第701回 目立つ「リノベ物件」のご相談

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

良い物件が枯渇していることと関係があるのかもしれませんが、年末にかけて、立て続けに「リノベーション物件」についてのご相談がありました。

中古マンションを探している人の中に、あえて築30年以上の古いマンションに限定している人があります。狙いは、安いからというだけでなく、大胆なリフォームをして好みの間取りにしたいという願望があるからでしょう。

しかし、リノベーション済みの物件を検討する人とは違うようです。手間暇をかけずに代金を払ったらすぐに住むことができることに魅力を感じるという点が魅力なのでしょう。

今日は、リノベーション中古を購入するときの注意点に触れたいと思います。

●リノベーションとは?

リノベーションとは、英語でrenovation と書き、本来の意味は「改革・刷新・改修」。 壁紙や床の材料を貼り替える程度の「リフォーム」と区別し、設備の刷新や間仕切り変更を伴う住宅改修のことを意味します。

元の中古マンションにはなかった設備を付け加えることで、新しい機能を持つマンションに生まれ変わるということになります。

例えば、食器洗浄乾燥機付きのシステムキッチンや床暖房、暖房便座・洗浄機能付き便器といった、30年以前にはあまり見られなかった設備を含めて装備し、さらに間仕切りを大きく変えるような工事をリノベーションと定義しているのです。

この工事は、一旦スケルトン(コンクリートむき出しの)状態にしてから作りあげる大掛かりなものです。

●満足度が高いリノベーション

洋服に例えると、マンションは言うまでもなく注文服ではなく既製服です。間取りが個性的なマンションもありますが、どこを見ても同じような間取りが多いのが実態です。好みの間取りを見つけても場所が気に入らないとか、場所はいいが、今度は建物全体が貧相で好きになれないなど、なかなか思い通りにはならないものです。

そんな葛藤から辿りついた選択が大胆なスケルトンからのリノベーションであるわけです。

マンションですから、排水管(上下階を貫く配管)の位置によってトイレの位置は変えられないといった制約はあるものの、ある種、注文建築の楽しみを味わえるのがリノべ―ションです。

制約が様々あってパズルを解くような計画ですが、それも楽しみと言えるようで、その結果でき上がった自宅マンションは満足度100%となるのかもしれません。

また、業者が工事を完了させた「リノベーション済み物件」も満足度は高いようです。筆者に届く「物件評価」のご依頼には、次のような感想を付記しています。

「マンション全体は古いので、それなりのレトロ感もあるのですが、管理状態は良さそうでした。室内は、すごくお洒落で、色使いも自分の趣味にぴったり。設備も最新のものがついていて、とても気に入りました」

しかし、どこかに落とし穴はないかと思ったのでしょう。「この物件は買っても大丈夫でしょうか?価格は高くありませんか?」などと添えてあります。

●満足度100%の住まいも資産価値のプラスにはならない

手に入れた満足度100%のマンションには、それなりの費用がかかっています。スケルトンからのリノベーションとなると、最低でも500万円は必要で、1000万円を超える例も少なくないと聞きます。

何年かして売却するとなったとき、見学者に対し、「〇〇〇万円かけたのです」などと力説する所有者があります。「だから、本当はもっと高く売りたいのだ」という主張を耳にします。

しかし、売り手のこだわりは、他人にとって意味のないことであったりします。人間には個人的な好みというものがあります。好き嫌いと言ってもいいでしょうか?

それゆえに、あまり個性的な間取りにしたり、奇抜なカラーやインテリアで飾ったりした住まいは、別の人からは嫌われてしまうことがあるのです。

たまたま同じ趣味の人が見学に来てくれたら幸運ですが、そうでないことの方が確率的には髙いのです。

従って、こだわりもほどほどにしておかないと、仇となりかねません。

マンションは永住と決めない限り、購入するときから売却を念頭に置いて選択することが大事です。費用の掛け過ぎは、他人の知ったことではありません。

マンションの価値は、間取りや設備も大事ですが、もっと大事なことは立地条件ですし、マンション全体の価値、例えば規模(スケール感)や共用空間なども含めて総合的に判断されます。室内にかけた費用がそのまま価値(売り値)にプラスとは行かないことを覚えておかなければなりません。

●リノベーション済み中古は髙いか?

