第736回 「リフォーム済みマンションは要注意」



このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論・「マンションの資産価値論」を展開しております。

筆者の提供している「マンション評価」サービスは、新築・中古を問いませんが、中古マンションのご依頼で気づくことがあります。

今日は、そのことについてお送りしようと思います。そう、タイトルの「リフォーム済みマンション」についてです。業者利益がたっぷり乗っているかもしれない物件についての話です。

 

●リフォーム済みマンションとして売り出すのは個人か法人か?

インターネットの物件ページには、例外的に「売主:〇〇〇不動産」と明記している例もありますが、多くは仲介業者のサイトに「取引態様:仲介」と書いてあるので、法人が売主かどうかは不明です。

 

答えは言わずもがなです。個人が数百万円投じて売り出すという事例はほぼゼロです。リフォーム済みマンションは、業者所有の物件と見て間違いありません。

 

売りたい人が換金を急ぐというとき、仲介市場に展示するのでなく、リノベーション事業を展開している業者に買い取ってもらう道を選択するようです。

 

業者側も、「即金で買います」などのチラシをポスティングして売主を物色しているようです。この「売り手探し」の活動で業者の誘いに乗る人は、換金を急いでいる所有者です。 もしくは、仲介市場に出したが中々買い手が付かずに困っている個人です。

 

●気を付けたいリノベーション中古

中古マンションを探している人の中に、あえて築30年以上の古いマンションに限定している人があります。

狙いは、安いからというだけでなく、大胆なリフォームをして好みの間取りにしたいという願望があるからです。

 

大胆なリフォームという表現は適切ではありません。リノベーションと言い換えます。

また、不動産業者やリフォーム業者が個人所有の中古マンションを買い取ってフルリフォームしてから売り出した、室内だけが新築並みのマンション、すなわち「リノベーション」と表示のある中古を探している人もあります。

 

リノベーションとは、英語でrenovation と書き、本来の意味は「改革・刷新・改修」。 壁紙や床の材料を貼り替える程度の「リフォーム」と区別し、設備の刷新や間仕切り変更を伴う住宅改修のことを意味します。

 

元の中古マンションにはなかった設備を付け加えることで、新しい機能を持つマンションに生まれ変わるということになります。

 

例えば、食器洗浄乾燥機付きのシステムキッチンや床暖房、暖房便座・洗浄機能付き便器といった、30年以前にはなかった設備を含めて装備し、さらに間仕切りを大きく変えるような工事をリノベーションと定義しているのです。

 

この工事は、一旦スケルトン(コンクリートむき出し)の状態にしてから作りあげる大掛かりなものです。

 

●リノベーション中古は「すぐ住める」のがいいものの

中古マンションは、築30年を超えるものになると、レトロな印象の中に味のある建物もないことはないですが、多くは見映えが悪く見学しても購買意欲が湧かないものです。

無論、一番の理由は建物の耐久性や耐震性に不安があるからです。

そこで、販売促進のために専有部分だけでも新品同様にしようという策が自然に登場して来ます。つまり「リフォーム」です。

 

所有者が居住したままでリフォームするのは難しいですが、空き家にしてからなら思い切った工事が可能になります。思い切った工事、すなわち設備機器の交換をはじめ、間仕切りも換える「リノベーション」です。

 

リノベーションは、玄関ドアや窓のサッシなどの共用部に属するものを除けば、新築マンションのモデルルームにも劣らない、むしろ斬新な印象を放つマンションを誕生させることも可能です。

その綺麗でお洒落で、賃貸マンションでは見られない先進の設備を備えたリノベーションマンションは、見学者の購買意欲を高めるのに威力を発揮します。

「新築みたい!」と舞い上がって契約してしまう人もあるのは想像に難くないのです。

 

しかし、築30年以上の古いマンションには重大な欠陥が隠れている場合があるので、見せかけに騙されてはいけません。

 

また、価格が適正かどうかという視点では、リノベーション物件は例外なく割高と出ます。表面は華やかでも、中身(耐震性と耐久性)は大いに疑問のある老朽化マンションと言うべき例が多いリノベーション物件は、価値と価格が一致しないのです。

 

