第776回 「研究し始めの人へ贈る「25のQ&A」~第1部~

 

今日は、これまでに届いた沢山のご質問の中から、初歩的なものだけを集めて「Q&Aとしてお届けすることにしました。

 

Q1.マンションは、一般的にどんな時が買い時なのでしょうか?

A)「マイホームは、過去から見れば今の方が高いが、未来から見れば今は安い。だから今がチャンスである」という誰かの言葉があります。

これは、過去に買いそびれた人は、「もっと早く購入しておけばよかった」と思うだろう、既にマイホームを手にした人は「もう少し早く買っておけば、今頃はローンも残り少なく余裕ある暮らしができたのに」と思うだろうということを表しています。

 

バブル経済の真っただ中に買った人を除けば、早く買って失敗したという話は殆ど聞きません。むしろ、購入のタイミングが遅かったという後悔の声の方が多いのです。

私たちの周囲を見てみますと、快適なマンションライフを手にしている人たちの共通点は、いち早く購入しているという点です。既にローンを完済し、日々ゆとりある暮らしを送っていたり、買い替えも実行して、優雅な老後を過ごしていたりします。

 

よく、金利が低いから買いだとか、価格がまだ下がるから様子見が賢明だとかと、したり顔(得意顔)の専門家を見かけますが、それは、人生の中では一瞬のことに過ぎないのです。

 

金利の動きは誰にも読めません。毎月の返済額を減らそうと、これから時間をかけて頭金を増やしても、いざ借りるときに金利が上がっていたら、返済額が減るどころか増えてしまう可能性もあります。

今は低金利が続いているから、今後は金利が下がる余地よりも、上がる余地のほうが大きいかもしれません。でも、ずっと横ばいという可能性だってあります。結局、金利の動きは誰にも読めないから、欲しいと思える物件と出会って、余裕をもって返していける資金計画が立てられるなら、そのときが買い時とも言えます。

 

価格の変動でも同じことです。金利よりは読みやすいのですが、それでも、予想は絶対ではありません。

 

金利にせよ、価格にせよ、その動向に一喜一憂しながらマイホームの買い時を探すという考え方は、本末転倒と言っても過言ではありません。

 

ところで、モデルルームを見学に行く人はどのような理由があるのでしょうか。

結婚や転勤などの事情がある人も中にはありますが、ほとんどの人が今スグに買わなければならないという事情を抱えているわけではないのです。

「家賃が勿体ないから」とか、「現在の住まいが手狭なので」、「いつかはマイホームを持ちたいと思っているから」などと、やや漠然とした動機や背景があって見学に行くのですね。

きっかけは、「近くにマンションができたから」、「友人から勧められて」、「転居したお隣さんに刺激を受けて」といったものが多いようです。

 

住宅購入経験者の事例を調べてみても、切迫した状況はなく、急がない人たちばかりです。しかし、急がないのに何故マンションを買うのでしょうか。

これは、夫婦の出会いに似ています。たまたま縁があって購入したというケースが多いのです。

 

以上から、買い時はいつかと考えるのではなく、買いたいと思ったときが買い時と考える方が良いのだと思います。

 

Q2.30歳です。今買ったら、また2度目の住宅購入の時期がやってくるかもと思い、迷っています。どう考えるべきですか?

A)ご質問の意味は、買うならそのまま永住できる家にしたいということかと思いますが、「家は生涯に3度建て直せ」という格言があることを御存知ですか?家は一度決めたら二度と動かないと固定的に考えるのはいかがなものでしょうか。「2度、3度の買い替え、大いに結構」と、鷹揚に考えてはいかがでしょうか。

 

確かに、家を買うというのはスーパーでネギを買ってくるようなわけにはいきません。それなりのエネルギーが必要になります。面倒なことかもしれません。

しかし、人間は楽しいことをするとき、時間を忘れて打ち込むことができます。マイホームは、快適性を求めて住み替えるはずで、部屋が広くなったり、自分だけのスペースが得られたり、あるいは便利な設備が使えたりするわけですから、検討する過程も楽しいことではないでしょうか。

 

苦あれば楽ありとも言います。物件を探し、売買契約を結び、引っ越しをして落ち着くまでには多少の苦労もあることでしょうが、入居後の楽しいマンションライフが手に入るとなれば、苦労のしがいもあるのではないかと思います。

 

Q3.転勤が多いので定年までは借家暮らしで割り切り、定年後に全額現金で家を買うという考えはどうでしょうか?

