第746回 「30%高くなったマンション・30%下がったマンション」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

近隣の新築マンションと殆ど差がない高値の中古マンションがある一方、分譲時から10年経過で30%も値下がりしたマンション。中古マンションの価格には、このような差ができるものです。     このような差は、どんな理由、どんな背景があって生まれるのでしょうか?   マンションを購入するときは、誰もが「価値あるマンション」を希望して買ったはずですが、何年か経過して調べてみると我が家の価値は期待むなしく値下がりしていたり、反対に期待以上だったりしています。     どんな条件が、このような差を生むのでしょうか?今日はコロナ禍が後押ししているマンション購入世帯へ、物件選びの指針を取り上げることとしました。    

●値上がりするマンションの共通点は「立地条件の良さ」

日頃、様々なマンションの調査に当たっていると、価格の個別条件が価格に大きな影響を与えていることを何度となく気付かされます。     新築マンションは原価の積み上げで決まるので、地価動向や建築費の動向を注視していれば、価格上昇の背景と原因は容易に説明できますが、中古マンションの場合は単純ではありません。

 

  ここでは簡単に説明しておきますが、中古マンションの価格は人気投票で決まるようなものです。数多くの買い手が集まって来るマンションの価格は高く、買い手の集まらない不人気マンションは安売りするほかない(安値になってしまう)のです。

 

人気のエリア、人気の街、人気沿線、言い換えると、郊外よりは都心、駅から遠いエリアより近いエリア、鉄道や高速道路の際に建っている物件より閑静な住宅街、スーパーが1軒あるだけの街より買い物施設や食事処が豊富に揃っている街といったふうに、高値が付く立地・環境条件は明らかです。  

 

  マンションの価値は、これら立地条件によって大きく左右されるのです。つまり、購入したマンションの将来価値は、次の買い手が決めているようなものです。  

 

  購入時に惚れて買ったものも、後年それを売却するとき、人気のないエリア・立地では誰も投票してくれない可能性がある、投票者があっても数が少なければ価格は下がる、というよりも価格を下げなければ買い手は現れない・・・それを知っておかなければなりません。

 

    中古マンションの価格は、誰が決めるものでもなく、目に見えない市場が決めているのですが、買い手が決めているとも言えます。   中古マンションを売り出すに当たって、その価格を決めるとき、直近の取引事例を参考指標としますが、指標に選んだ物件との比較で「売れそうな価格はこのくらい」ですが、「売出し額は+10%の●●万円でいかがでしょうか」などと、仲介業者は提案します。    

 

売主は、その額を聞いて、喜んだり落胆させられたりします。例えば5千万円が妥当な価格であっても、6千万円の可能性があると言われれば嬉しいものですが、実際に売り出してみたら引き合いが全くない状況であれば、失望することになりかねません。  

  そんなとき、売り手は仕方なく、売り出し額を改定(値下げ)してみたら、希望者が現われ、やがて改定金額から更に100万円下げてやっと成約になったりします。   ・・・・結局、仲介業者の初期の提案額に糠喜びさせられても、価格は市場(買い手)が決めるということを思い知らされるのです。

 

    一方、強気な価格で売り出しても、たちまち見学者が大勢集まって、1か月もしないうちに買い手が決まったというような例もあります。大抵は立地条件の良いマンションの場合です・・・・・便利で環境も良く、同駅圏で最も駅に近いとか、公園の前といった誰が見ても人気のある場所に建っているマンションが高値を呼ぶのです。    

●値上がりするマンションの共通点「建物価値」

立地が良いマンションは、ひとつや二つではないはずです。似たような環境にあって、駅にも近いマンションは東京圏なら多数あります。同じような立地にあって価格に差が生まれるのは、「建物」の差ということになります。     堂々たる体躯(外観・規模)の方が、小粒のマンションより人気があります。つまり高値が通用するのです。

 

大きさだけではありません。デザインが上品であるとか、植栽がたわわで差別感があるといったことも軽視できません。     美人コンテストを重ね合わせてもらうと分かりやすいかもしれません。目鼻立ちがくっきりしているとか、髪型が特徴的である、きれいな肌であるといったことは大きな意味を持っています。

 

