第706回 「中古なら築15年物件が狙い目です」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

このタイトルで書こうと何度も思っていましたが、のびのびになって今日にいたりました。このテーマがひらめいた一番の動機は、新築物件が少なくなったこと、そのうえ価格が急騰して来たこと、築浅中古も高いことが背景です。

書こうと思い立ってから、かれこれ2年くらいになるかもしれません。

日本人は新しいものが好きなのか、中古マンションの品質に信頼感を持てないからなのか、その両方なのか、中古マンションの人気は高くありません。言い換えると、新築礼賛者が多いのです。

筆者はよく問われますが、新築と中古の差は「見た目だけ」と言って過言ではないと答えます。築20年でも寿命が長いので、新築との差は僅かだと説明します。

●マンションの寿命は何年?

人生90年時代、30歳で購入したとして、60年住める家は必須です。しかし、マンションの余命が60年以上あるなら、問題はありません。築30年の中古マンションを買って20年住んで築50年になっても、まだ建物の余命がたっぷりあり、市場価値もまだ残っていると考えられるからです。

新築は80年以上、10年中古は70年以上の余命があることになります。80と70の差なら大きな差ではありません。このように考えると、中古マンションへの抵抗感は減るはずです。

とはいえ、新築には売主の保証やアフターサービスが付くのに対し、中古の売主は個人なので殆ど何も保証をしてくれません。そう考えると、中古より新築が安心。そう考える人も多いことでしょう。

ところが、マンションの品質は時間が経過すれば、一般消費財と同じで売主の保証はなくなるのです。つまり、一定期間が過ぎれば新築も中古も同じことです。大雑把に言えば、10年間の保証期間を過ぎてしまえば、新築も中古も差はないのです。

新築は竣工から10年間だけが安心。そう言って過言ではありません。

小さな不具合でも、当初の数年は売主のアフターサービスがあり、定期点検などもありますが、一定期間が経過すると、それもなくなって中古マンションも新築マンションも大差はないのです。

中古マンションを買って不具合が見つかったとき、そもそも分譲主は対処してくれません。設備類はそもそも保証期間が短く、大差はないのです。しかし、問題は個人的に対応できない構造上の欠陥や不具合が発見されたときです。

アフターサービス期間の10年を超えていた場合は、誰もその不具合を無料で補修してくれないのでしょうか? その通りです。しかし、構造上の重大な不具合などは10年以内に露見しているものなので、仮に10年を超えていないとき、大規模な修繕、もっと言えば建て替えの必要があるような重大な故障・不具合があったときは売主の資金負担で改良工事を施すはずです。もっと言えば、建て替えるなどということも実行されるものです。

(横浜市で進んでいる傾斜マンションの建て替えは、三井不動産レジデンシャルですが、もう一軒の建て替えマンションは住友不動産が分譲主。港区の高級マンション建て替えは三菱地所レジデンスです)

建て替えなければ危険なマンションなどという事案は例外中の例外ですが、建て替えるほどではなくても大掛かりな工事が必要だった例は、過去に何件かあったようです。しかし、その費用は、分譲主が負担しています。

アフターサービスの対象期間中だったからですが、アフターサービス期間を経過してしまった例はないのでしょうか?筆者の知る範囲ではありません。重大なマンションの欠陥や故障は、10年以内に露見するものです。上記の傾斜マンション事件2件も10年未満、三菱地所の物件は竣工直後のことでした。

乱暴な言い方をお許しいただければ、重大な欠陥や瑕疵というものは10年以内に露見してしまうものです。建て替えの必要ありなどというマンションを分譲販売してしまったことが10年近く経過して分かったとなると、分譲主の信用は地に落ちることになりましょう。

建築会社の問題だったとしても、分譲主は知らぬ存ぜぬというわけには行かないのです。契約書等にも売主責任が明記されています。

万一、欠陥マンションが出来上がってしまい、知らずに分譲販売してしまってから7年、8年と経過してから欠陥が発見されたとき、その補修や保証は法的にも万全ですが、時限はあるのです。しかし、重大な欠陥は長くても10年以内に発見されるものでもあるのです。

極端な表現をするなら、10年を超えたマンションは重大な不具合があったとしても解決済み、補修済みと考えられます。

むしろ、10年未満のマンションの方が、大きな欠陥が露見して来る可能性があると言えます。10年超えていたら解決済みという見方ができるのです。

その意味で、築10年を超えたマンションを買っても問題はないと言えます。

●築浅(ちくあさ)中古はみな高い

「20年中古だって、余命は50年も60年もあるのです」と言ってみても、綺麗なマンションに住みたいという買い手の希望や考えを否定するわけには行きません。買い手の多くは、中古を検討するときでも「築浅」物件に向かいます。

そのためか、築浅の中古は買い手が多く、時間のない中で買うか見送るかの結論を求められることになります。そして、「中古はじっくり検討できない」「しかも、新築並みに高い」という定評ともなったりするのです。

「そうであれば、築年数の少し長い中古に目を向けたらどうか?」と筆者は提案します。築浅の中古は人気があるのですから、少し古い物件を狙ったらどうでしょうか? それに、古くても人気のある好物件はたくさんありますよ。築年数でターゲットを絞ることはやめた方がいいでしょう・・・筆者はこう言うことにしています。

とはいえ、「古いマンションは品質的に問題があるのではないか」そう考える人も少なくありません。マンションの品質に関して厳しく問われることになったのは、ここ20年くらいのことなので、その意味では20年も経っていない中古が良いと言えるでしょうし、物件によって差があるとはいえ、古いマンションに中には15年程度でも疑問に思う物件もあり、反対に築30年を超えていても何も問題がなさそうなマンションもあるので、線を引くのは中々難しいことに思います。

そこで、筆者が提案するのは「例外もありますが、20年以内の物件に絞って探してみましょう」です。

●15年程度の中古には優良物件が多い?