A)社宅住まいか、賃貸マンション暮らしになるかは分かりませんが、快適に過ごしていけるのであれば、それもひとつの生き方ですね。なにしろ、定年後の人生も長いのですから。

ただ、企業が従業員確保のために低家賃の社宅を完備し、社宅のない営業地域では、賃貸マンションの家賃の半額を負担するといった施策が、今後何十年も続く保証はあるでしょうか。

もし、これらの福利厚生策がなくなったら、もしくは何らかの事情で転職したり、子会社に転籍したりと、状況が急転する、そのようなことは考えられないでしょうか。所得が減少し、預貯金が計画通りに進まなくなるという心配はないでしょうか。

また、マンションの価格が将来、大幅に高騰するようなことがないとは断言できません。その場合、預貯金が値上がりに追いつかないことも考えられます。

 

それから、世間体ということも無視できないのではないでしょうか。例えば、お嬢さんが嫁に行くというとき、結婚は家と家の問題でもあるわけですから、子供と親は別という考え方で割り切れたらいいですが、相手の家はどう見るでしょうか。

 

また、冒頭で述べたように、定年後の長い人生も大事ですが、その手前の人生も子供との関係を踏まえたら取り返しは利かないほど大事なのではないでしょうか?

 

単純な経済合理性だけで測れないのがマイホームの存在です

 

ローンを抱えるのが嫌なのかもしれませんが、そうであれば、せっせと貯金をして住宅ローンを予定より早く完済すればいいのです。そのためには、返済に余裕のあるローン金額を設定することが必須ですね。言い換えれば、あまり無理をせず、ほどほどのマンションを買うということが大事になります。

 

Q4.子供ができる前に夫婦で働いてローンを返すという計画は、間違っていますか?

A)間違ってはいません。子供をつくるのを何年か先送りすることが許されるのでしたら、賢明な考えです。貯蓄目標を決めて、実行されたらいいでしょう。ある程度まとまった金額を繰り上げ返済し、その際に、返済期間を変えずに毎月の返済額を減らす「返済額軽減型」を選択すれば、妻の退職による収入減も気にならない額になることでしょう。

 

もし、妻の収入がなくなっても返済が苦にならないということであれば、返済額はそのままに返済期間を短縮する「期間短縮型」を選択するのもいいですね。借り入れ額と返済する金額にもよりますし、繰り上げ返済する時期にもよりますが、意外なほど期間が短くなります。

 

ある程度まとまった金額が貯まったら早めに返済し、そこから再び貯蓄に励み、また返済するというように、なるべく早く返済した方が有利です。但し、銀行によってはそのたびに手数料を取るところもありますから、事前に調べておくといいでしょう。

 

Q5.23歳と20歳の夫婦です。親が早過ぎると反対します。やはり、まだマンションを買う年齢ではないということでしょうか?

A)親の経験からすると、20代で家を持つなどということは信じがたいことなのかもしれませんね。しかし、時代は変わったのです。今や、20代の新婚夫婦や独身女性がマンションを持つのは、特別なことではなくなりました。

それは、超低金利が続き、住宅ローンが組みやすくなったことが大きな要因になっています。

高い家賃を払い続けても、それが何も残してくれないことと比べると、マンションを購入すれば長い間には資産を残してくれるというメリットがあるのですから、こちらの方が堅実な生き方であることは確かでしょう。

 

昔のように冒険する若者が減った半面、堅実な人生設計をする若者が増加していると言われます。

親世代は、こうした変化を知らない人が多いのです。昔の尺度で物事の良し悪しを測ってしまう傾向があるということでしょう。ともあれ、20代で家を持つことは特別なことでも何でもないと、親の理解を得る努力をする必要があります。

 

若い時からマイホームを考えるのは、堅実な人生設計をしようとしている何よりの証拠でもあります。しかも、あなたが、無茶な住宅ローンを組むのでない限りは、賃貸住宅の家賃を払っていくのと大きな差はないはずです。その点も強調する必要があるでしょう。

 

また、必要に応じてという但し書きを付けておきますが、まだ若いので、例えば5年間は子供を作らず、その間に片方の収入に手を付けないで貯金をし、その先の生活の安定を図るという説明なども検討したらいいかもしれません。

 

Q6.結婚と同時のマンション購入はおかしいですか?気を付けることは?

