第719回 「コロナ不況の今だからこそ原点に!」



このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。



「未曽有の不況がやってきた」と語った有名人が何人もいます。実名をここで述べることは差し控えますが、もしかすると私たちが経験したことのない不況の嵐になるのでしょうか?

筆者ごときが発言するのは控えますが、一言だけお許しいただければ「筆者は楽観的」です。業種別、職種別、年代別などいくつかのカテゴリー別に検証すると、「大変だなあ」と思わざるを得ない職種、業種もあって、それぞれの立場をおもんばかると、悲観的に思わないでもないのですが・・・

さて、こんな時代ですが、マンション購入を考えている人が大きく減ったとは思えないので、今後も有用なマンション情報や私見をお届けして行こうと思います。

今日は、これまで何度もお送りして来た中から、整理して「マンション選びの考え方」をお送りしようと思います。いまマンションを買って損はないのかという視点を意識しながら書いていこうと思います。

●何のためにマンションを買うのか再考してみる

賃貸にせよ分譲にせよ、住まいは生活の基盤として必要不可欠なものです。多言は無用と思います。

仕事に行くための家、学校に通うための家、ときどき親に来てもらうのに都合の良い家、家族で休日を楽しむための拠点としての家、趣味やスポーツを楽しむための家、家族がそれぞれに心地よく暮らすための家など。

こうした暮らしの拠点としての住まいに誰もが居住しているはずです。

しかし、何年かすると暮らしにくくなります。不都合が起こります。典型的な例は広さの不足です。子供ができて手狭になった。だから、広い家に住み替えたいという動機が発生します。

無論、賃貸マンションでも広くて快適な、いわゆる「分譲仕様の高級マンション」もあるわけですが、その賃料はとんでもなく高いのです。

家賃のあまりの高さを知り、これなら買ってしまった方がトクなのではないか。そう考えてマイホーム探しを始め、中古マンションを購入した人も大勢います。

ところが何年か経って売却しようと考え、仲介業者の査定を聞いてびっくりした人も大勢います。

住宅ローンの返済が進んだものの、10年しか経っていないので、残債が75%もあり、買った金額以下になるのは仕方ないとしても30%も下がってしまうと、買い手が付いても銀行ローンの清算金が足らないのです。

マンションは必ず値上がりすると信じていたのに、どこが間違いだったのか、そう思って臍(ほぞ)をかんだ人も少なくいようです。

売却を諦めて賃貸することにしましたが、立地条件が良いとは言えない物件だったため、高い賃料は取れず、毎月のローン返済額に届きませんでした。しかも借り手が決まるまで2か月を要したため、その間のストレスも小さくなかった。知人はそう語りました。

2年か3年経って、今の居住者が転居してしまったら、次の借り手を探すのにまたまた苦労するのだろうか。そんな心配が残り、購入したマンションが重荷になっていると、その後のご相談のときに伺いました。

●マンションは必ず値下がりするのか?

マンションを思い切って買ったおかげで、10年もしないうちに3000万円も値上がりした、5000万円も儲かったなどという声をよく聞きます。筆者も、タワーマンションを買って2年もしないうちに売ることにして、驚いたことがあります。

7年住んで3000万円高く売れた経験もしました。反対に、高値で買ったために売るに売れないマンションに長く住んだ経験もあります。

経験を糧に研究して来た筆者ですが、値下がりしても金銭に置き換えることのできない得もあることを学びました。しかし、できることなら経済的な損失もない方がよい。だから選択に当たっては「ここに注意をすべき」と、ブログでも書き続けて来ました。

「古くなったマンションが値上がりするのは何故か」この探求に、20年以上の時間を費やしてきました。そのおかげで、マンションは購入の時期によって損得が決まることがあるという点と選んだ物件によっても損得の規模が大きく変わることを学びました。

いわば「儲かるマンションの選び方」、「損しないマンションの選び方」の調査と研究を日々繰り返して来ました。日課として、ご依頼の物件を調査し、10年、20年先の価格を予測するという日常業務を日々続けて来たおかげで、筆者自身も多くを学んだのです。

●値下がりしても無形の価値がある。それがマイホームだ

非難を恐れずに言えば、郊外や地方都市、東京都内でも一部地域のマンションは、最初から価格下落のリスクを抱えているものが少なくありません。そこで、そのようなマンションを選択するしかない人、例えば、学校も勤務先も郊外や地方にあるなどの人のことですが、ここで、「値上がりしないと分かっているマンションを購入する」人のためにもなると信じ、筆者の考えをお伝えしたいと思います。

