第729回 「新築は当分あきらめるべきかも?」



このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。



高過ぎる新築・・・主に、都心~城西エリアでのことですが、それなのに、まだ値上がりが続いている・・・そんな印象があります。

郊外マンションも例外ではない・・・一見すると高くないものの、品質が低い物件も少なくないからです。

筆者の仕事のメーンは、新築・中古を問わず、「マンションの価値評価」をレポートすることですが、高値が続いているため、心を痛みます。

●市場動向をチェックしてみると・・・

不動産経済研究所発表の半期(1~6月)のデータを覗いてみましょう。

1)2020年 1~6 月の供給は 7,497 戸、前年同期(1 万 3,436 戸)比 44.2%の減少。東京都区部 29.6%減、都下 40.5%減、神奈川県 53.1%減、埼玉県 74.8%減、千葉県 40.1%減~コロナ禍により供給戸数は全エリアで大幅減。中でも埼玉県 と神奈川県が大幅減。

2) 初月契約率の1~6月平均は 68.3%・・・上期としては5 年連続の 60%台

 (好不調の目安は70%とされるので、不調が続いていることを表しています)

3) 1 戸当たりの平均価格 6,668 万円、1 ㎡当たり単価は 103.1 万円・・・・前年同期比で戸当り価格 531 万円(8.7%)のアップ、㎡単価は 12.4 万円(13.7%)のアップ・・・「上期としてはいずれも 1991 年(6,450 万円、101.9 万円)を超えて最高値になった」とあります。

・・・・・やはり、高値傾向は相変わらずのようです。

●売れ行きが悪いのに価格が下がらない新築

新築マンションの価格は、【用地費+建築費+販売経費+デベロッパー利益】という構造になっています。

用地費と建築費の2大原価の合計で販売価格の8割を占めます。

2割の削利益の中から広告費と販売手数料などの販売経費を差し引くと利益は10%程度・・・これが分譲マンション事業の標準形です。

新築マンションの売れ行きが劇的に悪くなったのは、2016年1月のことでした。

それから4年以上が経過しましたが、最近は一段と売れ行きが悪化しているようです。

しかしながら、売れ行きが悪くても新築マンションの価格は下がらないのです。上述のデータ(2020年上半期)がそれを物語っています。

売れ行きが悪化すれば、マンションデベロッパー(売主)は値引きによって販売促進を図るのが定石でした。「でした」というのは、最近は売れ行きが悪化しても値引き販売に踏み切らないからです。

マンション販売は売れ行きが悪ければ、値引き販売に踏み切るのが常道とされていましたが、近年は時間がかかっても利益優先とする売主が多いと伝え聞きます。なんでも、銀行は売れ行きが悪くても融資を引き揚げないのだそうです。売れる都度、割合に応じて弁済すればよいということで、竣工時に全額回収するようなことはないのだとか。

そうだとしても、売れなければマンションデベロッパーは決算数字が作れないはずです。資金繰りにも窮するはずです。

言うまでもなく、売り上げが低下すれば利益も減るに違いなく、そのあたりはどう対処しているのでしょうか?

超大手デベロッパーの場合は、分譲マンション事業だけでなく、貸しビルや賃貸マンション事業の割合も大きいので、その面では大きな影響はないのかもしれません。大変なのは、中堅以下の企業でしょうか?

●高値の新築。それでも新築を狙いますか?

価格は高く、物件数も少ない状態が続いています。「新築を待っても貴方の期待する好物件には遭遇しませんよ」と言うのが筆者の最近の口癖です。

「婚活にしても、相手が半分に減っていたらマッチングの成功確率は低いではありませんか」などと説明することもあります。

それでも新築を狙い続ける人が多いのは何故でしょうか?実は、中古の取引数は近年増えているのです。しかし、新築の減少分を埋めるほどではありません。買いたいと思っている人は多いはずなのに、何故でしょうか?