A)賃貸はもったいないと考え、新婚と同時にマンションを購入する人が増えています。昔は、ごく一部の富裕層だけの特殊な例でした。最近は、住宅資金の贈与に特例ができ、贈与税が大幅に軽減されたこともあって、親や祖父母などから贈与を受けて購入する若い世代も増えていますが、最も大きな要因は、やはり低金利です。

 

史上稀に見る低金利が最近10年間くらい長く続いて、返済負担が軽減されたことが若い世代の購買意欲を刺激したのです。一方、家賃は金利低下の影響を受けにくいので、景気低迷のせいで幾分は下がった例もあるものの、大きく下落することはありませんでした。このため、ローン返済に家賃負担が接近しました。分譲と同じレベルの賃貸マンションなら、むしろ分譲の方が負担は軽いというケースも増えたのです。

 

以上の事情から、新婚世帯がいきなり持ち家ということが可能になり、普通になってきたのです。

 

ただし、注意しておきたいことがあります。もし、早い時期に子供を設ける予定があるのであれば、子育て環境を条件の一つに入れておくことが大事です。というのは、入居して2~3年で転居しなければいけないとなった場合、買い替えがスムーズに行かないかもしれないからです。

 

築後1~2年の中古マンションが、新築時を上回る値段が付いているマンションもないことはないのですが、希少価値の高いマンションに限られます。そうしたマンションを見つけることは、目利き能力の点でプロでも簡単ではありませんから、普通は買い値を下回る値段になることを覚悟しておく必要があります。

 

売却する際、仮に買値を下回る値段で構わないとしても、住宅ローンの残債(ほとんど減っていません)を上回る値段が必要です。ローンの清算にはそれが必須なわけです。ということは、購入の際に十分な頭金を入れておかなければなりません。一般的には、頭金は2割以上が必要になると予想されます。

 

頭金が十分でないのが、若い世帯の共通点ですから、すぐの買い替えは難しいことになります。その点を考慮すると、既述のように子供ができても当分の間転居しなくてすむ環境のマンションを選ぶことが前提になるのです。

Q7.小学校3年の娘が転校を嫌がっています。中学進学の時期まで待った方がいいかと悩んでいます。どうしたらいいでしょうか?

A)マイホームを検討する場合、愛する子供のことを考えない親はいません。転校の必要がない場所に、ご希望の広さや間取りなど、適当なマンションが見つかれば問題ないですが、現実には中々そういうわけにも行かないようです。ここで、重要になるのが優先順位です。

 

何を優先させるのかを考えたとき、まずは通勤時間やマンションの広さ、あるいは環境などが先に来て、子供の転校問題は後順位になるのが普通です。

 

子供に転校を嫌う理由を聞いてみますと、大半が友達との別離をあげます。しかし、実際に転校すると、新しい友達ができ、そのことを忘れてしまう子供が殆どです。

親が思うほど子供にとって深刻な問題ではないし、心配しなくても子供は新しい環境に順応して行きます。

 

何でも言うことを聞いてくれる親は、子供にとって良い親でしょうが、ここはひとつ親の判断が優先することもあるのだと教えることが、子供の成長過程では必要なことではないでしょうか。

実際に引っ越して真新しいマンションでの生活が始まり、自分の部屋を与えられると、子供は引っ越して良かったと実感するに違いありません。

 

ここは、親の判断を子供に伝え、どうしてそうなるかを言い聞かせる良い機会となるでしょう。

 

Q8.不動産は「縁もの」なのでしょうか?

A)まさにそういうことが言えますね。夫婦の出会いとよく似ています。

まず、縁という言葉の意味を確認しておきましょう。

縁とは「ゆかり、えにし、関係」である(広辞苑)と、書かれています。また、縁の使い方としては、「縁は異なもの味なもの」「縁もゆかりもない」などが知られています。

 

買い手と物件の出会い」、「買い手と営業マンの出会い」―このふたつがマンション・不動産における“縁”というものです。

 

より理想に近づけようとお見合いをくり返し、いつまでも結婚しない人。たくさんの出会いと恋愛をしながら、中々結婚しない人。こうして、婚期を逸した人も世の中には随分といるようです。何百万人もいる結婚対象の中から一人だけ選んで一生の伴侶とするのですから、確かにそれは大変なことでしょう。

 

一方、結婚した人たちの現実は、もっと簡単です。たまたま出会った何番目かの異性と結婚してしまう。理想の人だと思って結婚した人もあるでしょうが、大半はそうでないはずです。それでも2人で家庭を築いて行く。やがて、40年、50年と人生を共にする。夫婦というのは、そういうものでしょう。

 

住宅も同じです。これが理想の家とは言えないかもしれないが、時間をかけて探したら理想の家に必ず到達するというものではないので、理想を追い過ぎて何年も不便や窮屈を我慢するより、早めに決心した方が幸せというものかもしれません。この先の出会いの方が、より理想の住まいになるという保証はないのです。

 

もうひとつの縁」の側面は営業マンとの出会いです。

「ここで私とお目にかかったのも何かのご縁です」などと営業マンが言ったとしたら、それは正確に言うと「私を通じて当社と知りあえた」か「私を通じてこの物件に巡りあった」ということになるでしょう。

