第658回 消えたデザイン・消えた基本性能

このブログは居住性や好みの問題、個人的な事情を度外視し、原則として資産性の観点から「マンションの資産価値論を展開しております。

5日おき(5、10、15・・・)の更新です。

 

マンションのデザインを注視していると、最近の新築マンションには落胆することが多いので、業界OBとしては残念で仕方ありません。デザインは単に格好よく見せようというだけでなく機能も併せ持つものがあります。それが後退している現状を見ると、質の低下も否めないというほかないのです。

 

今日はなくなってしまったデザインを取り上げ価値あるマンションを改めて考えてみようと思います。

 

●雁行型デザインから蒲鉾型デザインへ

雁が群れて空を飛ぶ姿に似ているのが、このデザイン。こうすることで、窓面積が増えて採光が良くなることや、端の住戸以外も角部屋のようになるので、ひと頃は大流行りでした。

 

(画像:株式会社アーバンコンパス社HPより)

(画像:goo 住宅・不動産より)

 

しかし、雁行型デザインは、柱の本数が増え、凹凸が多いために表面積が増えてしまうという問題があります。コスト高になるのが欠点なのです。

もう何年も開発されることはなくなりました。最近のマンションはタワー型か、板状(蒲鉾型)の2種類になってしまいました。

 

●ライトコート(ライトウェル)のあるマンション

ライトコートは光の庭、ライトウエルは光の井戸ですが、要するに下図のような吹き抜けを設けたマンションで、多くは5階建てまでの低層マンションで採用されました。低層マンションなので、柱の要らない「壁式構造」で計画されることも多かったのです。

 

吹き抜けに面して水回りを配置すると、小窓を設けることができ、通風・採光に優れたマンションができたのです。

 

(画像出典:三井不動産リアルティ)

 

●空中廊下でアクセスするマンション

空中廊下とは、住戸の前にある共用廊下を住戸から離し、住戸と共用廊下の間を吹抜けにして専用ポーチで結んだもの。

住戸のすぐ前を人が行き交うことがないため、プライバシーの保護にメリットがあるのです。

 

下の写真は大阪府の北エリア・千里山にそびえ立つ名作マンションです。昭和55年に建てられてから今まで、その稀有な外観から入居希望者が後を絶たないと言われています。

著名な建築家・遠藤剛性氏の作品として、関西ではヴィンテージマンションの冠が付きます。

(画像:渋井不動産)

 

空中回廊が付いていて、そこを通って移動する。エレベーターが決まったフロアにしか止まらない、今は珍しいスキップフロア方式になっています。

 

●2戸1エレベーター型マンション

(画像・ブランズ二子玉川テラスの物件公式ホームページ)

外廊下式の場合、どうしても玄関脇の個室のプライバシーに問題が残るものですが、2戸に1基の割合でエレベーターを設ければ、外廊下が必要ないので、各住戸に南北ともバルコニーを設けることもでき、プライバシー性が高くなるとともに通風も良くなるというメリットが生まれます。

上図は現在(2018年)分譲中の物件で、最近では極めて珍しいものです。

 

●勾配屋根のマンション

 

写真のような屋根を持つマンションも最近は殆ど見られなくなりました。平らな陸屋根方式の方が工事しやすいのは確かですが、勾配屋根は雨が降っても流れてしまうので、陸屋根に比べてメンテナンスの頻度が少なくて済むというメリットもあるのです。

 

●アルコーブのあるマンション

アルコーブとは、元々窪んだ小部屋という意味ですが、日本では玄関ドアの位置を廊下のラインから窪ませて玄関に表情を持たせたものとして命名されました(右図)。

ドアを開けた瞬間に駆けて来た子供がドアに衝突する事故が起きにくいというメリットもあるのです。

ところが、最近は左図のように、全くアルコーブのない「平板な姿」のマンションが増えています。これでは、賃貸マンションと変わらないというほかなく、残念至極です。

     

 

 

●二重床のマンション

分譲マンションで二重床(右図)は当たり前と思っていた人も多いはずです。ところが、最近は直貼り構造のマンション(左図)が増えました。直床の方が遮音性はが高いなどという書き込みも出ており、まるで、直床の方がグレードが高いかのような誤解も生まれていますが、高級マンションに直床はありません。

     

●エアコン室外機の収まりを考えたマンション

かつて、外廊下方式のマンションは花台を設けて、その下にエアコンを納めるのが普通でした。(右写真)

花台でなく、出窓にした例も多数ありました。

ところが、最近は左の写真のように裸で廊下に無造作に並べるお粗末なマンションが増えています。嘆かわしいことです。

2013年からの価格上昇のトレンドは今も続いています。はじめは建築費の高騰が原因でした。

今も建築費は高水準にあるのですが、2015年あたりから、建築費の上昇だけでは説明できない価格上昇が続いています。地価(用地費)が上がり出したことに原因があるのです。

 

マンションデベロッパーは、売値が上がると販売に苦労することを良く知っており、価格抑制に努力するものです。しかし、用地を安く買う方法があるわけではなく、建築費の圧縮も限度があるのです。コストダウン策も限界に来ています。住宅ローンの金利が下がることで、実質的な購買力が上がって価格上昇を吸収してくれる面もありましたが、それも限度があります。

 

コストダウン策は、第640回「新築マンションの売主のホンネ。“高くてごめんなさい“を分析する」  https://mituikenta.com/?p=2301をご高覧いただければと思いますが、既にコストダウン策のメニューは出尽くしています。

そんな中、品質をこれ以上は下げないぞという姿勢・気概を感じるデベロッパーも存在します。

 

売れなければ経営危機につながりかねないことなので、デベロッパーの苦悩は深いはずですが、企画力で乗り切れる場合もあるので、デベロッパー各社の一層の奮闘を期待。筆者はそんな気持ちです。

 

一方、買い手の立場に立って考えると、新築マンションより優れたマンション(建物)は中古の方に多いことが分かります。

間取りにこだわりたい人は、築年数で15年以上の中古マンションに注目してみたら良いかもしれません。

 

 

・・・・・今日はここまでです。ご購読ありがとうございました。ご質問・ご相談は「無料相談」のできる三井健太のマンション相談室までお気軽にどうぞ。http://www.syuppanservice.com

 

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