筆者も、短期間に大儲けしたマンションもあれば、大損したマンションに長く住んだ経験もあります。その中から得たことを含めてブログ記事を書き続けて来ました。筆者の変わらぬ信念を改めてお届けします。

先ず、マンション購入には、経済的価値(資産価値)だけではない無形の価値があるという視点が大事です。

例えば、郊外に親が住んでいたら、その親の近くに住むことで親孝行ができるかもしれません。親との同居が実現でき、親の終末に当たったとき、それまでできなかった孝行をできるという人もあるでしょう。

また、親の近くに居ると、子育ての支援を頼めます。それが、妻の仕事の継続にどれだけ役立っているか分からない。そう言って、郊外のマイホームを喜んでいる人もあるかもしれません。

山や森、野原、河川など自然の姿が残る郊外に住んだら、子供に命の大切さを教えることができるかもしれないし、クルマの往来などを気にしないで走り回る元気な子供を育てることにも役立つでしょう。

ある知人は、郊外に移転した私立の女子高に子供を入れるのを機にマイホームを郊外に求めました。そのおかげで子供は部活にも勉学にも励むことができ、高校3年間を有意義に過ごすことができたそうです。

都心なら持てないクルマが、駐車料金が安い郊外なら持てるので、家族でドライブを楽しむ機会も増やせるかもしれません。

都心から離れていると通勤は痛勤になりかねないが、その代わりに休日はONとOFFの完全な切り替えでリフレッシュができることでしょう。

このような例がたくさんあると想像します。これらは皆、経済的尺度・金銭の多寡では測れないメリットです。幸福と言い換えても良いでしょう。たとえ何千万円の損をしても、後悔することはない価値があるのではないでしょうか。

もちろん、これは賃貸住宅でも実現可能です。しかし、その選択の是非は別の議論になりますから今日は割愛します。

●リセールバリューの概念

筆者はマンション住まいをしながら資産形成をした反面、運悪く高値のマンションを買ったこともあって、大きな損失を被ったこともありました。この経験が読者のマンション研究やマンション購入のお役に立つと信じて今日も活動しています。

 視点は「リセールバリュー」がメーンですが、根本的には「快適なマンションライフ」、「損を抱え込まないマンションの選び方」ということになります。

将来のことは誰にも分からないのですし、売却するかどうかも分からないのに、将来のリセールバリューを論じるのは「絵に描いた餅」になりかねないというご批判もいただきましたが、将来のことが分からないからこそ、いつでも処分が可能な、言い換えると資産価値の下落リスクが小さいマンションを選択するべきだというのが筆者の主張です。

想定外の理由で住み替えなければならないことも起きるものです。それが人生というと大仰ですが、自宅マンションは大切な個人資産なのですから、いつでも処分が可能な価値あるものを選んでおきたいものです。これは、筆者の変わらぬ持論です。

下落リスクの低いマンション、その条件はいくつかありますが、その中で最も影響の大きいものは立地条件です。

購入時の価格から下がらない、むしろ値上がりするマンションの立地条件はと問われると、都心にあるとか、駅に近いといったことになります。地域的には人気沿線や東京都内などの限られた物件になります。

しかし、現実問題として郊外や地方都市を選択するしかない人はどう考えたらいいのでしょう。都心の一等地のマンションは中古になっても値下がりしないが、郊外のマンションは必ず値下がりするような言い方をしたら、どれだけ切ない思いになるでしょうか。しかし、あえて申しましょう。

東京でも八王子市のような人口60万人の大都市なら市内に住みたい人は多数あるに違いありません。同様に、埼玉県内に勤め先があるので自宅も県内に構える方が良い。そう考える人は勿論たくさんいるわけで、東京都心に通勤する人ばかりではないのです。しかし、郊外マンションは、都心や準都心の人気の街ほど高い価値で処分ができるわけではありません。

そこで、その地域で一番の物件を選ぶなど、可能な限り値下がり率の低い物件を選択するようにしなければなりません。

●値下がり覚悟で買う場合の割り切り方

話を元に戻しましょう。

購入したマンションが、10年しか経っていないのに半値になってしまい、売りたくても売れない事態になる場合があります。

10年経過では住宅ローンの残債が大きく、売却して得られる金銭だけでは弁済ができない、手元の預貯金には手をつけたくない。このような困った事情を抱えている人は多数潜在しています。