理屈はともかく、ある営業マンとの出会いが縁となって、購入に至ったひとつの例を次に紹介しましよう。

 

マンション購入者の購入理由を尋ねると、地域によって多少の前後はあるが、トップ3は「広い家に住みたかった」「家賃が勿体ないと思った」「家族のために」が挙げられます。

これらをよく分析してみると、「家が狭く、そのわりに家賃が高い。金利が低いから家賃と大差ない負担でマイホームが持てると知った。今が買い時だと思った」ということになるようです。

 

更に、購入の動機だけに絞ると、「狭い」が一番に挙げられます。狭いから、もっと広くて快適な家に住み替えたい。賃貸でもよいわけですが、広くて快適な住まいの賃料はおそろしく高い。それだったら、買った方がよさそうだという考えに至ります。

 

広くて、設備の良い新築マンションに住み替えることは、家族にも喜ばれるし、夫・父親としても鼻が高い。世間からも高く評価されます。

 

以上のような動機や理由によってマンションを購入するに至ります。ただ、それには期限があるわけでなく、早いに越したことはないという程度のことなのです。

逆に言うと、良いものがあればいつもでもよいということになります。ただ、金額が金額なだけに慌てて買うことは避けたい。慎重に進めたいと考えるのです。35年もの長いローンを組んでしまうわけですし、住んでみて気に入らないからといって、簡単に売ったり買ったりを繰り返すわけにもいかないからです。

 

しかし、慎重に決めようとはしていても、購入する時は意外にあっさりと決めてしまう人が多いのも事実です

 

友人が購入したニュースを聞いて刺激を受けたとか、チラシや看板を見て、その気になったといった、何かを“きっかけ”にして購入を思いつく。それから資料を取り寄せたり本を読んだりして研究しながら、ネット上で比較検討をする。その間に、良さそうなものがあればモデルルームの見学を行う。見学は、必ずしもそれを買おうとしてではなく、研究の一環として行う場合もある。少なくとも検討し始めの頃はそうなのでしょう。

 

ところが、モデルルームを見て感動し、欲しいという気持ちが急に高まる。狭い今の家との差を実感し、そこでの暮らしを想像するとともに、早く住んでみたいと思うのです。その気持ち、言い換えれば、夢見心地の中で間取りを選び、その価格が自分たちの手の届くものであったりすると、ますます欲しいという気持ちが強まります。

ただ、1件目の見学で購入意思を固めてしまうことはありません。営業担当者の説明を聞いているうちに、物件価格以外の費用が結構必要と知るなど不安にかられることが浮かんで来たり、付いていると思った設備がオプションだったりするからです。

また、モデルルームは素晴らしいが、自分たちの買えそうなものは、ずっとコンパクトであると知らされて落胆したりするためです。

 

そうして、先ほどまで舞い上がっていた人が冷静さを取り戻します。元々買う気があって見に来たわけではないと思い直し、「他も見てみよう」、「もっと研究してからでも遅くない」と考え始めるのです。

 

2件目のモデルルーム見学。今度は初めからクールです。もう舞い上がることもなく、1件目の物件と「どこが違うのだろうか?」、「価格は高いか安いか?」などと比較しながら見て行くことになります。

 

3件目も同様に、「今日は決めるぞ」とは思わずに見学。そこで、それぞれに一長一短があるものだと気づきます。ある部分は気に入ったが、ある部分は気に入らないと感じます。あちら立てればこちら立たずと。

 

ところが、見学に際して担当してくれた営業マンが好感の持てる、そして信頼できる人物だった。予算と合致する価格の部屋は3階で、その点が少し気に入らないが、駅から3分と近くて便利だし、広さもこれ以上を望むのは贅沢だろう。もう少し待って、もっと良いものを探す選択肢がないわけではないが、営業マンの説明にも納得感があった。

 

ここまで、3か所の見学、ネットでの物件検索、情報誌での研究などから大体のことは分かった。ローン返済について将来の不安がないわけではなかったが、その点も営業マンが勇気を与えてくれた。物件の良し悪しを客観的に教えてくれたこともあって、この物件が最高とは思わなかったが、次を探しても大差ないと信じることができた。

 

こうして、家を出る時は“買う”気がなかったが、モデルルームを出る時には申込書に記入し、決心を固めていた。最後は担当営業マンの熱意に押される形であった。

 

この例は、良い営業マンとの出会いがあったことによって、思いがけず購入することになった代表的なものです。良い物件との縁であり、それと重なるのが良い営業マンとの縁を表しています。

 