誤解のないようにお断りしておかなければなりませんが、マンション1棟をリノベーションしたものは別格です。 ここで注意を喚起したいのは、あくまで1戸単位で販売されるリノベーション物件のことです。1棟リノベーションは、耐震補強工事も実施し、共用部の改修工事も完了していることが多いからです。

 

話を元に戻します。

リノベーション物件は、ほぼ例外なく売主が個人ではなく業者です。中には大手仲介業者も見られますが、大半は無名の不動産業者やリフォーム業者です。

 

築30年を超えるような物件は中々買い手が付かないので、個人の売主は業者に買い取ってもらう道を選択する場合があります。買い取り業者は安く仕入れ、リノベーションして販売するわけですが、そのとき信じられないような利潤を加えたと見られる例にたびたび遭遇します。

 

売主直販なので当然なのですが、仲介手数料が無料であることを強調し、いかにもお得感がありそうに見せかける手法で販売に当たっている事例も見かけます。

 

ご承知のように中古マンションの仲介をしても、手数料は最大で6%余しか受け取ることができません。実際は3%になることが多いのです。

これに対し、リノベーション物件を自社物として販売する場合は、仲介でなく売主としての売り上げ100%と利益20%以上を採ることも可能です。

 

新築マンションと同等、もしくはそれ以上にお洒落で快適そうなリノベーション物件を見てしまうと、中古相場がよく分からない人は、高いと思わずに買ってしまいがちです。 その点に十分な注意を払うべきです。

 

●高くても値打ちあるリノベーション

耐震補強工事が完了しているマンションにお目にかかることが1年に1件くらいあります。

補強工事済みのマンションで、リノベーションまで完了していたら、買い手は安心も得られ、かつ新築マンションと見まがう室内に大きく購買意欲を上げることでしょう。

 

リフォームプランを自ら立案し、工事業者を選択し、打ち合わせ、見積り検討、プラン見直し、工事契約といった一連の作業は相当のエネルギーを要します。

それが無用というのは、随分楽なものです。価格が高いとしても、「世話無しで良い・すぐ入居可能」は、価値があるのかもしれません。

 

●リノベマンションは問題物件が多い。なぜ?

しかし、多くのリノベーション物件には問題があるようです。

築古(ちくふる)であるだけでなく、立地も問題な物件が多いようです。

 

リノベーション事業は、個人のオーナーから業者が一旦買い取って自社物件化し、内装に大胆な手を入れて転売するというものです。言い換えと、付加価値を高めた商品として販売しているのが「リノベマンション」です。

 

しかしながら、このビジネスの最大のネックは仕入れにあります。つまり、安く仕入れることが難しいのです。所有者の多くは個人で、できるだけ高く売りたいはずです。安く買いたいリノベ業者とは互いの思惑は一致しません。結局、売れなくて困っているような中古物件を仕入れるほかないのです。

 

新しいマンションを大胆にリノベーションすることはあり得ませんから、年季の入った古いものが対象になるのです。古くて綺麗とは言えない物件は、見栄えが悪いだけに中々売れないで困っている個人オーナーも多いので、リノベ業者の安値買取り申し出に応じることとなります。

 

古くても立地条件が良く、マンション全体の風格も堂々としているようなケースは、買い手も一定のリフォーム予算を持って探しているので、長い時間を要せずに売れてしまうものです。

 

リノベ業者の仕入れは、ここに壁があります。良い立地の良い建物を狙いたいが、売ってくれる人が中々見つからないのです。勢い、仕入れが可能な物件は、買い手が付かない「古過ぎる物件」か、「急いで換金しなければならない事情を抱えている物件」ということになるのです。

 

後者の売り物は滅多にありません。結局、リノベ業者に買い取り(仕入れ)が可能な物件は、古過ぎるか立地条件が悪すぎる「売りにくい物件」ばかりになってしまうのです。

 

●高値が通用するのは何故?