いつなんどき売却の必要があるか分からない、計画通りに行かないのが人生、そんなことを思うとき、気楽に転居できる賃貸住宅と違って、マイホームは行動を妨げる大きな障害になるかもしれない。このように覚悟して購入するとしても、その場合の留意点が大事です。留意点というより一定の覚悟なり心構えと言う方がよいかもしれません。

それは、次のようなものです。

売却が5年先かもしれないし、10年先かもしれませんが、ここでは20年後の想定でお話しします。

①先ず、20年間、賃料を払ったつもりで20年の住宅ローンを返済するのだと考えます。(20年ローンの場合、毎月の返済額は、同程度の条件のマンションの賃料とほぼ同額になるケースが多いはずです。ローンのシミュレーションと、賃料相場を調べて比較してみて下さい。管理費等のランニングコストも概略で計算に入れておきましょう)

②月々の賃料とローン返済金額がほぼ同額の負担であるなら、マイホーム・我が城であることの満足感だけでなく勝るものは多いはずです。先に述べたように、物差しで測ることができない、精神的な利益を得ることができることを意味します。

③経済的には以下のように考えます。

20年後、住宅ローン完済。仮に3000万円で購入したマンションが、そのとき僅か1000万円でしか売れなかったとしても、1000万円の手元代金は儲けです。2000万円なら望外の喜びなどと考えます。

ただし、これは住宅ローンを20年で組んだ場合ですから、もっと長い償還期間を選択した場合は、20年後に売却するときに残債を銀行に返済しなければなりません。

10年後に売却することになったときは、もっと残高は多いわけです。従って、できるだけ短く組む方がよいのは言うまでもありません。

何年か先に1000万円で売れたものの、ローン残が1000万円では、手元に1円も残らないことになるのですから。

転勤で札幌市に移住した折に念願のマイホームを購入した人がいます。仮にYさんとします。Yさんは、それまでの狭くて古く、綺麗とは言えない社宅を脱出したのです。ところが、入居して3年で再び転勤になりました。

そこでマイホームを処分することを検討したのですが、何と購入価格の30%ダウンという査定結果に愕然としました。購入時に入れた頭金は30%だったので、それが全部吹っ飛ぶ計算です。住宅ローンの支払い分は家賃だったと思えばよいとしても、失った頭金を36か月で割ると随分高い家賃を支払ったことになるのです。

3年間の札幌ライフは快適でした。家族も幸せそうでした。その精神的利益は測りしれないと言えますが、「この3年間、賃貸住宅にしておけば、頭金を失うことはなかった」とYさんは後悔したのでした。しかし、後の祭りです。

10年後、20年後に果たしていくらで売れるかは予想が困難です。もっと先の30年後なら更に難しいと言わざるを得ません。管理・メンテナンス次第ですが、築20年くらいの中古マンションを購入した人なら、30年後は築50年となり、色々悩ましい問題が発生するかもしれません。

しかし、そうであるとしても人里放れた山の中でない限り、売却額がゼロ円ということはないはずです。少しでも手元に残れば、精神的利益と金銭的な利益の両方を手にすることが可能なのです。地域一番の物件を選んでおけば、手残りは大きくなるはずです。

●売らなければ損も得もない

35年以前(1985年以前)にマイホームを買った人の多くは、バブル期に大きな値上がりを体験しました。タイミングや購入した物件・場所によって差はあるものの、短期間に我が家が2倍、3倍になったことで驚いたものです。

しかし、現に住んでいる家の値段が何倍になろうと、何の得もありませんでした。むしろ、固定資産税がアップしたことで苦々しく思った人もあったはずです。

一方、売却した人は、高値に驚くとともに手にした金額に喜び一杯だったことでしょう。ただし、その資金でもっと良い住まいを手に入れようとすると、郊外のまだ値上がりの波が及んでいない街へ行くほかにありませんでした。

売却した場所の近くは同じように値上がりしていたため、売却して得た金銭に(新たなローンなどで)プラスしなければランクアップした家は買えなかったからです。

反対に、バブル期に高額な住まいを購入した人は、その後の極端な値下がりを体験することとなりました。

何かの事情で売りたいとなったとき、現実の厳しさにぶつかりました。売却して得る金銭では住宅ローンの残債を清算できないことを知ったからです。いわゆる追い銭が必須でした。その金額の大きいこと。結局、売却を断念した人も多かったはずです。

売却を断念した人は、含み損を抱えてしまったものの、損失が確定しないで済んだということになります。これは、売却しなければ損も得も表面化しないことを意味しています。

ここまで述べて来たことと矛盾するようですが、最悪の場合は換金を諦めるということです。といっても、そのマンションが打ち出の小槌のようにキャッシュを生み出すものであって欲しいですね。つまり、賃貸がしやすいことが大事です。