一口で表せば、中古マンションへの抵抗感が依然として強いためと考えるほかありません。

新築志向が強いという傾向が長く続いて来ました。新築と中古の比率は、諸外国が2対8なのに日本は8対2と逆なのだそうです。筆者がお目にかかるご相談者も、7割か8割が新築物件のご検討者と言って過言ではありません。

ご相談過程で、こんな高値でも手が届くのは、①住宅ローンの金利が低くなったからと、②共働き家庭が増えて合算所得が高いためと気付きます。

頭金を多額に入れなくても届いてしまう高額予算の人も多いのです。「頭金は出そうと思えば出せます」とおっしゃるご相談者が多いのも昨今の特徴です。

しかし、筆者はよく「新築は高過ぎます。それでも新築を狙いますか?」と尋ねます。高過ぎる新築を買うと、将来それを売却するとき、期待外れの売り値になってしまいますよ。そう助言することも増えました。損をしたくなかったら新築を狙わない方がいいですよ・・・筆者はよくこう言います。

●新築価格に連動する中古価格。その構図が崩れている=新築の独歩高へ

「新築が高値になると、中古も少し遅れて高値になる」という傾向は明らかで、過去20年くらいのデータをチェックすると明確です。

ところが、昨今はその構図が崩れ始めていると感じます。「中古も高い。手が出ない」と語る人も多いのです。それで、結局は「新築の検討を再開することにした」という声も届きます。

筆者はこう言います。「新築より中古が高いなんて、理論的にはあり得ないのです」と。

過去を振り返ると、新築を逆転した高値中古の取引が常態化したときもありました。中古売買で稼ぐ不動産業者、それに手を貸す金融機関という構図が常態化したときのことでした。

その結果、多数の業者と金融機関が共倒れしました。バブル期のことです。

そんな経験から、痛みを知る金融機関は、不動産・マンション投資に加担することは避けているようでもあります。中古マンションの買い取り転売に手を出す業者は少なく、価格高騰の主役になっているわけではありません。

とはいえ、活発に動いている業者もないわけではありません。マンション転がしではなく、付加価値を高めてから販売する「リノベーション事業」のことです。仲介だけでは利が薄いので、買い取ってリノベーション商品に仕立て上げて販売するという業者が近年は増えました。

主に、中古市場で買い手が付きにくいマンションを狙って安く買い取り、リノベーション物件として売り出す業態、すなわち「買い取り転売事業」です。

リノベーション物件の価格統計にはお目にかかれませんが、筆者がご依頼によって出会う「リノベーション物件」を調査すると、同年代の中古相場から大きく乖離した高値がつけられていることに気付きます。

設備の更新、床と壁の張り替え、建具の交換といったリノベーション物件は、斬新で綺麗で住みたくなるような物件もあるようですが、室内が綺麗であっても、共用部は古いままなので、冷静に判断すると問題がないわけではありません。

「古過ぎる。ブランドマンションでもない。立地も良くない。それなのに、意外に高い」・・・リノベマンションは、そんな物ばかり。筆者はそう感じています。

●しばらく様子を見る・・は正しいか?

親世帯は、バブル期に高値のマンション・住宅に手を出し、その後の価格下落で転売もできず苦労したという体験を持つ人が多いようです。子供には苦労をかけさせまいとして、「しばらく様子を見なさい」と助言する親も少なくないように漏れ聞きます。

筆者に、「親がしばらく待てというのですが、待った方がいいですか?」と質問して来る人もあります。

筆者の答えはこうです。

 「待ってどうなるわけでもありません」

「まして、値下がりするという確証もありません」

「失業して金に困り、マンションを売って糊口をしのぐ人などという人はいません」

「安値の中古マンションが出て来るとしても、好立地の良い物件は稀有です」

「新築は、売主が倒産でもしない限り安値で販売されることはありません。無論、体力のないデベロッパーは10年前に淘汰されているので、今後は倒産もない」

「買いたい時が買い時なのです。無理しないで買える価格なら買ったらいいです」

「そもそもマイホームは何のためですか?金儲けのためではないはずです」

「コロナ禍で家賃は下がりますか?勤務先が家賃補助を手厚くしてくれることになったのであれば、しばらく様子を見る手もありますが、家賃は高い状態が続くはずです。待って得することはないのでは?」