一方、リノベーション中古を購入した人も、次に売却するときに、同様の落胆を味わうことになる場合があります。

理由は、そもそも購入額が高いからです。自分でリフォーム会社を探し、何度も打ち合わせを重ねて発注するリノベーションより、業者が行ったリノベーション中古は業者利益が乗っているだけに高いのです。

築後40年ともなると、レトロな印象の中に味のあるマンションもないことはないですが、多くは見映えが悪く見学しても購買意欲が湧かないものです。

無論、一番の理由は建物の耐久性や耐震性に不安を覚えるからです。

そこで、見学者の購買意欲を高めようと、専有部分だけでも新品同様にする策が自然に登場して来ます。つまり「リノベーション」です。

所有者が居住したままでリフォームするのは難しいですが、退去してからなら思い切った工事が可能になります。それを個人の所有者が自らやって売り出す例は見たことも聞いたこともありません。

思い切った工事、すなわち設備機器の交換をはじめ、間仕切りも換える「リノベーション」ですが、これは個人の所有者から業者が買い取って、自ら内装工事を発注したのちに「自社物件」として売り出すケースが大半です。

リノベーションは、玄関ドアや窓のサッシなどを除けば、新築マンションのモデルルームにも劣らない、むしろ斬新な印象を放つマンションを誕生させることも可能です。

その綺麗でお洒落で、賃貸マンションでは見られない先進の設備を備えたリノベーションマンションは、見学者の購買意欲を高めるのに威力を発揮します。

「新築みたい!」と舞い上がって契約してしまう人もあるのは想像に難くないのです。

しかし、築40年ともなる古いマンションには重大な欠陥が隠れている場合があるので、見せかけに騙されてはいけません。

筆者の「評価レポート」には、価格の検証項目があるのですが、リノベーション物件は例外なく割高と出ます。

表面は華やかでも、中身(耐震性と耐久性)は大いに疑問の老朽化マンションと言うべきリノベーション物件は、価値と価格が一致しないのです。

誤解のないようにお断りしておかなければなりませんが、マンション1棟をリノベーションしたものは別格です。 ここで注意を喚起したいのは、あくまで1戸単位で販売されるリノベーション物件のことです。1棟リノベーションは、耐震補強工事も実施し、共用部の改修工事も完了していることが多いものの、1戸単位のリノベーション物件にはあり得ないからです。

話を元に戻します。

リノベーション物件は、ほぼ例外なく売主が個人ではなく業者です。中には大手仲介業者も含まれますが、大半は無名の不動産業者やリフォーム業者です。

築40年を超えるような物件は中々買い手が付かないので、個人売主は業者に買い取ってもらう道を選択します。買い取り業者は安く仕入れ、リノベーションを施して販売するわけですが、そのとき信じられないような利潤を加えたと見られる例にたびたび遭遇します。

売主直販なので当然なのですが、仲介手数料が無料であることを強調し、いかにもお得感がありそうに見せかける手法で販売に当たっているものも見かけます。

ご承知のようにマンションの仲介をしても、手数料は最大で6%余しか受け取ることができません。実際は3%になることが多いのです。

これに対し、リノベーション物件を自社物として販売する場合は、仲介でなく売主としての売り上げ100%と利益20%以上を取ることも可能です。

仕入れ価格4000万円+リフォーム工事代500万円、販売価格5000万円、利益500万円というのが東京都内の平均的な利益構成と見られます。

ところが、売出し中のリノベ中古を調べてみると、利益率は15%、20%といった例が多いようです。

新築マンションと同等、もしくはそれ以上にお洒落で快適そうなリノベーション物件を見てしまうと、中古相場がよく分からない一般の人は、高いと思わずに買ってしまいがちです。 その点に十分な注意を払うべきなのです。