そのためには、地域一番でなくても駅から近いなどの条件を満たす物件を選んでおくことが必須となります。

●マンションは必ず値上がりするとの思い込み

東京圏に住んでいる人たちの中には、マンションは古くなっても値上がりするものと勘違いしている人が少なくありません。

劣化していく建物、見てくれも悪い中古マンション、それが値上がりするのは本来おかしな話です。価値は間違いなく下落するはずですが、購入時の価格で売れて喜んでいる人がたくさんいるという事実を知って、固定観念が出来上がったのでしょうか?

その理由と背景を正確に説明できる人は少ないのです。

筆者もときどきお会いする人に尋ねてみますが、「地価が上昇するからですか?」などと自信なさそうに答える人が大半です。「当たらずとも遠からず」というべきか、「それも一因には違いない」のですが、それだけではありません。

逆説的に「値下がりしなかったマンションは地価が上昇しなかったためとなりますか?」と尋ねると、「そうじゃないの?」か「分かりません」という答えが普通です。

では、どのようなマンションが中古になっても値下がりしにくいのかについて説明しましょう。賃貸の方が良かったと後悔しないための予備知識として是非、記憶に留めて欲しいと思います。

中古マンションが新築と同額で売れるということは本来あり得ないことです。築2年、3年と若い物件でも、買い手から見れば手垢がついた建物なので、機能は変わらないとしても心理的な価値のダウンが避けられないからです。

ところが、周辺の新築マンションを上回る価格で買い手がつく中古マンションは現実に多数あります。一方、冒頭で紹介したような10年も経たないのに購入時の半値になってしまうという実例も多数あるのです。

以下は、値上がりしやすいマンションの条件等について整理したものです。

(1)物件の魅力の差

値上がりするマンションの条件の第一は、周辺新築物件にない特長や利点があって、中古であることのマイナスを補って余りある物件だからです。

例えば、小型物件の多いエリアにおいて、所有マンションが大規模で様々な付加価値を有する物件であれば、その差別感や存在感が新築・中古を問わず特別なものと認定され、高い価格を付けるのです。

駅直結マンションであるとか、駅に近い立地は便利なものの雑多な環境である場合が多いですが、例外的に緑多い住宅街の入口にあるとか、或いは隣が大型スーパーである、大規模公園に接している、遮るものがない一面オーシャンビュー、といった格別な立地条件の物件も同様です。

これらは、物件固有の条件が中古マンションの将来価値(リセールバリュー:RV)を決めるものであることを指しています。その条件をもう少し分解して説明します。

将来価値を決定する要素は、①立地条件(利便性と環境)、②スケール(存在感)、③外観・玄関・空間デザイン、④建物プラン(共用施設、間取り、内装や設備など)、➄ブランド、⑥管理体制です。

この中で一番比重が高いのは①の立地条件です。立地さえ良ければ建物は何でもいいという単純なものではないのですが、大きな要素であることは確かです。逆に、どんなに素晴らしい建物でも立地条件の悪さを補うことはできません

※立地が良い・・の意味を尋ねると、東京圏の買い手は「駅から10分以内ですか?」と答える人が多いのですが、筆者は「10分では遠いです」、少なくとも競争力に欠けます」と伝えます。

バブル期には、駅から徒歩10分以内にすら物件がなく、仕方なく15分も歩く物件を買うのは普通でした。ところが、最近は駅から遠くても徒歩10分以内が当たり前になっています。

(2)需給バランス

また、当該エリアで新築の供給が殆んどないとか、あっても比較対象にならない物件ばかりという場合は、期待以上の価格になることがあります。

例えば、80㎡以上の広さを求めても、新築に70㎡台までの売り物しかないという場合や、駅近の物件を探したが、徒歩15分以上の売り物しかないというとき、80㎡以上の物件所有者、あるいは徒歩5分の物件所有者には有利に働きます。

これらを一言で表すと、「希少価値」ということになります。

中古マンションの価格は需給関係で決まります。新築の供給が少なければ、中古が取引の中心になり、上質な中古物件は新築並みの価格になるのです。人気の高い街や駅周辺では、新築の供給が何年も途絶えていたりするので、2~3年前の新築を超える高値の中古マンション取引が生まれます。