  外観だけでなく、内面も軽視できません。つまり、エントランスホールやロビー、各住戸へアクセスするエレベーターの数やスピード、廊下の形状、仕上げ材といったものも無縁ではありません。    

 

大規模タワーマンションでは、インフォメーションカウンターが2階にあて、外来者がそこへ行くには一旦エスカレーターを利用するといったマンションも近年増えましたが、こうした共用部の設計も市場評価を高めています。

    ラウンジ、展望ルーム、アスレチックルーム、図書室、キッズルーム、スタディルームといった共用施設が豊富に用意されたマンションと、エントランスホールの片隅に談話コーナーがあるだけといったマンションでは、評価が大きく異なって来るのです。     間取りについても、角部屋は中部屋より少なくとも100万円、場所によって300万円、高級マンションなら500万円高でも買い手が付くものです。

 

  所在階についても触れなければなりません。安値に釣られて低層階を選んでしまう買い手さんも少なくありませんが、上階のほうが高く評価されるものです。新築マンションの価格表を見ると、その上下格差は明らかですが、安い住戸は売りにくいから安くしているのであって、お得とは限らないのです。  

 

  販売戦略の見地からですが、大きな価格差をつけている新築マンションがありますが、安い部屋がお得とは限りません。安い部屋は、それなりの理由があるのです。  

  オトクな部屋はないかと、重箱の隅をつつくかの如く、価格表と格闘している人を見かけますが、感心できません。 売主デベロッパーの値付け担当者がケアレスミスをしない限り、お得な部屋などというのはないものです。  

●ブランド価値も軽視しない方がよい

新築にしろ、中古にしろ、マンションの価値を左右しているのが「ブランド」です。どんな商品でも有名ブランドの方が高値です。日用品や食品はともかく、耐久消費財や高級衣料品などは、有名ブランドの方が高値でも売れるものです。    

高級品ほど、特定の購買層に向けたブランド戦略を構築して、ブランド価値を維持しています。

 

    マンションは、宝飾品や耐久消費財以上に、その資産価値を気にしなければなりません。ただ、宝石の鑑定書のようなものは存在しないので、自分で調べて価値判断をしなければなりません。

    不動産鑑定士という職業がありますから、購入予定マンションの価値判断を依頼してみるのも一考の価値はありますが、料金を考えると現実的ではありません。

 

やはり、買い手は売主デベロッパーや仲介業者の説明を聞き、自分なりに調査して判断するほかないのです。

    調査の方法は、昔と違って簡単と言えるかもしれません。なぜなら、インターネット上の情報、つまり、各種のレポート記事(現地見学コメント)が少なからず公開されているからです。

 

    無論、提灯記事も少なくないので鵜呑みにはできませんし、価格が高いか安いかに関しては、よく分からないコメントばかりです。それでも、複数の物件の価格を比較したり、ブロガー諸氏の見学記を読んでみたりすると、大体は分かるようです。  

 

筆者へ評価レポートを依頼してくださる方からも、「少し高いような印象である」とか、具体的な物件を挙げて「比較すると若干ながら安い気がする」といったコメントが付記されています。  

 

  ブランドの話でした。マンションもブランドで価格に差異が生まれます。なかんずく、中古マンションは、品質への不安が強いため、新築時の売主が何という会社だったかを真っ先にチェックする買い手も多いようです。

    マンションの建物品質を仔細にチェックして買うなどという芸当はできないので、頼りは分譲業者のブランド力だからです。メジャーセブンに数えられる大手7社でないが、このブランドは大丈夫かという質問は筆者へもよく届きます。    

●避けたい立地のマンション

ここからは「気を付けるべきマンション」について述べることにします。先ずは立地条件です。

 

値上がりするマンションの共通点は「良い立地条件」の物件ということでした。反対に値上がりしにくいマンションは「立地条件が良くない」ということになります。  

 

  立地が良くないとは、具体的に言うと、どういうことになるのでしょうか?都心から遠くの立地・・・これが真っ先に指摘できます。都心とは、東京都心であり、神奈川県なら横浜の都心、埼玉県なら大宮や浦和といった駅が浮かびます。千葉県では、津田沼や市川ということになるでしょう。  

 

これらの駅を除くと、避けたい立地・駅の名が多数浮かんで来ます。ここで具体の駅名、地区名をあげることはできませんが、避けたい場所は郊外に行けば行くほど多くなります。