●耐震性の懸念が残る「1980年以前竣工」の物件

筆者に届くご相談の中には「旧・耐震マンション」であることに気を留めていると思えないものもあります。

知らないのか、気付いていないのか、それとも危険を感じていないのか、依頼者の心の内までは分からないのですが、このような依頼を受けたとき、筆者はいつも危険の匂いを感じます。

耐震補強工事が完了しているマンションにお目にかかることが1年に1件くらいは遭遇します。補強工事済みのマンションで、リノベーションまで完了していたら、買い手は安心を得られ、かつ新築マンションと見まがう室内に購買意欲は大いに盛り上がることでしょう。

そのようなマンションなら、たとえ高くても買い手にとってメリットがあるかもしれません。なぜなら、リフォーム工事の手間が要らないからです。

リフォームプランを自ら立案し、工事業者を選択し、打ち合わせ、見積り検討、プラン見直し、工事契約といった一連の作業は相当のエネルギーを要します。

それが無用というのは、随分楽なものです。価格が高いとしても、「世話無しで良い・すぐ入居可能」は、価値があるのかもしれません。

しかし、多くのリノベーション物件の耐震性は「旧耐震」です。「旧・耐震基準」マンションは安全性に不安が残ります。

旧・耐震基準のマンションでも専門機関に診断してもらうと、安全性に問題ないと回答のあるものも存在しますから、旧・耐震基準のマンションは全部が危険というわけではないのですが、「耐震診断」をしてみなければ安心は得られません。

マンションの耐震診断は管理組合(居住者全体)から発注されるもので、個人ではできないため、耐震診断を実施したかどうかと、結果はどうだったかを調べることが必要です。現実は、耐震診断を行っていないマンションが旧耐震のマンションの内の70%もあるといわれています(国土交通省調)。

つまり、1981年以前の古いマンションでは圧倒的に耐震性に疑問を残したまま売り出しているものが多いのです。仲介業者、もしくはリノベーション業者に「耐震診断はどうなっていますか?」と尋ねることが必須です。

●古いマンションに対する不安:いつまで住める?

話を戻しましょう。耐震性に問題なさそうな1982年以降に完成した「概ね築37年」以内のマンションを含めて、マンションは何年住み続けることができるのでしょうか?

「マンションというのは、手入れさえすれば何年でも住める」という声をときどき聞きます。また、「鉄筋コンクリートの建物で世界最古のアパートがフランスに現存するそうで、築100年を超える。そのくらいの実績はあるのだから、100年は持つだろう」と語る専門家もあるようです。

 本当に、100年も住み続けることが可能なのでしょうか?

 カギは、手入れにかかる費用にあるのではないかと思うのです。老朽化が進むに連れて修繕費は嵩み、積立金不足に陥るのではないか? そうなれば、老朽化の進行を止めることができなくなって住みにくい状態になる。そうなると、放置されることになるのではないか? 

マンションは、寿命が近づくに従い、不具合があちらこちらで露呈してきます。排水不良や水勢の低下、壁面の劣化・タイルの剥離・崩落、サッシ周りに隙間が発生して風が入り込む、換気装置の機能不全などが目立ってきます。

とりわけ、コンクリートのひび割れが雨水の浸透を許し、鉄筋の錆び、そして膨張、爆裂といった症状は、耐震性の劣化にも重なります。そして、雨漏り、結露、ジメジメ感といった住み心地を悪化させる現象が増えて来ます。

何十年も経つと、応急措置を繰り返して来たものの、たび重なる修繕に根本的な対策の必要度が増して行きます。

不具合があまりにも頻繁になると、修繕の意欲も薄れ、劣化した箇所を放置したまま、すなわちメンテナンス放棄という事態もあり得ます。管理費の滞納や修繕積立金の枯渇などが、これに拍車をかけます。

日常管理もおろそかになり、共用部分にゴミが溜まり、自転車置き場が雑然としたまま、壊れた機械式駐車場は使用不能、メールボックスの投函扉は半分開いたまま。エレベーター内部は傷だらけで汚れもひどい。

居住者の中には、あまりにも住み心地が悪いので、やがて賃貸するか売却して住み替える道を選ぶ人が出てきます。賃貸戸数が増えますが、賃料が高くないため、入居者の質が問題になったりもします。それが更に住み心地を悪くさせます。