「このマンションが自分にとって最高のものじゃどうかは分からない。だけれども、決して悪いものとは勿論思わない。何とか手が届くことだし、これ以上贅沢なことを言っていたら一生買えない気もするので、この辺で手を打つことにしたい。これも何かのご縁でしょうし」と、このように語る客は、縁を大事にする人かもしれません。

 

また、「今年中に買おうと、心に決めていたことではなかったし、まさか5千万円もの買い物が自分にできるとも思っていなかったのだが、降ってわいたような話に乗ったのは、きっと神様の思し召し、何かのご縁なのかもしれませんね」こう自分に言い聞かせるように購入を決心してした人もいます。

 

反対に、縁がない人はモデルルームを見に行くことは行くが、踏ん切りがつけられず、何年経っても社宅住まいに甘んじているとか、契約した途端に転勤になってキャンセルせざるを得ないとか、住宅購入の適齢期に海外赴任を命ぜられ、帰国した時には住宅ローンが年限的に借りにくくなってしまったといったケースが挙げられます。

 

ひどいのは、計画的に資料を集め、切り抜きし、研究を深めて優良物件を自分なりに選択して申込んでいるのに、抽選に落ちてばかりで、何年経ってもひとつも買えないというケースです。

 

Q9. 西向きでも本当に問題ないのか?

A)実は、冬には東向き住戸に比べて西向き住戸がよく売れます。なぜなら、寒い時期には午後になると部屋の奥まで入り込む西日がありがたいと感じるからです。逆に夏の暑い時期には、西日は嫌われ、西向きに比べて東向き住戸の方が売れ行きはよくなります。購入を決断する時の感覚で決めてしまい、年間を通して住まう住戸を決める人が少ないのです。人間とは面白いものです。

但し、東日本と西日本では事情が少し異なります。つまり、平均的な生活時間帯(何時に起きて何時に寝るかなど)は同じにもかかわらず、日の出、日の入の時刻が異なるからです。

 

次の表をご覧ください。東京と福岡では、日の出は夏至の時で44分も違います。日の入りは、32分の差があります。

 

夏至 冬至
日の出/日の入り 日の出/日の入り
根室 3:37/19:02 6:43/16:16
東京 4:25/19:00 6:48/16:58
福岡 5:09/19:32 7:21/17:39
那覇 5:27/19:24 7:17/18:04

 

太陽が1日かかって360度動くわけですから、計算してみると、24時間(1440分)÷360度=4分となり、1度動くのに4分かかることが分かります。従って、東京近郊と福岡市の日の出などの時間差は、緯度に10度差があることから、約40分の差が生まれるのです。

 

夏の西向きのリビングで19時ごろ夕食する東京と、福岡の家族を想定した場合、8月1日であれば、東京の日没は18時46分なので、日没後の夕食となりますが、福岡の日没は19時19分なので、暑い西日を浴びながらの夕食となってしまいます。

同日、東京の日の出は4時48分ですので、西向きリビングの反対側、つまり、東向きの寝室では、おそらく起床前の枕元をオレンジ色の朝日が照らし、部屋の室温もグングン上がっていることでしょう。

 

一般に、西日本では西向きが嫌われる傾向にありますが、居間で過ごす時間が夏の西日のきつい時間と重なってしまうからだと思います。

 

しかし、仕事を持っている主婦の場合、あえて西向き住戸を選択するのもありかなと思います。

共働きの場合などは、朝、洗濯物を西向きバルコニーに干して、午後の太陽に乾かしてもらうことができるからです。

夏は確かに暑くて大変かもしれませんが、入ってくる日差しを遮る工夫をすれば凌げます。カーテンで調節したり、すだれを掛けたりしてもよいですし、またガーデニングでも工夫できます。

さらに、東京圏においては概ね西側に富士山を眺めることができます
高台の上に建つマンションや高層マンションの上階では、冬の晴れた日に富士山を望めるのですから、西向きマンションは良いことだらけです。

 

南向きには1日中日当たりがありますが、太陽の位置が高く、バルコニーの出幅が長い場合、部屋の奥までは日差しが入ってきません。一方、西に傾いた太陽は位置が低いため、(東の太陽も同様ですが)日当たりが部屋の奥まで期待できます。

特に、冬はさらに太陽の位置が低くなるため、リビングで日向ぼっこが出来るぐらいです。

 

それでは東向きでもよいのでは?