また、ある面積帯の物件が稀少という場合、上述のように、その面積帯だけが高い価値をつけることもあります。

(3)価格変動のタイミング

中古マンションは、平均的には20年もすると新築相場の半値くらいになるものですが、タイミングによっては需給バランスが変わり、高値になったり安値に戻ったりするのです。

新築価格が急騰している時期に売り出すと、割安な中古に需要が向かうので、中古が引っ張り上げられる恰好となって上昇するのです。固有の条件は「平凡」の域を出ていない物件であっても、期待できるのはこのケースです。過去にも、その恩恵に浴することができた人・物件は多いのです。従って、売り出しのタイミングが重要と言えるのです。

ただ、市場全体で価格が上がってしまうと我が家が値上がりして喜んでも、買い替え先の物件も値上がりしている可能性が高いことを忘れてはいけません。しかし、タイミングと買い替え先の選定によっては、恩恵に預かれる可能性が残ります。例えば東京都心のマンションが値上がりしていても、横浜はまだ値上がり前夜ということもあるからです。

つまり、不動産は広域で一斉に値上がりすることはないのです。首都圏では、都心から南に動き、更に時計回りに郊外に広がる形で価格は変動する傾向があることを覚えておくといいかもしれません。

繰り返しますが、中古マンションの価格は新築価格に連動します。新築が上昇中のときは、割安な中古に需要が向かいます。すると、やがて中古も値が上がるのです。築20年の中古マンションは新築の半値程度になるとはいえども、新築相場が2倍になっていれば、購入価格から見れば値下がりしない理屈になります。

(4)購入価格

最も大事な要素は「購入価格」です。価値に見合わない高値で購入(高値掴み)すれば、どれほど立地が良くても、また建物が立派でも将来価格は期待外れになります。

今は2013年から続く高値の時期に当たっているので、例外なく高いマンションを買ってしまうことになりそうです。

反対に底値のような時期に購入した物件なら、次の上がり相場のときに売れば、平凡な物件でも値上がり益を得ることができるのです。

最近の売却者で2005年ころに購入した人は、購入価格より売れて喜んだことでしょうし、もっと極端には2012年ころ(今回の上がり相場の前夜)に購入し、5年後の2017年に売却した人は20%も高く売れて(5000万円が6000万円になって)ホクホクだったはずです。しかしながら、それでも物件固有の格差が大きかったことは事実です。

高く売れるか、安くなってしまうかは以上のように様々なファクターが影響して来ますが、これから購入するという人へお伝えしたいのは、どの地域で購入するにしても、「より価値あるマンション」、「値下がり率が小さいマンション」の目利きこそがカギを握るということなのです。

●「新築か中古か」という問題

新築マンションの供給量が大幅に減ったため、しかたなく中古マンションを検討している人にぶつかります。

ご相談の中で「中古は買いにくいという声も聞きます。

買い手の立場で考えてみると、中古マンションが買いにくい理由は5つ挙げられそうです。

理由(1)室内の見た目が悪い

中古マンションの多くが、壁が黄ばみ、浴槽に湯あかが着き、ガスコンロは油まみれになっていたりします。

こうした光景を目にすると、見学者の購買意欲が高まることはないでしょう。

これらを補って余りあるもの、例えばバルコニーから見える景色が感動的であったようなときは印象が薄らぐはずですが、そのような幸運には滅多に出会えないものです。

理由(2)外観や共用部分が古ぼけていたり汚れていたりする

レトロ好きな人もあるのでしょうが、日本人の多くは古い物より新しい物を好む傾向が強いとされます。新しいものは良いものという先入観もあるのでしょうか、一目で古いと分かると購買意欲はがくんと落ちるのです。

室内の見学前に必ず目にするのが外観であり、エントランスやロビー、エレベーター、共用廊下です。定期的に清掃や改修を実施していても、新築と同じようには決してなりません。

築後30年過ぎたマンションを見学に同行したときのこと、少し前に各住戸の玄関扉をそっくり交換したそうですが、玄関前の床は昔のままでした。 掃除はしてありますが、壁際は黒ずみ、まだらに変色したままだったのです。

また、タイル張りのマンションでは、換気孔の辺りが黒ずんでいたり、白っぽい汚れが鼻たれ小僧状態になっていたりという建物も多いのです。

こうしたものを先に見てしまうと、部屋に到着する前に気持ちが萎えてしまいます。

理由(3)設備が古い・ないものも多い

ディスポーザーは新築でも付かないものは少なくないですが、食器洗浄乾燥機は大半が標準装備されています。中古は食器洗浄乾燥機もない物件が多いのです。

浄水器も中古マンションでは少ないですね。

浴槽のまたぎは、新築マンションなら450ミリ前後が定番ですが、中古マンションは600ミリタイプが多いことに加えて、浴室内のデザインも「お洒落感」はかなり異なります。