「不況にため、金利が一段と低下して住宅ローンが借りやすい今、買うという選択に誤りはないですよ」

「物件の見定め=選択だけが問題なのです」

●今は中古に限るのかも?

新築がいい。中古なんて考えられないーーそう語る人にときどきお目にかかります。

しかし、新築物件は発売戸数が激減しているのです。たまに、希望条件に合致する物件を見つけたとしても、価格が高過ぎるので、結局は中々良い物件に出会えないのが現実です。

マンションは立地が一番、立地条件が良ければ古くなっても高い資産価値を維持するものです。中古マンションの中には、周辺の新築に並ぶような高値の物件もあります。新築と変わらないほどの高値の中古・・・それこそが買うべき中古マンションなのです。

中古は人気投票の結果で価格が決まるようなものです。築後10年を経過していても、同エリアの新築と変わらない価格で取引されているなら、それが市場の評価なのです。

「原価積み上げ式に決まる新築」、「買い手の評価で決まる中古」・・・こう言えばお分かりいただけるでしょうか。

●中古マンション選びは難しい;そんな声をよく聞きます

新築は高過ぎる。しかし、中古も安くない。当分マンション探しは中断するほかない。そんな声も届くようになって来ました。

しかし、「買いたい・欲しい」の声は相変わらず多いのです。新型コロナのせいで職を失ったお気の毒な家庭もあるようですが、都心・準都心のマンションを狙っている人は、所得も高く、コロナ騒ぎもなんのその、所得も安定しているようです。残業が減ったため、減収になりそうだという声も届きますが、変わらない階層も多いのです。

しかしながら、中古マンションは市場に長く留まっている物件もある一方、出てもほどなく消える物件が多いので、新築のような検討時間は取れません。

どこを見たらいいのか、どこに注意したらいいのか、古いマンションは大丈夫か、そもそも検討時間がない、このような疑念・懸念・問題があるのは否めません。

ネット上には、個人の力でも調べられることが溢れています。しかしながら、肝心のことになると分からないことだらけ。雑多な情報の中から必要なものだけを収集し、整理・分析するのは簡単ではありません。情報の重要度に応じて優先順を決めるのも難しいテーマです。

しかしながら、中古マンションを対象外にするのは得策ではありません。では、どうしたらいいのでしょうか? ネット上の情報を頼りにするばかりに、混迷度が増す人も少なくありません。情報を整理しつつ、自分なりの判定ができる段階に進んでも、それが本当に正しいのかどうか確信が持てないと語る人も少なくないようです。

少なくとも、筆者の「マンション評価サービス」をご利用下さる方は、「自分の考えが正しいのか」を確認したい」、または「調べて行くうちに分からなくなったから」というご依頼の動機を隠さずお伝えいただくので、筆者なりに丁寧にお答えしています。

中でも、時間的な余裕がないケース(中古物件など)では、速やかに回答をお届けするようにしています。

筆者のサービスの中には、現地を身に行く前に利用すると便利なメニューも用意があります。「効率よく、かつ見学に行く前の予備知識、さらには見学の際の注意点や見るべき勘どころ」などを知るメリットがあるはずです。

無論、高値なのか、程よい価格なのかをお伝えしていますから、購入の是非を判断するための有益なサービスになり得るものです。

・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらから(http://www.syuppanservice.com

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※お断り!!・・・ご検討マンションを客観的に評価するものなので、辛口の印象を持たれるかもしれないこと、ご承知おきください。

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