すべてのマンションがそうなるわけではありませんが、入居者が足並みを揃えて維持管理に関心を持ち、お金(修繕費)をかけて改修を適切に行ないながら、また管理規約をしっかり守って共同生活を営み、共用部分も我が家の一部としてみんなで慈しんで行けば、50年経ても快適な住まいであり続けることでしょう。

しかし、現実はそうならず、50年も経つとマンションはスラム一歩手前に陥る可能性が高いのです。そのような状態になったら、売却金額もしれています。二束三文と覚悟した方がよいかもしれません。

●マンションが分譲のカタチで登場してから60年を経過した今

分譲マンションという住宅が登場したのは、今から60年以上も前のことです。当時のマンションがどのようなものであったか、筆者にも正確には分かりません。しかし、都心でマンションが分譲されると、社会のエリート層や海外生活経験者が購入して住んだそうです。

公団住宅や民間賃貸マンションなどに鉄筋コンクリート造りの集合住宅は既にありましたが、分譲は数が少なかった時代のこと、昭和31年(1956年)に四谷コーポラスという名の、最も古い分譲マンション(とされる)が完工しました。この物件は2017年まで現存していました(現在は建て替え工事中)。

その後、秀和レジデンスというシリーズのマンションが一世を風靡したそうですが、こちらも分譲マンションの草分け的な存在で、今も都区内各地に多数見られます。

これらはもう築50年を超えました。住人に取材をしたわけではないので確かなことは分かりませんが、まだ十分住んでいけそうな気配です。耐震性能がどうか、診断を受けたか、その結果はどうだったか、耐震補強工事を済ませたか、その費用はスムーズに捻出できたのか等々。疑問は尽きませんが、今も堂々とした構えを見せています。

 秀和レジデンスは壁とバルコニーデザインに特徴があるので、それと直ぐ分かるのですが、外壁を最近に塗り直したらしいことも分かります。

 ライオンスマンションも歴史の長いブランドなので、初期の物件はそろそろ60年が近付いているはずです。

初期のマンション業者で最も数多く分譲したのは商社の日商岩井(現、双日)だったことが記録に残っています。初期は、不動産業者以外の参入が多かったようです。

ライオンズの大京(その頃は大京観光)も、別荘分譲が主力商品でマンションは多くなかったのです。

商社の中では日商岩井が際立っていましたが、伊藤忠、丸紅、蝶理、ニチメンといった総合商社が右習えでマンション分譲に参入した時代がありました。

そして、その設計と施工を数多く担ったのが、長谷川工務店(現、長谷工コーポレーション)でした。

デザインも同じの規格型マンションが大量に登場した時代がありました。長谷工自身も、自ら土地を買って盛んに分譲していました。この頃が、第二次マンションブームと呼ばれた時代で、マンション大衆化時代の本格的な到来だったようです。

最近、筆者に届くお便り(マンション評価サービスのご依頼)には、築40年~50年の物件が増えています。どうしたわけかと考えてみると、それだけ古いマンションが市場に数多く出始めていること、すなわち古いマンションが増えていることの表われと気付きます。

ご依頼の中で築50年超の物件はまだそれほどでもないのですが、築40年以上は目立っています。あと数年経つと築50年マンションも続々と登場して来ることになると予想できます。古いマンションの問題点を考えてみましょう。

※度重なる修繕費(某マンションの実例)

(平成16年)

・・・エレバーター改修費・・・350万円

・・・火災感知器交換・・・・・141万円

・・・消火栓ホース交換・・・・25.7万円

(計 517万円)

(平成18年)

・・・電気設備改修工事・・・31.7万円

           (計 31万円)

(平成19年)

       エレベーター改修費・・・409万円

       外壁漏水補修工事・・・ 71万円

       汚水排水管交換・・・・209万円

       000号室漏水補修・・・・71万円

            (計 760万円)

(平成20年)

       排水管改修工事設計・・・184万円

       屋上防水工事・・・・・619万円

         (計 804万円)

(平成21年)