いえ、午前中だけの日当たりではまだまだ寒いし、起床後で考えると実質3~4時間の日当たりしかありません。

その点、午後の日当たりは日没まで活用でき、洗濯物もよく乾きます。

西向き住戸の場合、多くは反対の東側に洋室が配置されますから、寝室がこちらにあれば、朝日を浴びて体内時計が正常化し、気持ちよく目覚めることができそうです。

日本人の南向き信仰は依然として根強いものがあるようです。それは、マンションの住戸単位の値付け(価格設定)にも表れています。ここで、一つ例を挙げてみましょう。

 

地方都市の、ある低層住宅地にあるマンションで、南向き、東向き、西向きの3つのタイプの住戸があります。ここでは、同じ3階部分の住戸の3.3㎡(坪)単価を比較してみます。すると、東向き住戸では、3.3㎡単価は102万円で、西向き住戸も102万円となっています。ところが、南向きでしかも東南角の住戸は約114万円、西南角住戸で109万円となっています。

(坪単価で比較するのは、それぞれ面積が異なるためです)

 

同じマンションでも、方位の違いをかなり意識して値付けしていることが分かります。

仮に、西向き住戸が20坪、東南角住戸が25坪で計画されているとすると(南側を広く作るのが普通)、20×102=2040万円が西向き住戸の価格で、東南角は25×115=2875万円となります。

 

予算に余裕のある人は南を、予算が厳しい人は面積も狭くて、且つ、南向きでない住戸を選んでもらおうという事業者の意図が如実に表れているわけです。逆に見れば、割高(単価が高い)でも、南を望む買い手があることを事業者は経験則として、よく知っていることを表しています。

 

南向きの方が日当りは良く、洗濯物が乾きやすいとか、部屋がジメジメしないとか、高温多湿の日本の風土における住まい観があるのでしょう。

 

しかし、マンション暮らしには必ずしも当てはまらない言葉かもしれません。マンションの室内環境は、人工的にコントロールされているので(24時間空調や冷暖房)、昔ほど南にこだわる必要がないからです。ただ、それには電気代などのコストがかかるので、買い手は、自然の空調や温度調節を前提にして判断するのでしょう。その意味では、やっぱり南向きがいい?

 

いいえ、一概にはそうとも言い切れません。

 

その理由は、第一に、「昼間ほとんど家にいないので南向きの恩恵を受けることがないから」を挙げることができます。しかし、これにも反論があるのです。たまの休みに家で過ごすとき、日当りが悪いと気分良くはなれないというものです。

 

第2の理由は、南向き住戸の南向き居室(居間など)は、確かに明るく日当りも良いが、ほとんどのマンションで北側にできてしまう個室(寝室や子供部屋)には、終日ほとんど陽が入らないからです。

日中も暗く、冬は寒い。先に述べたとおりです。

実は、単純な1日の日照時間を比べますと、南向きも東西向きもほぼ同じ7時間前後なのです。ただ、陽のあたる時間帯が異なり、東向きは、朝4時半から11時過ぎ、南向きは9時から夕方3時半くらいまで、西向きは11時過ぎから6時半過ぎまで(以上、関東地域の場合。夏至の測定)というふうに違うわけです。

 

よく考えてみると、東西向きの住戸には、住戸全体で見れば1日14時間もの日差しがあることになります。東向きの住戸には、朝日が居間に入り、夕方になると子供部屋に日が差し込む。決して東西向き住戸が南向き住戸に劣るとは言い切れないのです。

 

少し見方を変えると、西向き・東向き住戸には南向きにない利点があることがお分かり頂けたことと思います。

また、南向きの中部屋はどうしても間口が狭くなり、細長の「よくある間取り」になりがちですが、西向き・東向きの間取りはワイドスパンで間取りに特徴があるものが多いという傾向があります。

売りづらい東西向き住戸は、方位による売り難さを、間取りの良さで補おうと工夫を凝らすためです。

 

南向き信仰を外して検討すれば、とても良いマンションに出会う可能性が高いということを覚えておきましょう。

 

Q10.マンションは、上階の音に悩まされることがあると聞いたが、買うときに気を付けることは?

A)木造やプレハブのアパート住まいの人からよく出る質問です。賃貸住宅にお住まいの人は、例外なく、上下階の騒音や、隣の部屋の話し声などに悩まされた経験をお持ちのようです。

ご自身の家族のことなら何とも思わない音でも、他人事となると気になるものですし、逆に自分がよそ様に迷惑をかけているのではないかと、声を潜めて暮らした経験を持つ人が多いのでしょう。今度は快適に暮らしたいという思いと、新しい住まいへの不安とがない交ぜになるものです。

 

人の感性によって異なりますが、分譲マンションの場合、音は気にならないとは言い難いのです。事業者や設計者、施工者等は長年の研究によって騒音対策(遮音性能を高める工法や部材の採用)に取り組んで来ましたが、完全に無くすというレベルには達していないのが現状です。

 