テレビモニター付きのインターホンが100%近くまで普及したマンションですが、モニターの画像がカラーか白黒かというと、築20年クラスは白黒が多いのです。

結露ができにくいことで知られる断熱効果の高い複層ガラスのサッシは、築15年未満の比較的新しいものを除くと中古マンションには見られないものです。

また、設備ではありませんが、天井が低いのも中古マンションの欠点です。最近の新築マンションは2500ミリ以上が大半になっていて、2400は稀な部類になっていますが、中古マンションの多くは2400ミリです。

背の高さにもよるのですが、天井高は開放感を随分違った印象にします。

理由(4)バリアフリーになっていないものが多い

1階の玄関ホールから住戸前までバリアフリーになっているだけでなく、室内にも大きな段差がないのは最近のマンションの標準です。

ところが、古いマンションでは共用部も室内も段差が解消されていないものがあるので、これも抵抗感を覚えてしまうことでしょう。

理由(5)建物に対する不安が拭えない

中古マンションが買いにくい最大の理由はここにありそうです。先に挙げた4つの理由は、むしろ付け足しと言ってもよいほどです。

不安とは、具体的に言うとどのような点にあるのでしょうか?

◆耐震性の不安 : 幾多の地震体験から、新しいマンションは対策がしっかりなされているが、古いマンションは十分ではないという漠然とした不安を持つ人が多いようです。

◆耐久性の不安 : 築20年以上の古いものを検討する人が抱くことですが、あと何年ここに住めるのだろうかというものです。

◆瑕疵がないかという不安 : 瑕疵は「隠れたキズ」というほどの意味ですが、悪意のない売主に対しては追及ができない瑕疵担保責任のことです。

欠陥マンションではないかという疑問と言い換えてもよい部分です。

最近は大手仲介業者がガスコンロや湯沸かし器といった設備の瑕疵担保保証というサービスを導入していますが、重要なのは目に見えない構造的な部分の瑕疵です。

入居後しばらく経って(例えば数年先に)発覚したときはどうなるのかという不安です。

大抵は個人の売主から購入する中古マンションですから、瑕疵担保は免責になっていて、万一のことがあっても責任を追及する先はないのです。

◆遮音性の不安 :これは新築マンションでも同じですが、古いものは最近のものより遮音性が低いという先入観が働くためと考えられます。

購入の注意点などに関しては別の機会にしますが、中古など考えられないという人は別として、ある種の割り切り方を取り入れれば、中古も選択肢のひとつにはなるはずです。

今は、積極的に中古を検討するべきときなのです。上記の問題を抱えながらも、それをクリアして行けるならば、予算を下げて購入することができるかもしれません。または、広い家を手にすることが可能かもしれませんし、より都心の立地の物件と遭遇する可能性も高くなるでしょう。

予算を下げなくてよいなら、リフォームに思い切って予算投下することも可能です。少なくとも室内だけは手垢が消え、見違えるように綺麗な住まいを手に入れることが可能になるでしょう。

●新築信仰は中古不安の裏返し

優良な中古マンションは、市場に出るか出ないうちに買い手がついてしまうと言われます。しかし、これは例外です。既に述べたように、全体的には新築マンションの平均在庫が10%程度しかないのに比べて、80%以上も市場にある中古。売れ足が遅いことを意味します。

その原因は、売り方の差にもありますが、原因のひとつは建物への不安が払拭しきれないことにあります。

新築マンションは、大々的な広告宣伝と華やかな商品展示(モデルルーム等の演出)によって顧客動員を測ります。

特定マンション1件(戸数は多数)のためにスタッフを大量配置するなど、専従態勢を敷きます。その結果、短期間に50戸、100戸と販売が進むのです。

これに対し、中古マンションは物件個別の宣伝など殆んど行ないません。

販売担当者も1物件を専属的に売ろうとはしません。より売りやすいものへと意識も行動も移って行くため、並みの物件は中々売れないのです。わずか1戸が3か月たっても売れないのは、普通のことです。