       消防設備改修工事・・・・・・・129万円

      プランターボックス補修工事・・・42万円

      電気設備改修工事・・・・・・・37万円

      屋上物干し撤去工事・・・・・49万円

           (計 258万円)

(平成22年)

    排水管更新工事・・・4510万円

    地デジ導入工事・・・182万円

           (計4692万円)

(平成24年)

   大規模修繕改良工事・・・6947万円

          (計 6947万円)

これは渋谷区にある60戸余の某マンションの実例です。築45年を超えています。 修繕費が次々に出て行き、対症療法的な延命策が限界に来ているらしいことが読み取れます。

平成16年から平成24年までの9年間に1億4000万円の修繕費がかかっています。

1軒当たりにすると、約233万円となります。平成24年だけでも1軒当たり116万円を要しています。

平成25年3月31日現在の積立金残高は約1146万円とありました。6年後の現在、仮に5000万円に増加しているとしても、1軒当たり80万円余しかないことになります。

 これで大規模修繕ができるかは微妙なレベルです。できないと見た方がよさそうです。当分はやらない・やれないということになるのではないか、他人事ながら懸念を覚えます。

このマンションには、耐震性の問題もあるのですが、それと同じくらい、余命の問題があるようです。果たして、あと何年快適に住んで行けるのか、疑問を排除できないマンションです。修繕が度重なる状況に至ってしまっているからです。

中古マンションの購入を検討するとき、修繕積立金が不足して来る懸念はないか、その調査は必須です。もし、費用の問題が壁となって改修工事が適切に行われなくなれば、住まいとしての快適性は失われることになりかねません。

賃貸が可能としても、賃料を高く取るのは次第に難しいことになるでしょう。

としたら、資産価値が極端に下がる状態が来る前に見切る、つまり売却するという判断が重要と考えます。

そうなると、次は損なく売却が可能かどうかというテーマで検討しなければなりません。

内外装ともに綺麗な状態で売るには、早い方が良いこと、もしくは次の大規模改修の時期を見計らって売りに出すということも視野に入れるべきでしょう。

※寿命の短い物件は不具合が頻繁に起きる

最近の新築マンションは、高強度コンクリートを採用し、かつ耐久性の高い工法を用いて75~90年の耐久性を謳う物件が増えています。

これに対し、古いマンションは耐久性で劣るものが多く、メンテナンスを怠ると築後40年ほどで真剣に建て替えを検討しないといけない状態になってしまうと聞きます。雨漏り、結露、タイルの剥離、給水の異常など、不具合が度々発生するためです。

築30年・40年の古いマンションを買ってしまうと、そこから20年もしないうちに煩わしい問題を抱え込むことになるかもしれないのです。

それまでの修繕履歴をチェックし、度々起きている問題がないか、どのような修繕工事を施して来たか、中でも排水管の洗浄や交換といった工事をしたことがあるかどうか、雨漏りがなかったかどうか、結露が出て売主や施工会社ともめたことはなかったかどうか等々の記録を見つけることが重要です。

素人では難しいので、専門家に見てもらうことが必要になるでしょう。

修繕積立金が枯渇していれば、新たに徴収するか銀行から借入れして毎月の返済分を積立金の値上げ等で対応することになるかもしれません。古くて修繕費が少ないマンションは要注意です。目安は、1軒当たり100万円以上の残高を持っているかです。大規模修繕工事を終わったばかりで3年経っていないマンションなら50万円以上と覚えて置かれるといいようです。

総額で1億円あっても戸数が200戸あれば1軒当たり50万円です。50戸のマンションなら5000万円しかなくても1軒当たりにすれば100万円なのです。

長期修繕計画書の「収支バランス」を分析しなければなりません。

※賃貸住戸の比率が高いため、管理状態が悪化する恐れも

最初は全戸自己居住用であったものが、時間が経つと転勤その他の理由で転居する人が増えて行き、そのあとを売却するだけでなく、賃貸するオーナーも増えて行きます。

分譲マンションなのに賃貸マンションのようだ。そのような感想を述べるオーナーの多いのが、古いマンションの特徴です。

賃貸マンションとして居住している人は、自分の家ではないので管理意識が高いとは言えません。また、居住モラルが低いマンションもあります。モラルが低いマンションは、整理・整頓・清掃が乱れて綺麗な状態を保つことが難しくなります。それがマンションの雰囲気を悪くしてしまったりもします。当然、価値が低下します。