販売担当者は、二重床、二重天井にしています、隣家との戸境壁も分厚いですから大丈夫ですなどと説明しますが、あまり当てになりません音源も真上や真横とは限らず、コンクリートを伝わって2~3軒先から聞こえてくることもあるようです。

 

通常の生活であれば、アパートとは比べ物にならないほど静かなレベルと言ってよいでしょう。強いて言えば、夜中に耳を澄ませば聞こえるということはあります。

たまたま、近所に夜昼が逆の生活をしている家庭があったりすると、迷惑なことがあるようです。

 

大切なことは、マンションは共同住宅なわけですから、お互いにマナーを守り不必要な音は立てないように心掛けることにあります。

 

日頃つきあいのない家庭の騒音はうっとうしいものですが、親しく交流している関係なら多少の騒音は気にならないものです。

 

しかし、近所付き合いの煩わしさがなくていいと聞いてマンションに住み替えたという人もあります。そのような人は、万一、騒音に悩まされることになったらどうすればいいのでしょうか。

その場合の方法は次のようなことになるでしょう。

まず、構造・施工上に問題がないか、売主に音の状況を何回も確認させて、その音の原因を突き止めさせることです、音がどの程度のものか測定器で測らせることも必要です。瑕疵、施工不良、施工ミス、手抜きなどいろんな原因が考えられます。

 

また、他の住戸においても同じ問題を抱えている居住者がいる可能性があります。
理事会に申し出て、全住戸に生活音に関するアンケートを実施してもらい、その結果、あちらこちらで、ウチもそうだと言う住人が出てくれば、管理組合として無視できません。売主に対し、瑕疵担保責任を追及することになるでしょう。

 

管理組合で分譲会社と施工責任者を呼び、現地で音の測定等を実施して、瑕疵だと判明すれば、売主の責任で、しかるべき補修をするという流れになると思います。

 

近隣住戸の生活が、夜型と朝型の生活パターンの違いがある場合や、高齢者と小さい子供のいるファミリーとでは、さまざまな状況の違いにより、お互いに理解がされないため深刻な問題に発展してしまうことがよくあります。

 

一度トラブルに発展すると、当事者間の話し合いで解決することは非常に困難になります。管理組合や管理会社に間に入ってもらっても解決策の糸口を見つけることが出来ないことさえあります。

 

話し合いで解決しないということであれば、各市町村に於いて騒音防止条例が制定されています。この条例は、騒音を防止して生活の静穏を保つことを目的とします。

何人(なんびと)も午後11時から翌日の午前6時に至る間においては、音響機器音、作業音、動作音等は屋内、屋外何れで発する場合であっても、近隣家屋内における睡眠を妨げない程度の小音としなければならないと定められていますので、市区町村の環境課に、どの程度の音か測定を依頼するのです。

 

測定の結果、受忍限度を超えるようであれば立派な公害ですから、行政指導という形で注意してもらえると思います。「受忍限度」とは、社会生活を営むうえで、騒音・振動などの被害の程度が、社会通念上我慢できるとされる範囲のことです。

 

それでも駄目な場合は、地元の簡易裁判所に調停を申し立てます。

数ヶ月程度の時間はかかりますが、解決に至る場合が多いようです。

 

諦めたら終わりですが、同じ被害を受けている近隣との協力しあうことが、功を奏することが多々あるようです。

 

以上で解決しない場合、最後に頼りになるのは裁判です。裁判をするとなれば、騒音が「受忍限度」を超えていることが必須条件となり、費用と時間がかかりますが、騒音の差止めや損害賠償が認められる可能性があります。

因みに、一戸建ては音問題がないのかと言いますと、さにあらずです。

2階の足音は容赦なく響くが、生活時間のズレがなく、また身内だから気にならないだけなのです。さらに、道路と接しているために車のエンジン音や足音が響いて来たり、隣家の話し声が聞こえてきたりなんてこともあります。

 

Q11.店舗が1階にあるマンションやワンルームとファミリータイプ混在マンションは転売の際に不利と聞いたのだが、そうなのですか?

