向にあります。これに対して、マンションは利便性の高い場所に建っているので、街そのものが衰退しない限り、土地の価値は不変です。建物の経年減価が同じとしても、土地分が減価する戸建てと、土地分の減価がないマンションでは当然結果が大きく変わります」

Xさん:マンションの土地って僅かしかないのでは?

「その通りです。しかし、その単価を見ると、坪10万円もしない一戸建の土地に対して何百万円もする土地のマンションといった差があるのです。つまり、面積の問題ではありません。勿論、マンションでも郊外は都心マンションに比べれば大幅に安いのですが・・・」

Xさん:ということは都心マンションなら土地の割合が金額的に大きいので、値下がりはしにくいということですか?

「そうです。個別の条件を考慮せずに言うことはできませんが、都心のマンションが値下がりしにくいのは確かです。あくまで物件次第ですが、あるものは10%下がり、あるものは30%下がるといった格差が都心マンションにもあるのです」

Xさん:上がることはないのですか?

「値上がりしたマンションもたくさんありますが、物件格差のほかに、市況によっても値上がり・値下がりの幅は変わります」

Xさん:価値あるマンションを選ばないといけないということですね。

「その通りです。どのような条件がマンションの価値を左右するかのお話も後でいたしますが、次の買い替えのときに有利に売れるマンションをいかに選択するかが大事です」

Xさん:一生のうち何回の買い替えを想定しておくべきなのでしょうか?

「それぞれの事情によって異なりますし、何回かはお答えしかねますが、人の一生は何が起こるか分かりませんし、寿命が伸びて長く生きる時代ですから、ライフステージも何度も変わります。また、想定外のことも必ず起こると考えなければなりません。ちなみに、この私も今の家は最初に買ったマンションから数えて5軒目です。

Xさん:過去4軒の家は全部儲かりましたか?

「とんでもない。都心のマンションばかりですが、売りのタイミングが悪く、損したものも1軒あります。ただ、所有期間が長かったので、ローンは大幅に減っていてキャッシュは結構残りましたが。 短期間で大きく儲かったものもありました。タイミングが良かったからです」

Xさん:我が家のマンション選びはどのような方針で進めるのがいいでしょうか?

「4LDKをご希望とのことですが、お子さんの部屋、ご夫婦の部屋、家族が揃って食事したり、くつろいだりするリビングダイニング。3LDKではいかがでしょうか? マンション住まいには家財の処分がつきものです。大きな器は家具・家財を増やしてしまいます。マンション住まいに転じるとき、ここが障害になる方も多いのです。どうしても捨てられない家財とか思い出の品とかがあれば外部のトランクルームを活用するのが定番です」

Xさん:予算はどのように考えればいいでしょうか?

「3LDKのお住まいも、いつかは結婚してお子さんたちが出ていくでしょうから、2LDKで足りるときが来ます。ダウンサイジングですね。場所も、都心でなくとも問題ない場合もあるでしょう。今回購入する物件は、とりあえず定年後も10年くらいは働けるはずと考えて20年ローンを組まれたらいかがでしょうか?できるだけ貯蓄には手を付けず100%ローンで買われてもいいでしょう。貯蓄を使うとしても物件代金以外の諸費用分、購入額の5%くらいと決めてはいかがでしょうか?  仮に20年ローンを利用した場合、10年経過でローンは50%ほど減っていますから、仮に20%の値下がりがあっても手元に30%のキャッシュが残ります。 初期のコストが物件代金以外の5%だけとしたら、6倍に増えた貯金のようなものです。リフォーム代が必要な場合もありますので、厳密な計算は違って来ますが。30%分のキャッシュが手元に残ったとすれば、これを最終のお住まいの資金として頼りになります。60歳を超えると住宅ローンは利用できなくなりますから、全額現金払いということになりますが、ダウンサイジングや場所の移動などと組み合わせれば十分に可能だろうと思います」

Xさん:うまくいくでしょうか?