更に、転勤等でどこか遠くへ行ってしまったオーナーは、保有マンションの現状を見ていないため、管理に熱心になることはなさそうです。

こうしたことが、メンテナンスの軽視と実施の遅れにつながり、マンションの寿命を一層短くしてしまう恐れがあるのです。

以上のような懸念があれば、古過ぎる中古マンションには、長く住めないかもしれない、そう覚悟して購入することが必要と言えるでしょう。

●マンションもいつかは建て替えるときが来る

マンションの躯体(構造体)の耐用年数は税法上47年ということになっていますが、実際は100年くらいの寿命があると言われています。最近は百年コンクリートを採用し、コンクリートの劣化対策を施すマンションも増えていますから、適切なメンテナンスを継続的に実施すれば、生きている間に建て替え問題が浮上することはないかもしれません。

ただし、マンションが人間の生活に適するものであるためには、コンクリートの躯体以外に、電気や水道、ガス、排水といった機能が残っている必要があります。これらの寿命はコンクリートよりはるかに短いのです。従って、これらのメンテナンスと交換などの措置が必須になります。

設備のメンテナンスや交換に配慮したマンションも着実に増えています。代表的なのは「S&I方式」のマンションです。「S&I」とはスケルトン&インフィルの略で、コンクリートの骨格部分と、内装・設備を完全に分離した構造にすることでメンテナンスや交換がたやすくできるようにしたものです。

これら長寿命化の流れは、スクラップアンドビルドが普通だった日本の建築に対する変化の現われです。特に分譲マンションの場合、スクラップにして建て替えることは簡単でないからです。

マンションの建替えは、区分所有法によって所有者の5分の4以上が賛成しないと実現できないことと、住民の費用負担の問題があって、相変わらず難しいのが現状です。

建て替えの実現までには長い年数がかかっています。たとえば、渋谷区にある「同潤会代官山アパート(現、代官山アドレス)」の場合では12年を要していますし、10年、15年といった例が普通です。

建て替えには巨額の費用がかかります。これをどのように調達したのでしょうか?

一例を挙げると、総合設計制度の活用などの手法で容積を倍増して「保留床」という財産を生み出し、それをデベロッパーに売ることで、建て替え費用に充てるのです。

容積率とは、「敷地面積の〇〇%までの床面積の建築を許す」という都市計画法に定められた建築の要素ですが、東京都心の超高層ビルが建っているような地域は500%、郊外の一戸建て住宅街は100%というように幅があります。

仮に、容積率300%の地域に150%程度と余裕を残して建てられた老朽マンションがあったとします(郊外の旧、公団マンションに多い)。そこに、限度の300%まで面積を増やした新しいマンションを建設すれば、増えた150%分を売却して建設費を生み出すことができるのです。

ところが、このような条件の民間マンションは皆無です。最初から容積率限度一杯に建ててしまうため、保留床を生み出すことは不可能なのです。期待するのは、容積率アップの規制緩和策ですが、地域は限られます。

恩恵を得られるようなマンション所有者であっても、高齢化が建て替えの壁となることも多いと言われます。建て替え後に戻るとして、二度の引っ越しが面倒だからということや、もう老い先が短いので自分が死んでからにしてくれと、賛成しない所有者も少なくないからです。

話し合いを続けて合意を得るまでに10年もかかるというのは、住人の高齢化にも原因があるのです。

●マンションのスラム化が社会問題に

マンションは、適切なメンテナンスをして行けば50年や60年は問題なく住み続けることができるはずが、30年でダメになるという警鐘を鳴らす向きもあります。

30年で住めなくなることはないにしても住みづらくなって転居する人が増え、管理費の滞納なども増えて次第に賃貸マンション化し、やがては空室が多くなってスラム化したり、幽霊マンションのようになったりします。