筆者にご相談がある「リノベーション済み中古」は例外なく高値です。依頼者(検討者)は、「とてもきれいで満足なのですが、どうも高値のような気がする」と察し、適正価格を教えて欲しいとの依頼理由を送って来ます。

 

リノベーション物件の大半は「駅から遠いとか、利便性の高いものでも、「囲まれ感の強い立地」の物件が大半になっています。早い話が、褒めるところの少ない、そのままでは売れないマンションなのです。

 

こうした条件の悪いマンションも、リノベーション工事によって新築同様のレベルに化粧すれば、購買熱を煽り、成約できる確率が高くなります。こうして、リノベマンションは近年増えることとなりました。

 

●リノベもピンキリ

お分かりのように、リノベ物件は、言ってみれば化粧で欠点を目立たなくした商品なのです。それでも価格が相応であればマシなのですが、大抵は割高です。新築なみに改装してあったとしても、適正価格とは言い難いものばかりです。

 

取り扱い業者も「できるだけ安く買って、リノベ工事費用を抑えつつ、売り値があまり高くならないように」と、注意してはいるようですが、そもそも仕入れ額が高ければ限度があります。

 

「中はきれいだけど、共用部に魅力ないなあ」とか、「交通便が問題だし」などと言って二の足を踏む見学者が多かったりします。

そもそも、安く仕入れることは簡単ではないので、リノベ工事も最低レベル、つまり化粧のレベルが低い、感動的でないリノベーション商品として市場に出ていたりします。

 

中には、センスある内装をした物件もあるのですが、排水管の位置が固定されているため、「やむを得ずこうしました」的な「おかしな形の内装もよく見かけます。

 

また、個性的な内装にした魅力的な物件も見かけますが、そんな物件に限って立地条件に問題があるのです。また、そもそもリノベーション物件は築年数も古く、そのままでは売れないような物件が多いのです。

 

●高値と分かっていても購入するメリットは?

リノベーション物件は、業者利益がたっぷり乗っていると思って間違いないのですが、それでも買うとしたら、メリットはどこにあるのでしょうか。

 

世話無しでいい」という一点に尽きるのではないでしょうか?また、リノベマンションはローン控除が個人から購入する中古マンションと比べて倍額になる点も加えられそうです。

 

世話無しでいい、ローンが実行されたらすぐに住むことができる。心配するのは引っ越しのことだけ、と言って過言ではありません。室内に限れば、新築同様ですから、気持ちいい我が家、多分広くて快適なはずです。多少、高値でも買うメリットはあるのです。

 

ただ、立地条件はどうか、将来のリセールは大丈夫かといった懸念点は残るはずです。

立地条件が良ければ、古くなっても意外なほど価格は下落しませんが、リノベマンションに好立地の売り物は少ないのです。

 

稀に出て来る都心や準都心の物件でも、交通便が良いだけで近隣建物との関係や環境面などでは、疑問に思う物件ばかりです。

 

●将来の売却予想価格は悲劇的になることも

室内が新品同様のマンションも、中古マンションであることには変わりありません。綺麗だった内装も時の経過で劣化してしまいます。10年も経過すれば、少なくとも見た目では、リフォーム済みマンションという面影はなくなります。築年数も30年を超えていれば、売るときは築後40年、50年となるのです。

 

リノベーション物件は、先行きが問題というわけです。購入時の見た目だけに惚れてはなりません。

 

●適正価格かどうかを調べるには?

築年数が30年を超える古いマンションでも、中古市場で新築並みの価格で取引が成立している例があります。マンション全体の価値、すなわち立地と外形的な価値が優れている物件のことです。

このような物件は、建物の古さを補って余りある付加価値の高いマンションということになります。

 

古いマンションの中には、周囲の同年代のマンションに比べて高値のものがあります。その理由を探ると、マンションは立地条件が重視されていることが見えて来ます。さらに、建物が古くても価値あるものであることが分かります。

 

スケール、デザインなどが違うことは素人目にも分かるものです。しかしながら、その価格が妥当かどうかの判断は簡単ではありませんが、周囲のマンションとの比較をしてみることで見えて来るのですが、その研究をしている時間が取れない人も少なくないはずです。

 

手っ取り早く知りたい人は、筆者の提供する「物件評価サービス」をご利用いただくと良いのですが、ここでは「リノベマンションは例外なく割高」とだけお伝えしておきましょう。

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらからhttp://www.syuppanservice.com

 

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