「購入物件次第ですね。できるだけ高く売れそうなものを選ばないといけません。そこで、物件探しのポイントに話題を移しますが、まず新築は除外した方が良さそうです。都心または準都心で候補をお探しください。広さにこだわると立地条件の悪いものになりがちです。立地条件こそが、マンションの価値を決する一番の要素なのです。妥協するのは築年数だけになさるといいですね」

Xさん:一定の広さがあって、立地も妥協しないという条件で探すと我が家の予算では古さは目をつぶれということですね。

「ええ、失礼ながらそういうことになりますが、Xさんのご予算でしたら、築20年以内でご満足いただけるものが見つかると思いますよ。20年を超えたらダメということではありませんが、一応の線を引くと20年あたりです」

Xさん:お勧めの物件はありますか?

「ないことはないですが、私は仲介業者ではありませんし、こちらから物件を提示することはしません。Xさんの方から、これなんかどうかという物件を複数選んで試しにお送りください。それについて、それぞれ私のコメントを差し上げます。それを2~3回繰り返すことによって、この種の物件を選んではいけない、この物件なら検討して良い、至急見に行った方が良いかもしれないなどといったことが見えて来ます。これが、本を何冊も読むより理解が早く、かつ探すのも最短距離ですむ方法です」

Xさん:この方法で物件を見つけられた人も多いのでしょうね?

「はい、少なくとも、こうしてお目にかかったご相談者はみなそうです。理論と実践の違いとでも言えばいいでしょうか?まあ、練習試合みたいのものですが、大体、3か月以内にはゴールに達しています。最も早かった人は2週間でした。1か月以内の人も多いです」

Xさん:資産価値の観点で選ぶべきマンションの条件を最後に要点だけ教えていただけますか?

「わかりました・・・(以下、略)・・・」

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。(http://www.syuppanservice.com

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https://www.sumu-log.com/archives/author/mituikenta/

5月25日の第209回は「将来人口予測データに注意―その街は廃れる運命にあるかも」です。

★「フィナンシャルプラン+住宅購入」セット相談は日本初 

湾岸マンションで有名な「のらえもん」さん。ご縁があって、筆者も氏がプロデュースしたビジネスを少しお手伝いしています。ビジネスとは、対面式のマンション購入相談で、これは本邦初と言って過言でない形態です。

2部構成になっていて、最初にフィナンシャルプランナーとの長期の家計プランついてのご相談、次いで購入マンションの是非についてのご相談となっています。

詳細は、HP(住まいスタジアムhttps://sumai-stadium.com/)をご覧いただくとして、対面式の相談を「FP相談+住宅相談」の形で実施する例は他にないはずです。

筆者の主宰する「マンション相談室」は「住宅(マンション)相談だけですから。

実は筆者もかねて望んでいた相談の形態でしたが、FPの優れた人材と知り合うチャンスがなく、先を越されてしまいました。

筆者の「マンション相談室」も多忙な毎日ですが、住まいスタジアムとの連携も図りながら、多くのマンション購入者のお役に立つことができれば、それに優る喜びはないと考えて協力を約した次第です。

FPさんとの相談は、大きな安心を与えるものであり、しかもマンション業者のひも付きでない利点もあって、ご相談者には予想以上のご好評をいただいています。

住宅相談とのセットでいただく料金は40,000円からですが、4000万円のマンションをお買いになる人からみれば僅か0.1%の負担です。

中古マンションの手数料は3%ですから120万円(+6万円と消費税)もかかります。

新築マンションでも、物件代金以外に200万円以上300万円くらいの諸費用が必要です。

それに比べたら、一生を左右するかもしれない相談料としては破格の安さとは言えないでしょうか? しかも、業者と繋がらない立ち位置なので、客観的で、買い手サイド(目線)でのご相談ができるのです。

つまり、特定業者が扱う物件を強く推すことをしないのが長所だと思います。この面でも、筆者と同じスタンスです。

お一人様ごと、家庭環境も、また職業的な事情も異なるだけに、機械的には処理できないご相談の世界は時間の限界もあるのですが、少しでも多くの方のお役に立ちたいとスタッフ一同燃えています。

読者の皆さも、機会があれば是非ご利用下さい。FP相談だけ、マンション相談だけも可能です。