新築マンションの販売現場では、あらゆる角度から買い手の不安を払拭する準備・営業努力が傾倒されます。

耐震性や耐久性などの基本構造をはじめ、建物の性能に関する説明を丁寧に行ないます。

床下や壁の内部など見えない部分については、断面模型などを使ってアピールします。

ガラスの断熱性や防音サッシの性能は、メーカーから借りて来た縮小版の実物モデルを使って体感できるようにしています。

免震構造の効果は、一般の耐震構造との差を模型の揺れで実演してくれます。

これらのデモンストレーションは、モデルルームを見学した経験をお持ちの読者ならお分かりいただけるはずです。

これらは全て買い手に「安心感」や「納得感」を持ってもらいたい意図から用意された仕掛けです。

これに対して、中古マンションは実物を目視するしかなく、建物内部がどうなっているかなど全く分かりません。

工事中の新築マンションを買うのと違って、実際の景色や日当たり、管理状態を確かめることができるという、一面のメリットがあるのは確かですが、それだけでは安心できないのでしょう。

また、新築マンションでは最長10年のアフターサービスと定期的な点検なども行なわれますが、中古はアフターサービス期間内でも分譲主からの保証を受けることができないのです。瑕疵担保についても同様です。対象者は、あくまで分譲時の買い手に限られるからです。

自分が購入した後に、これまでに表面化しなかった欠陥が出てきたらいやだなと思っても、対策はありません。

「現状有姿(げんじょうゆうし)」という、買い手が見たままの実物取引が中古売買の常識なのです。見えない部分に関して売主は全く関知しないというわけです。

引き渡し後3か月以内なら、修理や交換に応じるという瑕疵担保責任を明記する売買契約もありますが、その範囲はコンロや給湯設備に限るのです。

これでは不安を拭いきれないのも道理です。

物を買う人の不安心理は3つあると言われます。購入する品物への不安、売主への不安、そして営業担当者への不安です。

「この品物を買っても大丈夫か、期待する効果は得られるか、欠陥商品ということはないか、万一の場合、売主は返品や交換・修理などに応じてくれるか、この売主はそもそも信用できるか、担当者の説明に誇張やウソはないか」などのことです。

購買を決断するときの心理は、「立派な品物のようだ。期待する効果・利益も上げられそうだ。売主は信用できそうだから、万一の欠陥・不良はないだろうが、万一あっても交換や修理に応じてくるはずだ。この売主の社員なら説明にウソもあるまい」です。

さて、中古マンションを購入しようというときに当てはめてみましょう。上記の安心感は生まれるでしょうか?甚だ心許ないとは言えないでしょうか?

そうです。営業マンの対応にウソはないと信じられる場合でも、その営業マン自身が紹介物件の基本構造などに必ずしも精通しているわけではなく、事実や表面的に確認できることのみを情報として提供してくれるに過ぎません。

●中古マンションを購入するときの拠り所は?

では、中古マンションを買った人たちは、どこに安心の拠り所を求めたのでしょうか?あるいは、どのような考え方をして決断に至ったのでしょうか?

これは個人差のあることで、また調査データのようなものも発見できず、分かりにくいテーマですが、例示してみましょう。

①大手マンションメーカーの分譲したマンションだから大丈夫だろう

②大手ゼネコンが施工したマンションだから大丈夫だろう

③先の大地震でも特に修復が必要な箇所はなかったと説明を受けた

④内見中、室内はとても静かだった。遮音性も悪くはないのだろう

⑤清掃が行き届いており、管理状態も良さそうだ

⑥管理人さんの目が光っているし、オートロックなのでセキュリティも良さそうだ

⑦管理費等の滞納者がゼロと説明を受けた

⑧売る人が少ないというから、きっと良いマンションなのだろう

大体こんなふうに考えて自身を納得させたのだと思います。

ここで気付くことがあります。売主と施工会社が大手というくだりです。逆に言えば、大手の物件以外は不安が解消できないことになります。

ところが、気に入って買いたい欲望が強まると、マイナス思考よりプラス思考というか、楽観的というか、そのような心理状態になるようで、

⑨疑ったらキリがない。まあ大丈夫だろう

⑩住んでみて不具合があったら売ればいいさ

などと自分に言い聞かせて不安を打ち消すのです。

●中古マンションを検討するときのスタンスは?

