第767回 「完成済み売れ残り新築マンション購入は問題なのか?」
このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。
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多くの場合で、完成済みマンションは、売れ残りで人気のないマンションと言えます。
マンションデベロッパーは、建築代金を手元資金から全額を現金払いするわけではありません。分譲販売を先行させることで、買い手からの代金が入れば、それを建築代金の残払いに充当することができます。 売れてさえいれば、間もなく入って来る売上代金を待たず、銀行から一時的に借り入れて建築代金を払うなどして、工事会社から品物を受け取り、それを買い手に引き渡すと同時に分譲代金を受け取れるのです。
その代金を銀行に返済すれば、差額が利益として売主の手元に残ります。付け加えておくと、土地代分として銀行から借り入れているので、この返済も同時に実行されます。
売れ行きが悪ければ、銀行返済もゼネコンへの支払いも滞ることになるので、所定の時期までには完売させる必要があります。 それができなければ、手元資金から返済や支払いを済ませる必要があります。足りない分は、新たな資金調達(借入)を図らなければなりません。
借入のためには、何らかの担保の提供が必要です。 できることなら、建物竣工のときまでに完売させ、新たな資金調達をすることなく、売上代金の回収だけで返済を完了させたいはずです。 結論的に言えば、新築マンションの事業は、竣工時に3割も4割も売れ残っていては困るのです。
●最近の新築マンション市場
ところが、最近の新築マンションは、大半が竣工時点で完売に至らないのが実態です。
売れない理由・背景を挙げると、価格の高騰と景気の悪化です。なかんずく、コロナ禍でによってマンション購入どころではない家庭が増えていることが販売に悪影響を与えています。
無論、コロナの影響が殆んどない職業、そこに従事する人もあるのは確かですが、先行きの不安があるせいか、様子見に転じている層もあるのです。全体として見れば、足元の市場は縮小していると言えるでしょう。
●売れ残りに福はあるか?
住宅ローンの金利低下で実質的に購買力が押し上げられているものの、価格上昇の方が上回っているために、購買力が足らない状況にあると見られます。
このために売れ残りマンションが増えているのです。言い換えると、竣工時点で未入居の部屋が30%もあるような新築マンションが少なくない現況にあるのです。
分譲業者は、先に述べた通り、竣工時までに完売したいはずです。売れ残ると、管理費が不足してしまい、売主の負担となってしまうので大きな金額でないとしても、望ましいことではありません。
銀行からの借り入れに対する金利負担も続きます。低金利時代ゆえ、大きな負担ではないものの、好ましいことではありません。 他方、買い手の立場から考えてみると、売れ残りマンションに福があるのかもしれません。
早く完売させたい売主は、販売促進策として値引きを提示してくることがあるからです。とはいえ、勘違いしてはなりません。値引き前の分譲価格が高いために残ったのであって、値引きしてもらっても得な買い物とは言えないからです。
無論、条件の悪い住戸が売れ残っているはずですから、単に価格の問題と捉えることも早計です。 こうしたことを検討すると、売れ残りマンションに福があるとは言えない場合が多いと考えなければなりません。
●売れ残る要因は?
売れ残るのは、そのマンションを全体として見て割高だからです。
駅から遠いから売れないと分析できるものでも、価格が安ければ買い手は付くものだからです。 駅に近く便利な物件が売れていないとしたら、環境が良くないとか、建物グレードが低いとか、ネームバリューが低いといった個別要因が挙がるとしても、つまるところ価格が高過ぎるためと分析できるものです。
間取りが悪いとか、設備仕様のグレードが低い、ブランド価値が低いといったマイナス点も価格が安ければ売れるので、結局は価格が売れ行きを左右することになります。
●完成済みマンションの利点は?
新築マンションの購入を検討するときのネックは、眺望や日当たりが確認できないこと、エントランスホールや集会所、子供用の室内遊技場(キッズルーム)なども完成予想図で出来上がりをイメージするほかない点にあります。
その点、完成済みマンションは住戸だけでなく、上記の共用部も個別住戸も、日当たり、間取り・設備なども実感することができます。 しかしながら、売れ残っている住戸なので、共用部や全体は良くても、売れ残り住戸を見学すると落胆することも多いのです。図面を見ていたときは気付かなかった細部を現地見学で知ってしまうからです。
どんなマンションにも、条件の悪い住戸ができてしまうもので、例外は殆どありません。
所定の容積を100%消化する設計を狙うためです。 何故そうするかと言えば、用地費が高過ぎるからです。 100戸の部屋を作ることが可能な条件の用地に、50戸に留めてしまえば、1戸当たりの土地代は2倍になってしまうので、販売価格は当然ながら高くなります。
用地代が高過ぎる都心などでは、許容容積の99.9999%まで使おうとします。その結果、条件の悪い住戸も誕生するのです。条件の悪い住戸は、販売価格を安く設定するものの、買い手は安いだけで選択しないために中々売れず、最後まで残ることになりがちです。
マンション販売は竣工時の1年以上も前から開始するので、1年経過しても残っている住戸は不人気と言わざるを得ません。竣工時に実物が見えるようになると、売れない住戸の実態がクローズアップされ、価格が少し安い程度では売れないのです。
売主は経験から眺望の悪い住戸や間取りの悪い住戸などが売れないことを知悉しており、対策として価格を安く設定して売り出すのですが、それでも売れ残ることがあります。ならば、もっと安値にしておけばいいと思われるでしょうが、極端な安値にすれば、売上・利益の減少分を他の住戸の値上げで補わなければなりません。
そうすると、高過ぎることになりかねないので、結局は引き下げたい住戸の価格は思い切ったレベルまでの引き下げはできなくなるのです。その結果、心配された住戸は最後まで売れ残ってしまうことが少なくないのです。
一言で総括すれば、「売れ残る住戸は売れ残るべくして残った」のです。 「残り物に福はない」と言い換えても良いかもしれません。
●完成済みマンションを買うなら・・・
売れ残りの中に福はないのでしょうか? 実はそれを全否定することはできませんが、 少なくとも、売れ残りの中に優良な住戸は数多くないと見ておかなければなりません。数多く残っているとすれば、全体として問題が多い物件、とりわけ割高な物件なのです。
価格を別とすれば、悪くない物件はあるかもしれません。言い換えると、価格だけが問題というケースです。その時は値引きを要求しましょう。おそらく、5%程度の値引きなら要求を呑むはずです。
無論、交渉に当たっては10%引きを要求することが必要です。大手企業のブランドマンションでも売れ残るのが普通のことになっている昨今、売れ残りの中に悪くない住戸はきっと残っているでしょう。 買いたい住戸もあるはずです。
価格だけが問題のはずとしたら、チャンスはあります。供給戸数が低迷している昨今、待っていても良い物件が発売される可能性も低いのです。
中古マンションも、優良なものはたちまち市場から消えます。 安い中古は、それなりにお勧めしがたいものです。良い中古は、新築並みに高いーーそれも一方の事実です。しかも、中古マンションは早い者勝ちなので、あっという間に市場から消えるのです。
同じマンションから同時期に何戸も売り出されることはありません。複数の住戸があっても、希望条件との乖離が大き過ぎたりします。
中古マンションは探しづらいと感じている人は、新築がねらい目です。売れ残りの中に買いたい住戸があれば、たとえ先着順販売中であっても、売主の営業担当者の裁量で「あなたのためにキープ」してくれるからです。その意味で、検討時間も十分に確保できるはずです。
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