 

    郊外では、一戸建てが安価で販売されていることもあって、マンション需要は相対的に少ないのです。需要が少ないエリアでは、物件選定をシビアにしなければなりません。  

 

  広い東京都区部では、同駅圏にマンションは数多くあり、かつ需要も多いので、厳密な比較をしなくても大けがはないのですが、郊外に行けばマンションの需要は少ないので、売却をする際に、買い手を見つけることが困難であるだけでなく、価格も期待を大きく下回るのです。  

  少しでも高く売りたいと思うなら、ミクロの立地条件をシビアに選択しておかなければなりません。それこそ、その駅で一番の物件と言えるようなものを選んでおかなければ郊外マンションは厳しいのです。    

●マンション選びで「譲ってはならない条件」とは?

賢明な読者はお分かりのことと思いますが、マンション選びで妥協してならないのは、立地条件です。

すなわち、最寄り駅から徒歩10分を超えるような物件は避けなければなりません。  

 

  駅に近いものでも、線路沿いや嫌悪施設のそばにあるとか、密集地にあって隣地の建物が迫っているといったものは、将来それを売るとき見学者の失望を買うであろうことを冷静に判定しなければなりません。

 

    建物全体の風格はどうかという視点も忘れてはなりません。駅から歩いて現地に近づいて行く途中、少なくとも30ⅿ以上離れた位置からマンション全体を眺めてみましょう。

威風堂々のたたずまい、周囲の建物に負けない存在感、優れたデザイン性かどうかをまず見るのです。

 

  次に、売り出し住戸はどのあたりか、バルコニーが洗濯物で満艦飾になっていないか、このようなことを念頭に置きながら眺めることが大事です。    

●高いマンションを買っても高く売れる物件なら問題はない

新築でも中古でも、立地条件が良く、ブランド力もあり、スケール感もグレード感もあって、価値ある物件は当然に価格は高いものです。    

それでも、できるだけ高値のマンションを選ぶべきです。新築は価値以上に高い物件もあるので要注意ですが、中古マンションで市場価値が高いものは、将来それを売却する際にもそれなりに高く評価されるのです。  

 

ことわざに「安物買いの銭失い」がありますが、マンションの場合も同様です。安くて良い物はないかと探すのは感心しません。  

●同じ予算なら80㎡より70㎡か60㎡

とはいえ、予算に限りがある以上、無理な買い物はできません そこで、妥協するところを探す必要が出て来ます。

  しかしながら、立地条件だけは妥協しないことが重要です。妥協ポイントは面積です。面積以外では、高層階を中間階にするとか、南向きのこだわりを捨てるといったことです。大規模マンションを中規模マンションにするといったこともあるでしょう。  

 

  何年住むかによって異なるものの、家族数が少ないなら70㎡でなく、思い切って60㎡にすることも良い判断です。理由は次の通りです。

 

60㎡あれば、多くは2LDKの間取りです。寝室は2つですから、子供が個室を欲しがる年齢を10才くらいからとすれば、当分の間は窮屈ということはないはずです。 広いに越したことはありませんが、10年住める広さでいいと割り切れば、選択肢は増えるのです。

 

10年先か15年先に買い替えることが前提ということになりますが、立地選定をはじめとして物件選びを間違わなければ買い替えは有利に運ぶものです。    

●最低目標は値下がりしても20%以下に留まる物件を

買い替えを前提にしたとき、問題はいくらで売れるかになりますが、仮に10年後に売却するとした場合、ローンの残債を売却代金で清算できないようでは困ります。    

その分岐点は、20%です。低金利が続くとすれば、10年後の残債は75%前後ですから、25%以上下がると、仲介手数料の支払いもあるので、預金の取り崩しが必要になるからです。  

 

  値下がりしたとしても20%、そのような物件選びが最大の眼目と心得たいものです。  

 

・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談のお申込みはこちらからhttp://www.syuppanservice.com

 

※こちらのBLOGも是非ご利用ください。

https://www.sumu-log.com/archives/author/mituikenta/(スムログ) http://sumitaimansion.blogspot.com/(三井健太の住みたいマンション)  

※売却相談も三井健太へ・・・ご相談料は不要です※

(お気軽にお問合せください) (http://www.syuppanservice.com)