中古マンションを買おうかというときは、内覧の際の観察ポイント、見えない部分の指摘事項、調査方法など、一定の予備知識が必須です。

しかし、それでも十分に納得できる回答を得られない可能性が高いのです。

2000年から始まった「住宅性能表示制度」によって、建物品質に関する客観的指標が新築マンションの物件ごとに提示されるようになって来ました。最近は80%くらいに普及して来たようです。

今後は、中古マンションの紹介の中にこれが増えて来ます。また、仲介業者が一定範囲で品質保証を行う例も出てきました。しかし、いずれも、緒に着いたばかりです。

まだ当分、自己の目利きや知識が中古マンション選びで鍵を握りそうです。

例えば、かねて目をつけていた中古マンションで、10年前の新築分譲時に5000万くらいした部屋が4500万円(10%しか下がっていない)で市場に出たとします。一方、近所に新築の物件があって、気に入っている部屋は5300万円するとします。

その差は700万円ですが、中古の方は若干のリフォーム費用と仲介手数料がかかりますし、登記料や固定資産税の軽減措置がないので、実質的には400万円くらいの差にしかなりません。それなら、少し頑張って新築を買った方が良いという判断が成り立つかもしれません。しかし、コトはそんなに単純ではないのです。

●優良な中古は取得が難しい

中古の優良物件は、実は市場に出ても直ぐに買い手がついてしまうため、フットワークの良さがないと手に入らないという現実があります。

つまり、出たら即決するつもりで待たなければならないのです。優良な中古マンションには順番待ちリストがあるほどですし、仲介業者と親密な関係を保つ必要もあるとも言います。

こうしたことに鑑みると、優良な中古マンションを手に入れるのは中々大変そうです。人気マンションは、価格差だけを見れば新築とほとんど差がないというのも真実です。それでも手に入れたい中古マンションは、かなり惚れこんだものであり、かつ、将来はヴィンテージマンションと呼ばれるような類になるのでしょう。

そのようなマンションは、もはや価格ではないかもしれません。どんなに高くても買いたい名品というわけです。

そこまでの惚れこみようではなく、単に「中古なら新築よりお得であろう」という発想でしたら、それは間違いかもしれません。

同一地域の中古マンションを拾って比較してみると、駅からの距離、建物規模、ネームバリュー、デザイン、管理状態などで驚くほどの差があることに気付きます。築年数で大きな開きがないのに、改めて価値観の差が価格に反映されるものだと教えられます。

それぞれ新築のときは、さほどの価格差がないにも関わらず、中古市場では大きな差がつくのです。

ということは、安いマンションは誰も買わないから安いことを意味しています。そのようなマンションを果たしてお買い得と言いきれるでしょうか?

次に、10年先のリセールバリューという視点で考えてみましょう。築10年の中古は築20年、新築は築10年ということになりますが、その時、どのような差が表われるのでしょうか?

20年経ってもあまり変わらない中古と、10年で大きく値を下げる中古、そんな例は多数存在します。20年経って、ますます安くなってしまった中古と、築10年に到達したが新築並みの人気中古という例も勿論あるのです。

折角人気エリアにあるのに、駅から遠いために敬遠されている中古マンションがあります。ブランドマンションであっても、小型で貧相な外観と管理費が高いことが嫌われて値が付きにくい中古マンションもあります。

反対に、駅2分の便利さとランドマーク的存在感が20年間高い人気を保ち続けているマンションがあります。再開発が進んで10年くらい前から人気が急に高くなり、20年経った現在では、新築マンションの供給が途絶えていることも手伝い、高い値がつくマンションがあります。

●人気中古は結構高い

東京の場合ですが、実は気に入る中古というのは結構いい値段が付いていて、極端に言えば新築と対して変わらないというのが実態です。反対に、安い中古は、ちょっと手を入れたくらいでは欲しいという意欲が湧いてこないのが現実なのです。

立地条件の特に良いという場合、中古とは思えない結構な価格で取り引きされています。駅前のランドマーク的な大型マンションや、外壁やエントランス、ロビー、植栽などに金のかかった高級マンションは、管理も行き届いていて、年数を感じさせない綺麗なものであることが多いものです。

勿論、人気のある中古は買い手がすぐに決まってしまいます。市場に長い時間留まっているような中古(それが多い)は、見学しても何かしら気に入らず、購入に前向きになれない恨みが残るものです。

綺麗でない、知らない人が長年使っていたことに対する抵抗感、時代遅れの古い設備に気乗りしない、場所も悪くはないが中途半端であったりするのです。

もう少し綺麗なもの、もう少し立派なもの、もう少し便利なものなどと欲を出すうちに、「やっぱり新築がいい」となるのが人間心理です。最新の設備と豪華なインテリアで飾られた新築マンションのモデルルームを見たら、すぐにその虜になってしまい、中古マンションはもういいとなってしまうのも肯けます。

しかし、新築の供給量は激減してしまいました。中古の検討は不可避なのです。市況が低迷しているいま、中古マンションに関する知識を習得するときかもしれません。

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