A)1階に店舗が入り、2階3階がオフィスやワンルームマンション、4階以上はファミリータイプという構成のマンションは、確かに売却の際に苦労するというものが少なくありません。

 

いろいろな問題を抱えている可能性があるからです。例えば、生活時間の異なる階層が入居していることが多いため、購入希望者は夜間の騒音に悩まされる危惧を抱くのでしょう。外来者の出入りも激しいことから、住まいの安全に関して不安を感じるからでもあります。

 

また、管理組合の活動においては、全体の合意形成に手間取り、重要な修繕が進まないため建物の劣化が早まるなどの懸念もあります。

 

こうした不安が購入希望者に抱かれるため、売却を見送る結果につながりやすく、その分を価格の魅力で(安くして)補う必要が強まるのは事実です。

 

しかし、これはあくまでそうした傾向が見られるというだけで、全ての雑居マンションがそうだと言いきることはできません。例えば、以下のような配慮をしてあれば、あまり心配はいりません。

 

①店舗やオフィス・ワンルーム区画とファミリー住居区画の完全分離設計としている(出入り口の分離、エレベーターの分離など)

②商品搬入のための車両とファミリーマンション居住者の車両に交差が起こらない動線計画になっている

③人と車の通行が完全分離設計になっている

④高度なセキュリティーシステムを導入している(3重のオートロックシステム、多数の監視カメラ、24時間有人管理など)

 

Q12.等価交換マンションには気をつけろと知人が言うのですが、どのような理由ですか?

A)等価交換とは、地権者(地主)が土地をマンションデベロッパーに提供し、その土地の価値と同じ価値の土地と建物、つまりマンションの何戸かをもらう、というものです。

実際の契約形態は売買という形をとる場合が多いようです。つまり地主は土地をマンションデベロッパーに売り、そのお金でマンションをその場所で買うということです。

 

そうすることで、地主は課税の特例を受けることができます(通常、土地を売って儲けると譲渡所得となります)。

マンションデベロッパーの方は、省資金の事業を行うことができます。土地代の対価はマンションという現物ですから、お金を用意しなくていいためです。

 

価格表を見て、そこに「非分譲」や「地権者還元住戸」、「事業協力者住戸」などと表示された、価格の付いていない住戸があれば等価交換物件の可能性があります。

 

地主は自分が取得した住戸が複数ある場合、そのひとつに自分が住み(課税の特例を受ける条件として自分が住まなければならないため)、その他の住戸は人に貸す場合がほとんどです。ここに若干の問題が発生する懸念があるのです。

 

どのようなマンションでも、住んでいる人と、借りて住んでいる人ではそのマンションに対する意識に差ができてしまいます。賃貸部分とエレベーターが別になっていたり、エントランスが別になっていたりすれば良いと思いますが、そうでないものが多いようで、持ち家意識の強い住人と仮住まい意識の住人が混在すると、管理上のトラブルの発生も考えられるからです。

 

その戸数にも注意しなければなりません。あまりにも分譲住戸が少ない場合はせっかく買ったのに、少々肩身が狭い思いを抱きながら暮らすことになりそうな気もします。

 

悪いことばかりではありません。地主さんは、その土地に最も愛着を持った人であり、同じ屋根の下にいると、引渡後の建物の維持管理、管理組合運営などで、真剣に行動していただける可能性もあるからです。地主さんの人柄、キャラクターによりますので、販売担当者や近所の人に確かめるのも良いでしょう。

 

また、従前の地権者に特別な扱いが許されていて、明らかに不公平感が否めないような約定が交わされているケースもありますから注意する必要があります。重要事項説明書に記載されている筈ですので、購入時、重要事項説明を受ける際に確認し、納得できなければ購入しないと判断するのもひとつの方法です。

 

Q13.バス便のマンションは、やはりやめた方がいいでしょうか?

A)一般的に、バス便立地を好む人はいないわけです。しかし、バス便マンションを買っている人がいるのは事実です。バス便の不利を補う価値があるからです。

 

例えば、次のような魅力です。

①駅前マンションにはない自然環境が素晴らしい

②駅前マンションよりはるかに安い(同価格なら格段に広い)

③駅前マンションにない共用施設の充実ぶりが魅力だ

④駅前マンションにはない大型ショッピング施設が隣接している

 

鉄道を利用して通勤する場合は、どうしても不便を覚悟することになりますが、購入した人は、①~④がそれを補ってお釣りが来るものと判断したのでしょう。

 

ただ、バス便マンションは販売に時間がかかってしまうのも事実で、そのことは、将来売却の可能性があれば間違いなく不利になることを示しています。

 

子供がまだ小さいので、自然環境の良い場所で育てたいという考えなら、それもよしですが、やがて大きくなり、電車を使って遠くの高校に通学する必要が出て来るかもしれませんし、社会人になって残業の多い職場だったら、買い替えを余儀なくされるかもしれません。

 

その時に、安くても手放せるかどうか。すなわち、ローン残債以下の値段になっても売却に支障がないかどうかが問題になります。残債以下なら、差額を用意することが必須ですから。しかし、先の売却価格を予想するのは不可能です。その意味では、バス便マンションは永住する人以外にはお勧めできません。

 

・・・・前半はここまで。次回は後半をお送りします・・・・

 

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