築15年ということは、竣工が2005年、分譲販売が2004年前後ということになります。このころ、分譲価格は安く、販売も好調でした。

その先は急騰して、2007~08年頃にピークを迎えています。

遡ると、バブル期の1980年代末期から90年代初期は恐ろしいほど価格が急騰してだれも買えない時期でしたが、その後は大きく下落して2003年頃が底でした。底ばいは2006年まで4年間続きましたが、2007年から再び上昇トレンドへ。2010年まで高騰が続き、「ミニバブル」と言われたのです。

その後、東日本大震災が発生した2011年、翌2012年と僅かに下落し、2008年レベルに戻りましたが、その後は、再び上昇トレンドとなり、今日に至っています。                                                     

ところで、2003年からの上昇局面でも、売れ行きの悪化を心配したデベロッパー各社は、コストダウンに取り組みましたが、その策も現在ほどでなく、まずまずの品質のマンションが建てられました。

 ということで、建物品質にこだわるなら、2003年から2008年頃の分譲、すなわち築10年から15年物が良いと言えるのです。無論、常に例外はあるものですが・・・

最近(2013年以降)のマンションは品質の低下が著しく、コストダウンもまさかの「乾いた雑巾を絞り切ってしまった」という印象すらあります。

2011年の東日本大震災によって生まれた復旧・復興工事のために人手不足が生じ、そのために人件費が上がりましたが、その後も熊本地震、西日本豪雨被害、北海道地震、北大阪地震など、次々に襲われた天災によって建設会社は慢性的に人手不足に苦しむ状況となりました。

加えて2013年に決まった東京オリンピックも人手不足に拍車をかけました。マンション建築の原価に占める人件費の割合は50%近いと言われているので、建築コストの上昇は避けようがなかったのです。

地価の上昇傾向も続いているうえに建築費も高騰して、新築マンションは極限に近いところまで上がってしまいました。その余波で中古マンションの価格も高騰しました。特に築浅の中古は単純比較ですが、新築マンションを超えるほど、そんな例も増えています。

築浅の中古は無論、築年数が比較的長いものでも、優良な中古は人気があって価格は新築並みと言われます。一方、築年数の長い中古は築浅中古ほどの人気でないので、うまく動けばキャッチできる可能性は高いのです。

築浅中古ばかり探して慌てるより、少しだけ時間の余裕がありそうな10~15年中古を狙うのがコツ。筆者は、ここ3年くらい、そう思って来ました。

●基本は素早く決断すること

「良い中古マンションは、売り出す前から買い手が決まってしまう」などと言われます。そこまで極端な買い物はできない、そう語る人が多いのも事実です。

しかしながら、1か月以上も買い手がつかない物件はきっと何か問題があるのでしょうし、買い手から見ても明らかな敬遠材料があるに違いありません。

どんな物件にせよ、素早く結論を出すことが大事です。そのためには、一定の予備知識が必須になるのです。そこで、読者の皆さんも仕事の合間や週末の空き時間を使って学習に励むのでしょう。

そこで筆者はこう言いたいと思います。「中古マンションを見学に行って、その日のうちに結論を出すくらいの予備知識が必要です」と。

しかし、それは決して簡単ではないはずです。インターネット情報によって、情報も知識も容易に手に入る時代ですが、せっかく得た知識と情報も、それを整理して正確で持論に整理するのは簡単ではないからです。

だとしたら、生半可な知識・情報の収集に励むより、情報を提供してくれるアドバイザーの力を借りた方が早いだけでなく、的を射た明快な理解につながることでしょう。

インターネット時代の今日、売主におもねることのない「専門家」はきっと近くに存在するはずです。しかしながら、便利な世の中は、時として「便利過ぎて混乱する」こともあります。

筆者は、「情報過多時代は取捨選択の技術が必須」と思うのです。

マンションのような、一生に何度もない高額な買い物をするのだから、「よく考えて、慎重に」などと助言する人もありますが、過ぎては及ばざるがごとしとも言いますし、困難な問題は専門家の力を借りる方が早くて確実です。

中古マンションの選び方・是非の判断は、信頼できそうな仲介業者がいれば良いのでしょうが、どんな担当者に出会えるかは運次第です。しかも、仲介業者の営業マンの大半は「売りたい一心」から都合の悪いことはダンマリを決め込んでいるものでもあります。

やはり、買い手に寄り添ってくれるアドバイザーは他に求めるほかありません。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「対面相談」もご利用ください。お申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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