第779回 「マンション工事費。下がるか?」

このブログでは、居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から自論「マンションの資産価値論」を展開しております。10日おきの投稿です。

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長く続いてきた新築マンションの価格上昇ですが、ようやく止まる予兆が出てきたかも・・・そんな報道も出始めました。

 

今日は、今後のマンション価格の動きを予想してみようと思います。

 

●大手ゼネコン安値受注拡大

この小見出しは日経新聞2022年2月11日の記事からいただきました。 当日の19面に乗った記事を読むと、2大特需が収束し、安値受注が増えたため大手4社が減益になったというのです。

 

2大特需とは、「東日本大震災の復興工事」と「東京オリンピック関連工事」のことです。これが終了したことが減益の要因だというのです。

 

いつかは来ると予想していましたが、長く値上がり続いてきた新築マンションの価格もようやく止まる兆しなのか・・・そんな感想を抱きました。

 

ただ、大きく下がるかと問われたら「ノー」と答えざるを得ません。ゼネコン業界は、いつも国策に助けられて来た側面があり、今後もその傾向が断ち切られるとは思えないからです。

 

建築工事は、ご存じのように民間工事と官公庁工事がありますが、景気対策に民間工事の促進策と官公庁から直接の発注が増えるのは、よく知られています。

 

●用地費は下がらないかも

マンションの2大原価は、建築費と用地費です。用地費は土地代のことですが、これが厄介で、マンション建設に向く売地はとても少ないのが実態です。

 

1990年代には、バブル経済崩壊後の景気後退を脱却するためもあって、多くの企業が社有地を売却しました。その中でマンション建設に向くのは、老朽化していた社宅・寮で、これらを売却する企業が続出したのです。

 

マンション業者から見れば、それらは垂涎の土地でした。立地条件が良く、規模もマンション建設に向くものが多かったからです。

 

しかし、2005年頃には適地が底をつき始め、新築マンションの発売戸数も大幅に減ってしまいました。 適地不足は、マンション業者同士の取得競争を激化させ、これに伴って用地費は高くなって行ったのです。

 

今後も用地費が下がる傾向を予測することは困難な状況にあります。特に、多くのマンション業者が望む東京都内の用地は取得難であるため、競争率は高く、取得費は強含みに推移しているようです。

 

●新築マンションの価格上昇は?

新築マンションの価格は、(用地費+建築費+販売経費+利益)という構成になっています。

 

用地費と建築費の2大原価で売値の80%を占めます。どちらも大きく下がる様子は見られません。傾向としては頭打ちで推移するということに、つまり高止まり傾向が続くだろうと見られます。

 

この数年、価格上昇が購買力とのギャップをもたらし、新築マンションの購入を断念して中古マンション探しに転じて行った買い手も少なくないようです。今後も、新築マンション市場は活況を呈することにはならないと見ています。

 

無論、物件単位に見れば好調な販売状況を見せるものもありますが、それも全体的な品数の少なさが背景・要因と言えるのです。

 

言い換えると、条件の良い物件は、高値でも手の届く買手が集まって売れてしまうというわけです。

 

その好調販売物件は、いわば格別な立地、格別な価値を持つものです。駅近で付加価値の高い大型マンションが共通点と言えます。

 

今後も、優良な物件は高値でも長い時間を要せずに完売できることでしょう。反対に、駅から近いわけでもなく、建物価値も普通の物件は中途半端に安いだけでは集客力が足らず、したがって販売は苦戦を強いられることでしょう。

 

早い話が、完売の目標地点から大幅に遅れを出して多数の売れ残りを抱え込むことになるはずです。 そうなってしまった売主デベロッパーは、最後の手段である「値引き販売」に踏み切る例も少なくないことになるはずです。

 

しかし、値引き後の価格統計はないので、価格の正確な動向は把握できませんが、新築マンションが全体として価格低下トレンドを見せることはないはずです。

 

●金利上昇もジワリとやって来る?

価格が下がらなくても、金利の低下で実質的な購買力の底上げに寄与してきた住宅ローンですが、これも今後を占うとき、逆回転の動きを予想するしかにようです。

 

つまり、今後は金利が上昇するかもしれないという「ことですが、いつ頃から上がるのか、またどの程度の上昇が予想できるのか、これを当てることは極めて困難です。

 

しかし、世界の情勢を観察していると、日本だけが今後も低金利を長く続けられるとは思えないのです。 とすれば、コンマ3%台の超低金利「変動型ローン」を選ぶのは危険と見るべきかもしれません。

 

●そもそも新築の供給戸数は低水準

新築マンション供給が低水準で推移しているというのは既に述べましたが、適正な水準とはどのくらいなのでしょうか?

 

長くトレンドとサイクルを見てきた筆者は、東京都区内だけに限って言えば、年間に2万5千戸程度はあるようです。 これに対し、最近の平均は半分の1万3千戸程度しかないのです。その状況が、5年以上も続いています。

 

今後、これが大幅に増加傾向を見せるかというと、期待はできないというほかないのです。 としたら、買いたい人が増えても、品物が店頭に並んでいないので選びようがないという状況が続くのです。

 

●大量にある中古に狙いを転換するほかないのか?

もうお分かりの通り、もはや新築限定でマンション探しをして行く時代ではないのです。選択肢を増やしながら、「より良い物件」を選ぶという購買態度が望ましいという結論になるのです。

 

多くの選択肢とは、中古も新築も対象にしておく、地域の幅を広げて候補を探す、中古の築年数も「築浅」ではなく、「築20年程度まで広げる」といった態度が望ましいことになるのです。

 

●中古を嫌う日本人

日本人は新築を望む傾向が強いと聞きます。諸外国との差は大きいと、何度もデータも見てきましたが、「欧米では8割が中古、日本は2割」という大きな差があります。

 

ある人が解説してくれました。「日本は木の文化。ヨーロッパは石の文化。その差です」と。

 

大火に何度も見舞われた日本は「スクラップ&ビルド」を何度も繰り返して来ました。石の家は何百年も長持ちしますが、木の家は寺を別とすれば50年持つかどうかという短命の建物なのです。

 

しかも、古い木造の個人住宅の姿を見るにつけ、その無残さに魅了を感じる人は少ないのでしょう。 テレビ番組で古い家のリノベーション経過を見るにつけ、あれが一般化するとは思えない。少なくとも、その工事費を聞いて、中古を買ってリノベーションして住もうというニーズが増大するとは思えないのです。

 

無論、リノベーションの手間も費用も半端ではないように感じてしまう人の方が多いのではないか。そんな気がします。

 

●中古マンションを買うときのリフォーム代

同じ中古でも、マンションなら内装だけなので一戸建てよりは選びやすいということは言えそうです。ただ、リフォームをどこまでやるか、そこがカギです。夢を追いすぎると費用がかさみ、新築マンションと大差ない購入価格に跳ね上がります。

 

「何事も過ぎたるは及ばざるがごとし」といいますが、多くの事例を見ていると、かけすぎ、やりすぎに思えるのです。せっかくの費用も、10年以上先に売却するときには、色あせてしまい、投じた分を売値にONして買手を探そうとしても反応は鈍く、売却損につながることの方が多いのです。

 

リフォーム工事をどこまでやるか、この問題も微妙です。

 

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