これまでの建て替え例を見ると、平均40年前後で建て替えが実行されていますが、短いものでは何と18年(旧住宅公団の宇田アパート・東京都渋谷区)という例もあります。この短さの原因は、高度成長時代に「質より量」優先で建てられたことにあるのです。早く言えば、先のことまで考えられていなかった粗悪な集合住宅が多かったためです。

最近のマンションには、そうした粗悪なものは少ないようですから、どんなに短くとも50年以上は住めるだろうと考えられますが、問題は管理組合で建て替えの機運が起こって来るときのマンションの状態にあります。

建て替えの必要が起こる状態のマンションは、居住性が相当悪化しており、所有者が賃貸している比率も高く、最悪の場合はスラム化している可能性もあります。

そうなると資産価値も何もあったものではありませんが、これは既に現実の姿として起きていると、あるテレビ番組が取り上げていました。

そうだとすると、これは他人事ではありません。本当のところはどうなのでしょうか? マンションに住むときには、ある覚悟、覚悟が大げさというなら、心構えと言い換えますが、そのようなものが必要なのかもしれません。

●筆者のレポートは失望をもたらしたはず?

筆者の日常業務の過半は「マンション評価レポート」と「将来価値の予測レポート」を作成することで、毎月平均70件くらい(物件数で50以上)あります。

ご依頼物件は、新築が多いものの、最近は新築の供給が減ったことから中古マンションも増えました。

中古マンションは様々ですが、新築より価値ある物件も少なくないので、その調査と評価レポートの作成は楽しい気分になることも少なくありません。しかし、築30年を超える物件は「お勧めしがたいもの」が大半で、レポート作成の途中で気分が滅入って来ることも少なくありません。

リノベ済みの物件には内装だけに注目すれば、魅力的な物件が多いようです。新築マンションと同じか、最近のありきたりの新築に比べれば個性的で魅力ある間取りやインテリアデザインの物件も多いので、見学者の中には「一目惚れして酔ってしまう」人も多いようです。

立地条件も良いので、「この場所で、この価格なら魅力的だ」と感じるようです。しかし、不安もないわけでないからこそ、「評価レポート」を依頼して来るのでしょう。

筆者は、売り手業者との関係は全く持たない立場なので、客観的に評価レポートを作成することができますが、そのレポートが依頼者の購買意欲を急激に冷ましてしまうことが多いようで、「申し訳ない」という気持ちになることもしばしばです。

しかし、価格の割高感や不具合が頻繁に起こるリスク、巨大地震のリスクなどを念頭に置くと、「旧耐震マンション」はお勧めできない物件が大半なのです。

筆者は、関西の出身ではありませんが、1995年1月17日その日に大阪市に滞在していて直接「阪神淡路大震災」の揺れを体感しました。その後の定期的な訪問で関西に何度も訪れ、倒壊したり傾いてしまったりした古いマンションと、無傷だった新しいマンションを対比して目撃するという経験をしました。

傾いていないように見えたマンションでも、駐車場にしていたらしいピロティ部分の柱が座屈(折れ曲がること)、駐車中だったと思われるクルマの押しつぶされた姿なども目撃しました。惨状は今も脳裏に残っています。

その体験から、旧耐震マンションは危険と言うほかないのです。

●リノベマンションを選ぶとき

新築マンションで希望エリアにはめぼしいものがないから中古を検討しているという人が増えています。しかし、中古なのに新築並みに高いと感じている人が少なくありません。

中には、中古の検討をやめてしまった人も少なくないようです。中古マンションは足が早く、検討しているうちに買い手がついて「あっさりWEB上から消えてしまう」こともあって、結局は新築に戻ってしまう人も多いようです。

新築と中古を「行きつ戻りつ」しながら決めかねている検討者も多いのが実態のようです。そんな中で新築同様の内装に惹かれて「リノベーション物件」に行きつく人もあるようです。

リノベーション物件には、耐震性の問題がないモノもありますし、全てが良くないわけではありませんが、問題物件が多いのも事実です。リノベーション物件を検討するときは「より慎重に」と願わざるを得ません。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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